この時間は「芸の真髄江戸ゆかりの家の芸成田屋」をお送りしました。
これで「古典芸能への招待」を終わります。
(テーマ音楽)へえ帰ってきたんだ。
ご苦労さん。
えっ!結婚したの?奥さんってまさか…えっ!?もしもし…もし…あれ切れちゃった。
(天の声)草刈さんどうしたんですか?いやぁ長いことね海外赴任してた甥っ子が日本に帰ってきたんですけどね向こうで結婚しちゃったんだって。
それがね奥さんがねロシア人だって。
まあ!どうしよう。
いやぁ驚いたなぁ。
あそうだ!日本らしい何かお祝いをあげなきゃね。
それならお椀はどうですか?お椀?大阪に住む島田純兒さんのお宅です。
こちらでは毎日の食卓にたくさんのお椀を使います。
両親が好きで集めてきたお椀。
大きさも形もさまざまです。
もう何かこういう盛った感じがやっぱり一番いいですね。
本当に陶器には全然ないような感じが1回使うともうやめられないですね。
木の自然なぬくもりが料理をおいしそうに見せてくれる。
ご飯はもちろん煮物やおひたしそしてサラダにも。
更にちょっと変わったお椀の使い方をしていました。
金属じゃなくて木のスプーンで食べたらもう幸せですね。
木のお椀は熱が伝わりにくいのでアイスクリームが溶けにくいとか。
一口にお椀といってもいろいろな使い方があるんです。
お椀の歴史は古く始まりは縄文時代。
お椀というよりも鉢に近い形ですが装飾があるうえに既に漆も塗られていました。
その後時代は定かではありませんが現在のようなお椀の形になりました。
更に漆の技術も発展し世界に誇る漆器が作られるようになりました。
こちらは幕末に作られたお椀です。
このお椀ちょっと変わった仕掛けがあります。
なんと蓋が杯になっているのです。
料理を楽しみながら一杯とは粋な演出。
こちらは昭和初期に作られたもの。
四角いお椀もあるんですね。
戦後になるとこんな形のお椀も登場しました。
でもなぜだるま型なんでしょう。
蓋を取ると蓋がそのままお椀にもお皿にもなるという実用的なデザインです。
その福々しい形が遊び心を感じさせます。
お椀の美しさは高台の高さや傾き曲線とのバランスにあると専門家は言います。
ここのバランスが来るからこの受けは少し斜めに来てる。
作り手はものすごくこういうバランスの美しさを考えてる。
たかがお椀だけど…美しくそして温かい。
今日はもてなしにもふだんにも使える木のお椀の魅力に迫ります。
まずは内側に注目。
金沢で240年余り続く漆器店のご主人岡能久さんです。
こちらは岡家が代々受け継いできた貴重なコレクション。
そこにはある特徴が。
蓋を開けて…上着よりもちょっと着物でもそうです。
ちょっと裏をまくると自分の個性が出てるというような形で。
こんなのはなかなか…そうお椀といえばまず外側の装飾を思い浮かべますが内側に面白みがあるというのです。
こちらは明治時代に作られたお椀。
黒い漆の上から赤い漆を塗り磨き出すことで野趣あふれる外観です。
ところが…。
内側は見事な蒔絵です。
繊細な図柄や金粉が舞うみやびな世界。
茶道具にあしらわれめでたいとされるミル貝が泳ぎ外側とは別世界を作っています。
今日最初の壺は…輪島の蒔絵師浦出勝彦さんです。
蒔絵は奈良時代に完成されたといわれる技法。
金をまいて絵を描くことから蒔絵と呼ばれています。
まずは下絵。
和紙に漆で一筆ずつ描きます。
漆の付いた面をお椀に当てハケで押さえると…。
うっすらと漆の模様が付きました。
その漆が乾かないうちに白い粉を付けると…。
下絵の完成です。
次は金をのせたい場所に漆を塗ります。
ここでようやく金の登場。
まいた金を払うと漆に付着した金が残るのです。
そして8時間乾かしたのち再び漆を塗り重ねては金をまき立体感を出していきます。
最後に磨きをかけて完成です。
初めから最後までお椀物ってありますから。
例えばそれが一連の物語だったりすることもありますから。
お椀に込められた物語。
こちらにはどんな物語があるのでしょう。
川面に漂う小舟に咲き乱れる桜の花。
夢のような世界が現れました。
お椀の内側を一組のカンバスと考えた作品もあります。
蓋を開けて現れるのは秋の風景。
お椀の底には秋の七草の一つ萩。
蓋の内側には桔梗野菊が描かれています。
お椀の底と蓋の内側は2枚からなる屏風絵のようです。
眺めるだけでも美しい内側の世界。
更に蓋の内側だからこそ楽しめるとっておきの美があります。
吸い物なりが入って露が蓋の裏にうったときですねそれが露玉のようにまたそれが金が反射して大変きれいに見えますよね。
ご覧下さい。
湯気でお椀の裏蓋に細かい滴が付きまた違った表情に。
みずみずしい川面の景色が浮かび上がりました。
それは蒸発して滴が消えてしまうまでのわずか1分間ほどの美です。
こちらはミル貝の蒔絵。
滴はまるで海のしぶきのようです。
湯気も相まって海の中を見事に再現しています。
蓋の内側に描かれた蒔絵は滴が付いた時の美しさまでも計算され描かれているのです。
我が家もね夫婦でお椀好きなんですよ。
でね結構集めてるんですよ。
お祝いだとどんなもんがいいかな。
う〜んこれなんて何か小さくてかわいいね。
一寸法師が乗ってそうで。
フフッ。
うん?一寸法師?…ふむ。
どうしましたか?う〜ん一寸ってどれぐらいだろうね。
お椀に乗れるぐらいだからこれぐらい?これぐらいか?うん。
ちょっとどこへ行くんですか?僕ねちょっと気になることがあったら何も手につかなくなっちゃうんですよ。
ちょっと調べてくる。
草刈さんお椀選びは?続いては丸いフォルムに注目です。
お椀の丸い形は私たちがよく知っているある形がもとになっているといいます。
この形が今の僕らがいわゆる言ってるお椀の形。
この形を作った。
いまだにだから僕らが使ってるものがこうなってる。
どれもこう…たなごころにすっぽりと納まりいかに手になじむか。
その鍵となるのが曲線です。
今日二つ目の壺は…お椀の丸さはどのように生まれるのでしょうか。
初代はあの魯山人と親交があったという木地師の家の3代目村瀬治兵衛さんです。
ろくろを回してお椀を削り出していきます。
その組み合わせで…これだと直径がどのぐらいの大きさのRになるかだんだんそのRが小さくなっていくんですね。
でここら辺が一番小ささのピークでまた若干この高台脇はRをちょっとおおらかにしてますけども。
…ということが非常に重要でそこで0.01ミリとか0・02ミリのこだわりを出すことによって何かこう器自体の品格というんでしょうか隙がなくなるというか品格というものが生まれてくるのではないかと信じてます。
いくつもの曲線が組み合わされて一つの曲線美が生まれるのです。
場所や形によってノミを使い分けながら0.1ミリ以下の精度で削っていきます。
その曲線の美はある方法で見極められています。
お椀に映る陰影です。
ライトを当ててこちらが半分黒くなってる。
こっちから見ると。
この曲線がホントにお月様のようにきれいな頂点はあるんですけどもでもきれいな曲線を描いて影が出てくれるような。
今ここがちょっと出っ張ってるように思うんですけど。
お椀に映る三日月型の影。
この影がいかに滑らかになるかで決まると言います。
まだ少しいびつなようです。
ノミに伝わるわずかな手応えだけが頼りです。
最後にきれいな形を探すまでは削っては確認し削っては止めて確認しという。
村瀬さんは木と対話するようにして形を探っていくのです。
そして…先ほどの影と比べてみると三日月の影が滑らかになったのが分かります。
いくつもの曲線がつながりどこにも引っ掛かりのない美しい形に。
手のひらにすっとなじむ0.1ミリ以下のこだわりが生んだ究極の曲線です。
美しい丸みがあってこそ装飾や細工が生きて見えませんか?一見武骨に見えてもその中には美しい曲線が隠れているのです。
分かりました分かりました。
一寸は3センチほどだからね一寸法師はちょうどこれぐらいかな。
これがお椀に乗ってたんだから大したもんだ。
草刈さんその人形どうしたんですか?ああこれね随分昔にね友人からもらったものなんですよ。
ちょうどロシアのお土産マトリョーシカ。
これをねこうやっていくとねほらね。
ほらこれに行き着くわけだ。
マトリョーシカうん。
こんなことやってる場合じゃないんだ。
ロシア人の奥さんにどういうお椀をプレゼントすればいいか考えなきゃ。
ええと…。
待てよ…マトリョーシカ!どうしました?え?いいこと思いついちゃった。
あ草刈さん!今度はどこ行くんですか?東京都内の美術館の倉庫。
ここにとても貴重なお椀が保管されています。
美食家として知られる北大路魯山人が作ったお椀です。
「器は料理の着物である」と唱え自ら試行錯誤しながら完成させたお椀です。
太陽と月を。
まずお椀の大胆なデザインを楽しみそして料理を楽しむ。
それで究極のもてなしが完成すると考えたのです。
その精神は今も受け継がれています。
京都の料亭のご主人泉昌樹さんです。
お椀も見てこれで何々を盛りたい。
陶器を見て器を見てこれを何かを盛りたいというのはやっぱりどういうのかな…やっぱりその時その時のインスピレーションみたいなものがあるのでイメージで感じたら欲しくなったりしちゃうので。
料理にお椀を合わせるだけではなくお椀から料理を生み出すのです。
今日最後の壺は…お椀からどんな料理が生み出されるのでしょうか。
先ほどお店で選んだお椀で作って頂きました。
少し浅めのお椀には春の七草の一つせりの蒔絵が施されています。
季節感を感じながら蓋を開けると…。
古代朱と呼ばれる落ち着いた朱色に映えるのは鮮やかな緑のせりそら豆そしてあさりをだしで合わせたものです。
描かれた蒔絵で中の料理を連想させました。
一方こちらはきらびやかな蒔絵が施されたお椀。
やはり春の食材あさりが描かれています。
では中身は?あさりではなく…あさりの蒔絵で春を思わせ蓋を開けたらまた別の春を感じさせるうれしい裏切りです。
大体蓋のしてある物っていうのは中に何が入ってるんだろうってまず期待感から入ると思うんですよ。
でその時にシンプルなお椀なんだけど蓋を開けたらすごくきれいな蒔絵が入ってたらうわっと思ってそこでお客さんはやっぱり一つテンションが上がると思いますし上がってまたおだしを飲んで「あいいおだし」と。
で椀種を食べて「わおいしい」というふうに徐々に楽しむ段階の一つのアイテム。
外せないアイテムになってくると思いますので。
今度は無地のお椀。
一体何が入っているのでしょう。
蓋を開けると立ちのぼる湯気と香り。
きらびやかな蒔絵とともに現れたのは…お椀の底に散った金粉が海の中の砂のように揺らめきます。
料理を頂いた後には海の底が姿を現しました。
一方こちらは艶やかな絵柄のお椀。
しかしお椀の内側は漆黒の世界。
白く浮かび上がるのは京都の夏の風物詩鱧です。
黒塗りのお椀を使うことで鱧の白さが際立ちます。
お椀を眺め料理を味わい再びお椀をめでる。
お椀と料理の共演で新たに生み出される美があるのです。
では最後にお椀の究極の楽しみ方をご紹介しましょう。
それはろうそくの灯りでお椀を楽しむこと。
「お椀の美は光の中ではなく闇の中にこそある」と谷崎潤一郎は書いています。
更に谷崎は料理の味わいにも触れています。
ろうそくに立ちのぼる湯気。
日本人が親しんできたいにしえの光の中にとっておきのお椀の美がありました。
ああったあった。
これこれ。
草刈さんそれ何ですか?これね四つ椀といってね四つのお椀にもなるしね。
へえ便利ですね。
これこうすると蓋付きのお椀にもなると。
う〜ん!これをこうやって重ねるとコンパクトでしまいやすいわけですよ。
これぞ世界に誇る日本のマトリョーシカです!ちょっと無理やりな気も。
うん?よしこれで結婚祝は決まりだ。
これを見たらロシア人の奥さんも「へえ日本にもマトリョーシカあるんだ」ってきっと喜んでくれるよ。
はあ〜早くプレゼントしたい。
もう一度やってみようかな。
こうでしょこうでしょ。
こうでしょ。
これは喜んでくれるわ。
こうでしょこうでしょ。
あ〜これは喜んでくれる。
プレゼントが決まってご機嫌ですね。
こうでしょこうでしょ。
うわ〜もう喜んでくれるぞ。
2014/05/25(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「お椀(わん)」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「お椀(わん)」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
やさしい手触り、ほのかなぬくもり…。木で作られたお椀(わん)は美しさと機能性に富み、日本の食卓には欠かせない。お椀には様々な知恵ともてなしがつぎ込まれている。お椀の内側に施される蒔(まき)絵の図柄に込められたサプライズとは?てのひらになじむ形を実現するために0.1ミリ単位で削られる曲線美の技とは?料理人が腕を振るう究極のお椀料理とは?!もてなしにも普段にも使えるお椀の魅力、料理と併せてご紹介します
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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