自民、公明両党は、特定秘密保護法の運用が妥当かどうかをチェックするため、衆参各院に「情報監視審査会」を設置することなどを盛り込んだ国会法改正案を、衆院に提出した。

 秘密法は、世論の強い反対を押し切り、与党が強引に成立させた法律である。恣意(しい)的な運用を防ぎ、国民の不安が少しでも和らぐような仕組みをつくることが、与党が果たすべきせめてもの責任のはずだが、どうにも不十分と言わざるを得ない。

 最低限の体裁は整えられた。

 審査会は常設で、委員は8人。各会派の議席数に応じて割り当てられる。正副議長も会議に出席し、発言することができる。会議は非公開で行われる。

 自民党は当初、常任・特別委員会からの要請があった場合にのみ審査するとしていたが、公明党の主張を受け入れて「常時監視」とし、政府から毎年、秘密の指定や解除の状況に関する報告を受ける。政府に特定秘密の提出を要求し、運用に問題がある場合は改善を勧告できることも明記された。政府が提出を拒否する場合は、審査会にその理由を明らかにしなければならないとしている。

 ただし、監視の実効性には大きな疑問符がつく。

 審査会が秘密の提出を求めても、政府が「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼす恐れ」があると判断すれば拒否することができる。運用改善の勧告にも、何ら強制力はない。

 これで「監視」と言えるだろうか。せいぜい、審査会が積極的に秘密の提出要求と運用改善の勧告を行い、その積み重ねで存在感を示す。それにより政府に緊張感を持たせるという遠回しの効果しか期待できない。

 それにしても、与党プロジェクトチームの町村信孝座長の説明には首をひねってしまう。「国会が何でも命令して、政府が言うことを聞かないといけない状況になれば、本来の三権分立から逸脱する」。それほど三権分立を尊重するのならばなぜ、政府への権力集中をもたらす可能性をはらみ、国会の権能を脅かしかねない秘密法を成立させたのか。

 国会は政府の追認機関になりつつあるのではないか。有権者の不信は募る。自分たちは有権者に何を託され、何をなすべきなのか。一人ひとりの国会議員が向き合うべき問いだろう。

 法案の付則には、審査会の調査機能の充実強化について国会で常に検討を加え、必要な措置を講じるとある。当然だ。まずは党利党略を超えた、国会での真剣な議論を望む。