クローズアップ現代「主婦パワーを生かす1 “高スキル主婦”が中小企業を救う」 2014.05.20

大手アパレルメーカーでブランドを立ち上げたキャリア。
商社で17年間鍛え上げた営業力。
今、高いスキルを眠らせている主婦に中小企業の社長がラブコールを送っています。
国は昨年度からスキルを持つ主婦と中小企業をマッチングするプロジェクトを開始。

前の職場でのキャリアを生かし即戦力となっています。

背景にあるのは景気回復のもと、中小企業で深刻化している人手不足です。

お先に失礼します。
お疲れさま。

短時間で働く主婦の能力を引き出すために職場環境の見直しも進んでいます。

中小企業で広がる高スキル主婦の活躍。
新しい働き方の可能性を見つめます。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
女性は、日本の埋もれた潜在力といわれ女性人材の積極的な活用の重要性が指摘されています。
ご覧のように、少子高齢化でこのままでは労働力人口の大幅な減少が予想されています。
働き手としての女性の人材をもっと生かさなくてはならないというだけではなく企業を活性化させ競争力を高める戦略としても女性への注目が高まっています。
きょうと、あすは主婦の持つ潜在的な力をどうすればもっと生かせるのかをテーマにお伝えしてまいります。
1回目の今夜は出産などで企業を退職した主婦たちの能力を積極的に活用する中小企業の動きです。
現在、30代後半から40代の女性は男女雇用機会均等法以降に就職した世代です。
晩婚化で出産、退職するまでのキャリア働いた経験が豊かな人材も少なくないと見られています。
営業、経理、人事マーケティングに商品開発さらには法務など高い能力を持つ女性たち。
しかし、子育て中ゆえフルタイムで働けないという女性たちが多いのです。
自分の経験が生かせる職場で短時間、働きたいという女性たちを発掘する試みとして去年、国が始めたのが中小企業新戦力発掘プロジェクトです。
国が委託した人材派遣会社に主婦などが登録し一人一人の持つ能力を見極めたうえで人材を求める中小企業のニーズに合わせて紹介するという仕組みです。
昨年度だけで1300人が就職しました。
かつての職場で培った能力を女性たちは新たな職場でどのように生かしているのかその現場をまずは、ご覧いただきましょう。

東京・荒川区にある印刷会社です。
社長夫婦に加え従業員は3人です。
年間の売り上げは5000万円。
客からの注文に応じてチラシやパンフレットなどを印刷しています。

こちらが弊社で開発しました…。

橋さんは2年前新たに紙の雑貨の事業を立ち上げました。
特殊な印刷技術を生かしたブックカバー。
立体的な手触りが人気を集め大手書店との取り引きも始まりました。
販路をさらに拡大したい。
しかし、橋さんにはノウハウがありませんでした。

そこで利用したのが国の新戦力発掘プロジェクトです。
出産などで退職し再就職を希望する女性たちが人材派遣会社に登録。
派遣会社が中小企業のニーズと主婦のスキルをマッチングします。
最大3か月の職場実習が可能で実習の費用はすべて国が負担します。

マッチングされたのは大手アパレルメーカーで17年広報を担当していた女性です。

おはようございます。

西谷順子さん、46歳。
小学生の娘がいるため週3日、1日4時間のパート勤務です。
人気ブランドのPR担当だった経験とスキルに橋社長は期待しました。
一方、大企業に勤めていた西谷さんは、実習を始めた当初僅か5人の会社でやっていけるのか不安を感じていたといいます。

4時間の勤務ですが西谷さんの仕事はPRにとどまりません。
商品開発にも積極的にアイデアを出します。

社長が決めた時給は1400円。
首都圏のパートの平均の1.4倍です。

8年前2人目を出産したあと大手アパレルメーカーを退職した西谷さん。
自分の元のキャリアを生かして再就職したいとアパレルメーカー4社の試験を受けました。
しかし、残業が前提だと言われすべて不採用。
そんなときに知ったのが国のマッチング事業でした。

橋さんの会社でパート勤務を始めて3か月。
この日、訪ねたのは前の職場の取り引き相手です。

失礼します。

お久しぶりでございます。

全然変わらない。

10年ぶりに会った女性雑誌の編集長。
早速、新商品を見てもらいます。

えっ?何これ?かわいい!
中小企業には独自に広告を出す余裕がないため記事で取り上げてもらえないか交渉しました。

主婦の高いスキルは新たなビジネスを生んでいます。
この会社が独自に始めたのは前職の年収が500万円以上の主婦の派遣です。
これまでに450人が登録。
人事や経理、営業など管理職の経験者もいます。
主婦の時給は過去の年収をベースに決まります。
ほとんどの人が短時間勤務を希望するため企業は20万円台で優秀な人材を雇える仕組みです。
従業員100人のこの金属加工メーカーに派遣されたのは営業のスペシャリストです。

ありがとうございます。

大山ふみ子さん、43歳。
大手の卸売り商社に17年勤務し営業の戦略を立ててきました。
2人の娘を育てるため週4日、1日5時間の勤務で月収は20万円ほどです。
営業のリーダーを任され月に2度、戦略会議を開いています。

派遣されて半年。
大山さんは成果を認められ先月、短時間勤務の正社員になりました。

今夜は、中小企業で働く女性の労働問題などにお詳しい、労働政策研究・研修機構の研究員でいらっしゃいます、池田心豪さんにお越しいただいています。
よろしくお願いします。
改めて働き出して、自分の生きる場所を見つけたっていうようなことばもありましたけれども、女性たち、生き生きとして働いていましたけれども、今までこうした高いスキルを持って、そして働いてなかった女性たちをうまく、労働市場に引き出すことができていなかったんですか?
そうですね。
例えば特定の資格を持っていたりとか、一部の女性は、高いスキルを持って、そのあと再就職するということができてた部分もあるんですが、VTRで見たような、大企業のホワイトカラーで、マーケティングの仕事をしていた女性の例ありましたが、そういういわゆる一般的に企業で働いているような方々というのは、結婚や出産で辞めたあと、なかなか再就職のときに、自分の能力に見合った仕事に巡り合う、そういうチャンス、なかなかなかったということがあります。
結果的に、辞めたあと一時的に再就職を試みることがあっても、なかなかいい仕事に巡り合えずに、再就職を諦めるというようなことも珍しくない、そういう状況がずっと続いていました。
何が壁になっていたんでしょうか。

一つは自分が本当にできるかと、長い間、子育てで、仕事から離れていたときに、また同じように戻って仕事ができるか、そのことに対する不安が大きいというのはあったと思います。
実際に自分の能力に見合った求人がないわけじゃないんですが、先ほど大手アパレルメーカーを受けたけども、だめだったという例がありましたが、残業を言われたときに、できるかどうか分からない。
当然そこには、夫をはじめとする家族との家事分担の問題もありますし、またその中小企業の場合ですと、頑固おやじがいてというVTRにもありましたが、やっぱり外から見てその会社がどういう会社なのか、なかなか分からない。
そうすると、その会社の雰囲気になじめるかという問題も出てきますよね。
そういう意味で、先ほどインターンから、パート勤務、その後、短時間正社員、それからフルタイム正社員、つまり段階的に会社の中に入っていく。
それによって少しずつ会社に慣れていく、仕事に慣れていくという仕組みはその女性のニーズに非常に合っているんじゃないかというふうに思います。
そうですよね。
本当に自分がしかし、働いた経験はあるけど、どんな力を持っているかっていうのは、本人はなかなか分からない中で、人材派遣会社が仲介をして見極めてくれるというのも大きな手助けにはなるんでしょうね。
そうですね、やっぱり自分の持っているスキルというのを、きちんと正確に理解している人っていうのは、少ないと思うんですよ。
また、しばらくブランクがあったりすると、どういうレベルにあるかも分からないですし、また、今までと違うところで、まさか大手アパレルメーカーで培った仕事が、また全然違う中小企業で生かせるというようなことは、なかなか想像もつかないですよね。
そういう意味で、自分のスキルがどこで生かせるかということを人材派遣会社が分析して、企業とマッチングしてくれる仕組みというのは、非常にいいと思います。
しかしちょっと、こちらご覧いただきたいんですけれども、これは、両立支援の取り組みの実施状況、これ中小企業ですけれども、ご覧のように、制度が整っているところがむしろ少ない、柔軟に対応しているという結果なんですけれども、そうなりますと、そうした時間制限をもって働いている方々が多いと、何かあつれきとかを生む可能性ありませんか?
そうですね、1人ぐらいだったら、当然その人の事情に応じて対応していれば済むっていうのがありますが、やっぱり人数が増えてくると、これ、私が実際に、中小企業で働く女性からヒアリングで聞いた話なんですが、会社に自分から言ったらですね、快く応じてくれるんですけど、言わなかったら何もしてくれないという、そういう声を聞きました。
やっぱり、いろんな知識があって、会社に対する交渉力がある、そういう女性は、当然、自分の事情に見合った処遇を、どんどん引き出せるかもしれないですが、なかなかそれ言い出せないという女性は言わないまま、支援を受けられないということにもなりかねないと。
そうすると当然、あの人はこうだったのに、私はこうだという、不平等感というんですか、そういうものが募ってくると、そういう可能性は十分にありますね。
今のお話にありましたように、職場で不平等感が募るといったことも考えられる中で、今、就業規則を見直す企業も出てきています。

旅行のプランなど福利厚生サービスを販売している会社です。
全員が高スキル主婦として再就職しました。
3人のうち、2人は短時間勤務。
フルタイムで働くこの社員に業務が集中してしまいました。

ほかの人のカバーで休日出勤や深夜勤務を余儀なくされていました。

社長の坂爪達也さんです。
これまで正式な就業規則は作ってきませんでした。
柔軟に対処すればいいと考えていたからです。

こんにちは。
よろしくお願いいたします。
働き方による不平等を是正するため、頼りにしたのは社会保険労務士です。
菊地加奈子さんはこれまで30社を超える中小企業の就業規則の作成に携わってきました。
まず取り組んだのはそれぞれの業務を洗い出すこと。

そうですね。

菊地さんが作った業務の可視化シートです。
重要度と緊急度に応じて4つに分けました。
緊急度が高い業務のうち本人しかできないものとほかの人がカバーできるものに分類。
業務を可視化し、不平等の解消につなげようと考えたのです。
社長と社員に10回以上の聞き取りを経て作られた就業規則です。
採用や賃金、休職、異動など載せられた項目は全部で99。
不平等を生んでいた業務のカバーについては量やレベルに応じて評価しチームワーク手当を支給することにしました。
短時間勤務の人が帰る1時間前残った業務の分類の時間です。

残っていたのは緊急度は高いもののほかの人もできる仕事4つでした。
3人全員で分担し60分で無事に終了。

フルタイムで働く人の残業は大幅に減りました。

今、中小企業の中で人手不足が深刻なのは建設業界です。
従業員45人の建設関連会社です。
高スキル主婦を迎え入れるため就業規則の見直しを菊地さんに依頼しました。

頑張ってるか?
お疲れさまです。

社長の早坂宣則さんです。
施工管理を担当する社員の不足に悩んでいました。
施工管理の仕事は幅広い業務を1人で担うため長時間労働が当たり前とされてきました。
今回の見直しでその業務を2つに絞りサポート役との分業を取り入れることにしました。
会社のホームページの求人欄です。
勤務時間が短い主婦でも施工管理の仕事ができると呼びかけました。
ところが、やって来たのはなんと、施工管理のキャリアを20年以上積んだ男性でした。
岩崎亮さん、44歳です。
前の会社に勤めていたときに肺に腫瘍が見つかり長時間労働を避けようとこの会社に転職しました。

就業規則の見直しでサポート役と分業しているため残業は、ほとんどしません。

お先に失礼します。
お疲れさまです。

主婦を受ける入れるための新たな就業規則。
会社の変化が多様な人材の獲得につながったのです。

池田さん、フルタイムで働きたい人、そして短時間で働きたい人、いろんな人たちが集まった職場で、その不満が蓄積しないための一番大事なポイントってなんですか?
そうですね、VTRでありましたように、優先順位を決めるというのは大事だと思います。
ただそういうことも含めて、ルールや約束事をちゃんと作って、それで仕事を進めていくということがやっぱり大事だと思います。
その中でやっぱり、どうしても敏感になっていく問題が、やっぱ、評価の問題ですね。
短時間勤務の人とフルタイムの人の処遇を、評価をどういうふうに、変えるのか、変えないのか、そこの部分も、働き方によって、担っている職務の性質とかでさまざまでしょうから、それも一概には言えないんですが、ただそこの部分があいまいですと、やっぱりどうしても、私はこれだけやってるのに評価されないとか、そういうことになりがちなので、そこの評価の部分をきちんと制度として整えることはすごい大事だと思います。
今の最後のVTRで、子育て中の女性でも、建設の会社で働けるようにするために、施工管理の仕事を分業したところ、経験豊かな男性が来た、こうした取り組みを続けることで、職場ってどう変わっていくとお考えですか?
やっぱりいろんな人が、そこの会社で働けるようになるということが大きいと思いますね。
これから日本は生産年齢人口が減っていく中で、いろんな事情を抱えて、フルタイムで長時間働けない、だけども高いスキルを持っている、そういう人をいかにして活用していくかということが、経済社会の支え手、担い手を確保していくという、非常に重要な課題になっていきます。
そういう意味で、家庭責任を持っている女性の活用ということを、一つ基礎にして、いろんな人が会社で活躍できる、そういう職場を作っていくということが、重要な課題になっていると思います。
さて、シリーズでお伝えしています、主婦パワーを生かす。
あすはいわゆる103万円・130万円の壁について考えていきます。
制度の見直しで、女性の働き方は変わるのか、検証していきます。
それでは今夜はこのへんで失礼いたします。
2014/05/20(火) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「主婦パワーを生かす1 “高スキル主婦”が中小企業を救う」[字][再]

国は昨年度から「中小企業庁新戦力発掘プロジェクト」を開始。出産を機に退職した主婦と中小企業をマッチングし、新規事業の拡大につなげようとする動きの最前線を伝える。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】労働政策研究・研修機構 副主任研究員…池田心豪,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】労働政策研究・研修機構 副主任研究員…池田心豪,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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