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2014-06-01 「私の望み」に辿り着くまで -ラブライブ2期8話へ至る道のり このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

今回放送された第8話『私の望み』はラブライブ2期のひとつの到達点だった。


ここまで謎のスピリチュアルキャラで通してきた希が、

どのようにして『私の望み』を発露させるに至ったか、まとめてみたい。



□ 1期の希はどのようなキャラクターだった?


それでは1期まで遡ろう。まずは第2話。

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「カードがウチにそう告げるんや!」


堅物の生徒会長(絵里)とミステリアスな副会長、ベタだけど良いキャラ配置だ。

その後も要所要所で2年生に助け舟を出したりして、『μ'sの母』というポジションを固めていく



次に10話。


素直になれないでいる真姫ちゃんに対して、希は背中を押そうとする。

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「海はいいよね、見ていると大きいと思ってた悩み事が小さく見えてきたりする。

 …(中略)…ちょっと話しすぎちゃったかも。皆には秘密ね。」


この話は真姫ちゃんの課題と同時に、希という人間の内面にフォーカスが当たる重要な回でもある。



『μ'sの母』というポジションを得て、無償の愛をメンバーに注いできたと思われた希は

その実、自分がやりたいから・自分の『望み』のために動いていたことを吐露する。


そして唐突に混ざる標準語が、希が仮面を常につけていたことを明確に視聴者に理解させるのだ。



この関西弁⇔標準語のスイッチによって、希というキャラクターは視聴者にとって『何故?』はよく分からないが

その逆、言動の位置づけは簡単すぎる程に理解しやすいキャラクターとなった。


しかしそのギャップがある種の悟りを感じさせており、希の『内に秘めた問題』が何なのか見えにくくさせていた。

次に、希は物語上、μ'sメンバーを教え、導く母のような役割を担っているが、

分かりやすい自身の課題(乗り越えるべき壁)が明示されていない点で海未と共通している

(すでに蹉跌を乗り越えた者を体現しているのかも知れないが)。


ラブライブ!二期は何を語り出すのか - WebLab.ota

結局のところ、1期ではこの『希の問題』についてこれ以上触れられることはなかった。


物語の手続きからすれば、課題が示されていない以上それに対する回答や

希のバックグラウンドについて触れる必要は確かに無いのだが、モヤモヤとしたものが残った感じがしていた。



□ 「チャレンジする勇気やない。諦める勇気。分かるやろ?」


では次に2期を見てみよう。


1期の残課題であった『希の問題』について開始早々の2話で、すでに全力投球をしている。


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「山で一番大切なんは、なにか知ってる?チャレンジする勇気やない。…諦める勇気。分かるやろ?」


このセリフは暗示的ではあったが何を意味しているのか、正直この時点では判断できなかった。

ここに至るまでに、希という人間のバックグラウンドが全く明らかにされていなかったからだ。



この時点で言えたことは、2期において希がある種の『起爆装置になりうる』ということだけ。

しかし1期までとは違い、希が『何か』を仕掛けに来ているのではないという予感がここで生まれた。


そして、この予感を裏付けるように、これ以降も希は極めてあやしいポジションに立ち続けることとなる。



例えば6話。


希が部屋の外で、ことりとにこの会話を意味深に盗み聞くカット(※)があったり、

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(※ このシーンはいわゆる「glee騒動」の1カットである。

    glee本編映像を見ると分かるが、このカットで希に相当する人物は、部屋の中のことり相当の人物と目配せをしている。

    (ラブライブでは、廊下に希がいることをことりは知らない)

   つまりこのカットだけオリジナルのglee演出的に明確に異なっている。

   他のカットはカメラワークに至るまで模している中、この1カットだけ異なっているということは

   何かしら明確な意図があるということだ。)



希だけなぜか分離帯の向こう側にいるというベタベタの演出であったり

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特に理由もなくいきなりセンターだったりする。

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我々の中で『希には何かがある』という予感は確信へ変わっていくわけだ。



そして7話…

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あからさますぎる。

あからさま過ぎて、ここまで来ると逆に怪しくないというか、希容疑者疑惑に突っ込むのが怖くなるレベルだ。


また京極監督が笑顔で手招きしているのが見えてしまった。

そして我々は混乱の局地へと叩き落とされることになる。


(中略)


我々はまさに今、京極監督と花田十輝によって喉元に毒針を突きつけられながら問われているのだ。

「さあ、1話を見てお前はどの可能性(エンディング)にベットするのか」と。


ラブライブ神経毒−花田十輝と京極尚彦の企み - stratoscope


□ 「チャレンジする勇気」と「諦める勇気」


さてようやく8話の話をしよう。


8話で希は「このメンバーでラブソングを歌ってみたらどうやろか」と積極的に曲作りを主導しようとする。

しかしメンバーからも反対意見が出て上手く行かず…


「山で一番大切なんは、なにか知ってる?チャレンジする勇気やない。…諦める勇気。分かるやろ?」

8話にして、この台詞の意味がようやく具体的な形を伴って示されることとなる。…が、大切な部分は『諦める勇気』だけではなかった。



『チャレンジする勇気』。このフレーズと対になることでこの台詞は強い意味を持つ。


絵里に話しかけたのは希の初めての『チャレンジ』だった。

μ'sは希のチャレンジであり、みんなで歌を作ることもチャレンジだった。



でも希はこの『山』(=チャレンジ)を途中で諦めようとする。


「たしかに皆の言う通りや。(中略)今見たらカードもそれがいいって。」

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このシーンで重要なのはカードを見せないこと。

希はここに至るまでたびたび自身の言葉をカードに代弁させている。

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このシーンで、本当はカードは進めと言っているのだ。

また、この娘は海未のように穂乃果に自身の夢を預けたわけではなく、「占い」に夢や希望を代弁させている。

※ この「占い」がどの程度希の本心を反映しているのかよくわからないが……

しかし、一体何故彼女は「占い」という皮を被り、自身の言葉で夢や希望を語ろうとしないのかは不明だし、もしかしたら、絵里と同じように「自分の言葉で語らない」ことによって、何かから身を守っているのだろうか?


ラブライブ!二期は何を語り出すのか - WebLab.ota

つまり2話の時点で示されていた希の台詞とその意味する課題は

『チャレンジはする。でも最後の最後まで押し通すことができない弱さ』だ。



そしてこの回では、あわせて希のバックグラウンドがようやく語られることになる。


「ウチにとってμ'sは奇跡…」「ウチはそれで十分。夢はとっくに……一番の夢はとっくに…」

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1期で希が救ってきた絵里・真姫を経て、2期8話では絵里・真姫に背中を押された希が課題を超える。

2期8話は、1期10話の直系であり物語の手続きとして極めて明解だ。


このコンボは美しすぎて正直震えてしまった。



□ 最終話に向かって


8話は真摯な積み上げ回だった。


次回は「想い」「メロディ」「予感」「不思議」「未来」「ときめき」「空」「気持ち」、そして「好き」。

snow halationで泣く準備は万端だ。


これから物語はどこへ向かうだろうか。


μ'sはこのまま「美しい最終回」にたどり着くことができるのだろうか。

はたまた1期のように紆余曲折がまだ待ち構えているだろうか。


まだまだこの勝負、油断することはできない。