欧米で、慰安婦問題について日本の旗色は確かに悪い。欧米人には「家族のために娘が身を売る」といった発想自体がなく、「うすうす知っていても口に出したりしない」という東洋的な曖昧さも理解されにくい。権力に強制されたに違いないと誤解されがちだ。
そのあたりを韓国は巧妙に利用したのだが、より深く調べれば「売春大国」としての、韓国社会の闇も論じられることになるだろう。
また、中国も韓国も、日本の過去の過ちを執拗(しつよう)に蒸し返すことで短期的には満足だろうが、それでいいのか。
戦後の日本が清く正しいのに比べて、欧米的基準での人権侵害への処罰を、過去何十年にも遡(さかのぼ)って適用すれば、中韓の指導者は将来、悪夢に悩まされることになるのではなかろうか。
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訂正 27日付の「日韓の深層(2)」の中で、『魏志倭人伝』とあるのは『梁書・東夷伝』の誤りでした。
■八幡和郎(やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。徳島文理大学教授。著書に「本当は偉くない? 世界の歴史人物」(ソフトバンク新書)、「日本史が面白くなる『地名』の秘密」(洋泉社)など多数。