(諏訪)新しい生き方を探しませんか?僕とあなたと陽君と3人で。
(聖美)3人で新しい生き方を探すって?
(諏訪)病院を辞めることにしました。
院長がぐずぐずと煮えきらない態度を取るのなら私が決める。
院長室でご主人の前であなたの顔を思い浮かべ陽君の顔を思い浮かべ迷っていたものが全部吹っ切れました。
辞表を?どうしてそんなことを?奥さんを…。
聖美さんを守りたいから。
そしてもちろん自分自身のために。
弘明先生と一緒にひかりちゃんの誕生に関わって医療というものの底知れない力を知った。
あれからずっと胸の中に何かざわめくものを感じていました。
ざわめくもの?僕はねもともとこの病院のアットホームな雰囲気が気に入ってたんです。
がつがつしないまったり穏やかな院長のことも好きだった。
でもこれからは弘明先生が先頭に立って不妊治療をはじめとする先進医療をどんどん取り入れていくことになるんでしょう?かげろう院長は何も言わずに黙認しおのずと病院のカラーも変わっていく。
いずれ僕の理想とは遠く離れたものになっていく。
先生の理想って…。
命の温かさ。
3分足らずの診察じゃ上っ面しか分からない。
もっと患者さんと心で触れ合ってぬくもりの感じられる医療をやっていきたい。
そういう思いがどんどん膨らんで胸をざわつかせていた。
折も折静岡にいる医大の先輩から診療所を手伝ってくれる医者を探してるって聞かされて。
まさに運命の導きです。
小さな診療所ですが近くに設備の整った病院もある。
陽君も安心して暮らせます。
ついてきてくれませんか?僕に。
私があなたと陽君を全力で守ります。
(百合子)奥さまにお会いになりました?
(諏訪)うん。
会った。
(百合子)ならいいんです。
さっき捜してらっしゃるみたいだったから。
先生は院長室へいらしたってお伝えしたら何だか心配そうな顔されてましたけど。
(諏訪)そう?別に何もそんなことは。
(百合子)先生。
私たちがしたことって間違ってなかったんですよね?陽君の病気がよくなったんだからそれでいい。
(百合子)頭では分かってるのにひかりちゃんを見るたびに何だか複雑な気がしてしまうんです。
あの子の命は誰のものなんだろうって。
駄目ですね。
医療に関わる人間がいつまでも迷っていたら。
迷って当たり前。
迷って悩みぬいて選び取った判断にこそ意味がある。
いや。
われわれ自身の手で確実に意味を持たせなければ。
それが命に携わる者の宿命だ。
時々不安でいっぱいになるんです。
誰かにぶつけたくてたまらなくなるんです。
(諏訪)塩谷さんは立派な看護婦だ。
迷っても悩んでもちゃんと乗り越えていく力がある。
私は弱い人間です。
それでも先生がいてくださったから。
先生を信じてずっとついていこうって。
今までありがとう。
(百合子)えっ?
(諏訪)長い間あなたには本当にお世話になりました。
(百合子)何で?どうしてそんなことおっしゃるんですか?院長に辞表を渡してきた。
田舎の小さな診療所で出直すことにしたんだ。
辞めるってことですか?この病院を。
患者さんを置いて私を置いてみんなを置いてどこか行ってしまわれるんですか?
(諏訪)今日明日って話じゃない。
引き継ぎやら何やらやらなきゃいけないことが山のようにあるからね。
(百合子)陽君も置いていくんですか?奥さまにはその話されたんですか?奥さまは納得されたんですか?一緒に行ってほしい。
奥さんにはそう伝えた。
陽君と2人で僕についてきてほしい。
辞表を出したその足でそう伝えてきた。
そんな。
それで…。
それで奥さまは何て?返事はまだもらってない。
もし奥さまが断ったら?そしたら思いとどまってくださるんですか?もうあの家に聖美さんの居場所はないんだ。
(波津子)愛美さん。
そこが終わったらちょっとお使い頼まれてちょうだい。
(愛美)はーい。
かしこまりました。
(愛美)人が下手に出てりゃ人使いの荒いばばあめ!うっ。
もう。
(従業員)ごゆっくりどうぞ。
(愛美)何よ?私に話って。
(百合子)愛美さん。
若奥さまから本当に院長先生を奪うおつもりなんですか?そのためにお二人の仲を壊そうとされてるんじゃないんですか?
(愛美)ちょっと待って。
何なの?やぶから棒に。
(百合子)奥さまが諏訪先生に相談しているのを小耳に挟んだんです。
愛美さんに院長を奪い取られて家から追い出されそうだって。
姉さんそんなこと諏訪先生に?いつもすごく親密にいろんな悩みを相談してらっしゃいます。
先生もホントに親身になって。
じゃああんた姉さんのこと心配して?それで私に意見しようっていうの?私が心配なのは諏訪先生です。
奥さまに親身になり過ぎておかしくなってるんです諏訪先生は。
家に居場所がないんなら自分が病院を辞めてまで奥さまを連れ出すとまでおっしゃってるんです。
何それ?
(百合子)奥さまがここまで心を開いて打ち明けてくださったなら自分が何とかしなけりゃって思い込んでとうとう辞表まで。
辞表って。
(百合子)諏訪先生は柳沢病院の宝です。
小児科に人気があるのだって先生のおかげなんです。
いなくなられてはみんなが困るんです。
これ以上おかしなことになる前に院長から手を引いていただけませんか?ひかりちゃんのことだって最初からの約束だったんですから。
院長先生のこともひかりちゃんのこともすっぱり諦めてどっか行っちゃってくれませんか?私はこれからも諏訪先生に仕えていきたい。
陽君が生まれる前峻君がまだこんなちっちゃかったころからずっとずっとおそばにお仕えしてきたんです。
だから邪魔をしないでください。
私の愛する小児科に元の平和を返してください。
(百合子)ハァーッ。
私もちょっといき過ぎだったかも。
産みの母親としてもうしばらくひかりのそばにいたかっただけなのに何だか意固地になっちゃってお兄さんにちょっかいを。
まさかそれが巡り巡って諏訪先生やあなたにまで迷惑を掛けることになるなんて思ってもみなかった。
聞いてよかったわ。
あなたの話。
ご忠告ありがとう。
気の利く看護婦だこと。
でも分かったなんて一言も言っちゃいないからね。
(波津子)まずい!ちゃんとおだしは取ったの?今日はちょっと時間がなくて。
(波津子)おだしだけはちゃんと手間暇惜しまず取りなさいって言ってんのに。
だいたいこれ味が薄過ぎる。
ああっ。
(波津子)何年もかけて柳沢の味を仕込んだって何一つ身に付いちゃいない。
結局舌が違うのよ。
昔覚えた貧乏くさい味に染まっちゃってんのよ。
(波津子)お漬物も出てないじゃない。
これじゃご飯にならないわ。
あっ。
すいません。
今すぐに。
(波津子)ああ。
もう結構。
そんなに一日中お忙しいんならひかりは愛美さんに預けた方がおよろしいんじゃない?それを意地張ってあっちゃこっちゃ連れ回して。
ひかりだっていい迷惑ですよ。
だいたいそんなに病院ばっかり入り浸ってる必要があるの?陽はひとヤマ越えたんだし。
べたべたと張り付いてなくてもよさそうなもんでしょう。
お母さん。
姉さんが病院に入り浸ってるのは何も陽のためってわけじゃないんですよ。
自分自身の先々のために根回ししてるんでしょ?根回し?
(愛美)この家にいられなくなっても慌てないようにちゃんと準備してるんです姉さんは。
何の話?準備って。
どうやってたらしこんだの?諏訪先生を。
相談してるらしいじゃない。
どっかで2人で暮らそうって。
さすがに抜け目ないわよね。
(波津子)諏訪さんと?
(峻)あっ…。
ごちそうさまでした。
(波津子)愛美さん。
ホントなの?その話。
(愛美)そのために諏訪先生辞表まで出したって。
そうなんでしょう?
(繁郎)確かに受け取った。
今日の今日。
諏訪先生はそのつもりであの辞表を?
(愛美)そういえば諏訪先生いつも姉さんに優しかったもんね。
そこにつけ込んで同情させたんじゃない?私とお兄さんのことを大げさに話して空涙でも流してみせて。
ホントなの?ホントに諏訪先生は。
確かに言われたわ。
ここを辞めて知り合いのやっている診療所へ行くつもりだって。
それだけじゃないでしょう?一緒に行かないかって。
陽を連れて。
陽を?
(愛美)ほら。
やっぱり。
いや。
でも私にとってはまったく寝耳に水だった。
そんなふうに思っていてくれたなんて今までただの一度も…。
(波津子)言い訳は見苦しいわよ。
聖美さん。
私はもうあなたが何をしようと驚かない。
何しろ夫のしとねへ妹を潜り込ませるような人ですからね。
このうちへ嫁にきたんだってはなっから計算ずくだったんだ。
足場がぐらついたらすぐに保身に走る。
それぐらいの裏工作は朝飯前でしょう?お母さま。
出ていきたかったらさっさと出ていけばいい。
愛美さん。
ひかりを離れへ連れてって。
はい。
(波津子)あなたには二度とひかりに触らせない。
今夜からひかりの世話は全て愛美さん。
あなたがやってちょうだい。
(愛美)喜んで。
さあひかりちゃん。
いらっしゃい。
そんな。
ひかり。
あなた。
私ホントに諏訪先生とは…。
どうせ僕が悪いんだろう?諏訪先生もそう言ってたよ。
ハァ…。
(弘明)珍しいですね。
やっぱり俺は根っからの駄目男なのかな。
弘明。
自分じゃ何にも決められない。
生まれてこの方てめえの意思で決めたことといったら聖美との結婚ぐらいだもんな。
だからって悪いこともないでしょう。
そこそこうまい具合に転がってるんだから。
どこが。
どっかで甘く考えてるんだ。
下手な手出しをして自分が火の粉をかぶらなくたって世の中なるようにできてるって。
聖美と愛美さんは同じ親から生まれた姉と妹だ。
今は火花を散らしてたっていずれはお互いに譲り合ってのみ込み合ってひかりのことも自然に解決していくんじゃないかって。
俺逃げてるのかな。
自分の周りだけバリアーで囲って自分だけは傷つかないように。
俺は最初からひかりは姉さんの子としか思っていない。
愛美が譲るべきなんです。
理屈はそうかもしれないけど。
聖美はうちを出ていく気だ。
陽を連れて。
しかもあの諏訪先生と一緒に。
はっ?成り行きに任せていたらどんどん周りの景色が変わっていく。
俺はただそれをぼう然と受け入れるだけ。
何とかしたくたってどうすることもできない。
あの雲みたいにただふわふわ流されていくことしかできないんだよ。
俺には。
(愛美)やーっ。
フフフ。
やっぱりきょうだいよね。
あんたが赤ちゃんのときとよく似てる。
最近ちっとも口利いてくれないのね。
分かってる。
私のこと怒ってるって。
でも嘘ついて生きていきたくないんだ。
たとえあんたにでも。
私繁郎さんのこと好きだからさ。
一緒にこの子のこと育てたいのよね。
ああ。
言っとくけどこれは自分の姉さんから旦那横取りしたとかそういう話じゃないからね。
好きにしたらいいよ。
母さんの。
(愛美)はい。
今日は何しましょうかねぇ。
そうだ。
何する?うん?ご機嫌ちゃんですね。
今日もカワイイひかりちゃん。
私のひかりちゃん。
フフフ。
ほら。
ほら。
ねんねする?カワイイのね。
・
(弘明)せっかく季節を待って咲いたのに。
弘明さん。
(弘明)いくら恨みの花だって気の毒だ。
私には最初からひかりの母親になる資格はなかったのかも。
ひかりを道具にしているのは愛美じゃない。
私の方だったのかも。
道具?陽のためにひかりを利用しただけ。
今私がひかりを置いてここを出ていったら本当にそうなってしまう。
やっぱり出ていくのか。
あんたをこの世の聖母と思ったのは俺の間違いだったらしい。
俺があんたを2人目の子の母親にしてやろうと思ったのは生まれてきた子を世界で一番幸せな子にしてくれると思ったからだ。
兄の命を救った感謝を一身に受け誰からも愛され祝福を浴び目の前にはいつも母親の優しい笑顔がある。
そういう子に育ててくれると信じたからだ。
それは私だって…。
あんたが本気でひかりを陽と同じわが子としていとおしんだとき母なるものと無縁に生きてきた俺の魂も救われる。
そう思った。
あんたの中に見たかったんだ。
おふくろってやつを。
弘明さん。
なのにあんたは認めちまった。
しょせんひかりはドナーベビーでしかなかったってことを。
認めたあんたは聖母どころか夜叉だ。
鬼子母神と一緒だよ。
鬼子母神?さらってきた子供を食らって己の糧とし血に染まった手で平然とわが子を慈しむ。
あんたは陽のためにひかりを食らったんだ。
あなたの言うとおりだわ。
愛せると思った。
陽と何の分け隔てもなくひかりに愛を注いで育てていけると信じてた。
でもそれはきっとただそう信じようとしていただけだったのね。
信じなければ前へ進めなかったから。
もし私自身が愛美の立場だったら…。
それさえ考えようとはしなかった。
だから言えたのよ。
生まれた瞬間に親子の絆を断ち切ってこっちへ渡せって。
みんな私のおごりだった。
見たくなかったね。
後悔の涙を流すあんたなんて。
中身のない張りぼてでもいい。
仮面をかぶった偽物の聖母でもいい。
生臭い女の顔を見せてほしくなかった。
私はあなたの夢まで打ち砕いてしまったのね。
許して。
やめろ!あんたはもう俺の女神じゃなくなった。
お待ちしてたわ。
聖美さん。
覚悟が決まったってことかしら?伺いましょう。
2014/05/21(水) 13:30〜14:00
関西テレビ1
聖母・聖美物語 #37[字][デ]【愛の母子篇〜鬼子母神】
柳沢家に居座り繁郎(原田龍二)や波津子(丘みつ子)から大事にされる愛美(三輪ひとみ)を前に聖美(東風万智子)は孤独感を深めていく。そんな聖美に声をかけたのは…
詳細情報
番組内容
聖美(東風万智子)は、諏訪(古山憲太郎)から陽(平林智志)と自分と3人で暮らすことを考えてほしい、と言われる。諏訪を男性として見たことがなかっただけに、戸惑うばかりの聖美だった。
諏訪から話を聞いたナースの百合子(佐藤康恵)は愛美(三輪ひとみ)にすべてを打ち明け、母屋や病院を混乱させる繁郎(原田龍二)への横恋慕をやめてほしい、と訴える。
番組内容2
百合子の言うことを黙って聞いていた愛美だが、家族がそろった夕食の席で聖美と諏訪のことを暴露。波津子(丘みつ子)は怒り心頭に発し、繁郎も聖美に冷たい視線を向ける。
出演者
柳沢聖美:東風万智子
森尾愛美:三輪ひとみ
柳沢繁郎:原田龍二
柳沢弘明:金子昇
柳沢波津子:丘みつ子
星川真輔:風間トオル ほか
スタッフ
企画:横田誠(東海テレビ)
原作・脚本:いずみ玲演
演出:吉田使憲
プロデュース:西本淳一(東海テレビ)
中頭千廣(TSP)
神戸將光(TSP)
齋藤頼照(TSP)
音楽:辻陽
主題歌:「炎の花」ハルカ ハミングバード(ユニバーサル ミュージック)
制作著作:TSP
制作:東海テレビ
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ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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