福島第1原発事故:中間貯蔵施設の政府説明会で不満噴出
毎日新聞 2014年05月31日 19時49分(最終更新 05月31日 22時04分)
東京電力福島第1原発事故に伴う除染で生じた汚染土などを最長30年間保管する中間貯蔵施設建設に向けた政府による住民説明会が31日、福島県いわき市と茨城県日立市を皮切りに始まった。候補地の福島県大熊、双葉両町民らを対象に、土地の補償方針などを説明した。しかし、住民からは受け入れ自体に反対する意見や補償内容への不満が噴出し、地元合意の困難さが改めて浮き彫りになった。
いわき市の説明会には約540人が参加。環境省の担当者が土地は将来、避難指示が解除され、使えるようになることを見込んで評価するなどの補償方針を説明した。
しかし、双葉町の男性は「一日でも早く帰れるように元に戻してほしい。いらないものはいらない」と受け入れを拒んだ。住民には中間貯蔵施設が最終処分場になるのではとの懸念が根強い。政府は「30年以内に福島県外で最終処分する」ことを法律に明記し、特殊会社に運営を委託する方針だが、大熊町の男性は「なぜ国が責任を持って直接やらないのか」と批判した。
補償内容への質問も相次いだ。「田んぼ1反でいくらか」「具体的な金額を」との質問に、環境省の担当者は「調査しなければ答えられない」と繰り返した。
終了後、大熊町で区長を務める根本充春さん(74)は「家族や地域の絆は金で済む話ではない。全体的に納得できる説明ではなかった」と不満を口にした。
候補地は、原発周辺計16平方キロで、放射線量が高い「帰還困難区域」。政府は原則として買収し、施設には福島県内の除染に伴う土壌や廃棄物など最大約2550万立方メートル(東京ドーム20杯分)を保管する方針。2015年1月の汚染土搬入開始を目指し、説明会を6月15日まで計16回開催する予定。地元自治体は住民意見を踏まえ、施設受け入れの是非を判断する。【渡辺諒、喜浦遊、小林洋子】
◇住民説明会で国が示した主な補償内容や地域振興策
・土地は将来、避難指示が解除され、復旧・復興が進むことを見込み、使えるようになるとして評価
・家屋は避難指示解除後に同様の建物を再建築することを想定して補償
・引っ越し費用に加え、家具などを倉庫に保管する費用を補償する
・墓地、神社仏閣などについて、移転費とともに必要な儀式に伴う費用も補償
・極めて自由度の高い交付金を措置