8猫のしっぽ カエルの手「再生のよろこび〜島根 大森町〜」 2014.05.27

日本海から程近い山あいの町…4月下旬陽春の光に輝いている。
京都・大原に暮らす…ずっと前からこの町を訪ねてみたいと思っていた。
(ベニシア)何か鳥が鳴いてます。
人口400余り。
谷間のほんの僅かな隙間に造られた家々では山の自然と調和した生活が営まれている。
ここは江戸時代から明治にかけて隆盛を極めた石見銀山の町。
4年前世界遺産に登録された。
坑道に残るノミの跡が当時の熱気を伝える。
実はここにはベニシアさんが数年来愛用する服を作っている人が暮らしている。
どんな所でどんな人が作っているのか。
町の一角にたたずむ古民家風の建物。
ここはデザイナー松場登美さんのオフィス。
30年前にこの町にやって来て以来都会から遠く離れたこの地で人の手のぬくもりを感じる服を作ってきた。
(登美)知らないからこそできたんだと思うんですね。
世の中にはすばらしいデザイナーの方いっぱいいるっしゃるし。
ただここは流行のものを見る事もないし外から遮断された世界なので怖いもの知らずで自分が思ったものをよしとして作る事ができたんですね。
それは幸いだったと思います。
本格的にデザインを勉強した事はない。
大量生産とは違う昔から日本にある織りや染めの技術を生かした生地で服を作り続けている。
その思いは着る人にも伝わりベニシアさんにとっても特別な服だ。
何かすてきな門。
こんにちは。
こんにちは。
登美さんですか?そうです。
登美って呼んでもいいですか?はい。
今日はいいお天気でよかったですね。
ベニシアです。
前から来たかったけど。
私もお会いしたかったです。
服いつも買ってるからどんな所で作ってるのかなといつも思ったけど。
ここで作ってるんですか?ここは私が住んでる所で宿にもしてるんですね。
ベニシアさん今晩泊まって下さい。
ここでいいですか?すごいすてき。
結構古い家じゃないですか?220年前江戸時代のものです。
江戸時代。
役人の家だったんですね。
すごい。
でも買った時はボロボロだったんです。
登美さんは5年前からこの古民家で暮らしている。
どうぞお入り下さい。
私古いものが好きだから。
ベニシアさんのおうちも古いでしょ?でも100年ぐらいかな?100年ぐらいですか。
どうぞ。
いや〜すごい。
こういう家を壊さないで生かす事はすごく大事な事よね。
大事ですね。
今日本じゃ全部さら地にしてこういうの簡単に壊しちゃうでしょ?もったいないでしょ。
この家はね30年間人が住んでなかったんですね。
結構ボロボロだった。
ホントボロボロだったの。
10年かけてやっとここまで直しました。
じゃあ諦めない事よね。
そのプロセスが楽しいね。
そうなの。
誰かに頼んだらすぐできるけどそれを少しずつ直すのが楽しいもんな。
崩れ落ちそうなほどボロボロだった築220年の古民家。
10年前に譲り受けてからゆっくりと時間をかけて直してきた。
柱や梁塗り壁も昔からあるものをなるべく生かし家が刻んできた歴史を今に伝える。
かつて武家屋敷だった阿部家の名前もそのまま残し登美さんが慈しみながら暮らしている。
こちらお庭なんですけどね。
何かギボウシが…。
ギボウシがいっぱい芽が出てきておいしいのね。
自然なたたずまいの中庭。
春を告げる植物たちが気持ちよさそうに顔を出している。
こちらに私の宝物があるんですよ。
何ですか?宝物だらけじゃないんですか?ここなんですけどね。
これはこの家で育った子どもたちの背比べの跡。
これ昔の時?昭和の初期だと思います。
みんな兄弟で背比べの跡をつけたんですね多分。
色違いとか?そうそう。
柱の傷はかつて温かな家族がここで暮らしていた証し。
登美さんにとってこうした一つ一つが宝物。
他人にとっては何でもないものが登美さんには輝いて見える。
縞模様の藍染めを貼り付けた縞帳と呼ばれる見本帳。
100年以上前のもの。
驚いた事が2つあるんですね。
1つはね藍染めの藍は昔から虫が食わないって言うでしょ?きれいに藍染めで染めたとこだけ残ってるの。
え〜?すごく面白いでしょ?これ発見した時ホントにビックリって感じで。
藍は虫が食べないってホントだなと思って。
庭仕事とか外で仕事する時藍染め使えば虫が来ないよね。
藍染めのもんぺがいいわね。
もう一つビックリしたのがこれね明治時代。
この阿部家にね「阿部登美」って書いてあって登美って私と同じ名前で同じ字なの。
え〜?それ偶然で?だから百何十年前にこの家に私と同じ名前の人がいたって事。
偶然。
え〜?不思議でしょ。
何かの縁で…。
何かの縁で来たんですね。
今夜ベニシアさんが泊まらせてもらう部屋。
それはこの階段だんすの上にあるという。
じゃ2階上がりましょうか?部屋があるんですか?階段気を付けて下さいね。
この階段が珍しいね今は。
そうですね。
わあすごい!屋根裏部屋みたいな。
面白いお部屋でしょ?大好き。
ここから山が見えるの。
ほらちょうど桜が見える。
わあきれい。
ここ昔からこの部屋あったの?昔からあったの。
いいですね。
でもこの手すりはね拾ってきたの。
でも昔からあるみたいでしょ?何か最初からある感じ。
かっこいいでしょ?うん。
歴史ある町昔ながらの家。
登美さんの考え方はここで育まれてきた。
それは古いものの声に耳を傾け今に生かしているという事。
こういう所住んで羨ましい。
何かタイムストップみたいな感じ。
100年前とあまり変わってないぞという事ね。
どうやって暮らしてたんだろうっていつも想像しますよ。
そうね。
古い家が何かいろいろイメージ…頭の中にね。
ベニシアさんもうずっと前から登美さんと友人だったような気持ちになった。
朽ち果てていた民家を再生して得た復古創新の喜び。
その喜びを登美さんが一番感じているのはこの台所だ。
米を炊くかまどを昔の人はおくどさんと言った。
かまどを表す「くど」に親しみと敬意を込めておくどさん。
昔ながらのやり方は手間がかかる。
天気次第で毎日変わる火加減と水加減。
長年の知恵と経験が喜びをもたらしてくれる。
おこげも一緒に。
塩で握るだけのおむすびが登美さんの一番のお気に入りだ。
大切な人と一緒に頬ばる。
おこげの味はきっと200年前と同じ味。
おくどさんがもたらす阿部家の滋味あふれる食卓。
翌日うららかな日ざしに誘われて散歩に出た。
ここね6月の終わり頃になると蛍が出るの。
それも見たいな。
菜の花がいっぱい咲いてて。
それがすごいきれい。
ホント「春の小川」って感じでね。
町内にある登美さんの店を訪ねる。
ここもまた空き家だった古民家を改装して造った。
老若男女さまざまな世代に向けて登美さんの思いが詰まった服が並んでいる。
自慢の中庭。
友人のアーティストが作った鉄のオブジェや家の廃材を利用して作ったテーブルが置かれている。
これは私がデザインしたテーブルで草花テーブルって呼んでるの。
草花テーブル。
いいですね。
最初はコケだけ入れたのに次から次に毎年タンポポとかスミレとかネジバナとか。
何でもきれいになるのね。
不思議な事よね。
山の自然と一体化した庭。
登り窯風の出入り口にどこかで拾ってきた蛇口。
バラバラなのに不思議と調和している。
ここにローズマリーもありますよ。
これで皿洗うせっけん作れるよ。
お茶にしたら…。
お茶にする?ローズマリーのお茶おいしいよ。
そうですか。
頭の働きを活性化させる効果があるというローズマリーを一緒にせん定する事に。
せん定と同時にここから出てるここから出てるここを…。
横に出てるとこの前からね。
ここ切ったらまた横に出る。
へえ〜。
やってみますか?はい。
そうそう。
この辺も…。
あとせっけん作るためにあと一本ぐらい…。
切ったとこからまた出るんですね?横から出るの。
だから使う方がいいのね。
元気になるから。
ハーブは使わなかったらすねるからね。
「何で私使わないの?」って。
すねちゃうんだ。
使ったらうれしいからどんどん大きくなる。
ローズマリーを使ってベニシア流の食器洗いせっけん水を作る。
1週間に大体1回これを作るのね。
皿洗うせっけん…洗剤じゃなくてこれは無添加のせっけんパウダーを使うのね。
ローズマリーは殺菌作用があるからこれを入れて香りにもなるし。
6ぐらい入れるの。
1のお湯にローズマリーの枝を6本15分煎じる。
すごく香りもしてきたね。
じゃあもうこのぐらいでいいと思うんですけど。
ホントきれいな薄い緑になって。
これちょっと飲んでみない?せっけん入れる前に。
コップがあったら…。
はい。
飲んだ事ありますか?初めて。
じゃあ。
香りがいい。
(2人)乾杯。
うん爽やか。
そんなにキツくないでしょ?キツくない。
すごく優しい。
スッとこの辺の頭がちょっと動くの。
せっけんを登美ちゃん混ぜる?はい。
廃油をリサイクルした粉せっけんを300g溶かせば完成。
色が変わりましたね。
簡単でしょ?簡単。
すぐ出来ちゃう。
洗剤もう買わなくて大丈夫。
今度からこれにします。
中身が分かるようにお手製のラベルを貼っておく。
あっかわいい。
ちょっとおしゃれになるね。
おしゃれになりました。
ベニシアさんのプレゼントに登美さんも大満足だ。
登美さんがこの大森町にやって来たのは30年前。
今ではここから洋服だけでなくライフスタイル全般を提案し発信している。
三重県出身の登美さんがこの地にやって来た理由。
それは36年前の大吉さんとの結婚。
昔ながらの暮らしに魅力を感じた2人はこの町を人生の舞台に選んだ。
大森町で生まれ育った大吉さんはふるさとの魅力を肌身で知り抜いていた。
一見過疎化が進む寂れた田舎町。
でもここには変わらない古きよき日本の暮らしがある。
この町でこの町のよさを生かす会社を作りさまざまな事に挑戦してきたという。
(大吉)昔の事を引き継いでいくというかね。
ハサミで切り取らない。
歴史をつないでいくっていう事が私たちの一番やっていきたい事かなとも思っていますね。
楫谷さんちょっと。
そんな2人の力強い助っ人が社員の…服飾関係とは思えないいでたちの楫谷さん。
地元大森町に住んでいるという。
近所にある廃校跡地の倉庫。
民家や学校の廃材捨てられた家具などをここに集め別の形で生まれ変わらせるのが楫谷さんの仕事だ。
ただいま阿部家の縁側にひさしを制作中。
実際に使われていた廃材を使えば自然と古民家に合ったものが出来る。
(楫谷)さてうまい事入ってくれよ。
お店の中庭にあった草花テーブルも楫谷さんの作品だ。
ああいう感じになったのか。
登美さんは楫谷さんのセンスにほれ込んでいる。
ちょうどいいね。
(楫谷)なんとかこれで。
こういう曲がりをうまく利用して力も平均にかかるように。
見た目もちょっと面白いかなと。
(登美)かつて使っていた穴が開いてるとかそういうのをあえて気にしないというかほぞ穴が開いてたりとかそういう所に飾り物したりして楽しんでるのであまりきちっと作り過ぎなくてもこれで十分です。
杉の皮を張ってひさしが完成。
もうずっと前からこの場所にあったようにしっくりと収まっている。
端午の節句も間近。
楫谷さんが近くのやぶから青竹を切り出してきた。
松場夫妻の孫公汰君のためにみんなでこいのぼりを立てるという。
頑張れ〜!よいしょ!登美さんと大吉さんの周りにはベテランから若手までたくさんの笑顔が集まってくる。
それぞれがそれぞれに昔ながらの暮らしに魅力を感じて。
(奈緒子)泳いでる。
泳いでる〜。
(登美)先人の人たちの知恵といいますか私は建物を再生するだけではなくてその中の暮らしを再生したいと思ってるんですね。
そういう日本のライフスタイルというものをもう一度見直すという事がすごく大事な時に来てるんではないかなと思うんですね。
面倒や手間をいとわず一つ一つの事を丁寧に紡いでいきたい。
夕食を賄い担当の若手スタッフと一緒に作る。
地元の若い力も巻き込んでの古民家暮らし。
(渡辺)これ出来たて絶対おいしいですよね。
この間のよりタラの芽大きくなってるじゃない?これぐらいがおいしいのよ。
こんなちっちゃいのよりも。
食材は地のもの旬のもの。
日本海で取れた新鮮なノドグロは炭焼きに。
小川で取れたクレソンはサラダにする。
(登美)私何でも大盛りにしちゃうから。
大サービスで。
(渡辺)おなかすいてると余計に。
(登美)大盛りになっちゃうね。
ベニシアさんを歓迎するごちそうが出来上がった。
(大吉)じゃあベニシアさんをお迎えして。
楽しく食事しましょう。
ありがとう。
(渡辺)これはてんぷら饅頭です。
てんぷら饅頭?すごい。
(登美)年に2回だけ春と秋だけ。
決められた時だけしかないのね。
この限られた地域だけしかない。
(大吉)甘い物も大丈夫なの?甘い物大丈夫。
(渡辺)そのあんこが…。
(楫谷)甘かろう。
おいしい。
(大吉)てんぷらにするとおいしいね。
おいしい。
普通にてんぷらするんですか?
(渡辺)そうですね。
(登美)てんぷらの衣つけてね。
お塩がかかってますよ。
おいしいギボウシは。
苦くないよ。
おいしい。
都会から遠く離れたこの地でさまざまな世代が集まってにぎやかに暮らす。
すごく何かいつかいたいなと思った。
ずっと水の音聞こえるでしょ?それがすごくいいのね。
ここで生まれるものは何もかもが力強く温かい。
2014/05/27(火) 12:25〜12:55
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猫のしっぽ カエルの手「再生のよろこび〜島根 大森町〜」[字][再]

ベニシアさん、島根県大森町に松場登美さんを訪ねる。松場さんは、ベニシアさん愛用の服を作っている。築220年の古民家に住み、30年前から手作りの服を作り始めた。

詳細情報
番組内容
ベニシアさんは、自分の愛用する服を作っている松場登美さんに会うため、石見銀山で有名な島根県大森町を訪ねる。迎えてくれた松場さんは、30年ほど前にこの地にやってきて以来、手作りの服を作り続けている。自宅兼宿としている築220年の古民家を案内してもらう。小川のせせらぎが心地よい町並み散歩に出かける。庭に生えているローズマリーをせん定し、一緒に石けん水を作る。夜は食事を共にし、古民家話に花を咲かせる。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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