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【社会】

国際学力調査PISA 世界の教員ら「偏ってる」

インターネット上に公開された、学習到達度調査を批判する文書

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 経済協力開発機構(OECD)が十五歳を対象に実施している学習到達度調査(PISA)の在り方について、米国を中心とした世界の教育学者らが「教育の伝統や文化が持つ多様性を、偏った尺度で測定している」と批判する文書をインターネット上に公開し、賛同者の署名が広がっていることが三十日、関係者への取材で分かった。

 署名した学者や教育関係者は同日現在で、世界的に著名な米言語学者ノーム・チョムスキー氏ら千六百人超。「知識を日常生活に応用して考える力を測る」として国・地域の成績や順位が注目されるPISAの在り方に一石を投じそうだ。

 文書はOECDのアンドレアス・シュライヒャー教育局次長宛て。参加国は順位を上げようと短期的施策に力を注いでいると指摘し、「計測できる狭い面だけを強調して、道徳的、市民的、芸術的発達は測定していない」とPISAを批判。

 また、OECDが学校の経済的役割を重要視していることに「公立学校にとって、もうかる仕事に就けるように備えることが唯一の役割ではない」と訴えた。次回の実施を延期してテスト形式を再検討し、順位付けをやめるよう求めている。

 米コロンビア大大学院博士課程に在籍し、文書の翻訳にかかわった鈴木大裕さん(40)によると、発起人はニューヨークの大学教員と中学校長。四月中旬に公開し、米国や英国、ルクセンブルクなどの著名な教育学者からも賛同を得たという。

 PISAは三年ごとに実施され、主に「読解力」「数学的応用力」「科学的応用力」の三分野で構成。六十五カ国・地域が参加した二〇一二年調査で、日本の高校一年は読解力が四位となるなどトップレベルの結果だった。

<学習到達度調査(PISA)の影響> 義務教育で学んだ知識や技能を実生活で活用する力を評価するため、OECDが15歳を対象に2000年から3年ごとに実施している。03年と06年の調査で日本は大きく順位を落とし、「PISAショック」と呼ばれた。学力低下批判が巻き起こり、全国学力テストの導入にもつながった。近年は上海や香港、シンガポールなどアジア勢が上位を独占。世界各国・地域が順位を上げるための対策に力を入れているが、弊害を指摘する声も上がっている。

 

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