(テーマ音楽)「きょうの健康」です。
今日は月に1回新しい治療法の開発など最新の医療情報をお伝えする「メディカルジャーナル」です。
さて今回はこちら。
2014年2月27日大阪府吹田市にある国立循環器病研究センターは認知症の新しい治療につながる研究成果を発表しました。
脳梗塞の再発予防に使われるある薬が認知症の進行を抑えこの薬を服用した人たちでは…今後研究チームでは…さて認知症といいますと発症を予防したりあるいは治療が大変難しいというイメージがあります。
今日はこの認知症にまつわる最新の医療情報をお伝えしてまいります。
ではお迎えしている専門家をご紹介致します。
研究チームのお一人…脳血管障害認知症がご専門です。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
それではお話伺う前にまず認知症とはどういう病気なのか基本的なところのご説明からお願いします。
認知症と申しますのは認知機能が低下して日常生活に支障を来した状態を指します。
原因は1つではございませんでアルツハイマー病ならびに血管性認知症で大部分を占めております。
動脈効果等によりまして血管が傷みまして神経細胞が死んで認知機能が損なわれるのが血管性認知症。
一方で神経細胞がひとりでに死んでいって認知機能低下が起こるのがアルツハイマー病です。
この2つで認知症の原因の大部分を占めているという事になりますが現状ではどんな治療が行われているんでしょうか?最も多い原因でありますアルツハイマー病ではこの神経伝達を活発にするようなドネペジルなどの薬が使われております。
一方でメマンチンといいますのは…現状のお薬ですが今回注目されたのはこれとは全く別のお薬という事ですがどういうものですか?私たちが注目したのはこのシロスタゾールという飲み薬です。
これは脳梗塞や閉塞性動脈硬化症の治療薬として使われております一般的にいう血液さらさら薬の一つという事になります。
これよく目にしますよね。
非常にジェネリック薬も開発されておりますので非常に一般的な薬で薬価も安い薬です。
副作用とありますが…?副作用としましては頭痛と頻脈が知られておりますが非常に安全性が高い薬という事が分かっております。
つまりいわば非常によくこういった病気に使われている普及しているお薬だという事なのでそれに注目されたという事ですよね。
このシロスタゾールそれでは認知症にどんな効果がある事が分かったのでしょうか?軽度の認知症の方を対象に我々は研究を行いました。
ドネペジルという従来から使われております認知症を内服している軽度認知症の方を2群に分けました。
この2つの群ともドネペジルは使っていらっしゃるという事ですね。
縦軸は認知症の進行具合を表しておりますので下に行くほど認知症が進行した状態です。
シロスタゾールを服用していない方では年間2.25点の低下が観察されましたがシロスタゾールを服用している方では0.5点の低下にとどまりました。
おやこの差は大きいですね。
つまり80%の進行抑制が見られたという事になります。
これはしかし驚くべき結果ですが一体どういう事でこういった結果が出たのだとお考えなんでしょうか?これまでとは違ったターゲットに作用を及ぼしているというふうに考えております。
これはアルツハイマー病の脳でアミロイドβを主成分としてたまってくるタンパクの塊を示します。
こういうものが脳の中に増えてくる訳ですよね。
これ以外にも実はアミロイドβというのは血管の壁にもたまってくる事が知られておりましてこれは脳アミロイド血管症というふうに呼ばれております。
これは血管の壁を大きく見せて頂いてる訳ですね。
茶色い所こういった所に血管の壁にたまっているんですね。
シロスタゾールは脳アミロイド血管症に効果を及ぼしたというふうに考えております。
この脳の血管にアミロイドβがたまるという事の意味ですねこれどんな悪影響を及ぼすんでしょうか?脳の血管を傷つけますので3つの大きな悪影響が出てきます。
1つずつ伺いましょう。
1つ目が老廃物の排出力が低下するという事になります。
実は脳にはリンパ管がございませんので老廃物というのは血管の外側を流れるという事が分かっております。
ちょっと待って下さいよ。
老廃物というのは血液の流れに乗って血液と共に出ていくのではないのですか?その血管の中を流れていくという経路もございますがもう一つ脳には特殊な経路がありまして老廃物が血管の動脈平滑筋の間を流れていくという経路がございます。
血管の壁の筋肉なんですね。
これが血管の拍動が駆動力となって流れていくというふうにいわれております。
拍動…つまりドクンドクンという血液の流れですね。
それがアミロイドがたまる事で損なわれますので動脈の壁がもろくなるという悪循環が起こってまいります。
こうしたアミロイドがたまるとその拍動も弱くなり…。
更にアミロイドがたまってくるという事になるんですね。
出力が弱くなる訳ですよね。
こうしてたまっていく事が分かりました。
さて3つの悪影響とおっしゃいました。
この2つ目には血管がもろくなる微小出血という言葉が見えますがどういう事でしょうか?アミロイドβが血管の壁にたまりますと血管が破れやすくなって小さな出血である微小出血が起こってきます。
微小出血それは…画像でお示し頂きましょう。
最近のMRIの進歩によりましてこういう微小出血がよく見えるようになってきました。
黒い点が全て微小出血です。
よく見えるようになってきた訳ですね。
拡大しますとこの黒い点が全て微小出血という事になりますのでこういうものが多発しますと神経の機能が損なわれてまいります。
こういうごく僅かな出血が増えてくると神経細胞に悪影響があるんだという事で認知機能の低下につながるという事なんですね。
さて更に悪影響の3つ目です。
これは脳の血流低下認知機能の低下とありますがこれは?アミロイドβが血管の壁にたまりますと脳の血流頭の中の血液の流れが悪くなりますので認知機能の低下に直結します。
しかし脳の血流血の巡りが悪くなるだけで認知機能の低下という事に結び付く…これは?どういう事なんでしょうか?実際に動物実験を行いますと約2割血流が低下したマウスを8か月間観察しますと…。
こちらですね。
8か月後には記憶をつかさどる海馬の体積が約20%減少するという事が分かりました。
つまり脳の萎縮が明白に分かったという事なんですね。
血流が低下するだけでこういう事が起こってくる事が分かったという事ですね。
こうした3つの悪影響を今いろいろご説明を頂きましたがさて今日のお話の主役ですがシロスタゾールはそうした悪影響に対してどんな働きをしているという事が分かっているんでしょうか?シロスタゾールには大きく分けまして2つの効果が期待されております。
1つ目は本来の血液さらさら薬の効果としての脳の血液循環の改善作用が期待されます。
血の巡りがよくなるんだと考えていい訳ですね。
もう一つ別の作用としまして老廃物の排出を改善する作用が期待されています。
老廃物の排出改善作用これをもう少しご説明頂きましょう。
このアミロイドβのような老廃物は血管の隙間を流れていきますがシロスタゾールは本来副作用として頭痛が知られております。
頭痛というのは血管の拍動が高まる事によって起こるというふうにいわれますので。
ドックンドックンっていうのが激しくなるから頭が痛くなるんだという事ですね。
いわばその副作用を逆手に取って老廃物を流してやろうという治療という事になります。
そういうところに着目なんですね。
これは確かめられているんですか?動物実験ですね。
実際にアルツハイマー病のモデルマウスを用いますとシロスタゾールを投与しておりませんとご覧頂きますように海馬に茶色で示しますアミロイドβがたくさんたまっておりますが。
細かい点がいっぱい見えますよね。
たまってる状態。
シロスタゾールを投与しておきますと海馬でのアミロイドβの蓄積が減少します。
こうしてしっかりと確かめられている訳ですよね。
今日のお話で出ておりますシロスタゾールというのは脳梗塞の再発予防であるとか血液をさらさらにするという目的で私どもはよく処方されるお薬ですよね。
ごくありふれたお薬ですよね。
そうしますとこういう効果があるという事が分かってきた訳ですからすぐに認知症の対策として使えないんでしょうか?残念ながら使用できません。
これは既にある薬を別の目的で使う場合においても治験という手続きを踏まなければいけません。
次第に患者さんの数を増やしていって第3相まで行きました後に効果と安全性を確かめて実際の適用になるという手順を踏む必要がございます。
治験さまざまな段階を踏んでという事は私ども承知しておりますがこのシロスタゾールにおいては今どういう段階なんでしょうか?既にシロスタゾールは脳梗塞の治療薬として使われており安全性が確認されておりますので今回は第2相からスタートする予定にしております。
つまり第1相ここは省略してよいという事なんですね。
ここからスタートするという事ですよね。
さてその治験ですがシロスタゾール具体的にはどういう形を想定しておられるどういう方が対象なんでしょうか?認知症と正常の間にございますMCIと呼ばれます認知症の予備群の方を対象にしようというふうに考えております。
これちょっと混乱するんですが認知症の予備群の方が対象とおっしゃいましたですね。
先ほどのお話では軽度認知症の方を対象に研究を行われたその効果をご説明頂きましたね。
今回は対象が認知症の予備群MCIの方になってますね。
この差はどういう事なんでしょうか?我々の研究では認知症が進んでしまいますとシロスタゾールの効果がないという事が分かりました。
かなり進んだ方については効果はなかったと。
従って早ければ早いほどシロスタゾールの効果が期待できるという事になりますので我々が予防という観点からMCIの方を対象に治験を行いたいというふうに考えておりましてMCIの人で予防を目指す治療というのは日本で初めての試みですし世界的にも先駆けの研究という事になります。
ここかなり進んでからよりは早めに使う事によって効果が期待できるというそのための治験だという事になりますよね。
さてこの治験はいつどういう形で始まるという事なんでしょうか?この秋頃から実施予定でして私ども国立循環器病研究センター以外にも日本の各地の医療機関で行う予定にしております。
ここ押さえさせて下さい。
こういう地名が挙がってますね。
複数の医療機関で行われるという事ですね。
そして対象は先ほどご説明頂きましたが…。
予備群の方ですね。
認知症になる一歩手前の方を対象にするという予定です。
認知症の治療薬をまだのんでいない方という事ですね。
そしてこういった形。
約2年間の追跡を行いましてシロスタゾールの効果を確認したいというふうに考えております。
この効果どういうふうに結果が出るか非常に楽しみなところですがそれにしましても今日お話伺ってまいりましてシロスタゾールといういわばありふれたお薬が認知症に対して効果が見られるというのは大変期待すべきいい話ですね。
認知症におきましては本来は神経細胞に焦点が当たってまいりましたがこの度血管に対する作用にも光が当たってきたというふうに考えております。
血管を守るという事が今後非常に重要になってくるというふうに考えております。
血管が非常に大切ですので運動したり生活習慣病を管理する事でしっかり血管を守っていって頂きたいと考えております。
今回のお話つまり認知症神経細胞が傷んでいくんだなというイメージがございましたが脳の中の血管の傷みという事にも光を当てられたと。
そこポイントなんですね。
神経細胞だけではなく血管の働きを高めるという方法が認知症の治療にも重要だろうと考えております。
今日のお話どうもありがとうございました。
さて「きょうの健康」次回はご覧のテーマでお送りします。
是非ご覧下さい。
ありがとうございました。
2014/05/26(月) 13:35〜13:50
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 メディカルジャーナル「認知症 新発想で挑む」[解][字]
最先端の医療情報を伝えるメディカルジャーナル。脳の血管に薬で働きかけて認知症の進行をくい止めることを目指す新発想の治療研究を紹介する。
詳細情報
番組内容
最先端の医療情報を伝えるメディカルジャーナル。国立循環器病研究センターが中心となって進めている最新の認知症治療研究を紹介する。その方法とは薬で脳の血管に働きかけ、老廃物の排出を促し認知症の進行をくい止めようという新発想のものだ。しかも新薬ではなく、一般的な薬で効果が期待できるため実用化への道も近い。新発想の認知症治療研究について国立循環器病研究センターの研究者に詳しく聞く。
出演者
【講師】国立循環器病研究センター医長…猪原匡史,【キャスター】濱中博久
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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