(拍手)
8年前夏の甲子園決勝。
一人のヒーローが生まれました
今大リーグで活躍する田中将大投手に投げ勝って優勝。
その姿に日本中が沸きました
(実況)三振!早稲田実業初優勝。
涼しい表情で活躍する「ハンカチ王子」への評価はその後も高まり熱狂は社会現象にまでなりました
この斎藤投手を私は高校大学で同じ野球部の1年先輩の投手として近くで見続けてきました。
私は今回初めて斎藤投手に取材を申し込みました。
それは今彼がかつてないほど厳しい状況に置かれているからです
プロに入ってから満足のいく結果を出せずおととしの6月以来勝利から遠ざかっています
投手としては致命的ともいえる右肩のケガも抱えています
「ハンカチ王子」として騒がれた時とは環境が大きく変化した今斎藤投手は何を思っているのかその胸の内を聞きました
それは「ハンカチ王子」というもう一人の自分と闘う男の叫びでした
プロ野球日本ハムの選手たちがキャンプ地の沖縄に入りました
その中にプロ4年目を迎えた斎藤佑樹投手の姿がありました
はい!
ドラフト1位で入団した斎藤投手
期待がかかった2年目も5勝にとどまりました
そして右肩にケガを負い去年はほとんど登板の機会がありませんでした
2年ぶりとなる今年の一軍キャンプ
全体練習の合間にも右肩の補強トレーニングを行っていました
斎藤投手の右肩のMRI画像です。
ケガを負ったのは腕と肩甲骨の間にある「関節唇」という箇所
この関節唇を損傷し肩を動かす度に激痛が走りました。
投手生命を脅かしかねないケガでした
一時はキャッチボールさえできない時期がありました。
もう一度マウンドに立つためリハビリを続けてきました
プロ野球選手として再び光を取り戻せるのか。
斎藤投手は今岐路に立たされています
キャンプ中のこの日
私は斎藤投手と2人で話をする機会を得ました
話す事で気持ちの整理をしたいと斎藤投手は言いました
私がまず尋ねたのはプロとしての今の自分をどう見ているのかという事でした
斎藤投手がこんなにも率直に弱音を口にした事に私は驚かされました
学生時代私の知る斎藤投手はがむしゃらで負けん気が強い男でした
高校2年の時にはストレート勝負を続けて打ち込まれたのを先輩から非難されるやマウンド上から食ってかかる熱い一面を見せました
しかし「ハンカチ王子」と呼ばれるようになってからは報道陣やチームメートの前で感情をあらわにする事を避けるようになりました
まあ言ったら…そんな感じはありますよね。
私は「ハンカチ王子」と名付けられた事を斎藤投手がどう思っているのか初めて聞いてみました
やっぱり高校を卒業して…
「『ハンカチ王子』という虚像を前に自分を作ってしまった」。
私はその言葉から斎藤投手がかつての自分から何とか抜け出そうとしている事を感じました
自分を変えようとする斎藤投手。
その一端が自主練習の中に見て取れました
数m先のネットにボールを投げ込み投球フォームを固める「ネットスロー」という基礎練習です
学生時代から一度もした事がないこの基礎練習をキャンプ中何度も繰り返していました
練習につきあっていたのはトレーニングコーチの中垣征一郎さんです。
ダルビッシュ有投手の個人トレーナーも務めていました
この日取り組んでいたのは下半身の使い方。
踏み込む左足を深く曲げて大きく体重移動するようにしています
ケガをした右肩に負担をかけず球威を増すためのフォームの改善です
コーチの中垣さんは斎藤投手がケガをきっかけに周囲の期待と自分の力に開きがある現実を受け止め始めたと感じています
この日初めてブルペンに入りました
不安だった右肩に痛みは出ません
ストライク。
踏み込む左足を深く曲げるフォームができているか確認しながらおよそ70球投げ込みました
久しぶりに集まった報道陣に手応えを話しました
しかしその2時間後報道陣が去ったブルペンに再び斎藤投手の姿がありました。
キャンプ中とはいえ1日2回のブルペンは異例の事です。
最初のブルペンではフォームに納得できないところがあったのです
何かをつかもうと必死になっていました
かつて熱狂の渦の中にいた斎藤投手。
今周囲から注がれる目は少なくなっています
しかしむしろ今の方がプロとして戦う意味を強く意識し始めたといいます
はいお願いします。
ぐちゃぐちゃでいいです。
おっ書けた。
ありがとうございます。
おお。
ありがとうございます。
頑張って下さい!ありがとうございます。
去年斎藤投手のもとに届いた応援の手紙です
ケガや病気と闘う人たちからの再起を望む声が増えてきました
「復活した斎藤投手は息子を勇気づけてくれるはずです」
「早く一ぐんにあがってがんばってください」
キャンプ終盤練習試合など4回の登板機会が与えられました
合計9イニングを投げ2失点
(拍手)
取り組んできたフォームで成果を出そうとしていました
過去の自分から抜け出そうともがく斎藤投手。
一方この時かつてのライバルは華やかな舞台に立っていました
ヤンキースの田中将大投手。
斎藤投手がキャンプを終えた翌日オープン戦で初登板。
2回無失点の好投を見せました
田中投手と斎藤投手の間に生まれた大きな差。
その事をどう受け止めているのか。
取材者として私はあえて聞いてみました
これまで私の前で見せた事がなかったいらだち
そこに「ハンカチ王子」にいつまでもとらわれたくないという斎藤投手の葛藤を見ました
(ノック)
開幕1週間前斎藤投手は大学時代の同級生と会っていました。
ブルペンキャッチャーだった…
もうちょい。
あ〜いいねえ。
どう?
(牛場)うまっ!オーバーリアクションすぎでしょ。
ほんとに肉食いたい。
ほんとそういうとこ上手だよね。
かつての自分を知る仲間を前に今まで感じてきたプレッシャーを打ち明けました
あのさ…。
(牛場)うん。
できたもん。
周囲の期待に応えなければいけないという焦り
1年目の成績6勝6敗は新人としては悪くはありません。
しかし斎藤投手は10勝以上挙げなければと思い詰めていたというのです
「ハンカチ王子」と呼ばれるようになって以来人前では優等生のように振る舞ってきたという斎藤投手。
今の自分にはそんな余裕がない事に気付いたと口にしました
(牛場)そうだね隠れる…。
周囲の評価を気にしないで目の前の壁を一つ一つ乗り越えねばならないと自分に言い聞かせているようでした
2014年のシーズン幕開け。
斎藤投手は2年ぶりの開幕一軍です
(場内アナウンス)「ピッチャー斎藤佑樹背番号18」。
先発を任されたのは第2戦
672日ぶりの勝利が懸かっていました
序盤は粘りの投球。
手応えが感じられます
(拍手と歓声)
しかし結果は6回4失点。
勝利を挙げる事はできませんでした
翌日試合を振り返った斎藤投手
2年ぶりの大舞台だからこそ自分が勝てると思い込んでいたといいます
プロ2年目で任された開幕戦。
大舞台で勝負強かったかつてのように今回も結果を出せるだろうと思っていたのです
そして任された2回目の先発。
斎藤投手は勝負の厳しさを突きつけられます
ストライクが入りません。
投球に力みが見られました
1回から2点を失います
キャンプで取り組んできた左足を深く踏み込むフォームができていません
2回を持ちこたえられませんでした
取材には丁寧に応じてきた斎藤投手がこの日は立ち止まろうともせず感情をあらわにしていました
追いかけてきた記者に答えた言葉も僅かでした
翌日斎藤投手は二軍行きを言い渡されました
話せる範囲でいいんだけどどうだった?やっぱ悔しいですよね。
こういうのって1日たって切り替えられる人はいいって言いますけどとてもじゃないですけど切り替えられないです。
昨日はつらかったっすよ。
はぁ…。
ありがとう。
ありがとうございます。
活躍しなければいけないという気持ちが空回りして自分を見失ってしまったと悔やんでいました
気落ちする斎藤投手のもとにコーチの中垣さんが駆け寄りました
キャンプで行っていた基礎練習のネットスローを始めました
斎藤投手は着実に力をつけているものの結果を出す事にこだわりすぎていると中垣さんは感じていました
うっす。
お願いします。
中垣さんは今の自分の力を出し切る事だけを考えてほしいと伝えました
二軍の室内練習場
一人でネットに向かって投げ続ける斎藤投手がいました
「ハンカチ王子」の時の涼しい顔ではなくなりふり構わない姿でひたすらに練習を続けていました
もし周りがどん底って言うんだったら……というのはありますからその中で自分がやるべき事をしっかり見つめ直してやっていかないといけないなというのは感じてますし。
それこそどん底だっていう言葉を使うんだったら周りがそうやって使うのは全然いい事なんですけど…
二軍に落ちてから1か月。
4回目の先発です
(場内アナウンス)「ピッチャー斎藤佑樹」。
この日はストレートに切れがありました
去年打撃二冠王のブランコ選手も三振
4回
スリーランホームランを打たれました
ところが私が試合後に訪ねると斎藤投手の顔に曇りはありませんでした
何か違うの?
斎藤投手は「目の前の打者を打ち取る事だけに集中していた」と話しました
ほっとします。
よかったです。
久しぶりになんかいい顔で。
ナイスピッチング。
斎藤投手が今も厳しい状況に置かれている事は変わりません
しかし私にはこの数か月で斎藤投手が何かつかみつつあるように見えました
それは斎藤投手に「ハンカチ王子」と呼ばれる前の熱くがむしゃらな様子が戻ってきているように思えたからです
本当に人生ってどうなるか分からないから先も読めないんですけど。
自分がどうなりたいかっていうのをしっかりと見つめ直せたかなと思いますね。
それがまだ結果に結び付いてるわけじゃないですけど。
「ハンカチ王子」というもう一人の自分と闘い続けてきた日々
本当の斎藤佑樹であるためにもう一歩前へ。
投げ続けます
(涼)何で…。
2014/05/27(火) 00:40〜01:25
NHK総合1・神戸
地方発 ドキュメンタリー「“ハンカチ王子”の告白〜斎藤佑樹投手 再起への挑戦」[字]
“ハンカチ王子”で名をはせた斎藤佑樹投手。同期の田中将大投手の活躍を横目に、いま、再起に向けた闘いを続けている。これまで知られていなかった本音に迫る。
詳細情報
番組内容
“ハンカチ王子”の名で一世を風びした斎藤佑樹投手。プロでは満足いく成績を残せず、大きなケガも負い苦しい日々を送っている。8年前の甲子園決勝で激闘を繰り広げた田中将大投手が大リーグで活躍する一方、“ヒーロー”から“どん底”へ落ちた斎藤投手はいま何を思い、どうもがき苦しんでいるのか“ハンカチ王子”と本当の自分とのギャップを乗り越え、再起に向け挑戦する斎藤投手。これまで知られなかった本音に迫る。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
スポーツ – 野球
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
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