NHKスペシャル エネルギーの奔流 第1回「膨張する欲望 資源は足りるのか」 2014.05.26

急激な経済成長を遂げたインド。
12億の人々が全てアメリカのような暮らしをするようになったら…10年余りで地球の原油は枯渇する事になる。
更に全世界の70億人の暮らしが同じように豊かになったら5年ももたない。
人類存亡の鍵を握るのはエネルギーだ。
はるか昔火を手に入れた人類。
石炭そして石油。
新たなエネルギーを手に入れる度に文明は爆発的に進歩。
争いを繰り返しながら欲望は膨張した。
飽くなき発展と成長を求める人類を地球は支えきれるのか。
この先に待つものは…。
ブラジル沖320km。
7,000m下の地層から黒い液体が掘り出された。
今世界では新たな技術によってこれまで不可能だった場所から石油や天然ガスが採掘されている。
開発を加速させているのはアジアなど新興国で急速に拡大しているエネルギー需要だ。
豊かな生活を手にし始めた十数億の人々。
石油石炭だけではなく原発の導入を計画する国々も増えている。
限りある地球の資源。
膨張し続けるエネルギーへの欲求をいつまで満たす事ができるのか。
「シリーズエネルギーの奔流」。
第1回は地球上で繰り広げられるかつてない規模の開発と消費その最前線に迫る。
人口12億のインド。
今月国の新たなリーダーが決まる選挙が行われた。
有権者数8億人を超える世界最大規模の選挙。
圧倒的な支持を得て新たな首相に就く事になった…長年州政府のトップを務め急速な経済成長を実現させた手腕が買われた。
(一同)モディ!モディ!モディ!人々の心を捉えたのはモディ氏のこの訴えだった。
(拍手)モディ氏が支持を集めた背景には人々のエネルギーへの渇望があった。
3千万台の自動車が走り8億8千万台の携帯電話が使われている。
インドのエネルギー消費量は中国アメリカに次ぐ世界第3位に膨れ上がった。
爆発的な需要を象徴するのがこの光景。
電気を盗む盗電だ。
電気代を払えない人々が勝手に電線を自宅に引き込んでいる。
しかし人々の需要に供給は追いついていない。
モディ氏を支持している一人織物業を営む…毎日頭を悩ませている事がある。
機械が一斉に停止した。
インドでは電力が不足し停電が起きるのは毎日の事だ。
復旧までには長い時には10時間もかかる。
倉庫には停電で納期に間に合わなくなった製品が積まれていた。
停電で経営は思わしくありません。
先が読めないからです。
でもモディ氏が首相になったのできっとよくなるでしょう。
モディ氏が13年間行政を担ってきた…さまざまな手段でエネルギーを確保してきた。
グジャラート州はインドで唯一停電がないといわれる州になった。
ここ5年ほど停電はほとんど起きなくなりました。
モディさんのおかげです。
モディさんが州のトップになってから発展しました。
モディ氏は平均で年10%というインドの中でも高い経済成長率を実現させた。
港を整備し発電用の石炭や天然ガスを輸入。
製油所や道路も新たに建設し物流を加速させた。
(一同)モディ!モディ!モディ!こうしたエネルギー政策を掲げ12億人を率いる事になったモディ氏。
インド全体をグジャラート州のように変貌させていこうとしている。
何だかカレーが食べたくなってきたぞ。
あっ失礼。
それにしてもこの分だとインド12億の人々が先進国のようにエネルギーを使う日も近いかもしれないな。
人類のエネルギー消費はこの200年で爆発的に増えた。
薪や炭を使っていた頃のエネルギー消費はかわいいもんだった。
増え始めたのは19世紀。
石炭による産業革命が起こってからだ。
20世紀に入ると自動車の大量生産が始まり第2次世界大戦後は中東で大油田が次々と発見され世界各国が石油による経済成長を達成した。
エネルギーがもたらす豊かさによって人口も増えた。
2050年人口は100億近くまで増える見通しだ。
エネルギー消費も現在の2倍になるという。
エネルギー消費が増えるのはインドだけではない。
例えばベトナム。
首都ハノイの地下には巨大ショッピングセンターが誕生。
エネルギーを大量に使うライフスタイルに人々が目覚め始めている。
人気の高層マンション。
中はオール電化だ。
アフリカのナイジェリアも経済発展が目覚ましい。
こうした新興国の人々が豊かになりたいというのは当たり前だよな〜。
日本もそうだった。
拡大する消費を賄うために人類はあらゆる手を使ってエネルギーを手に入れている。
それでもこれだけ消費が増えるとなると資源は足りるのか?これまで石油はあと40年天然ガスは60年で枯渇するなどといわれてきた。
だが専門家の間では最近全く違う説が唱えられ始めている。
資源にはまだ余裕があるっていうんだ。
ブラジル・リオデジャネイロ。
今ここで大規模な石油開発が始まっている。
舞台は海岸のはるか沖合だ。
ヘリに乗る事1時間半。
海上にこつ然と現れた船。
この海底に日本の30年分の消費量を超える原油が眠っているという。
全長332m。
原油の採掘から精製までを行う海上の石油生産基地だ。
この日海底に掘った新しい井戸から初めての原油がとれた。
出てきたのはガソリンなどに加工しやすい原油だ。
この原油はかつては手が届かなかった深海から採掘された。
最先端の技術がそれを可能にしたのだ。
船から伸びるパイプは水深2,000mの海底につながっている。
原油が眠るのは海底の更に5,000m下。
深海を掘削するために特殊なドリルが開発された。
水圧の非常に高い深海でも固い岩盤をくりぬけるものだ。
掘り進める事2か月以上。
ようやく目指す地層に到達する。
プレソルトと呼ばれる地層だ。
この岩の隙間に油が含まれている。
1億6,000万年以上前人類が誕生するはるか以前に出来たものだ。
調査の結果プレソルトがブラジル沖合の海底に広がっている事が分かった。
生産基地となっているこの船の建造費はおよそ1,000億円。
このような船が34隻も稼働している。
開発には巨額の費用がかけられている。
大きな利益を見込んでいるからだ。
深海油田の採算ラインは1バレル当たり50ドル程度といわれている。
1バレル10ドル以下とされる中東の油田と比べてはるかに高い。
原油価格は2000年ごろまで1バレル20ドル程度だったが新興国の需要の高まりを背景に100ドル前後に達している。
原油価格の高止まりが開発を後押ししているのだ。
ブラジルの深海油田にはエネルギー需要が高まる新興国の注目が集まっている。
去年10月ブラジルで最大となる油田の開発権の入札が行われた。
(拍手)落札額は過去最高の…中国の国営企業2社を含むグループが落札した。
ブラジルでは今後5年間に8兆4,000億円をかけ更に新たな油田を見つけようとしている。
とどまる事を知らない資源への欲望。
地球の奥深くへと開発を加速させている。
ブラジルだけじゃない。
今世界では新たな方法で資源を手にする国が次々と現れている。
同じ南米のベネズエラ。
シェール革命に沸くアメリカ。
カナダ。
ブラジルと同じ深海油田が発見された西アフリカ。
新たな開発のおかげで確認された原油の埋蔵量はこの10年でおよそ1.5倍に増えた。
だがその間に中国のエネルギー消費は2.5倍。
インドは1.8倍に増えている。
まだまだ足りない。
もっとエネルギーを!新たな資源の開発で原油埋蔵量世界第3位に躍り出た国がある。
カナダ西部の…森林の奥に採掘現場はあった。
探しているのは一見何の変哲もない黒い泥。
オイルサンドと呼ばれる。
高温で熱する事で原油を抽出できる。
オイルサンドの埋蔵量はブラジルの深海油田の3倍以上とされ日本の消費量100年分を超える。
開発は240兆円の富をもたらすといわれる。
21世紀のゴールドラッシュ。
世界中から労働者が押し寄せている。
給料がいいから来ました。
まあ月に240万円は稼いでいます。
弁護士や医者以外では一番給料が高い仕事だと思うよ。
年収?1,600万円から1,800万円くらいかな?ここでもばく大なコストをかけた開発が行われている。
オイルサンドが眠っているのは地下300m。
パイプはその地層に達した所で横に曲がり1kmにわたって伸びている。
パイプに開いた穴から260度に熱した水蒸気が噴き出す。
するとオイルサンドに含まれる原油が溶け落ちる。
もう一本のパイプが油を回収して吸い上げている。
採算ラインはブラジルの深海油田より高い1バレル当たり70ドル。
それでも今の原油価格なら利益が上がる。
オイルサンドの掘削は水蒸気を発生させるため火を燃やす。
放出されるCOの環境への影響に海外から懸念の声が上がっている。
3年前カナダはある決断に踏み切った。
京都議定書の批准国として初めて脱退したのだ。
カナダの州政府はCOの排出量は従来の原油採掘を僅かに上回るだけだと主張している。
240兆円ともいわれる膨大な地下資源を得たカナダ。
開発のペースを緩める気配はない。
飽くなき開発が生み出す新たな資源。
市場で投資家たちは巨額のマネーをこうした資源に競って投資する。
新興国の旺盛な需要を当て込んでいるのだ。
つまりエネルギーの需要がある限り投資は膨らみ資源の高値は続くっていう事だ。
長年原油市場を見てきた専門家もこの流れは止まらないと考えている。
だが原油の高値が続くのは資源を持たない新興国にとってはつらい。
だからあらゆる手段を使って安いエネルギーをかき集めようとしている。
石油やガスの高騰によって苦境に立たされている国がある。
人口はこの10年で急増。
1,000万人増え7,600万人になった。
資源の乏しいトルコでは石油や天然ガスの輸入が増えている。
年間の輸入額は6兆円を突破し貿易赤字が膨らんでいる。
これ以上の赤字拡大は経済に打撃を与える事になる。
できるだけ自国でエネルギーを賄う事が国家の急務となった。
トルコ政府が目をつけたのが水力発電だった。
電力の買い取り制度を導入し民間企業に参入を促した。
その結果新たに400の水力発電所が建設された。
しかし爆発的に増える需要を賄いきれない。
今月トルコの炭坑で大惨事が起きた。
坑内でガス爆発が起き300人を超す人々が死亡した。
少しでもエネルギーを自国で賄おうと増産を急いでいた中で起きた事故だった。
必要なエネルギーをどう確保するか。
トルコは今火力や水力と合わせて国内初となる原発の建設も計画している。
導入するのはロシアの原発だ。
この選択の背景にはロシア側のある提案があった。
原発を導入したい国にとって建設に必要な巨額の費用がハードルとなっている。
それをロシアは2兆円の建設費を全額負担すると提案してきたのだ。
更に原発の運転や管理も全てロシアが担う。
資金や技術がなくても原発の電力を得られるという内容だ。
ただし条件があった。
原発を所有するのはロシア。
ロシアは電気料金を回収する事で利益を得る仕組みになっているのだ。
トルコは急増する需要を賄うためにこの提案を選択するしかなかった。
原発建設に向けた動きは既に始まっている。
この日ロシアの国営企業の担当者が予定地に近い村を訪れた。
住民の多くは安全性を心配し原発建設に反対してきた。
分かりやすくマトリョーシカ人形を使って説明します。
原発の安全性の説明はロシア伝統の人形を使って行われている。
事故が起きてもこのように放射性物質を外に漏らさない構造になっています。
今では住民の半数が建設を受け入れているという。
村から6km離れた海岸。
6年後この場所で原発が稼働を始める予定だ。
トルコでの原発建設に乗り出したロシアの国営企業はほかの新興国への進出にも自信を深めている。
ロシアの原発を導入する事にしたトルコ。
国内にもう一つ原発を建設する事を決めた。
受注する見通しになっているのは日本とフランスの合弁会社だ。
エルドアン首相は安倍総理大臣と首脳会談を重ね原発建設について協議してきた。
トルコは将来の電力需要を見越し原発の建設を急いでいる。
福島第一原発の事故のあと世界の国々は原発建設に慎重になった。
しかし事故から3年たった今海外ではそうした状況が変わりつつあるという。
今世界の国々はエネルギーをどう選択するか難しい課題を突きつけられている。
人口300万人のここリトアニアでも重要な政治課題になっている。
この国では今原発の建設計画が進んでいる。
協議を進めている相手は日本のメーカーだ。
この計画には政治的な理由が色濃く反映されている。
計画はロシアに近いラトビアエストニアと共に進めている。
リトアニアの原発からそれぞれに電力を送る計画だ。
リトアニア東部にある原発建設の予定地。
ここに建てる原発はロシア以外の国に作ってもらう必要があるのだ。
リトアニアはロシアから天然ガスの全てと電力の7割を供給されている。
エネルギーをロシア1国に依存するのは避けたいと考えたからだ。
今年その方針を決定的にする事態が起きた。
ウクライナとロシアの関係悪化だ。
緊張が高まる中ロシアはウクライナに向けた天然ガスの供給を制限すると通告。
リトアニアがエネルギー政策を見直す大きなきっかけとなった。
今年3月事態を受けてリトアニアでは与野党が原発の計画を進める事で合意した。
国民生活に欠かせないエネルギーを断たれる事は避けなければならない。
リトアニアは独自のエネルギー源の確保を急ぐ方針だ。
現在世界にある原発は426基。
更に181基の原発が新たに建設される予定だ。
安全性や廃棄物の問題をはらみながらもその数は増え続けている。
新たなエネルギー源を探し続ける世界。
それを突き動かしているのは豊かさを求める人々の願望だ。
ベトナム北部の…今村の暮らしが大きく変わろうとしている。
この日村の人たちが待ち望んでいた変電設備が完成した。
これまで電力が乏しいため十分電気が使えなかった。
それが使いたい時に電気が使えるようになったのだ。
電気が自由に使えるようになった村人たちは50km離れた電気店に向かう。
テレビ。
冷蔵庫。
洗濯機。
農村の暮らしは急速に変貌を遂げている。
今日はテレビを買いました。
新型のテレビです。
スピーカーシステムも欲しいです。
今後5年でベトナムの電力消費は2倍になると見込まれている。
豊かで便利な生活をしたいという人々の願望が世界の各地で新たに芽生えていく。
この先も人類のエネルギー消費は増え続けるだろう。
いくら開発が進んでも地球の資源にはもともと限りがある。
いつかは使い果たす日が必ずやって来る。
その時何が起きるのか誰にも分からない。
アメリカ政府にエネルギー政策を助言しているリチャード・ハインバーグ氏。
このままエネルギーを消費していけば人類はいずれ行き詰まると言う。
まずは…地球上の資源を貪欲に追い求めるエネルギー開発。
ここモンゴルのゴビ砂漠でも地下に眠る資源を得るための掘削が進められている。
原発で核燃料として使われるウランだ。
世界で原発が増えればウランの需要が高まるとして獲得競争に拍車がかかっている。
ここではウランをより効率よく回収するために新たな方法が試みられている。
世界が更にこれから発展しエネルギーが必要になります。
私たちはウランを売って大きな利益を得たいのです。
人類が火を手にして以来追い求めてきたエネルギー。
地球の奥深くに眠っていた資源にまで手が届くようになった。
そうして得た貴重な資源でどのような世界を築いていくのか。
未来への確信が持てないまま人類はエネルギーの奔流に押し流されていく。
2014/05/26(月) 00:50〜01:40
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル エネルギーの奔流 第1回「膨張する欲望 資源は足りるのか」[字][再]

新興国の爆発的なエネルギーの消費。その需要が世界各国で猛烈な資源開発を起こしている。欲望の果てに何が待っているのか。新たな時代を迎えたエネルギーの最前線を追う。

詳細情報
番組内容
アジアを中心とした新興国では経済成長とともに爆発的にエネルギーが消費されている。2050年には世界の人口は96億人に増え、エネルギー消費は2倍に膨らむといわれている。一方、その需要に駆り立てられ、猛烈な資源開発も進み、“枯渇”が叫ばれた時代は過去のものとなろうとしている。欲望の果てに人類を待っているのはいかなる未来か。危うい綱渡りをしながらも突き進む世界各国のエネルギーの最前線を追う。
出演者
【語り】松重豊,井上二郎

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 報道特番

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