クローズアップ現代「戸籍のない子どもたち」 2014.05.21

誠に遺憾で速やかに控訴の手続きを行いたいとしています。
きょう午後開かれた記者会見。
出席者が驚くべき事実を告白しました。
戸籍も住民票もないこの女性。
公的にはその存在が認められていません。
住む場所も働く場所も限られ苦しい人生を歩んできました。
背景にあるのは母親が受けたDVドメスティックバイオレンス。
前の夫を恐れて新たなパートナーとの間に生まれた子どもの出生届を出せず無戸籍になってしまうのです。
こうした人が各地にいることが分かってきました。
支援団体には助けを求める声が相次いでいます。
無戸籍の15歳です。
でも学校には行ってないです。
私自身、証明するものがなく困っています。
長年、救われないまま無戸籍で生きざるをえなかった人たち。
解決に何が必要か考えます。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
戸籍がないことでどれほど厳しい生活を強いられ将来の希望まで奪われてしまうのか。
きょう、自分の存在を公に証明する手立てを持っていない32歳の女性が自分が体験してきた苦しみをほかの人に経験してほしくないと声を上げました。
自分の存在を証明できることが当たり前の社会の中で戸籍のない人々の苦しみに7年前一度、光が当てられましたがこの問題の根本的な解決や救済には至っていません。
このとき問題になったのは離婚後300日以内に生まれた子どもが前の夫の戸籍に入ることを余儀なくされるため出生届が出されず無戸籍になるケースです。
総務省によりますと毎年500人以上がこのような理由で無戸籍になっていることが確認されています。
さらに国が、その実態すら把握することができずにいる無戸籍の子どもたちが少なからずいることが新たに分かってきました。
これまで取り残されてきたのがDV・家庭内暴力を背景とした無戸籍の子どもたちできょう、声を上げた32歳の女性も、その一人です。
夫の暴力に苦しめられそこから逃れた妻はなかなか離婚することができないケースが少なくありません。
別居する間に新しいパートナーとの子どもを授かりその子どもが無戸籍になってしまうのです。
DVを背景としてどのように子どもが無戸籍になりそれが長期化するのか。
まずは、ある家族の例をご覧ください。
関西地方に住む20代のクミさんとその両親です。
自宅以外で会うことを条件に取材に応じてくれました。
クミさんには戸籍がありません。
16歳のとき、その事実を両親から告げられました。
クミさんに戸籍がない原因は母親が前の夫からDVを受けていたことでした。
酒に酔った夫から殴られたり割れたビール瓶で顔を切られたりしました。
殴られた左耳は今でも聞こえないといいます。
母親は命からがら逃げ出し行政に保護されました。
そのときの証明書です。
その後、仕事を通じて出会った真人さんとの間にクミさんが生まれました。
しかし、このときまだ離婚は成立していませんでした。
出生届を出すとクミさんは法律上、DVをした夫の戸籍に入ることになります。
このため、真人さんとの間に生まれた子どもだとして出生届を出しましたが結果は不受理。
クミさんは無戸籍になりました。
こうした無戸籍の人はどれくらいいるのか。
NHKは全国の県庁所在地など主要な自治体にアンケートを行い118か所から回答を得ました。
その結果、9割を超える自治体で出生届の受理に至らず無戸籍になった人がいたことが分かりました。
中でもクミさんの家庭のようにDVが背景にあるケースが深刻だという指摘が相次ぎました。
「DVに関わる問題で離婚届を提出するまでに何年もかかる」。
「前の夫に知られるのを恐れて無戸籍の場合が多い」。
今、20代のクミさん。
戸籍がないままで結婚や出産ができるのか大きな不安を抱えています。
しかし、クミさん一家にはどうしても戸籍の取得に踏み出せない理由があります。
クミさんが戸籍を得るには裁判を起こすなど法的な手続きが必要です。
一つは、前の夫と親子関係がないと証明する方法。
この場合前の夫の証言が必要です。
もう一つは、真人さんと親子関係があると証明する方法。
この場合も、今の法律では裏付けを取るため裁判所が前の夫に証言を求める可能性があります。
しかし前の夫は今も母親の実家の周辺に現れるなど執着心を持ち続けていると見られます。
再び暴力を加えられることを恐れて、クミさん一家は法的な手続きができないのです。
ご覧いただきましたように夫の暴力に苦しめられた母親にとって子どもを授かったことや居場所を知られることへの恐怖が強くなかなか裁判を起こすことができません。
そして結果的に生まれてくる子どもたちもDVの被害者になってしまうのです。
戸籍がない、存在を公に証明することができないことでどれほど厳しい生活に直面するのか。
きょう、声を上げた戸籍がないまま32年間、生きてきた女性はいくつもの夢を諦めてきたと話しています。
関東地方に住むヒロミさんです。
生まれてから32年間戸籍がありません。
ヒロミさんはDVをする夫から母親が逃げていたとき支えてくれた男性との間に生まれました。
母親は、その3年後ようやく夫と離婚。
ヒロミさんの実の父親とも別れ1人で育ててきました。
母親は行政に掛け合いヒロミさんはどうにか中学校までは通うことができました。
さらに戸籍を作ってほしいと母親は何度も行政に訴えました。
しかし生まれたときに離婚が成立していないので前の夫の戸籍に入るか裁判をするしかないと言われ諦めたといいます。
本人だと証明するものが何一つないヒロミさん。
運転免許を取ることができないため移動は自転車です。
仕事は6年前から始めたホテルでのアルバイト。
給与は銀行振り込みですが自分では口座を作れないため親戚の口座に振り込んでもらっています。
職場では、その親戚の名前を呼び名に使っています。
真面目な働きぶりが認められ正社員にならないかと誘われましたが戸籍のないことが分かると解雇されてしまうと思い断りました。
ヒロミさんはいくつもの夢を諦めてきました。
その一つが和食の料理人になることです。
19歳のときから5年間飲食店のちゅう房でアルバイトをしていました。
腕を見込まれ調理師の試験を受けるよう勧められましたがそのためには戸籍が必要だと知り断念せざるをえなかったのです。
アパートの契約もできないため友人の部屋に住まわせてもらっています。
携帯電話も友人に貸してもらっています。
健康保険証もありません。
高額な治療費がかかるため歯医者には一度も行ったことがありません。
「もうこれ以上無戸籍のままでは生きていけない」。
去年の秋、ヒロミさんは支援団体の存在を初めて知り相談しました。
この団体では戸籍のない人たちに弁護士を紹介するなどさまざまなサポートをしています。
困ったこととかあったらまた電話して、メールでもいいし。
7年前に活動を始めこれまでに500件を超える相談を受けてきました。
こんにちは。
ことし3月、団体の代表がヒロミさんのもとを訪れました。
伝えたのは弁護士が職権で調査した結果です。
そこには戸籍を作るうえで障害となっていた母親の前の夫の消息について予想もしなかった事実が書かれていました。
母親に暴力を振るっていた前の夫は2年前に死亡していたのです。
「もう恐れる必要はない」。
1週間後、ヒロミさんは弁護士のもとを訪ねました。
前の夫と親子ではないと証明する裁判を起こすことを決めました。
裁判に、どれだけ時間がかかるかは分かりません。
それでもヒロミさんは、一歩前へ踏み出せたと感じています。
今夜は家族に関する法律、そして無戸籍の問題にお詳しい早稲田大学教授、棚村政行さんと、そして取材に当たってきました社会部の上田記者と共にお伝えしてまいります。
棚村さんはこの問題、長く関わってこられて、子どもにはなんの罪もないのに、戸籍がないばかりに自分を偽って、社会の片隅で、ひっそりと生きなければならなかったこのヒロミさんのことば、姿、どのように捉えられましたか?
非常に重いですね。
人生のスタートラインに立って、そしてこれから何か始めようというときに、生きてるんだけども、自分は公的に存在を証明してもらえないと。
だから何をやっても本当に、生きててよかったのかっていう自信が持てない状態であることが、本当につらいことだと思います。
問題は本当に解消してないですね。
そうですね。
上田さんは、長い間、ヒロミさんの取材を続けてきたわけですけれども、きょう記者会見をして声を上げた。
どんな思いで、何を伝えようとしたんでしょうか?
やはりこれから生まれてくる子どもたちに、自分と同じような思いをさせたくないと、そういう思いが非常に強かったというふうに感じます。
ヒロミさんの場合、自分をとにかく証明するものというのが一切ない状態なので、それが本当に、不自由な生活につながっているんですね。
例えば今は、本当に本人の確認というのを求められる場面っていうのが、日常生活の中でも非常に多いので、ビデオ一つ借りるにしても会員証を作るのに、証明書が必要。
例えば夜中に少し友達とボーリングをしようと思っても、年齢を確認するために身元の証明を求められる。
そういったような、本当に日々の生活の中での不自由さというのを常に感じているということなので、とにかく普通に生きたい、同じような思いをしてほしくないという思いがあったと思います。
一体、ドメスティックバイオレンスが背景にあって、無戸籍になった人たちってどれくらいいると考えられているんですか?
国のほうでも、そのあたりの実態というのは全く把握していないんですね。
私が支援団体に取材しましたところ、年間およそ100件ぐらいの相談が寄せられるんですけれども、その8割から9割は、背景にDVがあるということでした。
今、すごくDVというのは、相談などが急増してまして、年間5万件というふうにいわれていますので、その中にはかなり無戸籍の子どもというのもいるのではないかというふうに感じます。
ただ、7年前に、この無戸籍の子どもたちの問題が取り沙汰されて、その窓口で住民票が取れたり、あるいはパスポートの取得ができるようにするというようなことも、進んだのではないかと思われていたんですけども、ヒロミさんの場合は、何も持っていないというケースもあるわけですよね。
自治体の意識、窓口の意識って変わったんですか?
正直、今も自治体の対応は本当に自治体によって、まちまちだというふうに取材していて感じます。
戸籍は国の事務でして、国のほうで運用してるんですけれども、住民票に関しては、自治体の裁量で作るということが可能なんですね。
そして7年前のときに裁判を起こせば、住民票を作っていいというようなルールもできたんですけれども、それが逆に足かせとなって、裁判を起こさないと住民票を作らないというふうな自治体もあれば、そこは柔軟に判断するというような自治体もあったりと、本当に対応がまちまちだと感じます。
それについて、全国の自治体の戸籍の担当者で作る団体があるんですけれども、そこの会長をしている千代田区長に、話を伺いました。
どうして、住民票だけでも作ることができないのかというふうに問うたところ、住民票については、子どもの視点に立って、自治体の判断で柔軟に運用することはできるはずだと。
全国の窓口での状況を把握して、前向きに議論していきたいというふうに話していました。
しかし、棚村さん、今回のVTRの1本目を見まして、大きな疑問として残るのは、ドメスティックバイオレンスで逃げてきた女性が、時間を経て、違うパートナーと子どもを産んだ場合、その子どもがいったん、前の夫の戸籍に入らないといけないという、ルールに、なぜなっているんですか?
これは明治時代の、120年以上も前に出来た家制度の下での結婚している夫が父親になると、こういうルールなんですけれども、あまりにも結婚が形式的に続いてたとしても、実体がなくなっていたり、離婚状態だったり、そういう事情を全く考慮しないで、父親を決めるルールというのが、もうはっきり言って時代遅れになってしまっているんですね。
そういうことが非常に大きな原因になっています。
そうですよね。
誰が父親か、誰が親なのかという、決めるルールが、非常に現在とは合っていない、今本当に、離婚も多いですし、再婚も多い中で、時代遅れになっている。
大人が子どもが生まれたあと2週間で、出生届を出して、それで戸籍が作られて、住民票が作られる。
大人の事情しだい?
そうですね。
結局、大人が、特に親が義務者になって届け出るんですけれども、なんらかの事情で、今回の場合、DVとかストーカー的なものもそうですし、親の事情でもって出生届を出さないと、子どもから出す道はありませんし、職権でもって、調査したうえで、それを作るということも自治体としても、窓口ではもう限界があると。
やっぱり根本的にルールや、届け出制度自体も、少し見直さないと、子どものためのやっぱり制度作りというのを真剣に考えないと、解決されないと、救済されないということになっています。
具体的にどういうふうにルールを変更すべきだとお考えですか?
まずやっぱり、離婚とか再婚とかが多くなってますので、再婚した場合には再婚の夫も父の可能性が非常に高いので、それも推定するルールの中に入れていくと。
あるいは新しいパートナーが、自分は親だというんで、一緒に暮らしているような場合も、養育費を払ったりしている場合も、そういう人もやっぱり、父親だというルールを、ほかの国ではどんどん作っていますので、日本もそういう形で、現実に適合するようなルール作りをする必要があると思います。
そしてその母親だけで、戸籍を申請するということはできないんですか?
フランスなんかもそういう制度を設けてるんですけれども、やっぱり子どものために、母親が出して、そして、子ども自身も一定の年齢になれば、出生届出したり、作れるような仕組みに改める必要があると思います。
毎年何百人もの無戸籍の子どもたちが、生まれているということを考えると、本当にそういうルールの変更が必要ですけれども、何が一番視点として、欠けていますか?
DVとかの対策もそうですし、戸籍の届け制度もそうですし、親子を決めるルールもお子さんのために、お子さんの視点に立って、制度作りをやはり、改めていくということを強調したいなと思います。
2014/05/21(水) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「戸籍のない子どもたち」[字]

日本人として生まれながら「無戸籍」となる人が毎年500人以上いる。背景にはDVや離婚の増加がある。中には30年以上無戸籍の人もいる。どうしたら救えるか考える。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】早稲田大学教授…棚村政行,NHK社会部記者…上田真理子,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】早稲田大学教授…棚村政行,NHK社会部記者…上田真理子,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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