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 資源ごみ回収日の明け方、缶を選別しながら持ち去る人たちがいる。ホームレスにとって生きる糧となっている行為は条例違反になる自治体が多い。いまや都内17区14市で施行される「資源ごみ持ち去り禁止条例」。包囲網が狭まる現場から報告する。

■夜から始めて22キロ2800円

 5月のある平日、都内。アルミ缶集めを始めて7年になる男性(63)に同行した。

 午前4時50分、男性は靴ひもを縛った。自転車の後ろの荷台には120リットルのポリ袋。缶で半分ほど埋まっていた。「1回戦の分」。昨晩、2時間ほどで集めた。「最近は取り合いだから、夜からやんないと」

 「2回戦」となる朝、まず買い取り業者へ。アルミ缶は350ミリリットルで約15グラム。1キロは70缶ほど。この日の買い取り価格は1キロ130円台。男性は昨晩集めた5・7キロで800円ほどを受け取ると、コンビニエンスストアでカップそばとカップ酒を買った。216円。「増税つらいよなあ」とつぶやく。酒はやめないのか、と尋ねると「やめられないねえ。飲んでる時だけバラ色になれるから」。遠くを見た。

 秋田県出身。7人きょうだいの末っ子。大学中退後、「いろいろ嫌になった後で」山谷地区に流れ、日雇いで約30年働いた。55歳を過ぎ、仕事にあぶれるように。アルミ缶集めはその頃始めた。だが、直後にリーマン・ショックが襲う。アルミ缶は1キロ50円を割った。

 生活保護を受け、簡易宿泊所で半年過ごした。「生きてる心地がしなかった」。路上で生活を始め、再び缶集めを始めた。

 この日は35の集積所を回った。「同業者」はすれ違っただけで6人。15・9キロの缶を買い取り業者に持ち込み、約2千円になった。男性がズボンから取り出したバンドの壊れた腕時計は「午前8時50分」を指していた。男性は言う。「きょうも働いたという充実感がある」

 男性は住民に迷惑をかけないように気を遣っていた。自転車は集積所から離れて止め、極力音を立てないように缶を取り、その場をきれいにして去る。前に「やめて」と言われた場所には立ち寄らない。

 別れ際、資源ごみの持ち去りを禁じる条例について尋ねた。「仕事なくなったらどうすっか。また生活保護もらうか、川に飛び込むか。それしかねえかって思いますよね」