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日本から飛行機で14時間。
アメリカ・フロリダ州の空港に一人の野球選手が降り立ちました。
川宗則選手です。
じゃあ行ってきます。
バイバイ。
今年大リーグ挑戦3年目を迎えました。
また目いっぱい野球がしたくてねみんなと。
うずうずしてるしね。
もう後がない中で春のキャンプに臨みました。
川選手はかつてプロ野球ソフトバンクのレギュラーとして活躍。
日本を代表する内野手の一人として2回の日本一に貢献しました。
更なる成長を目指して大リーグ挑戦を表明。
僕は野球人としてメジャーリーグに挑んでみたく…。
しかし待っていたのは厳しい現実でした。
球速160キロ近いボールに対応できず大リーグでの通算打率は2割台前半。
メジャーに定着できませんでした。
生き残りを懸けて挑んだ今回のキャンプにはいつマイナー行きを命じられてもおかしくない招待選手として参加。
出場機会を求めて本来の守備位置ではないポジションも練習。
大リーグの速球に対応するためトレーニングを繰り返しました。
キャッチャー行けピッチャーしろどこ行け代走行け。
はい。
行ってきます。
まさしく僕が目指すのはね…野球人生の全てを懸けて。
メジャー昇格を目指した3年目のキャンプに密着しました。
大リーグのキャンプが始まったアメリカ・フロリダ州。
タナカ〜!全米の話題をさらっていたのは今年ヤンキースに入団した田中将大投手。
キャンプ地タンパには連日大勢の報道陣が詰めかけていました。
タンパから車で30分。
同じフロリダの人気のないグラウンドで川宗則選手が練習していました。
5日後に始まるブルージェイズの野手キャンプに備えて一足早く現地入りしていたのです。
チームメートの多くが合流していないためキャッチボールをする相手はいません。

(取材者)おはようございます。
おはようございます。
ウェルカムトゥフロリダ。
大リーグに挑戦して3年目になる今シーズン。
カワサキ!はい!アリガトゴザイマス。
アイムグッドフィーリングアンドファンタスティックエブリデー。
川選手は正念場を迎えていました。
今回のキャンプにはマイナー契約の招待選手として参加します。
これから1か月半にわたって行われるキャンプやオープン戦の成績次第でメジャーに昇格できるかどうかが決まります。
いつマイナー行きを命じられるか分かりません。
何としても結果を残したい。
そう考えていました。
立場的には不安定だよね。
どこ行くか分からないから。
マイナー行くかメジャー行くかクビになるか。
すごい大変なとこなんだけども…。
勝負してる訳だから。
3年前大リーグに挑戦する道を選んだ川選手を待っていたのは厳しい現実でした。
1年目大リーグの速くて重いボールに力負けしシーズン終了後契約を解除されました。
2年目ブルージェイズに入団。
レギュラーの選手がケガをした時に入る交代要員として96試合に出場しました。
しかしバッティングでは1年目に続き結果を残せませんでした。
打率は2割台前半。
契約の更新はありませんでした。
主力選手が合流。
キャンプインです。
ここから本格的な練習が始まります。
集まったのは大リーグの第一線で活躍している選手を含む総勢60人。
そのうち開幕戦でベンチ入りできるのは25人だけです。
選手たちはこのキャンプの中で首脳陣からチームに必要か見極められます。
今のままではレギュラーになる事はできないと考えていた川選手。
このキャンプである事を目標に掲げていました。
手に2つのグラブを持っています。
一つは内野手用。
もう一つは外野手用です。
各選手定位置の守備に就きます。
川選手は日本時代からの守備位置ショートに入りました。
ノックを終えた川選手。
今度はサードに入ります。
10年ぶりにサードに挑戦します。
更に今度はセカンドへ。
ほとんどの選手が定位置から動かない中で川選手だけがポジションを移動しノックを受けていました。
レギュラーの座を勝ち取るためにたどりついた考え。
それは求められる役割は何でもこなし出場機会を得るという事でした。
キャッチャー行けピッチャーしろどこ行け代走行け。
はい行ってきます。
まさしく僕が目指すのはね…僕の中の一番の勝負はグラウンドの中に出る事グラウンド。
野球のプレーに携わる事。
これが今の一番の僕の仕事だしこれが一番勝ち残るためには大事。
大リーグのチームでベンチ入りできる選手は25人。
このうち野手は10人程度です。
レギュラーとして試合に出られるのは7人で交代要員は3人程度しかいません。
長いシーズンを戦う大リーグでは休養やケガの選手が出る事を考えて一人で複数のポジションをこなせる選手が求められています。
ユーティリティープレーヤーと呼ばれ欠かせない存在になっています。
しかし複数のポジションをこなすのは容易ではありません。
外野の練習でフライをうまく捕れません。
内野と外野では感覚が異なるため川選手は戸惑っていました。
内野の守備では大リーグならではの課題を克服するためにある捕球方法を試していました。
逆シングルとはグラブをつけている腕の反対側に飛んできたボールを逆手で捕る事です。
日本と違って天然芝の多い大リーグでは打球のスピードが極端に落ちる事があります。
そのためすぐさま送球できる逆シングルが求められる場面が少なくありません。
グラブの差し出し方に慣れていない川選手。
ボールをはじいてしまいます。
守備練習を終えたら休む間もなくバッティングの練習に向かいます。
ピッチャーが本番さながらの力でボールを投げるトレーニング。
バッターにとっては今の自分の状態を確かめる貴重な機会となります。
川選手が打席に立ちます。
思うようにボールが飛びません。
力負けしなかったのは1球だけでした。
いや速かった。
ピッチャー速かった。
打ちにいったけどね当たらんかったし前に飛ばなかったんでねどうしようかと迷ってますけど。
速球に対応できていないのには理由がありました。
速球を打つために大切な体の軸に修正すべき点があるというのです。
体の軸をまっすぐ保ち腰をきれいに回転させなければ力をうまく速球にぶつける事ができません。
川選手の場合肩が前に出て軸がほんの少し曲がっていました。
コーチからおなかを反るようにして軸をまっすぐ保てと言われました。
パワーとスピードへの対応。
川選手はその壁を乗り越えようと闘っていました。
やってやろうという気持ちがなかったらここに来てないと思うので。
僕は自分のできるプレーをねなんとか確率を上げていったりどんどんできるプレーを増やしていったりとかそういうのにトライしていきたいと思います。
川選手は野球に専念したいとキャンプ地のすぐ近くに家を借りました。
帰りました。
ただいま〜。
はいどうぞ〜どうぞ。
妻と子どもの3人暮らしです。
「絵で見てパッと言う英会話トレーニング基礎編」。
「読者の皆さんへ」。
あっそこはいいな。
まあこういう感じでねちょっと英語に…。
「初めまして」とか…。
「It’snicetofinallymeetyou」。
何やねんな。
これをいつも読んでる。
これを読んでるCDを車で流してる。
川選手は大リーグ挑戦を続けるかどうか迷った時期がありました。
おいしい?去年8月長男逸将君が誕生。
住み慣れた日本で子育てをした方がいいのではないかと思いました。
それでも夢を諦める事はできませんでした。
いくよ逸将。
かつてプロ野球のスタープレーヤーだった川選手が大リーグに挑み続ける訳。
それは日本では考えられないようなプレーをする選手が数多くいるからです。
この日の練習。
ピッチャー最高の栄誉サイ・ヤング賞を獲得した事があるディッキー投手が登場しました。
日本ではほとんど見かけないナックルボールの名手です。
川選手が打席に立ちます。
不規則に揺れながら落ちてくるナックルボール。
川選手は自分の打席が終わってもケージから離れません。
ディッキー投手のナックルボールをじっと見ていました。
せっかくここに来て野球してるんだしねやっぱり自分もうまくなるっていうので毎日やってるから。
少しでもうまくなりたい。
ティッシュ一枚でも。
ティッシュ一枚ずつでもうまくなりたい。
そのためにいつも考えてるしやっぱり野球が好きなんだよね面白いし。
オープン戦を翌日に控えたこの日。
開幕メジャー入りを目指す川選手にとって最初の試練がやって来ました。
野手が全員参加する紅白戦です。
首脳陣に向けてオープン戦での起用をアピールしなければなりません。
出場人数が多いため川選手に回ってくる打席は僅かに1回。
3回表川選手に打席が回ってきました。
ピッチャーも開幕メジャー入りできるかどうか当落線上に立っています。
ノーアウトランナー一塁。
初球カーブに手を出しません。
3球目。
速球でした。
レフト前ヒットで出塁。
ランナーも二塁に進めました。
速球にも軸を曲げずに合わせる事ができました。
開幕まで1か月余り。
オープン戦が始まりました。
ここから60人の選手がふるいにかけられ25人に絞り込まれていきます。
川選手にとっては一戦一戦が正念場です。
まず守備で試合に出るチャンスがやって来ました。
5回裏命じられたのはサードの守備。
ゴロを難なくさばき安定した守備を見せました。
2日後の試合今度はショートで先発出場。
3つのゴロをミスなくさばきました。
更に2日後のヤンキース戦。
今度は試合の途中から出場しショートに就きました。
7回表ヤンキースの攻撃。
2アウトランナー三塁。
体の右方向に飛んできた難しい打球。
キャッチ。
キャンプ中の練習の成果が出ました。
オープン戦序盤川選手はユーティリティープレーヤーとして首脳陣の期待に応えました。
ところがバッティングでは結果を出せないでいました。
7回表の打席。
初球ストレート。
セカンドゴロ。
見せ場を作れませんでした。
翌日結果を残せなかった選手に厳しい通告が言い渡されていました。
川選手と同じ招待選手の一人がマイナー行きを命じられたのです。
川選手が試合に出ていた僅かな時間に隣のロッカーにあった荷物は片づけられていました。
開幕まで3週間。
このころになるとオープン戦はレギュラー選手の調整が優先されるようになります。
招待選手が出場できるチャンスが減っていくため川選手も数少ない打席でアピールしなければなりません。
この日試合の終盤でようやく打席が回ってきました。
2点を追う展開。
首脳陣にアピールできる絶好の場面です。
しかし…速球を振り遅れてショートゴロ。
これで5試合ヒットなしとなりました。
このままでは開幕メジャー入りは果たせないかもしれない。
課題となっていた体の軸は曲がっていないか。
バットを振り確かめます。
この日も川選手はベンチスタートでした。
ブルージェイズがリードされていました。
試合中盤川選手が動きます。
グラウンドの外へ。
川選手はバッティングケージにいました。
いつ来るか分からない出番に備えて一人で打ち込んでいたのです。
しかしこの日もヒットは打てませんでした。
翌日。
試合が始まる5時間前。
川選手は球場に来ていました。
ここまで7試合ノーヒット。
もう後がありません。
ツインズを迎えたブルージェイズのホームゲーム。
試合は1点を争う緊迫した展開。
川選手は出場機会を待ち続けていました。
ブルージェイズ1点リードの8回表。
守備で出番が回ってきました。
サードに入ります。
その裏川選手に打席が回ってきました。
2アウトランナー一塁。
ピッチャーはマイナーで200個の三振を奪いメジャーに上がった期待の若手。
打ち返したのは150キロ近い速球。
バットを折られながらもヒットにしました。
練習で作り上げてきた軸の曲がらないフォーム。
執念が生んだヒットでした。
もうちょっと芯にブチッて当たればよかったけどね。
まだタイミングが遅れてたんだよね。
でもスイング自体が悪くないからね。
ヒットになったから。
打席にまず立つ事。
ピッチャーとのタイミング間合いを計る事。
結果が出る事。
それがまず一番大事。
シーズン開幕の3日後。
川選手はマイナーリーグの球場にいました。
オープン戦は全選手の中で最も多い26試合に出場。
しかしレギュラーを上回る活躍には至らなかったとメジャーへの昇格は持ち越されました。
シーズン中の昇格を目指してまた闘いが始まります。
転べばいいんです。
野球選手になりたかったのは将来の夢でなってからは毎日夢だもん。
たまらんよ。
毎日野球だもん。
今は夢を毎日見てる。
そういう感じがしますね。
川宗則選手32歳。
世界最高峰の野球の舞台でひたすら前を見て挑み続けます。
2014/05/22(木) 01:30〜02:15
NHK総合1・神戸
アスリートの魂・選「“最強の補欠”になる ブルージェイズ 川