2人生デザイン U−29「鍵屋」 2014.05.26

(削る音)営業ウェブデザイン配達などなど。
数々の仕事を転々としてきた山本さんただいま28歳。
6度目の仕事として選んだのが「鍵屋」だった。
(山本)30以降でもしこの鍵屋の仕事辞めたら…仕事の失敗や上司とのトラブルなどが原因でどの仕事も長くは続かず成果を出す事ができなかった。
言うたら自分が「頑張ってます」って言っても他の人から見たら「まだまだ頑張ってない」って否定されたらそれで終わりじゃないですかどんなに頑張ってても。
この仕事が…そんな思いで半年前鍵屋の門をたたいた。
(泣き声)山本さんこれまでとは違う人生をデザインする事ができるだろうか。
おはようございま〜す。
あんた遅いやんか。
あれ?遅かったです?今日。
え?あれ?今日遅かったです?時間。
今回の舞台は四国でも指折りの老舗鍵屋。
(取材者)おはようございま〜す。
おはようございま〜す。
時間がちょっと遅かったんで。
去年の10月に就職したばかりの山本慶さん。
面倒を見てくれるのは2人のカギ開け名人だ。
社長の森さん。
さまざまな勉強会に出席するなど人一倍研究熱心だ。
そして先代社長の藤本さん。
警察官に指導するなどこの世界ではちょっとした有名人。
この2人の腕を頼りに県外からも数多くの依頼が来ている。
はいいらっしゃいませ!
(チャイム)はい。
合カギを作りにお客さんがやって来た。
持ち込まれたカギの形を見てそれに一番近い物を1,000種類以上ある中から探す。
カギのギザギザの深さに注意しながら0.1ミリ単位で削っていく。
(削る音)突然音が変わった!その変化に気付いた藤本さん山本さんのカギをチェック。
(カギを捨てる音)捨てちゃった!
(削る音)これがちゃんと削れている音。
山本さん力が入り深く切り過ぎてしまったようだ。
カギにまつわる悩みを一手に引き受けるこの仕事。
中でも緊急性の高いカギ開けは一番の腕の見せどころだ。
こちらは金庫の番号を忘れてしまった女性からの依頼。
(ダイヤルを回す音)社長の森さんによるとダイヤルを回す時にちょっとしたコツがあるそうだ。
(ダイヤルを回す音)
(開く音)さすが社長!
(森)大丈夫ですかね?
(女性)開いた開いた。
今度は100年以上前に建てられた蔵のカギ開け。
この道40年以上のベテラン藤本さんの出番だ。
カギの世界は奥が深い!
(藤本)来た来た来た!
(森)開いた!古い物もあれば新しい物も次々に発売されるこの世界。
山本さん何だが覚える事が多くて大変そうだねぇ〜!やっとピタッと合ってカギがガチャッと開くっていう。
まぁちょっと変だなって思われるかもしれんですけどそういうギミックとかも面白いですし手段がちょっと違っていたりとか平気でするんでそういうのを発見するのも面白いですね。
山本さんが主に担当しているのはカギの取り付けや交換。
宴会場のトイレが壊れてしまった旅館からカギの交換依頼が入った。
はい。
はい。
はい。
(電動ドライバーの音)40分後には宴会がスタート。
それまでに作業を終えなければならない。
ついつい焦って道具の扱いが荒くなってしまう。
よし。
あっすみません。
はい。
はい大丈夫です。
(森)はい。
作業は時間内に無事終了。
しかし次の現場でも…。
難しいお客さんやったらはい。
そこ置いたら怒られるよ。
大理石のバリバリの所へ工具ボンって置かれたら多分嫌やろ。
はい。
すみません。
「焦って同じ失敗を何度も繰り返す」。
それが山本さんの課題だ。
や〜らかした〜。
あるある。
しかし失敗ばかりしていられない事情がある。
4か月前に入った小川さんの存在だ。
ちなみに元パティシエで手先も器用。
年齢も近い。
まあ正直な話し…居酒屋から傘立ての修理の依頼が入った。
数が多いので2人で協力してカギを作る事に。
先に作ったのは山本さん。
ん?続いて後輩の小川さん。
1発成功!18。
18。
やっぱ見間違いかな?ここ最近小川さんに後れを取る事が多くなってきた。
小川はですね基本的に1回言った事は割と覚えてます。
忘れる事もあるんですけど意外と覚えてたりしてあと一回やると割と構造的な事とかも頭でひらめくんでしょうね。
器用に本当にうまくこなしてます。
山本はセンスはないです。
簡単に言えばもう不器用で本来なら手先を使う仕事は向いてないかもしれません。
まだ分からないんですけど。
まあそこを情熱と努力でカバーすれば何とかなるんじゃないでしょうか。
「やる気だけは負けない」。
空き時間にカギの構造について勉強してみる事に。
しかし分解しすぎてしまい訳が分からなくなった。
山本さんがこの仕事に就くまでには紆余曲折があった。
自作です完全に。
(取材者)こういうの得意なの?はい。
人のパソコン作ったりとか平気でやってるんで。
ゲーム業界への就職を夢見て専門学校へ進んだ山本さん。
在学中に始めたバイト先でつらい経験をしたという。
常連のたこ焼き屋があって「ちょっと手伝わせて下さい」みたいな感じでやってて。
まぁそっから暴力だったりとかそんな事があって…。
言ったら失敗したら殴る蹴るは当たり前。
それでもうこの耳ですよ。
はい。
バイトでつまづいてしまった山本さん。
就職活動をしないまま卒業を迎えた。
1年後営業の仕事に就いたものの長くは続かなかった。
やっぱり自分でもなんですけど無理しちゃうんですよねきっと。
あの…自分の容量を超えてでもやってしまうっていう悪い癖なんですけど。
まぁそれがあってどうしても空回りしちゃって最後もうドンと落ちちゃってもう何もやらないみたいな感じのところはある。
その後さまざまな仕事に挑戦するが職場にうまくなじむ事ができず転職を繰り返してきた。
言い訳になっちゃうんで前職がどれが悪かったかっていうのは。
自分が悪いんで結局辞めるっていう判断も全部自分がしたんで。
「今度こそは一生の仕事に就きたい」。
ハローワークで見つけた鍵屋の仕事に人生を賭けてみる事にした。
だってこれ離したらもう僕終わりやと思ってますしもうこの先はい上がれる事もないですしきっと。
30以降でもしこの鍵屋の仕事辞めたら「あなたの手には何が残るの」っていう。
「ラストチャンス」と挑んだこの仕事。
しかし社長からは毎日駄目出しの連続。
合カギを作っている最中親指の位置について指導が。
え?右手の親指て?
(森)うん。
それ何?右手の親指。
ああ…。
注意されるもいまひとつ納得がいかないようだ。
はい。
…人間なんで。
だからまぁ少し遠回りかもしんないすけど自分の覚えやすいようにやって一つずつ身につけていくって。
こちらが山本さんの一週間スケジュール。
残業は少なくプライベートな時間が十分に確保されいる。
ちょっと行ってきます。
はい。
やばいあと5分しかない!お疲れさまでした!もしかしてデート?…にしちゃ格好がラフだぞぉ?向かった先はなんとぉ〜!
(ダンス音楽)山本さんは去年からここで週1回踊っている。
う〜ん何かいい感じに力抜けてる感じはするんだけど何でまたダンスなの?
(岡本)不器用なんですよね。
体の使い方とかもセンスがある人とかだったらすぐできてしまうステップっていうのも慶君はやっぱり時間かかってしまうんですよ。
でももうそこはちゃんと自分で自分の体質というかそれを受け止めたうえで黙々練習はしてますんでちゃんと毎日真面目にやってれば上手になるかなと思います。

(Mummy−Dの歌声)あれ?これ俺の曲だな。

(Mummy−Dの歌声)ちなみにこれ山本君オリジナルの振り付けなんだって。

(Mummy−Dの歌声)うん。
うんうん。
伸びしろは無限大だね。
こちらが山本さんの収入と支出。
実家暮らしのため毎月母親に4万3千円渡している。
収入の方は技術を身につける度に増えていくそうだ。
入社して半年ついに念願のカギ開けに挑戦する事になった。
時間あります?全然大丈夫です。
無くても作ります。
(小川)ついに。
ついに来たね。
最初に教わるのは特に依頼が多い車のカギ開け。
炎天下の車内に閉じ込められた子供を助けるなど命に関わるケースもあるそうだ。
ここで一般的なカギの構造を説明しよう。
こちらが断面図。
中のピンが引っかかり開かない仕組みとなっているが正しいカギを差すと回転して開ける事ができる。
これをカギを使わず特殊な工具を使って開ける。
鍵屋の世界では現場に駆けつけてから…このカギ開けがクリアーできずにこの仕事を辞める若者も少なくないそうだ。
あともう少し。
(森)永遠にやりよっても…。
(ため息)順番が違う訳やきいくらやってもいかんろ。
朝までやってもいかんで。
続いて小川さんも挑戦。
作業する事20分。
なんと開けてしまった!最後触れんといった時に「あっ」って入って…ほ〜。
後輩の小川さんが開けた事で山本さんの闘争心に火が付いた。
山本さんMAXの集中力。
でもカギはなかなか開いてくれない。
いきなり最初から開く人はまずあんまりおらんきお前もむきにならんと頑張って頑張らんといかんのやけど。
いや開けます。
まあまあリラックスしながらね。
絶対に開けます。
う〜ん…。
(小声で)「絶対に開ける」。
それ今日か?今日です。
あ今日か。
小川君が開けられたんですから僕もできない事はないですし。
(森)まあまあ「やる」と言うならやってくれ。
俺もつきあうわ。
作業開始から2時間。
一向に開く気配はない。
すみませんあのこれ以上つきあわせるの悪いんで…置きますちょっと。
いや納得はいかんですけどしかたないです。
(森)まっいきなり…。
たまたま小川は開いたかもしれんけどいきなり開かんのが普通やき。
はい。
できんのは僕の責任僕が悪いんで。
(森)いや「悪い」っていうのはおかしいで。
悪い事ではない。
全然。
悪い事でも何でもない。
一生懸命頑張って開けろうとしゆう訳やき。
はい。
そう取るのはおかしいよお前。
考え方がそれは。
これからずっとカギで仕事で食べていこうと思うがやったら今ここで開くくらい長いこれからの人生のたった1日…1日でもないよね2時間3時間やんか。
お前にとってプラスになるんやないか将来。
う〜ん…これから頑張っていったらいいと思うんき別に。
うんお疲れ。
(小声で)はい。
(山本さんの泣き声)すみません。
(森)謝るな。
謝る事ではない山本。
悪くもないのに謝るな。
(すすり泣き)それから…
(笑い声)お前もそう。
「一人前の職人になってほしい」。
転職をしてきた2人への社長からのメッセージだ。
会社のためにすごい今力になってくれてそれはありがたい。
ただでもちょっともう一歩君らが成長してもらえるために俺も今思う事をちょっとまあ。
「どう思うかな」と思って。
そうですね何か変に頑固になってたんじゃないかなっていう無意識のうちになんですけど聞いてるつもりで聞いてなかったんじゃないかなって。
多分それが答えじゃないですかね。
まぁただでさえ物覚えが悪い人が努力しなかったら意味がなかったっていうのがもう今の僕でしたね。
はい。
翌日山本さんはアパートのカギ交換をしていた。
おっ!商売道具ちゃんと大事に扱ってるね。
お疲れさまです!仕事ぶりちょっと変わったんじゃない?えっとやっぱり言われた事を素直に受け入れるっていう事です。
物の置き方一つにしても乱暴に置かないっていう事なんだけど。
ちょっと意識するだけでも全然違うっていう。
まぁあとは慌てず自分のペースでですね。
まぁ時間が迫っていても。
仕事の後はカギ開けの練習を毎日続けている。
情熱と努力が山本さんの未来をデザインしていく。
キタ〜!うるさい。
すいません。
はい。
(森)一応電話中やき。
お前興奮しすぎすぐ。
びっくりしたもう。
それはうれしかったんやろうね。
やった小川君!シャ!は〜いロンちゃんおいで!ほらほら…。
ロンちゃん何グルグルグルグル…。
2014/05/26(月) 23:25〜23:50
NHKEテレ1大阪
人生デザイン U−29「鍵屋」[字][再]

これまで5度の転職を繰り返してきた山本慶さん(28)。最後のチャンス!との思いで鍵屋の門を叩いた。この春、一人前の鍵屋になるための最大の壁「鍵開け」に挑む。

詳細情報
番組内容
5度の転職を繰り返してきた山本慶さん(28)。最後の仕事にしたいと飛び込んだのが高知の老舗鍵屋だ。しかし待っていたのは厳しい職人の世界。不器用ですぐに焦ってしまい失敗を繰り返す毎日だ。そんな彼がこの春「カギ開け」の習得に挑む。カギ開けができて初めて一人前といわれるこの世界、習得できずに仕事を辞める若者も少なくない。山本さんは、これまでとは違う人生をデザインすることができるのか?
出演者
【語り】Mummy−D

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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