クローズアップ現代「国家分裂は避けられるか〜緊迫 ウクライナ大統領選〜」 2014.05.23

ウクライナ東部を走る1台のトラック。
親ロシア派の住民らを支援する物資が、ロシアから国境を越えて運び込まれていました。

今月、住民投票を強行しウクライナからの独立を宣言した東部の親ロシア派。
大統領選挙の実施を阻止しようとしています。

背後ではロシアのある政党が暗躍していることが分かってきました。

過激な勢力が東西の対立をあおる中国民どうしさらには家族の間にまで亀裂が生まれています。

国家分裂の危機の中行われる大統領選挙。
国内の融和を訴える候補が支持を集めています。

ウクライナはどこへ向かうのか?現地からの最新報告です。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
汚職にまみれた政治を変えたいという市民によってウクライナの政権が倒されたのがことし2月。
よりよい国を求めた多くの市民の願いは置き去りになりウクライナでは混乱が続いていまして国家分裂の危機に直面しています。
事態打開の大きな鍵を握っているのが25日に行われる大統領選挙ですがウクライナ全土で実施されるかどうか不透明な状況です。
ウクライナで混乱がエスカレートしている大きな要因となっているのが過激な民族主義を掲げる2つの勢力が、西と東で激しく対立していることです。
東には親ロシア派。
ウクライナからの独立も視野に入れた自治権の拡大を主張して大統領選挙には参加しない構えを見せています。
この勢力は、州の政府庁舎などを占拠していまして今月11日には住民投票を強行し一方的に独立を宣言しています。
一方、大統領選挙を主導しているのがウクライナの暫定政権ですがウクライナ民族主義を掲げる右派セクターが影響力を持っています。
親ロシア派と右派セクターという対立する2つの勢力。
どちらも武力で憎悪をあおり大多数の市民の支持を得ているとはいえない状況です。
注目されるのが親ロシア派に対するロシアの姿勢です。
プーチン大統領はクリミア半島の編入を決めたときと違って親ロシア派に対しては距離を置き自制を促しています。
しかし勢いを抑えることはできていません。
国家分裂を避ける鍵。
ウクライナは大統領選挙を実施できるのか。
初めに、選挙をボイコットするとしている親ロシア派の強気の姿勢の背後です。

ウクライナ東部、ドネツク。
親ロシア派の住民らが東部の権限拡大を求めて州政府庁舎の占拠を続けています。
親ロシア派の代表プシリン氏です。
今月11日に住民投票を強行し東部の独立を一方的に宣言。
これを受けて大統領選挙は実施しないと主張しています。

ウクライナ東部で勢いを増す親ロシア派。
なぜ大規模な活動を続けることができるのか。
背景には、ロシアのさまざまな勢力の支援があると見られています。
中でも強い影響力を持つとされるロシアの政党があります。
州政府庁舎にひときわ高く掲げられた赤い旗。
ロシアの政党「祖国」のものです。

「祖国」は何を狙っているのか。
今月初め、モスクワにある党本部を訪ねました。
「祖国」は旧ソビエト諸国の再統合を掲げる政党です。
プーチン政権に副首相を送り込むなど影響力を持っています。
3月のロシアによる一方的なクリミアの編入。
このときも「祖国」はクリミア自治共和国の首相を陰で支えていました。
幹部の一人、ビリュコフ氏です。
クリミアに続いてウクライナ東部の編入をプーチン大統領に働きかけることが目標だといいます。

われわれの目的はソビエト崩壊でバラバラになった領土と住民を再統合し取り戻すことです。

「祖国」は、この1か月以上東部の編入を目指し活動を続けてきました。
ロシアから送り込まれたこの人物。
東部の住民投票の実施を支援し続けてきました。

ドネツクに向かう1台のトラック。
「祖国」がロシアで集めた物資を積んでいます。
ウクライナの国境警備隊を買収し検問をくぐり抜けてきました。
到着したのは親ロシア派が占拠するドネツクの州政府庁舎でした。
食糧や迷彩服防弾チョッキなどの物資を週に2度、届けてきました。
さらに、メディアを通した宣伝活動にも力を入れています。
ロシアから物資が届く様子を撮影。
親ロシア派が占拠したドネツクのテレビ局で繰り返し放送しています。
ロシアが東部の住民の後ろ盾となっていることを印象づけるねらいです。

親ロシア派を支援しているのはこうしたロシアの政党だけでなく愛国的なグループや元情報機関職員などさまざまな勢力が含まれていると見られています。
国際社会はウクライナ東部の混乱にロシアが関与していると非難。
ロシアへの経済制裁を一段と強めています。
こうした中、プーチン大統領は親ロシア派の動きを抑えようと住民投票の延期を呼びかけました。

しかし親ロシア派はこれに従わず、住民投票を強行。
参加しない市民も多く不正行為も伝えられるなどその正当性が疑問視されました。

親ロシア派の代表プシリン氏は一方的にウクライナからの独立を宣言。
ロシアに編入を求めていくと表明しました。
今、ロシアの政党「祖国」は東部で大統領選挙を阻止する活動を活発化させています。
各地に出向き協力者を着実に増やしています。

州の数百か所で道路を封鎖。
選挙の実施を目指す暫定政権の侵入を阻もうとしています。

親ロシア派の背後でうごめくロシアの勢力。
東部での大統領選挙の実施は不透明さを増しています。

今夜はウクライナ情勢、そしてロシア政治がお詳しい、東京財団研究員の畔蒜泰助さんにお越しいただいています。
親ロシア派の勢いの裏には、ロシアの政党の支持があった。
プーチン大統領は、この親ロシア派から距離を置いているとはいわれているんですけど、本当に関与していないんですか?
まず「祖国」という政党なんですけどもこの政党は、副首相のロゴージンという人と関係が深いといわれている政党です。
ただし、例えば先ほどのクリミアのシナリオ、つまり、編入をするというシナリオですね、これをじゃあ、プーチン大統領、クレムリン、東部でも全く同じことを考えてるかというと、そもそもクリミアとやはりウクライナ東部は、歴史的経緯も違いますし、戦略的な文脈も違いますので、そこは必ずしも、プーチン大統領がそこが同じことをやろうということは考えてないと。
そういう意味では、一定の距離があると。
ただし、今のウクライナの東部の人たちの動き、さらにこの「祖国」の動きを一応黙認をしていると、そういう状況だと思いますね。
今のリポートにもありましたけど、親ロシア派が住民投票を行って、一方的に独立を宣言をしたと。
当初、プーチン大統領はその住民投票の延期を求めましたけれども、結果がいったん出ると、それを追認をするという、非常にあいまいな姿勢を見せた。
ねらいをどう読んだらいいんでしょうか?
実は、このプロセスをよーく見てみると、必ずしも追認ということではなくて、プーチン大統領、あるいはクレムリンが発したメッセージは、この結果を尊重するってことなんですね。
尊重?
尊重。
つまり、今のウクライナの東部の人たちは、西の、西部の人たちが代表している、今の暫定政権の行動、あるいは政策に対して、要するに不満を持っていますよと。
その声を上げさせると。
その声は、ちゃんとロシアも尊重するし、ということはすなわち、ウクライナの暫定政権も、この声をちゃんと尊重しなさいよということの意味合いだと思います。
ただロシアとしては、暫定政権はどちらかというと、ヨーロッパ寄り、アメリカ寄りといわれている中で、やはり親ロシア派が勢いが続くことのメリットは感じていないんですか?
そうですね。
彼らとしてはですね、今のウクライナの東部の人たちの、この声を最終的には政治プロセスの中に取り込んで、このウクライナ東部の人たちの、つまりウクライナ東部の人たち、基本的に親ロシア派の人たちですので、ウクライナ東部の人たちの声を取り込む形で、最終的にはロシアの利害をそこに反映していく。
例えば、やはりEUへの加盟であるとか、特にもっと重要なのは、やはりNATO、つまり安全保障問題に直接関係のあるNATOへの加盟、ウクライナのですね、これを阻止するというところが、最終的なロシア側のねらいだと思いますね。
ただ、そうした過激派を黙認することによって、武力によって憎悪が増幅していく感じだと、本当にコントロールできない事態になるのではないかというリスクもありますよね。
ありますね、それは。
そういう意味で、やはり今ですね、クレムリンとしては、5月の25日に行われるウクライナの大統領選に真っ向から反対するという、実は立場は取っていないんですね。
大統領選挙に真っ向から反対していないと。
さあ続いてご覧いただきますのは、暫定政権に対して、影響力を持っている民族のその過激派、右派セクターです。
この右派セクターから大統領選挙に出馬しているのが、代表のヤロシ氏です。
このほか、大統領選挙に立候補している主な候補の中には、欧米重視の元首相、ティモシェンコ氏、そして欧米重視しながら、ロシアとの関係改善を目指す元外相のポロシェンコ氏がいます。
市民たちは大統領選挙に何を託そうとしているのか。
首都キエフで取材しました。

先週、首都キエフで一人の若者の葬儀が行われました。
29歳の男性は東部、親ロシア派に抗議する運動に参加し殺害されたといいます。
参列者たちは武力に訴える親ロシア派に怒りを募らせています。

西部で高まる親ロシア派への反発。
大統領選挙では、元首相のティモシェンコ氏をはじめほとんどの候補者が親ロシア派やロシアと対じする姿勢を鮮明にしています。

より過激なグループも候補者を立てています。
右派セクターと呼ばれる組織はウクライナ民族主義を掲げ敵国ロシアと戦うと宣言。
一部の市民の間で支持を集めています。
今月2日、南部のオデッサで親ロシア派が立てこもる建物が火事となり40人以上が死亡しました。
親ロシア派は、事件に右派セクターが関わっていたと主張。
対立がエスカレートしています。
私たちは、キエフ郊外にある右派セクターの拠点を取材することができました。
配備されていたのは、装甲車。
親ロシア派の武装集団からの攻撃に備えるためだといいます。
さらにメンバーも武装していました。
彼らを兵士として訓練し東部に送り込むとしています。
右派セクターから大統領選挙に立候補している代表のヤロシ氏は東部に介入するロシアと戦い続けるといいます。

われわれはウクライナの民族主義者としてウクライナ人を信じています。
わが国の主権を守るために断固として戦いますし実際、すでに戦っているのです。

ウクライナの東西で対立が深まる中多くの市民は危機感を抱いています。
ロマン・スビリーパさんです。
キエフにある車のオイル販売会社で営業を担当しています。
ロマンさんは、ことし2月前の政権を倒すデモに参加しました。
汚職にまみれた政治を変えウクライナをよりよい国にしたいと考えたからです。
しかし、それから3か月希望は失望へと変わりました。
東部では販売や営業活動がほとんどできなくなり会社の売り上げは大幅に落ち込んでいます。
さらに、東西の対立はロマンさんの家族にも亀裂をもたらしています。
東部に住む親戚からはロマンさんたちが前の政権を倒したことが混乱を招いたと非難され話すらできない状態が続いています。

親戚からつきあいを拒否されています。
東部にある故郷にも来るなと言われました。
こんなことになってしまいとても残念です。
私たちは、もともと一つの国で共に暮らしてきました。
人も経済もつながりがあり一体なのです。

国の分裂に危機感を強める市民たち。
その多くが期待を寄せる候補が元外相のポロシェンコ氏です。
最新の世論調査で30%を超える支持を集め最有力候補と見られています。
ポロシェンコ氏が訴えているのは“一つのウクライナ”です。
選挙で当選すれば東部の代表者も新たな政府に参加させると主張しています。

国内の融和を求めるロマンさんも、ポロシェンコ氏に大きな期待を寄せています。
これまでロマンさんは国内がさらに混乱し内戦が起きるような事態になれば外国に避難せざるをえないと考えてきました。
しかし今は大統領選挙でポロシェンコ氏に最後の望みを託したいと考えています。

重要なのは今のウクライナに流血の事態がなくなり平和が訪れることです。
大統領選挙で国の指導者が選ばれ新たな歴史の出発点になってほしいと強く願っています。

ロマンさんの声を聞きますと、政権を、果たして市民の思いが本当に踏みにじられているというのが伝わってきますね。
そうですね。
彼らですね、今、この東部の状況を安定化させるためにも、やはりこの右派セクターのこの動きをなんとか止めなきゃいけないということなんだと思うんですよね。
暫定政権がこれまで取ってきた姿勢っていうのは、そうではないですよね。
そうですね。
明らかに今の暫定政権の取ってきた姿勢というのは、ウクライナ東部の親ロシア派の人たちをテロリストと呼んで、対話のプロセスに組み込んでいっていないというところが最大の問題なんだと思うんですよね。
そういう意味で、今度の5月25日の大統領選なんですが、これがまずちゃんとできるのかどうかというところが、一つの大きなポイントだと思います。
できますか?
そうですね。
やはり今のウクライナの東部の親ロシア派の人たちがコントロールしてる部分に関しては、もしかしたらできないかもしれませんが、それは、あとの地域では、一応、このちゃんと成立する形のプロセスは作れるんだろうということだと思います。
恐らくですね、この勝者はポロシェンコ氏になるんだろうと。
でですね、このポロシェンコ氏が一番最初にやらなければいけないのは、先ほどのウクライナの東部の親ロシア派の人たちを含めた直接対話というところなんだと思うんですよね。
そういう意味で実は、ヨーロッパが、実はこの直接対話のプロセスというのを提案をして、ロシアもそれを一応、支持をしていると。
ここですね、この円卓会議というものですけれども、このプロセスを支持する形で、今、実は対話は始まっているんですね。
で、順番がちょっと逆にはなってしまっていると思うんですけども、やはりこの円卓の会議を、対話をやることで、やはり、この東部と西側の融和を進めていくということだと思いますね。
それにしても、東には過激な親ロシア派がいて、そして西には右派セクターがいて、人々が翻弄されていると。
こうした構図の中で、ウクライナの人々にとって、どちらが、コントロールするのは、どちらのほうが難しいんですか?
そうですね。
やはり両方難しいんだと思うんですけれども、やはり、この東はロシアが後ろにいると。
西は実は特にこの右派セクターのような人たちの後ろには、後ろというか、彼らの動きを黙認しているのは、実はアメリカがこれを黙認してしまっているという意味で、実は先ほどの欧州の直接対話に向けた円卓対話の後ろには、実はドイツがいるということで、ドイツはロシアともエネルギーで関係が深いということで、しかもポロシェンコ氏は、実はドイツとも関係が深いということで、できればこのポロシェンコ氏が大統領選になったあとのプロセスで、うまく着地点が見えてくればなと思います。
きょうはどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
2014/05/23(金) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「国家分裂は避けられるか〜緊迫 ウクライナ大統領選〜」[字][再]

今月25日予定のウクライナ大統領選挙。親ロシアと反ロシアそれぞれの勢力の動きが活発化し、憎悪の連鎖が起きている。分裂の危機に直面するウクライナ情勢の最新報告。

詳細情報
番組内容
【出演】東京財団研究員…畔蒜泰助,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】東京財団研究員…畔蒜泰助,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:8604(0x219C)