(佐伯淳司)ああ…。
(森宮環)見事ね。
ハハ…サンキュー。
何度見ても惚れ惚れするわ。
これならうまくいくよ。
本当に大丈夫かしら…。
ハハ…愛してるよ。
心配ない。
何度も練習してコツはのみこんでいる。
強く蹴れば渦潮に巻かれて沖へ流される。
かといって力強く蹴らないと岩礁に墜落する。
その兼ね合いも踏み切り板の位置も今のでオーケーだ。
成功間違いない。
(桜木圭)環さ〜ん!圭…!見事なダイビング…撮らせてもらいました!おい…?カメラマンの桜木圭ちゃんよ。
いつも私に好意的な写真を撮ってくれてる…。
ああ…。
今度新作映画の主演ですって?久しぶりの大作だそうで…。
さすが早いわね。
それは地獄耳の圭ですもの。
で三浦半島の私の別荘まで…?アタリ。
その新作の資金佐伯社長も出資されるって噂ですけど?ハハハ…私はちょっとお手伝いする程度だ。
あそうだ。
君もパーティーに招待しようか?ええ?パーティーに?新作の打ち合わせを兼ねて内輪のパーティーを一週間後に開くんだ。
女優森宮環に好意的な君なら大歓迎だよ。
うわ〜やったあ!でも圭にも都合が…。
何があってもキャンセルしますって。
いい写真を撮って宣伝に協力します!目撃者は多ければ多いほどいい。
アングルがいいのでこちらでお願いします。
パスポートだ。
佐伯淳司は一週間後に中村一郎に生まれ変わる。
本当にやるつもり?ああ。
準備はすべて出来ている。
一週間後のパーティーで私は自殺をする。
宴もたけなわのころ招待客の見てる前でいつもダイビングしてる庭先から夜の海に飛び込んでね。
そして…渦に巻かれて沖に流され死体は揚がらない。
そういう設定なのね。
ああ。
そう見せかけて実は入江の先端の洞くつに泳ぎつく。
(佐伯)そこで僕は用意しておいた変装用の衣服に着替える。
そこには現金とパスポートに航空券。
外国銀行のキャッシュカードも用意しておく。
もちろん名義はすべて中村一郎。
買い取った他人の戸籍を使用している。
脱ぎ捨てた服は君が回収して沖に流す。
飛び込んだ時の水圧でズボンなどがよく脱げるんだ。
海中から僕の服が見つかれば飛び込む現場にいた目撃者の証言とで死亡判定が確実になるだろうしね。
そして変装したあなたは夜に乗じて逃げるのね。
拾ってきたあの自転車を草むらに隠しておいて逃走に使うんだ。
(佐伯)廃品捨て場で拾ってきた自転車は修理しておく。
車やタクシーでは足が付くおそれもあるが廃品の自転車なら心配はない。
夜道を三崎口駅まで走る。
そして朝のラッシュに紛れて電車に乗る。
その日の午後の便で成田からヨーロッパへ発つ。
中村一郎としてね。
確かに計画はすばらしいけど…。
何も心配することはないよ。
スイスの銀行の貸金庫には12億円の金を預けてある。
12億円…?ああ。
最後の資金繰りとして海外支店が集めた隠し金だ。
会社が抱えている負債の返済には足りないが僕たち二人には十分な金だ。
このままでは会社の倒産は時間の問題なんだ。
デリバティブ投機の失敗と金融引き締めで不渡りがいつ出てもおかしくない状況でね。
そんなにひどい状況なの…?もうギリギリの崖っ縁だぁ。
君だって崖っ縁に追い込まれているだろう?人気も昔ほどでないし仕事も目に見えて減っている。
残酷なことを言うようだが女優森宮環の名は今や忘れられようとしている。
(海の波の音)確かにそのとおりよ。
50歳を過ぎてやっと回ってきた作品…。
私にとって最後のチャンスかもしれない作品…。
私…今度の作品に懸けてるのよ。
女優生命のすべてを懸けてるの。
だが資金不足で中止ってこともある。
そんなの駄目!困るわ。
私が企画してずっと温めてきた作品なのよ。
今度の作品がすべてなのよ!その大事な新作にも僕が死ぬことで出資できる。
2億円の生命保険金を君は受けとれるんだからね。
二人が破滅しないためにも「自殺の計画」は必要なんだよ。
君が協力してくれればうまくいく…。
もし失敗したら破産と背任で僕は刑務所行きだ…。
大丈夫…ちゃんと言うとおりにするわ。
よし。
僕は自殺に見せかけて海外に逃亡。
ほとぼりが冷めたころ君と向こうで落ち合う。
スイスに預けてある12億円で第二の人生を楽しむのさ。
すべては…一週間後だ。
(波の砕ける音)こんにちは〜。
ずいぶん早いのね。
何かお手伝いでもと思って…。
大丈夫…ケータリング・サービスが準備してくれてるの。
じゃその辺の海見てきます。
(海鳥の鳴き声)うわ〜きれいなバラ…。
そろそろお客様が…着替えないと。
やあいらっしゃい。
お言葉に甘えてお邪魔してま〜す。
ハイハイ…。
すてきなご主人ね佐伯さんて…。
何言ってるの。
正妻じゃないこと知ってるでしょ?あ…。
一緒に暮らして10年にもなるのに奥さん離婚に応じてもくれないしね…。
でも私には映画があるから…。
私ね今度の作品に懸けてるのよ。
作品を成功させるためなら何でもどんな事でもするわ。
(車のクラクション)今度の映画に出資する広告代理店の吉岡社長と奥様。
こんにちは。
海外に顔も広い映画評論家の柳ご夫妻。
新進女優の清水百合さん。
(ドアをノックする音)はい。
皆さんお揃いだ。
大丈夫かい?ええ。
(賑やかな話し声)吉岡社長がバックアップしてくださるし柳先生ご夫妻もついててくださる。
女優冥利だわ。
(柳)筆によりをかけて宣伝しますよ。
ハハ…。
(吉岡)制作費はうちで2億円出資するがあと2億円は君が持ってくれるかな?もちろんです。
ただ奇抜な出資方法になりますがね。
まさか宝くじじゃないでしょうね?
(笑い声)ま君に無理させないように私たちで全額集めてみせるよ。
さすが私の会社の経営危機ご存じですね。
でも皆さんに甘えてばかりいられません。
環が女優生命を懸けている今度の作品…。
僕だって協力したいじゃありませんか。
環をバックアップしてくれている皆さんにはとても感謝しています。
(グラスの砕ける音)
(吉岡夫人)危ないわ…。
(佐伯のテープの声)もはや見苦しいマネはやめ唯一残された選択…死を選ぶことにしました。
何ひとつ残るものはなくても名誉だけは守りたいのです。
環を受取人とする生命保険金が2億円あります。
それを制作費に当ててください。
佐伯さん!あなた!佐伯君!バカなことするな!
(驚きの声)
(波の砕ける音)急いで下へ!波に浮いてれば助けられます!
(波の音)あなた…。
環さ〜ん!環さ〜ん!しっかりしてくださ〜い!環さん!環さん…!しっかりして!環さん!
(TVレポーター)…昨夜森宮環さん宅でパーティーの最中投身自殺をされました。
こちらは現場の三浦半島油壷…女優森宮環さんの別荘前です。
森宮さんとは長年の愛人関係だったといわれる貿易会社社長佐伯淳司さん55歳のご遺体は今朝早く田園調布のお宅に無言の帰宅をしました。
ご遺族は奥様の富江さんおひとり。
ご自身も女優であっただけに気丈に振る舞われていました。
一方森宮環さんは別荘からその姿を見せておりません。
佐伯社長の死は所轄警察署から自殺として発表されました。
また経営危機が噂されていた佐伯さんの貿易会社は佐伯さんの死亡が確認された本日第一回の不渡りを出し事実上倒産しました。
こちらだったんですね。
圭…取材ならお断りよ。
ハイエナのようにたかって人の不幸を喜ぶマスコミの一人なのよねあなたも…。
環さん…。
ごめんなさい…言い過ぎたわ。
本当を言うと心を許せるのはあなただけなのよ…。
マネジャーも付き人も今はいないし一人で何もかもやってるもんだから…。
お葬式…立派なものでした。
そう…。
10年一緒に暮らしてもお葬式にも出席できない。
籍の入ってない女なんてこんな時は哀れなもんよね。
環さん…。
ダイビングした彼いつもここに泳いで戻ってきたのに…。
佐伯さん…なぜ環さんの目の前で自殺なんか…?本当に…自殺なんでしょうか?何を言い出すの?だって環さんも言ってたでしょう?一年前…私の学生時代からの恋人があんなことになった時…。
ねえ休もうよ…。
(和彦)圭…僕は君が思うような立派な人間じゃない。
酒は飲むし友達に借金はあるし…。
だけど君を思う気持だけは誰にも負けない。
これだけは信じてくれ彼の思いつめた様子に…どうしたのかと思った瞬間。
(足場の落石の音)あっ!…あっ!何が何だか訳が分からないまま警察では誤って足を滑らせての事故死と断定された。
でも私は…私は…彼が目の前で自殺したんでは…?と思い込んでそんな彼を救えなかった自分を責めた。
あの時環さんはこう言ってくださった。
「愛する人の目の前で自殺などするもんですか」って。
最愛の恋人の目の前でなんてあまりにも残酷じゃない。
愛する者への仕打ちとはとても思えないわ。
彼はね圭…あなたへの愛を思いつめてつい足もとに気が回らなかったのよ。
圭にも誰にも止めようがない事故だったのよあの時の言葉でどれだけ救われたか…。
愛する人の目の前で自殺なんかしない。
そうでしょ?環さん…。
今度は私…私が力になりたいんです。
警察の方が現場検証したままにしてあるの。
彼のことを思うととても手を触れられなくて…。
分かります。
警察の話だと踏み切り板があと50センチ海にせり出してれば岩にぶつかることもなく命も助かっただろうって…。
あと50センチ…?あの時佐伯さん…ご自分で踏み切り板をずらしてた…。
覚悟の自殺だった…。
そう考えるしかないって…警察も。
でも…やっぱり私…。
あ風が冷たくなったわ中へ入りましょう。
ごちそうさま。
(はつ江)はい。
お粗末さま。
なによほとんど手つけてないじゃない…。
そりゃ気持は分かるけどさ。
(進)自殺現場でビビってちゃ報道の一線で活躍できないぞ!
(はつ江)ナマ言って。
そうよ。
大学の法学部出たのに親のスネかじって…。
本当にやりたい夢のためだもん。
圭ちゃんも一流の報道カメラマンへの夢持ちながら現実はパパラッチやって…。
それと同じ。
(はつ江)じゃお前の夢は何よ?
(進)だから探してるじゃん。
(はつ江)これだもん。
自殺なんかじゃないよねえ…。
おう!…へえ…
(グラスの割れる音)
(日下弁護士)私は佐伯家の弁護士ですが佐伯家唯一の遺産相続人である奥様の代理として伺いました。
加代さん後はいいから帰って結構よ。
(加代)はいでは明日…。
どうぞ。
圭もどうぞ。
単刀直入に申します。
あなたが受取人とされる2億円の生命保険金は田園調布の邸宅と共に債権者から仮差し押さえされます。
ええ?!会社倒産で債権者が殺到してるのをご存じでしょう。
待ってください。
あの2億円の保険金は彼が佐伯淳司が私のために遺してくれたものなんですよ。
それとこの別荘ですが…。
別荘…?これも債権者との係争の対象になりそうです。
債権者は口実で富江さんが取りあげるつもりでしょ?いえ奥様はそんな…。
冗談じゃないわ!確かに佐伯には世話になった力にもなってもらった。
でも事業が不振になってからは私だって相当に援助してきた。
今の私には住まいはこの別荘だけなのよ。
その唯一の住まいを取りあげようなんて…。
あんまりですよ。
会社は倒産の原因を佐伯社長が環さんの映画へ20億円も…と非難してるのね。
そんなバカな話…。
彼が出資した分は彼の個人資産で会社のお金には手をつけてないはずよ。
こうなったら言いますが佐伯社長の奥さんあっちこっちのマスコミで環さんを罵倒してるんです。
夫だけじゃなく財産まで取ったって…。
君!彼女らしいわ。
借金が莫大だから奥さんに遺産は遺らない。
このままでは無一文なので別荘を…っておつもりでしょ?君に答える義務はないね。
富江さんにお伝えください。
遺産をいただく気はありません。
でもこの別荘だけは手放すわけにはいかないと。
それに日下さん弁護士さんなら2億円の保険金は取り返してくださいな。
私の映画のためにどうしても必要なんです。
お願い…。
努力しましょう。
ありがとう。
途中までお送りするわ。
大丈夫ですか?なんなら私も一緒に…。
大丈夫。
気分転換にドライブがてら送ってくるだけだから。
わざわざありがとうございました。
お気をつけて…。
奥さん…。
(佐伯富江)どうだった?別荘の方は難しそうですね。
なかなか大した女性ですよ。
下手な女優の芝居に騙されたんじゃないの?あの女のものはすべて取り返してやるんだ…。
(モーターボートの音)圭…?環さ〜ん!東京へ帰ったんじゃなかったの?雑誌社に頼まれた写真もあったしこの車のローンもあって大変ですよ。
ん…?…自転車?環さんて確か自転車乗れなかったよね?ああ…彼が乗ってたのよ。
オンボロだし捨てる所探してたの。
佐伯さんの…。
ちょっと撮らせて…。
遺品ですものね。
ありがとうございました。
じゃ…。
そうだ。
さっき洞くつの方にいませんでした?え?岬の崖下の洞くつ…。
いいえ行ってないわ。
遠くからではっきりしないけど姿形がそっくりで…。
人違いよ。
そうか…。
洋服も違ってるし…。
アハハ…。
じゃ!まだ何か…?佐伯さんの事心からお悔やみ申し上げます。
力を落とさないで頑張ってください。
ありがとう。
新品のタイヤ…?・映画の制作延期だなんて何をまた吉岡さん…?肝心の吉岡社長がそんな弱気でどうなさるんですか?私…?私なら大丈夫。
私を気遣ってのことならそのお心遣いは無用よ。
私今度の作品に懸けてるの。
亡くなった佐伯も楽しみにしてた映画なのよ。
佐伯がいない今私には今度の作品がすべてなの。
(玄関ドアを叩く音)
(雷鳴)すみません!駄目じゃないですか!捨てたりして…。
え?自転車ですよ。
大事な証拠になるかもしれないのに…。
捨てるのを見たから取り戻してきました。
証拠って何の…?確かなものはないけどでも私のカン。
佐伯さんの死の真相を解くカギの一つになるのではと…。
何言ってるの。
真相も何も彼は自殺したのよ。
だっておかしいですよ。
これ見てください。
登録番号で自転車の持ち主を割り出したんです。
そしたら持ち主は佐伯さんでなく岬に住む15歳の少年でした。
少年:ボロになったから友達に売りつけたけど売れなくて廃品置き場に捨てたんだ。
タイヤは?新しく替えたの?捨てんのにそんなことしないよ新品のタイヤが気になって…。
タイヤのロット番号から横須賀の自転車屋を突き止めたんです。
店員:うちで売ったタイヤだよ。
26インチ2本セットいい物だよ。
買った人覚えてます?ええ。
空気ポンプはないって言うからタイヤはめ替えてあげたからね。
そのお客さんもしかしてこの人じゃ…?ん…?…ああこの人新品のタイヤご自分で買ってた…。
このことどう思います?どうって…?そうだ…思い出したわ。
自転車は廃品置き場で拾ってきたって…。
拾ってきた自転車を走れるようにタイヤ替えるの当然でしょ。
それはそうですが…。
タイヤ替えたの自殺2日前のことです。
だからどうだっていうの?これから自殺しようと思いつめた人がオンボロ自転車のタイヤ替えるでしょうか?それともう一つは何でオンボロ自転車に新品のタイヤを付け替えたかということです。
自転車が欲しければ新品を買えばいい…。
安上がりだったからよ。
あのタイヤ高いんですよすごく…。
佐伯さん死ぬ気なんかなかったんじゃないかしら?だったらなぜあんなふうに死んだの?私宛に遺書まであったのよ。
あなたも自殺するっていう録音テープを聞いたし見たでしょ?そうですよね…。
私皆さんに会ってみます。
えっ?あの晩パーティーに集まった皆さん。
何か見たか聞いたかしれないし。
任せてください。
納得のいくように調べて差し上げますから。
じゃ。
どうしたの?洞くつで見つけたんです。
洞くつ…?火を見たような気がして…。
気になって行ってみたんです。
何かを燃やした跡にあったんです。
そんな物が…。
何かご存じですか?知りません。
知るわけないでしょ。
ロッカーの鍵だと思うけど…。
どこの鍵かな?気になって…。
失礼します。
(富江)佐伯が死ねばこの家も財産もすべて私のものになると思ってたのに…。
佐伯はね…10年前に私とこの家を捨ててあの女と暮らしはじめたのよ。
何度も離婚を言われたわ。
でも応じなかったのはまあ意地もあったけど…お金よお金よ!絶対に…!誰にも渡すもんか…。
誰にも…!分かりますよ。
さあ落ち着いて…。
私がついてます。
すべてうまくいきますよ。
私に任せてください。
あなたを信じても…いいの?奥さんの方こそ…。
裏切りはなしですよ。
私…男の人の言葉が信じられなくなってる。
結婚なんてちっとも…。
私…あなたより年上なのよ…。
私は本気です。
寂しいわ…。
奥さん…。
はいお待ちどおさま。
焼き魚定食。
すみません遅くに…。
毎晩仕事で遅くなっても食事はちゃんととらないとね。
仕事仕事って何の仕事してんのかねえ〜。
失礼しちゃうわね。
今に見てなさいよ私だって!いただきま〜す!そうその意気!圭ちゃんには理解があるんだよな〜。
まいざの時はオレが面倒みるよ。
よく言うわよ2歳も年下のスネかじりが。
何これ…?駅のロッカーの鍵だと思うけど…。
あ進くん…頼まれてくれない?何…?
(ドアをノックする音)
(吉岡)どうぞ。
お邪魔します。
いらっしゃい。
お忙しいところ申し訳ありません。
いや若いきれいなお嬢さんなら歓迎だ。
あら…?こんにちは。
来月の舞台の切符買ってって押しかけたの。
ね吉岡さん。
ちょうどよかった。
百合さんにもお話聞きたいと思ってたので…。
話…?佐伯社長が亡くなった晩現場におられた方からお話を伺いたいと思って…。
どういうことかな?…佐伯社長本当に自殺だったのかしらって…。
本当も何も自殺でしょ。
そうよ。
あれが自殺でないなら何が自殺なのねぇ?ハハハ…。
確かに驚かされたけど…あれは自殺だ。
でも私…。
圭さん…あなたも見てたじゃないの。
踏み切り板の位置を確かめ自ら海に身を躍らせた。
自殺の予告テープを残して自らそう行動したのよ。
それはそうですけど…。
自殺じゃないとしたら事故か殺人。
しかし現場の状況からみて事故ではない。
まして殺人でもない。
自殺としか思えない。
でも人間って愛する人の前であんな死に方が…?佐伯さん一流の愛のパフォーマンスかも…。
愛のパフォーマンス…?確かに彼は環さんを愛していたが彼も男だ。
浮気の一つや二つないわけじゃない。
なにしろ社長で男前だからね。
その裏切りを最後に環さんに詫びたのかも…。
本当に愛していたのは環さんだと…。
愛していたから目の前で死んだ。
そうとも言えるかもしれないわねえ。
あ〜らまだ納得できないって顔してる…。
圭さんミステリーの読みすぎじゃないハハ…。
何度見ても佐伯さんの顔これから死のうとする人には見えないのよね。
(ドアをノックする音)
(進)出前で〜す。
は〜い。
えっ!髪どうしたの?ほんの気分転換。
2〜3日部屋にこもってるからおフクロが心配してさ。
はい!おフクロからの出前サービス。
サンキュー。
ついでにお茶も…。
ハイハイ立ってる者は親でも使えってね〜。
あ〜あ…親不孝もんだね。
あっ!ああっ?!言ったじゃない。
気分転換の遊び心…。
でもさなんか別人になった気分…。
別人…?そうだこの間のキイ分かったよ。
ほんと?やっぱり三崎周辺の駅…?ピンポン…。
三崎口駅のロッカー。
でもとっくに期限切れで開かなかった。
そう三崎口駅か…。
何調べてるか知らないけど一年前のことにこだわってムキになってるなんてことないよね。
あれは事故だったんだから…。
分かってる…分かってるわよ。
ならいいけどさ。
何よ…?ご褒美のキス!いいじゃないそれくらい…。
バイト料いらない是非やらせてって言ったのはアンタよ!ハイハイバイト料をふんだくっとくんだった。
三崎口駅のロッカーか…。
(富江)へ〜え結構なお宅ですこと…。
わざわざ訪ねてみえるなんてどうした風の吹き回しかしら?私の顔など見たくもないだろうと思ってましたのに…。
遺産のことならお気遣いなく。
日下さんにも申しましたが遺産をいただく気はありませんから。
遺産?笑わせないでよ。
あっても渡すもんですか!きょう伺ったのは佐伯があなたに買った物を返していただこうかなと思って。
セーブルの花瓶とかジノリのお皿とか…。
佐伯があなたに買ったものでしょう?まさか…。
この家の物はすべて私のお金で買い集めたものですわ。
どうかしら。
昔から他人のものを取るのが好きだったでしょう?私から役を奪って…次は佐伯を奪って…。
ハハハハ…そうね忘れてたわハハハ…。
富江さんあなたも昔女優でらしたのよね。
(二人の笑い声)名もない女優だけど…。
奥さん…。
誤解のないよう申しますが佐伯さんからお金はいただいてません。
月々の生活費も私が負担してたんです。
経営危機に陥った時も私が財政援助をしてたぐらい…。
映画は…?彼はあなたの映画に何本か出資してたでしょう?それはビジネスとしてですわ。
この10年生活上の彼のパートナーはこの私なんです。
書類上の妻であるあなたではなく。
そのことは世間も認めてくれましたわ。
盗人冥利に尽きるってわけだわ。
なら言わせていただきますけど書類上の妻であるあなたは何をしたというのかしら?彼が苦しんでる時も何もしないで田園調布のお宅で優雅に暮らしてただけじゃない。
それほどパートナーとして自負がおありなら是非お伺いしたいことがありますがね。
会社の顧問弁護士の話だと倒産後の帳簿調べで海外支店から本社に送金したはずの1000万ドルおよそ12億円が消えたままだそうです。
その使途不明の12億円何か心当たりは…。
いいえ。
使途不明金の一部がここに隠匿されてるんでは…と近日中に捜査が入るようです。
えっ?!どうかなさったの?顔色が悪い。
もし思い当たることがあれば捜査の前に申し出れば問題はありません。
私がきょうここに伺ったのは私なら何かお手伝いができると考えたからです。
そんなお金をどこに隠してるというんです?家宅捜索でも強制執行でも何でもしたらいいわ。
その使途不明金の話聞いてません。
もうお帰りください。
話すこと何もありませんから。
ああもう一つだけいいですか?え〜と…。
この…金のメダル何だかお分かりですか?彼が…いつも身に付けてた物だと思います。
ええご遺体の首に掛かってたものです。
何のメダルかご存じですか?いいえ知りません。
そうですか…。
何か特別な意味があるのかと…?どんなメダルです?見せてください。
何度か声をかけたんですが皆さんお話に夢中で…。
うわあ〜凝った作り!ちょっと!失礼しました。
佐伯さんの奥様でございますね。
申しおくれました。
桜木圭と申します。
よかった。
お二人にもお話伺いたかったんです。
奥様は多額の保険金を受け取られるとか…?あなたとそんな話は…。
帰りましょう。
本当なの?保険金の話…。
ヤマカンの当てずっぽう。
でも逃げるような帰り方は後ろ暗いことが…絶対に!圭ったら…。
あんまりな言い方じゃない?あの二人…。
使途不明金の12億円環さんが取ったような言い方で…。
聞いてたの?奥様にしてもあの言い方って…。
いいのよもう。
でもご存じない?さっきのメダル。
知らないわ。
…なんだか疲れたわ。
独りにして…。
待ってください。
何…?このディパック佐伯さんのです。
えっ?!見てくださいこれ。
彼は別人になろうとしてた。
別人…?カツラとメガネをつけてこの中村一郎に…。
どこでそれを…?この間のロッカーの鍵は三崎口駅のコインロッカーのでした。
事情話して開けてもらって…。
ロッカーに…?本気で死ぬ気なんかなかったんですよ。
ほら成田からの航空券。
自殺と見せかけて中村一郎としてヨーロッパへ旅立とうとしてたんです。
…多分計画はこうだったはずです。
自殺と見せかけて海へダイビングしどこかへ泳ぎつく。
そこで着替えて中村一郎に変装し三崎口駅まで行く。
駅のコインロッカーからこのディパックを取り出し朝の人込みに乗じて東京から成田へ行く。
後は中村一郎として出発するだけ。
何のためにそんなことを…?会社は倒産寸前。
破滅から生き延びるためです。
使途不明金の12億円はひそかにどこかの銀行に…?そんな夢みたいな話とても信じられないわ。
じゃご存じなかった?この偽装自殺の計画は…。
もちろんよ。
もしそんな計画があれば生きてるはずよ。
でも彼は死んだ。
自殺したのよ。
それが悲しい現実。
でもそのつもりの計画が狂ったら?何バカなことを…。
ひょっとして殺されたんじゃ…?バカバカしくて話にならないわ。
あんな状況でどうやってそんなことができるの?それは預かるわ。
それが駄目なんです。
期限が過ぎてるので正式の手続きをしないとこちらのものには…。
そう…。
あ…さっきのメダルですけど…。
メダル…?メダルがどうかした?もしやどこかの貸金庫か何かのものでは…?例えばスイスの銀行とか…?前に聞いたことがあるような気が…。
スイスの銀行で磁気カードの代わりにメダルを使うことがあるって。
何かと思ったら…。
大事な事なら私に話してるはずだわ。
もう探偵ごっこはやめてちょうだい!本当に計画もメダルのことも知らなかったのかしら…。
もし知ってたらなんで嘘を…?さっきから何ブツブツ言ってるの?…あビールください。
はいビール1丁!はいよ。
ねえ進くん。
もしももしもよ進くんが「大切に思ってる人のために」と始めたのに「その人のためにならない結果になる…」と思えた時どうする?途中でやめるかどうかってこと?うん。
はいおビールよ。
さあね…?あ…飲みかけたビールは最後まで飲むのがオレの主義だね。
(はつ江)何訳の分からないこと言ってるのよう。
(波の音)佐伯:このメダルはIDカードと同じでね。
磁気データが埋め込まれているんだ。
このメダルと7ケタのパスワードがあれば開けゴマ。
スイスの銀行の貸金庫は開くのよね。
ああ。
スイスの銀行に眠っている12億円は僕たちのものだ。
7ケタのパスワード…言ってみましょうか?えっ…?ハハ…驚いたなあよく覚えてるなあ。
一度聞けばセリフを覚えるより簡単よこっちが本物…。
私ね今度の作品に懸けてるのよ。
作品を成功させるためなら私何だってする。
どんなことだってするわ《だからって…。
環さんがあんなに愛してた佐伯さんを…》
(波の音)そういえば…。
何?何でもいいの。
気がついたこと話してほしいの。
この前は吉岡社長も一緒で話しにくかったんではと…。
こんなこと言っていいのかどうか…。
私…あのパーティーで軽く誘われたのよね。
君との出会いに乾杯!乾杯!君とは初めて会ったような気がしないな。
私も…。
また会いたいね。
どう?次はパリかなんかで…パリ…?なんか軽いノリで笑いめかしてこうも…。
たとえ何があっても僕は君のもとへ生還してくるからねそんなことが…?その時は噂どおりの人だなって思っただけだったけどまさかあの後自殺するなんてね。
噂って…?新人女優をみると誘いをかけるんだって…。
へえ〜環さんて人がいるのに…。
それとこれとは別なんでしょ。
(車のクラクション)あ…来た。
じゃあね。
これからおデートなの。
はいどうぞ。
お待たせ…。
百合さんの話を聞くと偽装自殺の計画を実行するつもりだった…そう思えてならないんです。
彼女に誘いをかけた話って怪しいもんだわ。
彼はそんな人じゃないわ。
新人女優に目がないって噂知ってるけど噂なんてあてになんないわ。
佐伯さんを信じてらしたのね。
もちろんよ。
あなたが聞いた話だって彼女の創作かも…。
創作?誘いをかけたのは実は百合さんかもしれない。
役が欲しいと有力者をみれば誰にでも誘いをかける。
そんな女優の卵いくらでも見てきたわ。
そういえば彼女「デートだ」って評論家の柳先生の車に乗ってったわ。
そういう女よ。
世に出るチャンスとみれば体を投げ出す。
近ごろの女優の卵は誇りのかけらもないのよ。
でも彼女は彼女なりに一生懸命なんですよきっと。
私ね…女優としてどうしてもこれはという代表作が欲しいの。
環さん…。
仕事を持つあなたなら分かってくださるでしょ?芸能スキャンダルを追っていてもいつか納得のいく仕事をしたい。
そう思ってるんでしょ?あなた…。
私も同じよ。
確かに私はスターだった。
でも代表作もない今や忘れられたスター。
私が女優として生きた証にどうしても代表作が欲しいの。
それが今度の作品なのよ。
新人女優の言葉に惑わされないで私の味方になってよお願い。
あ…もう一つ百合さん妙なことを言ってました。
妙なこと…?パーティーの晩百合さんが外で佐伯夫人を見かけたと…。
でも百合さんに気づくと慌ててベンツで走り去ったそうです。
富江さんが…?ベンツなら私も見たわ。
どういうことか奥さんに会って確かめてきます。
私が…?私がなんであんな女の所に…?でも私もベンツを…。
ベンツ…?あベンツねぇ〜。
あなたねえベンツがこの東京で何台走ってると思うの?ベンツに乗ってただけで疑われちゃたまんないわね。
刑事みたいなマネして…。
あああの女に頼まれたのね?いえ…。
あの女のやりそうなことだわ。
悪いけど帰って…。
帰ってちょうだい!まずいところを目撃されましたね。
それに追い返すなんて…。
どうしよう…どうしたらいい?奥さん…何もかも私に任せてください。
いいですか奥さん。
余計なことは一切何もしないでください。
いいですね?奥さん…。
まず警察が動き出す前にこのメダルの銀行を突き止めよう。
このメダルの銀行って…?このメダルは佐伯社長が使途不明金を隠したスイスの貸金庫のものだとにらんでいるんです。
だがどこの銀行だか特定できていない。
彼なら…クビになった経理部長なら知ってるかもしれない。
経理部長に…?佐伯さんのあのメダルのことを聞いてみようと思うんです。
何のために?よく分からないけどあのメダルが事件を解くカギって気が…。
経理部長さんの住所ご存じないですか?知るわけないでしょ。
佐伯とケンカしてクビになった人よ。
協力してくれるはずないわ。
ケンカしてクビならなおさら話してくれるかも…。
とにかく捜してみます。
(電車の走る音)
(屋台のオヤジ)いらっしゃい!橋本さんですね?佐伯トレーディングの元経理部長だった?
(橋本)あんたは…?いや〜。
やっと捜し当てましたよ。
佐伯社長の奥さんも心配されてましたよ。
ふん。
こちらに同じもの私はビール。
先代のころから真面目に働いてこのザマだ。
会社のため家族のため懸命に働いてきたのに…。
いやよく分かりますよお気持は…。
クビになったのは使途不明金のことで佐伯社長に厳しく糺したからだと聞いてますが…。
経営不振になって海外支店を整理した。
その支店の一つが本社に送金したはずの12億円。
その12億円の使途不明金を佐伯社長はスイスの貸金庫に預けた。
違いますか?これは…!?やっぱりご存じでしたね。
このメダルは貸金庫を開けるキイ。
そうですよね?あんたこれをどこで…?佐伯社長の遺体が身に付けていたものですよ。
橋本さん!教えてください。
スイスのどこの銀行なんですか?さあねえ…。
橋本さん…!トイレだよ!ごちそうさん。
(電車の走る音)・もしもし日下さん…?あなたは…?メダルのことで取り引きしませんか?ただしあの弁護士抜きでね。
あなた…やっぱり知ってたのね。
クビになったせいで女房子供を失ったんだ!あんたの亭主に人生台なしにされた!お礼はさせてもらうよ!…3000万円?そんなお金…。
なら取り引きはやめだ。
この秘密は他に売れるから。
(電話の切れた音)あもし…。
(玄関のチャイム)やっぱり飛んで来たな?金持って来たんだろうな!506…
(階段下の靴音)
(玄関のチャイム)橋本さ〜ん。
失礼しま〜す。
橋本さ〜ん!ああっ!
(パトカーのサイレン)
(青山刑事)ガイ者は橋本岩夫65歳。
倒産した佐伯トレーディングの元経理部長で鑑識では即死状態だと…。
私じゃありません!私が来た時にはもう死んでた。
本当です。
だから110番を…!ぬれぎぬもいいとこだわ。
第一発見者が犯人というケースは珍しくない。
私じゃありません。
(林刑事)だったら伺いますが何でここに?それは…伺いたい事があって…。
何をです?何をって…。
経理上のアドバイスをいただければと…。
橋本さんとはどういう関係ですか?関係といわれてもきょう初めてで…。
どうも話が分からんなあ。
ん〜はっきりしてんのは私が犯人じゃないってこと!あっ…!何ですか?ハイヒールの靴音…。
ハイヒールの?私聞いたんです。
階段を駆け下りる靴音。
あれは…ハイヒールの靴音でした。
ハイヒールの靴音が…?そうです。
その事話したらやっと解放されて…。
環さん…行ってませんよね?ええ?橋本さんのアパート…行ってませんよね?薮から棒に何よ。
行くも何も住所も知らないのよ。
あ…よかった…。
まさかその靴音私だとでも思ったんじゃないでしょうね?ひどいわ圭…私を疑ってたの?すみません…ちょっとだけね。
しょうがない人!バラどうしたんですか?ああ虫がついたから植え替えしようと思って前のは全部捨ててしまったの。
虫が…?それにしても…誰が橋本さんを…?警察は例のハイヒールの線を追っているようです。
実は昨夜10時ごろあなたを目撃した人がいましてね。
橋本さんのアパートの階段を駆け下りて行くハイヒールの靴の女。
その女性を住人の一人が目撃してましてね。
念のためにあなたの写真を見せたら「ハイヒールの女性はあなただ」と証言したんですよ。
(ハイヒールの靴音)「あなたは顔面蒼白だった」とも証言してるんですよ。
いえ…私は…。
(青山)自分のしたことに恐れをなして慌てて逃げたんでしょう?失礼…。
弁護士の日下です。
誘導尋問で犯人扱いとは…確かな証拠は?逮捕状お持ちですか?奥さん…何も話さなくていいですよ。
参考人として事情聴取されてるけど日下弁護士の指示で否認してるようで警察もてこずってるとか…。
富江さんが…?何…?いえ…。
富江さんが疑われてることにショックのようだから…。
それ見たことかと私が喜ぶとでも思ったの?それほど人でなしではないわ。
やっぱり環さん私が思ってたような方だった。
それなのに私ったらつまらないこと考えたりして…。
(ドアをノックする音)どうぞ…。
いいスタジオをお持ちですね?あなた…貸しスタジオってことぐらいご存じのくせに…。
私にご用ですか?そうケンカ腰になられちゃ話ができない。
そろそろお互いにカードを見せ合いませんか?カード…?つまりどれだけ真相をつかんだか探りに来たってわけね?真相ね〜。
…真相なんて簡単に分かるもんじゃないんだ。
何がおっしゃりたい?情報を交換すればその真相とやらが解明できるかもしれない。
富江さんが犯人じゃないとおっしゃりたいのかしら?彼女は殺してない。
だったら警察でそう言えばいいわ!それともすべてを話せない理由でもあるのかしら…?佐伯さん本当は殺されたんでは…?何を知ってるんだ?別に…。
あっ一つだけ。
あなたが保険金のおこぼれにあずかりたいと思ってること。
世の中にはね知っていい真相と知らなくていい真相があるんだ。
特にあなたみたいに若くてかわいいお嬢さんはねえ。
あまり深入りすると…今に大火傷しますよ。
(玄関のチャイム)だ〜れもいなくなったこの広い家に独りぼっち…。
いつまでいられるか…。
警察の本格的な取り調べももうすぐ始まるわ。
いい気味だって笑いに来たんでしょ。
そんな…。
あなたもどうぞ1杯…。
いえ…。
弁護士の日下さんは…?い〜なくなったわ〜。
お金にならないって分かったからさ…。
それなのに私ったら…。
寂しかったの…。
佐伯を愛して…結婚して…女優もやめて…。
待ったわ。
帰って来てくれる。
いつかきっと…ね?10年よ!バカみたい…。
あの日…パーティーがあった晩現場にいらっしたんでしょう?はあ…?私が佐伯を…?いえ殺したのは奥様じゃありません。
きょう伺ったのはその事を確かめるためです。
疑いを晴らすためにもすべてを警察にお話なさるべきです。
心の底にご主人へのかすかな殺意があった。
その事がすべてを話すことへのためらいになってはいませんか?あの日現場近くにいたけれど別荘の庭には入らなかった。
そうですね?パーティーの話を耳にしてあの別荘へ飛んで行ったわ。
あの女のための…次回作のための…パーティー…。
私は嫉妬と怒りで体が震えたわ…。
あなたが言うとおりチャンスさえあれば…佐伯を崖から突き落としたいと思った…。
だけど…。
あの姿を見たとき…。
殺したいなんて…。
ああっ…。
(すすり泣く声)ありがとうございました。
資金のメドがついて来月クランクインすることが決まったのよ。
すばらしい作品にしてみせるわ。
撮影が始まったら別荘は閉めて都内のホテルに移るわ。
その前にパリにも行くし…忙しくなるわ。
パリですか?ええ。
映画で着る服やバッグを買い集めてくるつもり。
いよいよ戦闘開始!セリフもほとんど覚えたしドンと来いよ。
圭…あなたも一緒に喜んでよ。
圭…?佐伯さんが自殺を偽装する計画…環さんもご存じでしたのね?私が…?私が何で知ってるの?つまらない言いがかりは迷惑だわ。
自転車を回収して捨てたこと…洞くつで変装用の洋服を燃やしたことが証拠です。
知らないでそんな行動はとれません。
洞くつには行かなかったとあの時言われましたよね。
見てください。
デジカメで撮ったものです。
拡大してみたら分かったんです。
これ環さんだったのね。
それともこの車の中にもう一人誰かいたってことでしょうか?圭…あなたには負けたわ。
確かに私は彼の計画を知っていた。
打ち明けられて反対したけど説得できなかった。
彼きっとうまく行くからって…。
こんなことになるならなんとか止めていればよかった。
まさかあんな事故で命を落とすことになるなんて…。
事故…?あれは事故なんかじゃありません。
自殺を装った殺人です。
殺人…!?あれは事故なんかじゃありません。
自殺を装った殺人です。
殺人…!?何バカなことを…。
彼は自分で踏み切り板を確かめダイビングしたのよ。
あなたも見たでしょ。
第三者の入れないあの状況でどうやって殺人ができるの?確かにそのとおりです。
でも踏み切り板がずれていたら…?だからそれは彼が自分で確かめたと言ってるでしょ。
これはパーティーの一週間前岩場でお会いしてこちらでお茶をいただいた後に撮影したものです。
そしてこちら…。
佐伯さんが亡くなった後伺った時に撮ったものです。
どこが違うか分かりますよね。
何が言いたいのか分かんないわ。
踏み切り板の位置です。
踏み切り板の位置…?位置ならいつもどおりプレートの所にあるじゃないの。
右が「亡くなる前」左が「亡くなった後」の画像です。
このウェルカムプレートの位置を基準に佐伯さん踏み切り板の位置を決めていたんですね。
その事を知ってた人物がいつもより50センチ陸側にプレートをずらしておいたんです。
プレートの位置がずれてるのはっきり分かりますよね。
位置をずらしたのはパーティーが始まる直前…。
あの時…。
うわ〜きれいなバラ…プレートの位置が50センチ移動されたためにプレートにからみついていたつるバラの枝が切れている。
夜だったから佐伯さん基準にしているプレートがずれてることに気がつかずダイビングしてしまったんです。
佐伯さんの偽装自殺の計画を知りプレートの位置を移動させることができた人物こそが犯人です。
殺したのは…環さん…あなたですね!こんなことになるなんて…。
もしかしたら環さんを追いつめるかも…と思って私…何度もやめようと思いました。
でもできなかった…。
途中でやめたら環さんのお陰でふっ切れかけてる一年前の事もまたあいまいになって一生ひきずるに違いないって…。
ごめんなさい…。
環さんのためにって言いながら私いつか自分のために…。
自分をそんなに責めないで…。
いつかこんな日がくる…そう心の底では恐れていた…。
でもどうして…?どうしてなんですか?あんなに愛し合ってたのに…?愛し合ってた…?佐伯の心はもうとっくに私から離れてたわ。
環さん…。
佐伯は言ったわ。
ほとぼりが冷めたころ向こうで落ち合おう。
そしてスイスの銀行に預けてある12億円で第二の人生を二人で楽しもうって…。
でもそれはただの言葉だけ。
そんな気がないことぐらい分かってたわ。
現に…ロッカーの鍵のこと私にひと言も言わなかった。
パスポートなど大切なものはロッカーに隠しておくって…。
裏切られたのは初めてじゃないのよ。
彼はね新人女優に目がなかった。
私に隠れて何度も浮気を繰り返したわ。
あのパーティーで百合さんを誘うように私がいる前で平気で若い女優さんを誘うの。
その度に知らないふりしてたけどどんな気持だったか分かる?私と同業のそれも若い女優さんを…。
10年一緒だったけど…ずっと一緒ってわけでもないのよ。
帰って来ない日が何日も何日もあったわ…。
女優って哀しいわよね。
つい突っ張って幸せだ愛されてるんだって世間に演技してしまうの。
そんなひどい仕打ちされててなぜ別れなかったんですか?女優としての意地…。
ううん。
女の意地だったかもしれない。
富江さんから奪った女の…。
だから何も言わずに彼の会社の経営が苦しくなると援助もした。
それなのに佐伯さんは中村一郎として新しい人生を生き直そうとしてた。
これまでは私のとこに戻ってきてたけどもう決して二度と戻ってこない気だと分かってた…。
この年になって捨てられて何の代表作もない女優がこの先どう生きていけばいい?何としても代表作が欲しい映画が撮りたかった。
今度こそと私が懸けてるのに私を捨てて逃げ出す彼が許せなかったのよ。
そう…すべては圭…あなたが推理したとおり私が殺ったことよ。
橋本さんを殺したのも…環さんあなただったんですね?そう…。
あの金のメダル…その事が原因では…?そのとおりよ。
あれはスイスの貸金庫のものだった。
ひそかにニセ物を作って私は佐伯の知らない間にすり替えといたのよ。
橋本さんは佐伯さんが身に付けてたのはニセ物だと気がついた…。
それだけじゃない。
そのことから私が佐伯を殺しただろうと強請ってきたわ。
ニセ物とすり替えられるのは環さんあんただけだ。
ついでに社長を殺ったのもあんただろう!ハハ…。
本宅の奥さんに知られたくないなら5000万円でどうです?そんなお金はないし一度で済むとも思えなかった。
もう夢中で…。
金は持ってきたんだろうな!
(瓶の砕ける音)その後にやって来た富江さんが死体を見て逃げ去った。
さっきパリに行くと言われたのは本当はスイスなんですね?貸金庫のお金を引き出しに…。
私ったら…本当にバカなことを…。
血で染まったお金で映画を作ろうとしたなんて…。
映画は観る人に感動や夢を与えるものだというのに…。
環さん…。
ああ…こんなことするべきじゃなかった…。
佐伯だって…生きていてくれさえすればそれだけで心の支えになってくれたかもしれないのに…。
環さん…!?死なせてお願い!ダメ!死んじゃダメです!私が知ってる環さんはもっと誇り高い方です!こんなふうに逃げたりしないで自分のした事に責任の取れる誇り高い方です!それに…環さんをこんなに愛してる者の目の前で死んだりしないそういう方です!環さん…。
最後のお願い…。
警察を呼んで…。
ありがとう圭…。
あなたなら…きっといい仕事ができる。
今度こそすてきな恋をして…。
2014/05/27(火) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
午後のサスペンス 断崖[字]
三浦半島別荘パーティー血の惨劇! 死のダイビングは事故か自殺か偽装殺人か?保険金2億は?大女優の完全犯罪に挑む美人カメラマン。
詳細情報
番組内容
かつての栄光にすがりつく女優の森宮環は、五十歳を目前にして大作映画の主役を演じるチャンスを得た。しかし映画制作には莫大な費用がかかり、それをどのように捻出するかが、問題だった。環のパートナー・佐伯淳司の会社は、多額の負債を抱え、いつ倒産してもおかしくない状況だという。崖っ淵に追い込まれた佐伯と環は、ある計画を実行して、大金をせしめようと目論んだ。
番組内容2
その計画とは、映画の打ち合わせを兼ねたパーティーで、佐伯が狂言自殺を図り、スイスの銀行に預けてある十二億円と生命保険金二億円をせしめるというものだった。佐伯は断崖絶壁に建つ別荘の庭先から、招待客の見ている前で夜の海にダイビング。
番組内容3
渦に巻かれて沖に流されたように見せかけ、実は入り江の先端の洞窟に泳ぎつき、隠しておいた変装用の衣服に着替えて逃走し、偽造のパスポートを使って国外へと脱出するという大胆な計画だった。そしてパーティーの日。以前から環と親しい付き合いをしていたカメラマンのケイも別荘に招待された。デジカムやスチール・カメラで美しい景観を次々とおさめていくケイ。
番組内容4
パーティーには、映画に出資する広告代理店社長の吉岡や、映画評論家の柳夫妻、新進女優の清水百合らも参加していた。そして、宴もたけなわとなった頃、佐伯は計画通り、いきなり庭へと出て行き、バラ園に隣接した断崖の見晴らし場から暗い海へ身を躍らせた。仰天した一同は、慌てて崖下へとおりていく。するとそこには、沖に流されて発見できないはずの、墜落した佐伯の無残な死体があった。
出演者
桜木圭・・・水野真紀
佐伯淳司・・小野寺昭
佐伯富江・・大空眞弓
日下哲也・・清水絋治
柳伸一・・・上杉祥三
柳ふみ子・・和泉ちぬ
小野田はつ江・・・絵沢萠子
小野田進・・安村和之
森宮環・・・山本陽子 ほか
原作脚本
【原作】夏樹静子「断崖からの声」
【脚本】篠崎好
監督・演出
【監督】五木田亮一
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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