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お知らせ
本学の若山照彦教授が参加した研究論文がNatureに2篇同時掲載

   山梨大学生命環境学部生命工学科の若山照彦教授が理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーらと共同で研究を行い、その成果を論文2篇にまとめ、1月30日発行の科学雑誌Natureに2篇同時に発表しました。
   同研究では、分化した体の細胞を、従来のクローン技術(核移植)やiPS細胞作成技術(遺伝子導入)といった人為的な処理を行わず、より自然に近い簡単な方法で初期化することに成功しました。初期化された細胞は、ES細胞やiPS細胞と同じ多能性(体のすべての細胞へ分化できる能力)を有していることが証明され、STAP細胞 (stimulus-triggered acquisition of pluripotency)と名付けられました。
   詳しく調べたところ、驚いたことにSTAP細胞は、ES細胞やiPS細胞では不可能だった「胎盤への分化」も可能だったことから、これまで作られたどの種類の多能性幹細胞よりも受精卵に近い存在だと考えられます。

   Natureは科学雑誌の中で最も掲載されるのが難しく、Natureに論文を発表することは研究者の夢でもあります。そのNatureに2篇同時に掲載されるのは、世界的にも稀な快挙です。

   若山教授は「今回の研究成果は主に理化学研究所で挙げたものだが、山梨大学のライフサイエンス実験施設に最先端の実験を行える設備を整備できたので、これからは今回の成果を基に山梨大学で研究を推進し、Natureなどのトップジャーナルに成果を発表していきたい」と話しています。

掲載雑誌 
Nature (Article) 505, 641~647, 2014
Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency
Haruko Obokata, TeruhikoWakayama, Yoshiki Sasai, Koji Kojima, Martin P. Vacanti, Hitoshi Niwa, Masayuki Yamato & Charles A. Vacanti

Nature (Letter) 505, 676~680, 2014
Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency
Haruko Obokata, Yoshiki Sasai, Hitoshi Niwa, Mitsutaka Kadota, Munazah Andrabi, Nozomu Takata, Mikiko Tokoro, Yukari Terashita, Shigenobu Yonemura, Charles A. Vacanti & Teruhiko Wakayama

  
(A)                                                                         (B)

  
(C)                                                                         (D)

  
(E)                                                                         (F)
図1.STAP細胞を受精卵へ注入しキメラ胚を作製。
(A)新生児のリンパ球から作られたSTAP細胞。
(B)STAP細胞を直径約20マイクロメートル※のガラス管に吸い込んだところ。
(C,D)胚盤胞の中へガラス管を挿入し、STAP細胞を注入。
(E,F)STAP細胞を注入した胚盤胞。今回使用したSTAP細胞は、GFPマウス(体が緑色に光るマウス)から採取したため、STAP細胞も緑色に発色する。注入された胚盤胞の中に緑色のSTAP細胞が入っているのが確認できる。
※マイクロメートル:1マイクロメートル =0.001mm

  
(A)                                                                          (B)
図2.STAP細胞を受精卵に注入して作ったキメラマウス。
(A)STAP細胞を注入して生まれてきたマウス(写真下の赤ちゃん)は、体全体にSTAP細胞が分布しており受精卵由来細胞とのキメラになっているのが確認できる。緑色に光っている部分がSTAP細胞由来。上は対象区の普通の赤ちゃんで全く光らない。分化した体細胞が、クローン技術やiPS細胞技術を行わず、より自然な方法で初期化され、再び全身のすべての細胞へ分化できることを証明した写真。
(B)Aと同じ写真を普通の光で観察したもの。


図3.若山教授も参加した理化学研究所で行われた記者会見の様子。報道関係者が100名近く集まり、科学関係の発表としては非常に大規模な発表となった。

理化学研究所HP : http://www.riken.jp/

Nature HP : http://www.nature.com/nature/index.html (英文)