=?ISO-2022-JP?B?GyRCRVpNSyVvJSQlSTdgPmwhVjghO3YhJkQrRnxGYE1UO1ItLyEhMGU7VSF1OCE7diFBIzIkRCRONGkkcjt9JEQ9dyEqIVcbKEogMjAxNC4wNS4yNA==?

お父さん今まで本当にありがとう。
私お父さんの娘に生まれてきて本当に幸せでした。

(斎場の音楽)
(岩村健一郎)夏美しっかりしろ。
俺たち葬儀屋が式を進めていかなきゃならんのにお前が泣いてどうする。
(岩村夏美)ごめんなさい。
でも…。

(滝口明久)あの…故人とはお知り合いだったんですか?あっいえ…。
僕医者なのでこういった場に来る事が多いんですけど葬儀屋さんが泣くのを見たのは今日が初めてです。
すいません。
私子供の頃から涙もろくて。
以後気をつけます。
(明久)あの…。
お名前伺ってもいいですか?岩村夏美ですが。

(朝日奈耀子)あああの涙もろい葬儀屋さん?
(宮崎礼子)そうそう岩村夏美さん。
この間話したじゃない。
うん。
お父さんの葬儀屋さんで働いてるんだけどお葬式の最中ももう何度もお父さんから泣くな泣くなって怒られてたのよ。
ご遺族の気持ちに寄り添って涙を流す葬儀屋さんって素敵よね。
でねその夏美さんの涙にひと目惚れをしたお医者さんが正式にプロポーズしたんですって。
でもねご両親が葬儀屋さんの結婚とは反対してるって噂なのよ。
そう…。
幸せになるといいわね。
(滝口道代)私たちの了解もなしに入籍した!?
(道代)あなたたち一体何考えてるのよ!
(明久)誰がなんと言おうともう決めたんだ。
どうして父さんも母さんも夏美との結婚を認めてくれないんだよ?
(滝口信夫)明久!お前院長の娘さんとの縁談が進んでいるんじゃなかったのか?そんなのとっくに断ったよ。
なんだと!勝手なまねをして!明久あなたはね人の命を預かる立派なお医者さんなのよ。
それなのによりによって葬儀屋さんの娘だなんて!
(明久)そんな古臭い事今時誰も気にしないって。
(滝口)とにかく駄目と言ったら駄目だ!岩村さん悪いがこの件は諦めてくれ。
お義父さん…。
(滝口千賀)そういう事…。
わかったわ。
夏美さんあなたうちの財産狙ってるんでしょう?姉さんまでなんて事を言うんだ!あら私はみんなが思ってる事を代弁しただけよ。
これ以上話しても無駄だ。
夏美行こう。
明久!あの女ただじゃおかないから!道代!あの後妻さんまるで夏美を殺しちゃいそうな勢いね。
(滝口悟朗)後妻の連れ子もこれで親父さんと決裂してくれたらいよいよ俺の天下だな。
お前は向こうで休んでろ。
お父さんどうして明久さんとの結婚認めてくれなかったの?あんな家に嫁いだってお前が苦労するだけだ。
そういえばお父さん前から言ってたよね。
滝口家の息子とだけは付き合うなって。
私が生きてるせいでみんなが不幸になってく…。
夏美こんな時に何を言うんだ?
(道代)ちょっと!明久を嘘の涙で落としておきながらこんな時に涙ひとつ見せないなんてあなた一体どういう神経してるの!?お義母さん!入籍した直後に明久が事故で死ぬなんて本当怪しいもんよね!千賀さんは私が明久さんを殺したとでもおっしゃるつもり…。
そうよ!あなたが殺したも同然でしょ!あなたが明久に変な色目を使わなければこんな事にならなかったのよ!これで滝口家の財産が手に入るとでも思ったら大間違いよ!あんたなんかには一銭も渡さないから!いい加減にしてください。
ここをどこだと思ってるんですか?あなたは黙ってて!さてはあなたたち親子滝口グループの乗っ取りを狙ったグルって事?なんですって!?私はなんと言われても構わないがただしご霊前での無作法はご遠慮願いたい。
(近藤朱里)皆さん落ち着いて。
もういい加減にしてください!夏美さん行きましょう。
朱里さん私悔しい。
このままじゃ明久さんがかわいそうすぎる。
夏美さん…。
変な事考えちゃ駄目よ。
ああ…。
バカな事はやめて!はっ…。
次の被疑者は?
(大山聡)はい。
総合商社滝口開発グループの社長夫人滝口道代が殺害された事件で殺人と放火の容疑で逮捕された滝口夏美です。
被害者とは義理の娘にあたります。
警察の取り調べに対し2週間前に事故死した医師で夫の滝口明久との結婚をめぐって義母の滝口道代と激しく対立していた事は認めていますが殺害については否認しています。
「滝口夏美岩村成城葬儀社の社長岩村健一郎の養女で実の両親は既に他界」ビーズ?これからあなたの取り調べをする検事の朝日奈です。
まず名前と生年月日を言ってください。
滝口夏美昭和58年1月26日。
住所は?世田谷区成城中央6の5エスポワールマンション403。
職業は?父が経営している葬儀社で働いています。
これからあなたの被疑事実について取り調べをします。
ただしあなたには黙秘権がありますので言いたくない事は言わなくて結構です。
伺います。
あなたは滝口道代さんを殺害しましたか?いいえ。
私は道代さんを殺していません。
いつまでこんな取り調べが続くんですか?早く釈放してください!あなたの処分は捜査をした上で判断します。
今月3日の夜なぜ事件のあった倉庫にいたんですか?道代さんから話があるからすぐ来るようにとメールで呼び出されたんです。
(夏美の声)でも待ち合わせ場所に行ってみると道代さんの姿はどこにも見当たりませんでした。
お義母さん…夏美です。
(夏美の声)それで諦めて帰ろうとしたら突然火の手が上がって…。
道代さんとは会えなかったんですね?はい。
あとで刑事さんに言われて倉庫の中に道代さんがいた事を知ったんです。
携帯電話に残っていたメールにはどんな用件で呼び出したのかは書かれていませんでした。
道代さんはあなたを呼び出してなんの話をするつもりだったのでしょう?さあ…。
2週間前に主人が亡くなってから道代さんから…。
滝口家から籍を抜いて実家に帰りなさい!
(夏美の声)そう言われ続けてました。
だから多分その事だと思います。
明久さんとの結婚を反対されていた理由はなんですか?わかりません。
ご主人は入籍して3日後建設現場から崩れ落ちた鉄板の下敷きになって死亡していますね。
私たちの結婚には誰も賛成してくれませんでしたが時間をかけて理解を得てから式を挙げようと入籍だけして2人で暮らし始めたんです。
でもまさかあんな事になるなんて…。
あなたのお父さんも結婚に反対なさっていたんですか?ええまあ…。
検事さんいくら取り調べても無駄ですよ。
私は道代さんを殺していません。
だから早く釈放してください。
道代さんの遺体のそばに落ちていたこのビーズの小物について何か知りませんか?それは…私のものです。
申し訳ありません。
そのビーズは私が落としたものです。
私が…道代さんを殺しました。
ではどうやって道代さんを殺害しましたか?それは…倉庫の下にあった鉄パイプで殴って…。
何回殴りましたか?覚えてません。
倉庫に放火したのもあなたですか?はい。
滝口夏美急に犯行を認める供述を始めましたね。
うっ…。
夏美は本当に道代を殺害したんでしょうか?自分の父親が結婚に反対していた事を追及されると明らかに動揺していました。
このビーズの写真を見て夏美は供述を変えた…。
まず現場に行きましょう。
(渡辺刑事)犯人はここにあった鉄パイプを使って滝口道代を殺害したと見られます。
階段のところどころに血痕のようなものが付着していますね。
(渡辺)鑑定の結果血痕は滝口道代のものと判明しました。
だとすると被害者はここで襲われたあと階段を上がって逃げていったという事になりますね。
殺害現場は4階…。

(西村刑事)こちらです。
検事滝口道代の遺体はここにありました。
死因は脳挫傷。
凶器に使われた鉄パイプなんですが表面が焼け焦げていて指紋の採取は出来ませんでした。
女性の力でも持てなくはないけど重いわね。
1メートルの単管パイプですから約3キロあります。
解剖所見では被害者の頭部には鉄パイプで殴打された痕が2か所。
ああ…。
バカな事はやめて!遺体のそばにビーズの小物が落ちていたのね?はい。
これがそのビーズです。
これの写真を見て夏美は急に供述を変えた…。
私が…道代さんを殺しました。
このビーズ熱で溶けて変形していますがひまわりでしょうか?この状態だと指紋の検出は無理ね。
山さんこれが夏美のものかどうか調べて。
わかりました。
至急確認します。
東京地検の朝日奈です。
この度はご愁傷さまでした。
道代の夫の滝口です。
ああどうぞ。
失礼します。
いやぁいまだに信じられません。
まさか嫁が妻を殺しただなんて。
(ノック)はい。
(千賀)失礼します。
こちら長女の千賀とその夫の悟朗です。
2人ともうちの役員をやっています。
亡くなってしまった明久と比べると大して役には立ちませんがね。
ちょっとお父さん!相変わらず厳しいなぁお義父さんは。
それで検事さん今日は何を調べにいらしたんですか?亡くなられた道代さんですが明久さんと夏美さんの結婚になぜ強く反対されていたんですか?明久は将来を嘱望された優秀な外科医でした。
それが突然葬儀屋の娘さんと結婚したいなんて言い出したんですからね。
他に理由はありませんか?何か結婚に反対するような別の問題があったとでも言うんですか?そんなものはありませんよ。
第一私岩村さんに会った事もないんですから。
では道代さんは夏美さん以外に誰かとトラブルを抱えていたような事はありませんか?
(咳)待ってください検事さん。
道代さんを殺した犯人は夏美で決まりじゃないんですか?いいえまだ捜査中です。
そういえば道代さんお義父さんとよく揉めてましたよね?
(悟朗)結婚する23年前まで銀座のナンバー1ホステスだった道代さんは当時からわがままで金遣い荒かったらしいし。
(滝口)財産狙いで千賀と結婚してから仕事もろくにしないでギャンブルざんまいのお前にそう言われちゃ俺もおしまいだな。
夏美って私たちの反対を押し切って入籍しただけじゃなく明久が死んだあとも滝口家に居座ろうとしてるんですよ。
どう考えたって財産目当ての夏美が犯人でしょう。
明久君を涙で誘惑しておきながら葬儀では涙ひとつ見せないなんてかわいい顔して腹黒いんだよな。
(千賀)ひょっとすると夏美って道代さんだけじゃなく明久も殺したんじゃないの?
(滝口)おい千賀!それは言いすぎだろ。
(咳)すいません。
風邪気味なんで。
では最後に。
これに見覚えはありませんか?
(滝口)いいえ。
これって女の子が遊びに使うビーズですよね?こんな貧乏くさいもの見た事ないな。
そうですか。
(携帯電話)はい朝日奈。
例のビーズについて調べたところ滝口夏美はビーズでアクセサリーを作るのが趣味でした。
中でもひわまりのネックレスは普段からよく身に着けていたそうです。
そう。
ありがとう。
お仕事中申し訳ありません。
岩村さんはいらっしゃいますか?どちら様ですか?東京地検の朝日奈と申します。
岩村さんならもうすぐ帰ってくると思いますけど。
検事さん夏美さんの事でいらしたんですよね?失礼ですが夏美さんとはどういうご関係なんですか?岩村さんのところにお料理をお届けしている近藤朱里といいます。
私は夏美さんと歳も近いし似ているところも多いので姉妹みたいにお付き合いさせてもらってます。
そうですか。
どうぞ。
失礼します。
突然ですが…。
これを見た事はありますか?ええ。
夏美さんご主人の告別式が始まる前に棺の中にこっそり入れてました。
では夏美さんはこれを誰かにあげませんでしたか?私も夏美さんにビーズのアクセサリーをもらった事がありますけどその時はひまわりではなくスイカでした。
そうだったんですか。
朱里さんは夏美さんがお父さんに結婚を反対されていた事はご存じだったんですか?ええ。
あんなに2人が険悪なのは見た事がなくて。
それまでの2人は血の繋がった本当の親子以上に仲がよかったんですよ。
ではお二人が実の親子でない事もご存じなんですね?ええ。
確か夏美さんが言ってました。
岩村さんは夏美さんの命を二度も救ってくれた恩人だって。
命を二度ですか?詳しくは知りませんが夏美さんの実のお父さんが亡くなった直後にお母さんが夏美さんを連れて心中しようとした事があったそうです。
心中ですか。
その時夏美さんを助けたのが岩村さんなんです。
朱里ちゃんいつも弁当悪いね。
いえ。
岩村さんこちら東京地検の検事さん。
夏美さんの事でお話を伺いに来ました。
そうですか。
(岩村)どうぞ。
ありがとうございます。
なぜ夏美さんの結婚に反対なさったんですか?あんな金持ちの家に嫁いでも苦労するだけですよ。
まあ夏美にしてみれば血の繋がらない私といるよりセレブな連中のほうに魅力を感じたんでしょうけどね。
他に理由はありませんでしたか?検事さんあいつは命の尊さを一番よくわかってる。
だから人殺しなんか絶対出来っこない!お願いです。
どうか助けてやってください。
先ほど朱里さんから伺いましたが夏美さんは岩村さんに二度命を救われたと話していたそうです。
命を救っただなんて…大げさですよ。
夏美と初めて会ったのは23年前…。
女手ひとつで生きる事に疲れた菊枝が夏美を連れて私の前に突然現れたんです。
(菊枝)夏美お腹がすいたのね?今何が一番食べたい?ええとね…夏美お寿司が食べたい。
お寿司…。

(岩村)お通夜に行けば振る舞い寿司にありつけると考えた菊枝は夏美を連れて私のいるお通夜の会場に紛れ込んできました。
私は2人の様子を見て関係者に見つかって騒ぎになる前に別室へとかくまいました。
遠慮しないでたくさん食べなさい。
うわーい本物のお寿司だ。
いただきます!ごめんね。
ごめんね夏美…。
ごめんね…。
(岩村の声)それから私たち3人は一緒に暮らし始め私は菊枝と結婚しました。
菊枝は間もなく病に倒れ亡くなりましたが私に夏美という宝物を残してくれました。
私は夏美の命の恩人なんかじゃない。
むしろ私のほうこそ夏美から生きる力を与えられた気がします。
(岩村の声)夏美は小さい頃から体が弱くて家にこもってものを作るのが好きな子でした。
だから夏美が自転車に乗れるようになりたいと言った時は本当に嬉しかった。
あっあっ…。
あっ!夏美大丈夫か?痛いよ…。
夏美…。
自転車はねたくさん転んだほうが上手になるんだ。
ほら涙をふいてもう1回チャレンジだ。
うん。
(岩村)ようしその調子だ!夏美お父さんずっと支えてるからな。
うん。
やったー!夏美やったぞ!そんな夏美もあっという間に大きくなって私のもとから巣立っていきました。
まあ娘にとっての父親なんてのはそんなもんでしょうけどね。
お二人が持っているものは?ビーズで作ったひまわりです。
小さい頃からつらい経験をしてきたせいか夏美はとても涙もろい子でした。
だからいつでもひまわりのような笑顔でいられるようにと夏美が作ったんです。
(夏美)これは夏美の。
これはお父さんの。
えー?お父さんにも作ってくれたのか?うん。
だってお父さんこの間泣いてたでしょ?お母さんが死んじゃった時。
夏美…!夏美さんからもらったビーズのひまわりは今でも持ってらっしゃいますか?ええ。
それが仕事用の鞄に付けていたんですが最近どこかで落としてしまったようなんです。
これではありませんか?検事さん一体これはどこで?今月3日の夜どちらにおられましたか?その夜は家で1人でいました。
警察にもそう話しました。
道代さんが殺された日の事ですよね…?
(礼子)父と娘で自転車の練習か…。
なんだか懐かしいわね。
礼子さんもお父さんに乗り方教わったの?うん。
検事自転車は父と娘の絆の象徴なんですよ。
父と娘の絆の象徴ね…。
ええ。
そうおっしゃる検事もお父様から自転車の乗り方を習ったんじゃありませんか?ええ。
父が作った自転車の5か条っていうのがあってね。
自転車5か条?なんなんですか?それは。
スピードを出しすぎない。
歩行者には気をつける。
曲がり角ではいったん止まって左右を見る。
暗くなったらライトをつける。
ええとそれと…なんだっけ?何?それ…。
まあとにかくその5か条を言わないと自転車に乗せてもらえなかったの。
おまけに前だけじゃなくて後ろにまでライト付けられて蛍光テープベタベタ貼ったヘルメットまで被らされた。
いやぁ実に素晴らしい。
検事のお父様とは気が合いそうです。
まさか大山さん美穂ちゃんに同じ事してるの?もちろんですよ。
転んでケガでもされたら嫌じゃないですか。
それで美穂ちゃんは山さんになんて言ってるの?ええ…これじゃ恥ずかしくて自転車に乗れないと怒鳴られ現在冷戦状態です。
わかるわ。
父と娘って色々あるのよね。
ありがとう。
(携帯電話の振動音)ちょっと失礼します。
もしもし?どうした?美穂はまだ僕のやり方に文句を言ってるのか?
(大山サユリ)その逆よ。
美穂がパパに謝りたいんだって。
美穂が?いや謝るべきは僕のほうかもしれん。
僕が黙って美穂の自転車に黄色の蛍光テープをベタベタ貼り出したのが悪かった。
早く美穂…ほら謝っちゃえ。
(大山美穂)パパ昨日はひどい事言ってごめんね。
パパの気持ちは嬉しかったんだけど…。
これだと…さすがにちょっと恥ずかしくて。
パパも悪かった。
じゃあこれからはピンク色の蛍光テープにし…。
(電話の切れる音)もしもし?切られた…。
そりゃそうよ。
えっ?あっ…。
やっぱり父と娘って永遠の謎だわ。
このビーズのひまわりはあなたが子供の頃岩村さんに作ってあげたものではありませんか?さあ…そんな昔の事は忘れました。
このビーズのひまわりの写真を見てあなたは昨日供述を変えました。
私が…道代さんを殺しました。
私があの人をかばって犯行を自供したとでも言うんですか?笑わせないでくださいよ。
そもそもあの人が道代さんと争う理由がないじゃないですか。
娘さんがつらい立場におかれている事を知りながら見て見ぬふりをする父親なんてわたくしはいないと思いますよ。
何言ってるんですか?あの人は私の結婚を潰そうとした張本人なんですよ。
血の繋がった肉親ならまだしもそんな血も涙もない赤の他人の事をなんで私がかばわなきゃいけないんですか?二度命を救ってくれた岩村さんが血も涙もない赤の他人ですか?もういい加減にしてください!道代さんを殺したのは私だって言ってるでしょう!?もうさっさと私を起訴しなさいよ!うっ…。
どうしました?はあ…。
胸が苦しいんですか?失礼します。
放っといてください!朝日奈検事お医者さんなんですよ。
脈を測ります。
足を触ります。
むくみがありますね。
動悸がする事はありませんか?いえ別に。
心臓に持病はありませんか?そんなのないわよ。
今日の取り調べは終わりにします。
山さん病院に精密検査の手配をして。
わかりました。
《滝口夏美が犯人だとすれば逃げる滝口道代を追ってこの階段を駆け上がった事になる》あっ検事。
山さんお願い。
えっ?あっあの…。
6秒間で13回。
1分間で…130回。
検事!滝口夏美の検査結果が出ました。
今現在の健康状態に問題はありませんが夏美は幼い頃拡張型心筋症という病気にかかりアメリカで心臓移植を受けていました。
普段運動している私でも犯行を再現したら脈拍が130まで上がったわ。
夏美にはこの犯行は不可能ね。
取り調べ中に時折苦しそうにしていたのは心臓移植の影響でしょうか?日常生活に支障はなくても急激な運動やストレスは心臓に負担がかかるわ。
それと免疫抑制剤を服用しているから感染症にかかりやすい。
手術から時間が経過をしていても拒絶反応が起こる可能性はある。
夏美が移植手術を受けたのは今から23年前彼女が8歳の時でした。
山さん夏美の心臓移植について調べて。
23年前にアメリカで心臓移植となれば数千万の費用もかかるわ。
わかりました。
至急確認します。
検事。
《滝口道代を殺害したのが夏美ではないとすると…》あら検事さん。
千賀さんこちらにご用でも?この辺の倉庫の管理は道代さんが担当してたんですけど急に私が引き継ぐ事になって。
そうですか。
そういえば検事さん道代さんが夏美以外の誰かと揉めていなかったか聞いてましたよね?ええ。
何かご存じなんですか?実は明久の葬儀のあと…。
(岩村)なんだよさっきの態度は!何よ偉そうに口きいて!あなたそもそも人様に説教出来る分際なの?なんだと!私はねあなたの秘密を知ってるのよ。
フッ…それともそれをばらしてしまってもいいって事なのかしら?岩村さんの秘密?
(千賀)ええ。
道代さんに聞こうと思ったら死んじゃったので結局わからずじまいですけどね。
嘘だと思うのなら他の出席者にも聞いてみてください。
女ってのは怖い生き物だね。
まったく…。
《1991年3月9日…》《3月9日の夜茨城県潮来市の資産家岡村由紀さん宅に強盗が押し入り現金3億円が盗まれる事件があった》《岡村さん宅の近くに住む蕎麦店店主田原義男さんの行方がわからなくなっている…》検事滝口夏美の心臓移植について調べたところ手術にかかった費用は約6千万円。
そのうちの1千万円は全国から集められた寄付によってまかなわれていましたが残りの5千万については岩村の個人名義で支払われていました。
岩村が5千万?葬儀社の経営状況から見ても5千万もの大金を用意するのは簡単ではないわ。
山さんこれを見て。
はい。
3億円強奪事件…。
1991年というと23年前夏美が心臓移植を受けたのと同じ年ですね。
5千万というのはこの3億円強奪事件と関わりがあるんでしょうか?山さん潮来に行って調べてきて。
わかりました。
いやわかんねえな…。
そうですか。
どうもありがとうございます。
あのお仕事中すみません。
以前この辺りで田原さんという方がお蕎麦屋さんをやってたそうですけども覚えてらっしゃいませんか?ああ。
田原さんのお蕎麦屋さんなら今は更地だけどここを真ーっすぐ行ったとこです。
そうですか。

(千賀)23年前に茨城県潮来市で起きた3億円強盗事件?そんなニュースあったっけ?全然覚えてないなぁ。
私たち潮来市なんて行った事ないしね。
あっ1991年っていったらお義父さんが道代さんと再婚した年か…。
滝口社長はその事件について何かご存じありませんか?いいえ知りません。
亡くなった明久さんから何かお聞きになってませんか?いいえ。
でもなぜ明久の名前が出てくるんです?この新聞記事は明久さんがファイルしたものなんです。
ああ…それがなんだっていうんですか?明久さんの葬儀のあと道代さんが岩村さんの秘密を知ってるとおっしゃったのを聞いた人がいます。
岩村さんの秘密とはなんでしょうか?知りませんよそんな事は。
(咳)おいおい千賀大丈夫かよ?千賀さん咳が続いてますね。
風邪薬は飲んでるんですけど咳の他にも吐き気や頭痛がなかなか治まらなくて…。
風邪ではなく他の病気の可能性も考えられます。
詳しい検査を受けてください。
えっ風邪じゃないってどうしてそんな…。
実はわたくし以前医者をしていたんです。
お医者さん?かかりつけの病院はありますか?ありませんけど…。
よろしければわたくしが手配をします。
ええ…命日は…。
1990年3月9日?3月9日…。

(ノック)戻りました。
ご苦労さま。
検事やはり田原の行方はつかめませんでした。
そう…。
夏美の心臓移植と消えた3億円の間に何か接点はなかった?実はですね…。
昔の田原のお店の近くに墓地がありましてそこへ行ってみたところ滝口夏美の実の父親のお墓がありました。
しかも命日は1990年3月9日。
お墓の近くで3億円強奪事件があった日のちょうど1年前です。
3月9日…。
夏美さんが岩村さんに二度命を救ってもらったとそう言った意味がわかりました。
一度目は心中から救ってもらった時。
そして二度目は23年前8歳の時に受けた心臓移植手術。
その時にかかった費用が約6千万円です。
そのうち5千万円を岩村さんが支払っていますね。
ええそうですよ。
5千万もの大金をどうやって準備されたんですか?知り合いに頼み込んで金を借りました。
(夏美)これかわいいでしょ?うんかわいいね。
(ドアの開く音)夏美!いよいよ飛行機に乗れるんだぞ。
本当?楽しみだな。
うん!
(岩村の声)手術を受けにアメリカへ行くと告げた時の夏美の笑顔は一生忘れられません。
血が繋がらないとはいえ私は夏美の父親です。
夏美のためなら私はなんだってやりますよ。
3億円強奪事件があった23年前の3月9日あなた潮来市に行きませんでしたか?23年前の事件はすでに時効になっています。
3月9日に何があったか話して頂けませんか?なんの話だかわかりませんね。
明久さんの葬儀のあとあなたと道代さんが言い争っていたのが目撃されています。
ああそれがどうしました?あの女はある事ない事を言って夏美を傷つけた。
それを黙って見ている親がどこにいます?その時道代さんがおっしゃったそうですね。
あなたの秘密を知ってるのよ。
フッ…それともそれをばらしてしまってもいいって事なのかしら?あなたの秘密とはなんですか?23年前5千万の手術費をどうやって支払ったんですか?検事さんいいか?よく聞け!道代を殺した犯人が俺だと思いたければ勝手に思うがいい!だが滝口道代を殺したのは夏美じゃない!体調はいかがですか?お騒がせしてすいません。
道代さんを殺害した犯人は4階まで階段を駆け上がり3キロの鉄パイプを振り下ろしました。
あなたには滝口道代さんは殺害出来ません。
3月9日はあなたの実の父親の命日です。
23年前の3月9日岩村さんは潮来に墓参りに行っています。
潮来から帰ってきた岩村さんはあなたの手術を決め5千万円を支払いました。
あなたは岩村さんをかばっていますね?違いますよ検事さん。
私があんな人の事をかばうわけないじゃない!だから私が道代さんを殺したって何度も言ってるでしょ!さっさと起訴しなさいよ!滝口夏美さんあなたを処分保留で釈放します。
どうして?検事さん。
私がやったんです!私が…!
(ため息)
(岩村の声)「夏美へ」「お前がこのノートを見るとき私は既にこの世にいないかもしれない」「私は今まで何度となくお前に本当のことを言おうとした」「だがいざお前を目の前にするとどうしても言い出す事が出来なくなった」
(操作音)俺だ。
話がある。
私の心臓移植に必要だったお金本当はどうやって手に入れたの?お願い!本当の事教えて。
夏美すまない。
俺はお前の父親失格だ。
(車が急発進する音)夏美!
(衝突音)お父さん!お父さん!救急車頼む!お父さんお父さん!
(夏美)お父さんしっかりして!お父さん!岩村さん…。
夏美さん一体何があったの?どうして岩村さんがこんな目に遭わなくちゃならないの?わからないの。
もう何もかも…。
夏美さん!それで岩村さんの容体は?予断を許さぬ状況です。
岩村をはねた車は白のセダン。
現在ナンバーから車を特定しています。
割り出しを急いで。
(2人)はい。
(ノック)はい。
朱里さん…。
検事さん…。
私にとって岩村さんは本当の父親のような人だったんです。
誰が岩村さんをこんな目に…!
(朱里の泣き声)夏美さんどうしました?
(岩村の声)夏美へ。
お前がこのノートを見るとき私は既にこの世にいないかもしれない。
私は今まで何度となくお前に本当のことを言おうとした。
だがいざお前を目の前にするとどうしても言い出すことが出来なくなった。
こんな出来の悪い父親だったがどうか許してほしい。
心臓移植に必要な5千万円は私にはどうする事も出来ない金額だった。
うちのような小さな葬儀社に大金を貸してくれる金融機関はなかった。
そして1991年3月9日。
入院中の夏美と付き添いの菊枝の代わりに私一人で潮来に墓参りへ行った。
その帰り道蕎麦を食べに立ち寄ったのが田原さんの店だった。
(田原義男)そう。
娘さん体弱いの。
それは大変だね。
うちの子心臓悪くてアメリカで心臓移植受けない限り長くは生きられないそうなんだ。
アメリカで心臓移植となるとかなりの大金が要るんじゃないの?5千万だよ5千万。
そんな大金どうやって集めろっていうんだよ。
すぐそこに住んでるおばあちゃんみたいに3億円もの大金を自宅に貯め込んで阿漕な高利貸ししてる人もいるっていうのに…。
(岩村の声)私には金が必要だった。
悪い事とは知りつつも奪った3億円のうち5千万を東京に持ち帰り心臓移植を申し込んだ。
いよいよ飛行機に乗れるぞ。
本当?楽しみだな!うん!
(岩村の声)夏美の笑顔を見て私は決めた。
この秘密は墓場まで持っていこうと…。
悪いのは全部私だ。
夏美はしっかりと自分の人生を歩んでいってほしい。
(岩村の声)それが私の最期の願いだ。
23年前の3月10日父が潮来から帰って来てすぐ手術を受けにアメリカへ行くと言われました。
でも子供心に覚えてるのは私にその事を告げたあとの父と母の深刻そうな表情でした。
あれから23年。
明久さんと出会いお互いの親に結婚の相談をしたところ予想外の反発にあいました。
そして私は子供の頃から疑問だった移植手術の5千万円について明久さんに打ち明けたんです。
(明久)実は話したくても話せなかったんだけど…。
この事件があった頃父さんの会社が急成長を遂げたんだ。
2億5千万円の不動産投資で大儲けしたって…。
私も言えなかったんだけど心臓移植手術の5千万円父が突然用意したの。
もしかして23年前の潮来の3億円強奪事件で私たち両家は繋がっていたって事!?両家が互いに忌み嫌っているのを考えるともしかして俺たち2人は出会っちゃいけない運命だったのかもな。
(夏美の声)そしてその日の夜警察から連絡があり明久さんが事故で死んだと告げられました。
明久さんが亡くなっていかに自分が弱い人間かを痛感しました。
だから明久さんとお別れしながら誓ったんです。
私強くなるって。
そしてまた天国で会える日まで預かってもらおうとビーズのひまわりを棺の中に入れました。
検事さん。
23年前から行方不明のお蕎麦屋さんは自分の意志で失踪したんでしょうか?それとも父が…。
父が私のために殺人まで犯して…。
まだ岩村さんの犯行と決まったわけではありません。
でもなぜ父がひき逃げなんかに…。
検事さん。
実は道代さんに倉庫に来るようにメールで呼び出された時…。
お義母さん?夏美です。
(夏美の声)道代さんが倉庫の中にいたとは知らず帰ろうとした瞬間…。
(階段を駆け下りる音)階段を駆け下りる靴音?はい。
それが誰かまではわかりませんでした。
でも父が鞄に付けていたビーズのひまわりが遺体近くで発見されたと知ってとっさに私がやりましたと嘘の供述をしました。
私のせいで父を失う事だけはしたくなかったから…。
倉庫から逃げた第三の人物ですか?ええ。
(ノック)どうぞ。
(立川正人)失礼します。
滝口夏美の夫明久が死亡した事故について調べてきました。
現場を見てきたところ鉄板が崩れ落ちた場所は誰でも自由に出入り出来るような状態でした。
検事。
滝口明久は単なる事故死ではなかった可能性があります。
(ノック)どうぞ。
(北野留美)朝日奈検事。
岩村のひき逃げ事件で使われた車のナンバーから所有者が特定されました。
(心電図モニターのアラーム)お父さん。
また新しいビーズのひまわり作ってきたからね。

(ノック)
(西村)滝口悟朗さん。
岩村健一郎さんひき逃げ事件に関してお聞きしたい事があるんですがね。
(渡辺)署までご同行願えますか?
(悟朗)えっ?どうして俺が疑われちゃうわけ?岩村さんを殺そうとしたのは悟朗お前だったのか!?このままおとなしくしていればこの会社ごと私たちの物になるっていうのになんてバカな事をしたのよ!これは何かの間違いだ。
誰かに嵌められたんだよ!詳しい話は署のほうで伺います。
違うって刑事さん!俺はなんにもしてない!なんで俺なんだよ…。
(悟朗)だから俺はひき逃げなんかしてないって。
その時間は銀座のクラブで飲んでたって言ってるだろ。
それは今確認中です。
どなたかに車を貸したりはしませんでしたか?貸してませんよ。
じゃあなぜお前さんの車に岩村さんの血痕が付いてるんだ?知らないよ。
俺が聞きたいぐらいだ。
(ノック)はい。
検事。
店員の証言が取れました。
岩村がひき逃げされた昨夜9時滝口悟朗は間違いなく銀座のクラブにいました。
防犯カメラの画像を分析して運転していた人物を特定して。
わかりました。
滝口さん車の鍵はいつもどこに置いていますか?会社にいる時はいつもデスクの上に置いていますよ。
まあほとんど会社にはいませんけどね。
(携帯電話の振動音)失礼します。
(携帯電話の振動音)はい朝日奈。
滝口千賀の精密検査の結果が出ました。
(千賀)検事さん一体どういうつもりなんです!?どうしてうちの主人が取り調べを受けなきゃいけないんですか!?
(咳)精密検査の結果あなたの咳は風邪によるものではありませんでした。
風邪じゃない?あなたの血液は…。
一酸化炭素ヘモグロビンの数値が高くなっていました。
火災現場にいた事による一酸化炭素中毒がその原因とみられます。
一酸化炭素中毒?軽い一酸化炭素中毒では頭痛や吐き気など風邪とよく似た症状が出る事があります。
また火災で発生した煙や灰を吸う事で気管支が炎症を起こし咳が出やすくなります。
千賀さん。
これらの症状が出始めたのはいつからですか?道代さんが殺害された日の夜からだそうですね。
変な言いがかりはやめてよ!私は道代さんを殺してなんかいない!検事。
岩村をひき逃げした車の画像を詳しく分析した結果運転していた人物が特定出来ました。
滝口社長…?
(電話)失礼します。
はい大山です。
えっ?滝口社長が行方をくらました?
(足音)こんなところに呼び出してなんの用だ?潮来で会いたいと言えばあなたは必ず来ると思ったんです。
それはどういう意味だ?忘れたとは言わせないわよ。
23年前の事…。
一体なんの事だ?とぼけないで!明久さんを殺したのも父を殺そうとしたのも全部あなたがやったんでしょう?貴様…どうするつもりだ!?ご苦労さまです。
あっ検事!ここです。
(西村)遺体の身元は滝口社長に間違いありませんね。
死亡推定時刻は昨日の17時前後。
死因は毒物による中毒死です。
このお茶の中から毒物が検出されました。
あっこれが滝口社長の携帯電話です。
「遺書」?
(西村)ええ。
どうやら滝口は服毒自殺のようですね。
あの滝口社長が自殺ですか?「遺書私が率いる滝口開発グループその今日における繁栄には23年前の潮来で起きた三億円強奪事件が大きく関わっていました」「23年前の3月9日」「私は当時クラブホステスをしていた…」
(滝口の声)道代と2人で潮来にドライブへ行きました。
(滝口の声)そして蕎麦を食べに立ち寄った店で岩村と田原が話すのを偶然聞いたのです。
5千万だよ5千万。
そんな大金どうやって集めろっていうんだよ。
すぐそこに住んでるおばあちゃんみたいに3億円もの大金を自宅に貯め込んで阿漕な高利貸ししてる人もいるっていうのに…。
不公平だよね世の中は。
ねえご主人。
その3億円を貯め込んでるおばあちゃんの家ってここから近いの?えっ?ところでご主人。
このお店って儲かってるの?いや…。
やればやるほどなぜか赤字で借金かさんじゃって。
その高利貸しおばあちゃんの思うつぼですよ。
だったらさ一緒にその借金帳消しにしない?それどういう事です?
(滝口の声)当時私は会社の経営が上手くいかず多額の借金に苦しんでいました。
そんな私にとって田原が岩村に話していた3億円話は聞き捨てならないものでした。
そしてその夜私は田原を誘って資産家の家に忍び込み現金3億円を奪って逃げました。
アハハハ…!やったー!やったー!やった…!アハハ!3億!3億…。
(滝口)あんたの分1億。
おい。
半分半分にする約束だろ!?何言ってんだ?お前。
ここに何人いるかわかんねえのか?123人。
だから3等分。
ちょっ…話が違うじゃないか!はあっ!?あっいらない?じゃあ私が貰う…。
お前たちだましたな!?何…!?くっ…。
ああっ…!
(刺す音)うわっ!うわあっ…!ああっ…。
(滝口の声)それから私と道代は田原の遺体を車に乗せ潮来神社の裏の林の中まで運んで埋めました。
しかし東京へ戻ろうとした時…。
危ねえだろうがよ!そっちこそ気をつけろ!ああっ!?あれ?おたく昼間蕎麦屋にいませんでした?えっ?まさか…あんたたち…?確かあんたの娘さん心臓が悪くて手術費が欲しいんだったよな?5千万あったら娘さんの命助かるんだろ?
(滝口の声)私は岩村に5千万円を渡しその代わり事件の事は誰にも言わないようにと岩村に約束させました。
私は残りの金2億5千万円を元手に今の滝口開発グループを興しました。
しかしよりによって岩村の娘と結婚した明久が潮来の3億円強奪事件との関連を追求してきたのです。
この会社が急成長した23年前父さんが投資した2億5千万円はどこで手に入れたんですか?ハハ…。
明久お前何が言いたいんだ?この写真アルバムの中から見つけたんだけど潮来で撮ったんだよね?日付は1991年3月9日。
その同じ日の夜に潮来の資産家では3億円が盗まれ近所に住むお蕎麦屋さんが行方不明になった。
この事件に父さんと岩村さんが関わってるから俺と夏美の結婚に反対してるんじゃないのか!?知らん!お前は黙ってろ!待ってくれよ…。
触るな!父さん…。
うるさい…離せ!明久!おい…。
おい…明久!なんで…なんでこんな事になっちまったんだよ…!
(滝口の声)私は明久の遺体を工事中の建設現場まで運び…。

(落下音)
(滝口の声)落下物の下敷きになって死亡したように見せかけました。
道代を殺害しその罪を夏美に着せたのは娘の千賀です。
私が会社を継ぐのよ!ふざけないで!
(滝口の声)もともと千賀は後妻の道代と折り合いが悪く次期社長の座をかけて醜い争いを続けていました。
道代殺害の容疑で捜査対象となった岩村は23年前の事を公表すると言い出しました。
はい。
俺だ。
話がある。
俺にはもうあの時の事を隠し通すのは無理だ。
わかった。
とにかく会って話をしよう。
(滝口の声)すでに時効とはいえこの事を公表すれば世間からの非難は免れない。
だから私は岩村の口を封じる事にしました。
悟朗の車を使って罪を着せたのは千賀との結婚以降ろくに働かずギャンブルに溺れていたのが許せなかったからです。
うわあ…!
(衝突音)「でもいよいよ捜査の手が自分に迫ってきました」「もう逃げきれません」「死んでお詫び致します」「滝口信夫」ここに書かれている事が正しければ道代は娘の千賀に殺害され田原は23年前に滝口社長に殺害されていたという事になりますね。
(西村)検事!文面どおり田原さんの遺体が出てくるか潮来神社の裏の林を捜索してください。
はい。
滝口社長の遺体を確認します。
(渡辺)ここだな。
みんなこの辺りをくまなく捜索してくれ。
(一同)はい!
(パトカーのサイレン)滝口信夫の遺体はこちらです。
何かしら?これは…ビーズ?現場でビーズは見つかってませんよね?はい。
現場付近の道にビーズが落ちていないか探して。
わかりました。
滝口夏美が現場付近で目撃されてないか確認してきます。
滝口社長の携帯に残された遺書にあなたが道代さんを殺害したとありました。
あなたの血液の一酸化炭素ヘモグロビンの数値の上昇は火災現場にいたために起こった…。
何度言わせるんですか?道代さんが殺された現場には行ってません。
血液検査と一緒に調べたインフルエンザの検査結果をさらに分析したところあなたの鼻の粘膜の奥からすすが発見されました。
そのすすの成分は道代さんの殺害現場のものと一致しました。
あなたが滝口道代さんを殺害したんですね?そのとおりよ!あの女父のどんな弱みを握ってたんだか知らないけど後妻のくせに偉そうにして…。
私の事も邪魔者扱いしてた。
もう我慢の限界だったのよ!千賀!私はあんたと違って忙しいのよ。
用があるんだったら早くしてよ!その偉そうな言い方…ムカつくのよね!アアーッ!まあでも最後ぐらいは言う事を聞いてさっさと用を済ませてあげるわ。
どういう意味!?あんたなんか死ねばいいのよ!くっ…ああっ!アアーッ!バカな事はやめて!
(道代)ああっ…!
(千賀の声)道代の携帯メールで夏美を呼び出し夏美が持っているビーズのひまわりと同じものを遺体の横に置いた。
(千賀の声)夏美が犯人になって逮捕されれば道代と夏美の邪魔者2人を一気に消せると思ったのよ。
お義母さん?夏美です。
(千賀の声)夏美を現場におびき寄せてから倉庫を燃やして…。
(千賀の声)別の階段から逃げた。
私がいた痕跡を消せば夏美が犯人になると思ったの。
(千賀の咳)
(咳)ビーズのひまわりはどこで手に入れたんですか?
(千賀の声)明久の葬儀の打ち合わせで岩村さんの家に行った時に…。
はい。
ええ岩村です。
はい。
(千賀の声)夏美が持ってるのと同じものがたまたまあったから盗んでおいたの。
大の大人が鞄にあんなちゃちなおもちゃ付けちゃってみっともないわよね。
千賀さん。
あなたって孤独なんですね。
あのビーズのひまわりはあなたが思っているようなおもちゃではありません。
つらい時や楽しい時を分かち合ってきた父と娘の宝物なんです。
宝物?あんな安物のおもちゃが。
フフ…。
あなたにはその大切さがわからないでしょう。
岩村さんの夏美さんへの思いも。
岩村さんをかばった夏美さんの思いも。
あなたは道代さんとそんな関係を築けなかった。
それどころか道代さんの命まで奪ったんです。
あなた人の命をなんだと思ってるんですか?許さない…。
私はあなたを絶対に許さない!滝口千賀さん。
あなたを滝口道代さん殺害の罪で起訴します!わかりました。
検事。
滝口社長の死亡推定時刻の2時間前に当たる15時頃滝口夏美が潮来で滝口社長と会っていた事がわかりました。
夏美が潮来に…?検事さん。
夏美さん。
滝口社長が亡くなった日の15時潮来で滝口社長と会いましたか?あの人が父を殺そうとしたのかを問い詰めようと思って。
全ての事件の発端となった潮来へ呼び出したんです。
でも結局あの人は何ひとつ罪を認めようとせず去って行きました。
では滝口社長の死亡推定時刻の17時どこにいましたか?潮来駅15時23分発の電車に乗って18時過ぎにはこのマンションに着いてたので…。
17時ならその途中の電車の中だったと思います。
(ドアの閉まる音)何かわかった?はい。
失礼します。
夏美が潮来駅15時23分発の電車に乗った事は確認出来ました。
さらに夏美の成城の自宅マンション近くのコンビニで確認したところ防犯カメラに夏美の姿が映っていました。
時刻は18時10分です。
潮来駅を15時23分発の電車に乗って…。
成田駅錦糸町駅新宿駅を経由し18時過ぎに成城学園前駅に到着します。
滝口社長の死亡推定時刻である17時前後滝口夏美は成田から錦糸町に向かう電車の中にいた事になりアリバイは完全に成立します。
山さん他に方法がないか調べて。
わかりました。
《滝口夏美が殺人を…?》検事。
事件当日の潮来駅の防犯カメラの映像を調べたところ大変なものがありました。
これは…。
これは事件当日潮来駅22時20分着東京方面から来た電車を降りるあなたの姿です。
(発車のベル)こんな時間になぜ潮来に戻ったんですか?それは…。
朱里さん。
これは事件当日潮来駅18時2分発の電車に乗るあなたの姿です。
滝口社長の頭髪の中からビーズが見つかりました。
このビーズはあなたがいつもバッグに付けているビーズのスイカの一部ですね?これはあなたが潮来駅に到着した時の写真です。
バッグにビーズのスイカは付いています。
これはあなたが潮来駅を出発した時の写真です。
バッグにビーズのスイカは付いていません。
滝口社長を自殺に見せかけて殺害したのは近藤朱里さんあなたですね?あなたのお父さんは23年前に潮来で行方不明になった田原義男さんです。
その後あなたは養護施設で暮らし後に近藤さんという方の養子になりました。
幼い頃に母を亡くした私は潮来でお蕎麦屋さんをやっていた父と2人で暮らしていました。
23年前の3月9日。
私があの日の事を今でも覚えてるのはそれが私にとっての父の最後の姿だったからです。
(朱里)お父さんおなかすいた〜。
朱里ちょっと待ってな。
あとでおにぎりと味噌汁作ってやるから。
朱里わかめのお味噌汁がいい!わかってるって。
わーい!やったあ!お嬢ちゃん。
元気いいねえ。
小学2年生ぐらい?うん!朱里8歳!お客さんとこもお子さんいるの?ええ。
同じ年の娘が。
でも朱里ちゃんほど元気じゃないんだ。
朱里2階に戻ってな。
うん!翌朝目が覚めると父の布団は空っぽのままでテーブルにはおにぎりと冷めたお味噌汁がありました。
私は一人家の中で父の帰りを信じて待ちました。
お父さん…。
どこへ行ったの…?お父さん…。
私は養護施設に引き取られしばらくして近藤家の養子となりました。
養父母はとても私によくしてくれました。
いくら感謝しても感謝しきれないくらいです。
でも私は近藤朱里として生きながらも心のどこかでいつも父の事を捜し続けていました。
だって父は私を置いて消えてしまうような人ではなかったから…!朱里さん…。

(朱里の声)学校卒業後は仕出し弁当のお店で働き始めました。
そしたらある日岩村さんが店に来たんです。
岩村葬儀社といいますがお宅のお弁当お願い出来ませんかね?岩村さん親子とは仕事上のお付き合いを超えてお互いの悩みや身の上話をする仲になりました。
(朱里の声)岩村さん親子を見ていると血が繋がってなくても本当の親子になれるんだなあって思ってうらやましくて…ちょっと悔しかった。
岩村さんはまるで私の父親のように親身になって接してくれました。
でも今考えてみればそれは私への贖罪の気持ちの表れだったのかもしれません。
そんな岩村さんが滝口家の人たちと激しく争う姿を見て私は何か裏があると思いました。
(千賀)滝口グループの乗っ取りを狙ったグルって事?
(夏美)なんですって!?
(朱里)明久さんが亡くなったのは23年前の3億円強奪事件と滝口開発グループの関係を調べ始めた矢先だったと夏美さんから聞かされた私は…。
滝口から真相を聞き出そうと行きつけのクラブでホステスとして働き始めました。
朱里です。
朱里。
社長私の事覚えてないんですか?えっ?あれ?どっかで会った事あったっけ?え?え?ああ〜…。
(朱里の声)私は23年前の事を聞き出そうとしました。
でも滝口は愛人になればなんでも教えると私が田原の娘だとも知らずに関係を迫ってきたんです。
(朱里の声)夏美さんが滝口を潮来に呼び出して真相を話すように迫ったあの日私も夏美さんのあとをつけて潮来に来ていました。
そして夏美さんが東京に帰ったあと私は意を決して滝口に23年前の事を聞き出しました。
(朱里)そうだったんですか。
そうやって社長は大金持ちになったんですか。
ああそうだよ。
3億円強盗も田原って男を殺しちまったのももう時効だから朱里ちゃんには特別に話したんだけど世間にこの事がバレたらなんて言われるかわからないからくれぐれも口外しないように。
ん?はい。
アハハハハ!いやあいい景色だなあ。
(滝口)それにしても潮来で朱里ちゃんに会えるなんてこんな嬉しい偶然はなかなかないね。
ハハハハハハハ…。
社長のど渇きません?おお気が利くねえ。
どうぞ。
(朱里の声)滝口に渡したほうにはあらかじめ毒物を入れておきました。
社長。
ここで会えたのは偶然じゃなくて運命なんですよ。
私潮来の出身なんです。
本名は田原朱里。
田原…!?うっ…あっ…。
くっ…き…貴様…!くっ…ああっ!うっ…。

(朱里の声)そして滝口が自殺したように見せかけるため滝口の携帯に遺書を残して逃げました。
無我夢中だったのでビーズのスイカを落として来たとは気付きませんでした。
朱里さんが潮来で落としていったビーズをあとで回収したのは夏美さんですね?あの日私は潮来で滝口社長と別れたあと18時過ぎにいったん自宅へ戻りました。
でも次第に何も出来ずに帰って来た自分が情けなくなりこれからどうすればいいかを相談しようと朱里さんに電話したんです。
(メールの受信音)
(夏美の声)何か胸騒ぎがした私は朱里さんにすぐに会えないかと返信しました。
(メールの受信音)そして朱里さんから全てを告白されました。
私の心臓移植が朱里さんのお父さんの犠牲の上に行われていた事…。
そして朱里さんが潮来で何をして来たのかも…。
私滝口を殺して来ちゃった…。
朱里さんがあの人を!?そうするしかなかったのよ。
でもね夏美さんからのメールをもらって東京までの電車の中で色々考えてたら気が変わったわ。
えっ?やっぱり私にはこのまま罪を隠して生きるなんて出来ない!朱里さん…。
だから自首する前に夏美さんとひと目会っておきたかったの。
今まで本当にありがとう。
お父さんによろしくね。
朱里さん…。
そんな事言わないで。
朱里さんいつも付けてたビーズのスイカは?あっ!多分あの人と争った時に落としたのかも…。
朱里さん自首しちゃ駄目よ。
私が朱里さんを守る!夏美さん…!自分でも間違った事をしているのはわかってました。
でもどうしても朱里さんだけは…。
捕まってほしくなかったんです。
夏美さん…。
そして夏美さんは東京駅から電車に乗って22時20分に潮来駅に到着。
潮来の殺害現場に行って朱里さんが落としたビーズを暗い中必死に一粒一粒拾った。
しかし遺体の頭髪の中のビーズには気付かなかった。
朱里さんごめんなさい…。
私結局なんの役にも立てなかった…。
こんな私の事を助けようとしてくれて本当に嬉しかったわ。
夏美さん…。
ありがとう。
朱里さん…。
はい。
了解しました。
近藤朱里さん。
潮来の林の中からあなたのお父さんの遺体が発見されました。
そうですか。
よかった…。
朱里さん。
あなたが犯した罪は人の命を奪うという極めて重い罪です。
どんな事情があろうと許される事ではありません。
ですが私はあなたにまた新たな人生を踏み出してほしいと心から願っています。
近藤朱里さん。
あなたを滝口信夫さん殺害の罪で起訴します。
はい。
検事さん…ありがとうございました。

(心電図モニターのアラーム)岩村さん…。
先生!
(心電図モニターのアラーム)夏美…。
滝口夏美さん。
あなたが朱里さんの証拠隠滅を図った事は罪になります。
ですが情状は酌量されるでしょう。
検事さん…。
お手数おかけしました。
(電話)はい朝日奈検事室。
わかりましたお伝えします。
はい。
夏美さん。
お父さんの容体快方に向かっているそうですよ。
本当ですか?夏美さんの気持ちが伝わったんですね。
はい。

(岩村)すでに時効とはいえ私は23年もの間事件の真相をずっと黙ってきました。
この罪は私の中では永遠に消える事はありません。
一生かけて償っていきたいと思います。
いつか朱里さんと朱里さんのお父さんのお葬式が出来ればいいですね。
夏美…。
すまなかった…。
夏美さん。
もう我慢しないで泣きたい時は泣いていいのよ。
検事さん…。
お父さん。
お前の幸せをずっと願っていながら明久君と結婚したいと聞いた時俺はどうしても心から祝ってやる事が出来なかった。
俺は父親としては最低だ。
そんな事ないよ。
ありがとうお父さん。
夏美…。

(夏美)これはお父さんの。
お父さんにも作ってくれたのか?うん。
だってお父さんこの間泣いてたでしょ?夏美やったぞ!それで夏美さんはこれからどうするの?お父さんが社長を退いて夏美さんが後を継ぐそうです。
社長さんが一緒に泣いてくれる葬儀屋さんってわけね。
ええ。
あの親子を見てるとわたくし涙が出そうになりました。
山さん。
泣きたい時は泣いたほうが体にいいのよ。
ええ。
ですが検事男というものは色々事情がありまして。
人前でそうそう簡単に泣くわけにはいかないんですよ。
あら。
医学的には男も女も関係ないのよ。
だって人は誰だって最初は泣いて生まれてきたんだから。
という事は検事も泣きながら生まれたんですか?あら。
山さんそれどういう事?えっ?えっ?いえ…。
フフフフフ…。
すいません。
どうぞどうぞ…。
ありがとう。
そうですか検事も泣きながら生まれたか…。
ハハハハ…。
ハア…。
2014/05/24(土) 21:00〜23:06
ABCテレビ1
土曜ワイド劇場「検事・朝日奈耀子