クローズアップ現代「検証 公益法人改革」 2014.05.28

スポーツや文化の振興福祉など私たちの生活を豊かにする事業を行う公益法人。
その一方で、実態のない幽霊法人が多数あったことがNHKの調査で分かりました。
およそ100億円の資産。
その多くの行方が分からなくなっています。
これまでも理事長が財産を私的に流用するなど不祥事の温床ともいわれてきた公益法人。
国は6年前制度の抜本改革に着手。
公益法人の再審査が全国で大詰めを迎えています。
改革を受けて解散した法人をNHKが独自に調べたところずさんな運営や行政の監督が行き届かずおよそ100億円の資産がなくなるなどしていることが明らかになりました。

さらに今、詐欺の手口に使われる事態も起きています。
新たな制度で設けられた一般社団法人が悪用されています。

どうすれば国民のための法人を作れるのか今夜は公益法人改革を検証します。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
公益法人は、その名のとおり公共の利益のための活動を行う目的で国や都道府県から許可を受けて設立が認められてきました。
補助金をもらって行政の事業を請け負ったり税制面で優遇されてきました。
しかし公益法人のトップ理事長が公益法人の資産を勝手に自分や家族が経営する会社に流用したりするなどずさんな運営や私的な流用が次々に明るみになったことから国は6年前、公益法人制度の抜本改革に着手しました。
改革の柱は2つです。
公益法人を50%以上利益を求めない事業を行うなどあいまいだった公益法人の定義をはっきりさせ厳格な審査で選別し絞り込みました。
もう一つが、新たに一般法人という枠組みを作り100%の営利事業を認めるなど柔軟に事業が行えるようにしました。
新たな制度の下で公益法人は年一度、事業内容や資産を国や都道府県に報告する義務が課せられ、従わない場合は罰則が科せられます。
新しい制度の下でずさんな運営を行わないかチェックできるのでしょうか。
一方、一般法人は行政による審査なく設立ができその後のチェックもありません。
補助金をもらったり行政の委託事業も請け負うことができるこの一般法人が再び不正の温床にならないのか課題も浮かび上がってきました。
明治29年以来の大改革。
新しい制度の下、審査を経て公益法人と認められたのは2万4000あった法人のうちおよそ9000です。
新制度移行の過程で解散や合併で消滅した法人は3500。
このうち336は解散の手続きを進めることができない実体のない法人だったのです。
本来なら国に渡さなくてはならない100億円に上る資産の多くの行方が分からなくなっています。
改めて浮かび上がってきたずさんな公益法人の実態からご覧いただきます。

NHKは今回改革に伴って解散した公益法人を独自に調査。
その結果、多額の資産の行方が分からなくなるなどして国などに渡せない状態になっていることが分かりました。

2億円の行方が分からないまま去年、解散した財団法人を訪ねました。
かつての事務所に残されていた看板。
未来産業技術研究振興財団です。
先端技術の研究施設などを作るプロジェクトを進めるとして平成4年、当時の通産省の許可を受けて設立されました。
その後、バブル崩壊のあおりでプロジェクトから撤退する企業が続出。
財団の活動も大幅に縮小しました。
ところが、その陰で巨額の資金が流出していたことがNHKの取材で分かりました。
平成11年運営を取りしきっていた専務理事らが資産の大半に当たる2億円を福岡県の建設会社に貸し付けたのです。
この直後その専務理事が貸し付け先の社長に就任しました。
なぜこのような融資が財団の内部で認められたのか。
当時を知る元役員が取材に応じました。
理事会で議論が交わされることは少なく専務理事に異論を唱える雰囲気ではなかったといいます。

専務理事は四国にある自分の土地を2億円の担保として差し出すと財団に説明していました。
ごめんください。
現場は、うっそうと木が生い茂り長年、人が住んだ様子はありません。
その後の取材で、土地の所有者は専務理事ではなく暴力団員だったことが分かりました。
2億円は、どうなったのか。
都内で、元専務理事に接触することができました。
結局、2億円の行方は分からなくなりました。

公益法人の指導・監督を行うのは国や都道府県です。
すでに解散した公益法人の実態を確認できていたのか。
省庁や自治体に文書で尋ねました。
資産を把握できていない法人があると答えた省庁や自治体は63のうち31。
行政の目が行き届かない間に資産が失われてしまった法人が数多く存在すると見られます。
その一つ、去年解散した東京都市科学振興会が入っていた建物です。
都市作りに関連する調査や書籍の編さん事業を行政から請け負うなど7500万円の資産を蓄えていました。
しかし財団が発行していた雑誌は20年前にストップ。
その後、休眠状態にありました。
7500万円は、どうなったのか。
運営を取りしきっていた常務理事の所在を突き止めました。
この財団を指導・監督していた東京都。
5年に1度、立ち入り検査を行うことになっていました。
しかし、最後に立ち入り検査を行ったのは平成12年。
常務理事が連絡を絶ったため資産のチェックは今もできていません。

今夜は、公益法人と行政の関係にお詳しい、北海道大学大学院教授の宮脇淳さんと共にお伝えしてまいります。
もともと公益法人の運営はずさんだといわれてきましたけれども、新しい制度の下で、選別を行おうとしたところ、解散手続きすらできなくなっているところが336に上った。
この数字、どう受け止められますか?
私は公益法人の問題というのは、やはり行政との関わりに深い問題点があったというふうに思います。
これまでの公益法人は、設立をするときに、所管官庁の許可というのを必要としました。
この許可を出すときの基準というのが、役所の裁量、別のことばでいいますと、さじ加減で決まってきたという、そういう仕組みにあります。
さじ加減で、いろいろと税法上の優遇措置を受けられたりするわけですから、どうしても行政が優位になって不透明な関係を作りやすい、そういう土壌があったと思います。
ですから、具体的に申し上げますと、例えば天下りの受け皿になる、しかもわたりっていうことばがありますが、2回、3回目の受け皿になる。
あるいは公益法人のほうもそうやってつきあっていますと、役所から仕事というものを受けやすくなるというような実態が存在する。
しかも、行政側に法的な明確な監督権というのが規定されていなかったという実体もあるわけです。
その行政の目が行き届かない間に、この336の公益法人の資産が100億、どこに行ったか分からない。
このままでいいんでしょうか?
これは役所も公益法人のほうも、やはり公共の財産というものを管理し、運用してきたんだという認識が、非常に欠如していたというふうに思います。
ですから、このまま過去の問題として放置するのではなくて、やはりなぜ、このような問題を起こしてきたのか、そのことを明確にして、新しい制度に向かって、その欠陥はなくすようにしていかないといけないと思います。
そうですね。
2万4000あった公益法人、新しい厳格なルールの下、定義がはっきりさせられて、審査をしたところ、9000が公益法人として残った。
この数字、9000しか残らなかったというふうにも見えるんですけれども。
許可を出すときに、さじ加減という、そういうことばを使いましたけれども、まさに半分以上は、今日においてはどうも公益性ということが認められないような所に対しても過去においては、それを許可を出してきたと。
その行政としての体質、こういったものをきちっと解明していくことは必要ではないかと思います。

そしてちょっとこちらをご覧いただきたいんですけれども、ずさんな運営ができないようにする仕組みとしまして、あいまいだった理事長の責任を法律で明記して、刑事罰が科せられるようにしたり、あるいは行政側には是正を命令したり、認定を取り消せる権限が法律で定められました。
これによって、どちらかというと、あいまいだった行政と、そして公益法人との関係の間に、緊張感が生まれると思いますか?
確かに今までは法的な規定というものがほとんどなかったわけですから、こうやって法律によって規定したということは、一定の緊張関係を生み出せる一つの手段が埋め込まれたということはいえると思います。
ただし、それが実際に機能するかどうかというのは、行政側の体質、公益法人側の体質というものが今までと変わってくるかどうか、それがこういった法律の規定というのが機能するかどうかの大きなポイントになると思います。
権限を持った行政側がそれを行使するのかというところも問われるでしょうね。
そのとおりだと思います。
続きましては、今回の制度改革のもう一つの柱、一般法人の誕生です。
公益法人が狭き門となる中で、この一般法人は、登録だけで簡単に短時間で設立ができ、審査もありません。
ボランティア団体などが融資を受けたりしやすくすることなどを目的に作られました。
補助金の受け皿になったり、事業の内容によっては税制の優遇も受けられますこの一般法人。
すでに2万件以上が誕生していますけれども、取材を進めていきますと、思わぬ使われ方をしているケースも出てきました。

東京都内で開かれた節税セミナーです。
中小企業の経営者たちが集まっていました。

税理士が勧めていたのは一般法人の一つ一般社団法人の設立でした。
簡単に作ることができ節税につながるというのです。

その使われ方です。
本来、土地や株などを相続するとそれぞれの世代で相続税がかかり資産が目減りします。
一般社団法人を設立して資産を移し、法人のものにすると子や孫が法人の役員を務めれば資産を実質的に保有しながら相続には当たらないため税を払わずに済むといいます。
こうした一般社団法人を使った節税セミナーは今、全国各地で開かれています。

さらに一般法人は最低限の情報公開しか求められず外部の目が届きにくくなっています。
制度改革の中で公益法人から一般法人に移行した団体もありました。
その数、1万1000余り。
NHKでは公益法人から一般法人になった団体の情報公開がどう変化したか調べました。
この書類は原子力発電などエネルギー関連の調査を行う法人が移行前に公開していた決算書類。
財産の状況や受け取った補助金の額などが16ページにわたって記載されています。
こちらは現在常時、公開されている決算書類。
2ページだけ。
国から9億円を超える委託金を受けていますがどう使われたのかこれだけでは分かりません。
国から補助金や委託金を受け国家公務員の出身者が理事を務めていた282の法人を調べました。
すると70%に当たる196法人で、移行後に情報公開が減っていました。
制度改革を担った内閣府です。
一般法人に詳しい情報公開を義務づけるのは新たな規制につながり制度の趣旨に反するといいます。

簡単に設立ができ外部からの目も届きにくい一般法人。
制度の理念に反して悪用するケースも出ています。
うその勧誘で投資を募ったなどとして金融庁から警告を受けた投資ファンドのパンフレットです。
株を運用して絶対的収益の追求をうたい245人から10億円を超える資金を集めていました。
このファンドを管理していた組織の代表が一般社団法人でした。
都内にある事務所を訪ねました。
しかし、そこには法人の名前は見当たりませんでした。

そこにあったのは貸しオフィス。
法人はすでに引き払っていました。
その後この法人の理事に取材しました。
仲林茂樹弁護士です。
一般社団法人の名前を使ったうその勧誘を受けだまされたというお年寄りの依頼で損害賠償を求める裁判を起こしています。

悪用する側にとってどこに、うまみがあるのか。
一般社団法人を使って投資詐欺をしたことがあるという男性は名前の信用力だといいます。

登録が簡単にできて、しかし、外部の目が届かない。
しかし、一般の人々から見ると、信用できるような存在がそこにある。
まさにこれ、また新たな不正の温床を生んでるようにも見えるんですけれども。
国民から見たときに、一般法人というのが、一体どういうものなのか、そのことが極めて分からない構造になってしまってると思います。
株式会社であれば、一定の営利の目的です。
それからボランティア団体であれば、NPOであれば、一定のイメージを作ることができるわけですが、一般法人ということになると、一体どういうことをやるところなのか、ところが、この中に従来、公益法人であったところが、移行してきているわけです。
つまり、一つは役所型の法人がそこに存在する。
それからもう一つは、本当の意味で、地域貢献をしたいという形でボランティア的なもので設立をする、新しい法人を設立する方々がいらっしゃる。
そして、もう一つは詐欺等に悪用しようとされる人たちがいると。
こういうものが一緒くたになって一般法人ということになります。
そうしますと、ある意味、ぬえ的な存在なんですが、この役所的なところもまだ存在しますので、ブランドを背負ったぬえということで、国民からしますと、社団とついていると、何かそこに役所的な信用があるんではないかと思ってしまうということも、またやむをえないところがあるんじゃないかというふうに思います。
公益法人の定義があいまいで、いろんな意味で、ずさんな運営が行われたということで、改革も行われたわけですけれども、公益法人は確かに厳格な審査が行われて、選別が行われた。
しかし、その一方で一般法人と今おっしゃったような、ブランド力のあるぬえ的なものが生まれたとしたら、一体何のための改革だったんだろうかという気持ちにもなりますよね。
この一般法人については、外部からのチェックというのが、ほとんど効かないというところに最大の問題があると思います。
公益法人から移行したところも、7割がその情報公開ということが非常に簡素化してしまった。
株式会社であれば、株主がいて、マーケットがありますから、そこからチェックを受ける。
NPO法人もそうだと思います。
ところが一般法人について見ると、情報公開も十分行われない。
こうしたところでいろいろな問題が起こってきますから、やはり公益法人から移行した一般法人が、まず従来どおりの情報公開を全部やっていただいて、一般法人の信頼というものをきちっと維持し、作っていただくということが大前提だと思います。
それを基準としながら、新しく出来た法人も、そうした情報公開を行うと。
そうしますと、悪用しようとする法人というのが、自然と淘汰されていくということになるもなるんじゃないかというふうにも思います。
今のリポートにありました、調べたところ、税金、補助金が入っていて、そしてそのトップに役所からの方がついていたりするところの7割で、情報公開が大幅に減っていたという、この結果は、後々本当何かいろんなずさんな運営につながりかねないわけですから、制度設計をした、やはり責任がありますよね。
制度というものは、新しく作っても、100%それがいいところばかりということはありえないわけです。
必ず制度というものには問題点があります。
今回のように政府が制度を作った結果、非常に大きな問題点というものを生みだしてくる、そういう場ができてしまったわけですから、これは早くその制度を修正するという努力を、政府みずからが行わなければいけない、こういう応答責任というのが、私は行政側に求められるんではないかというふうに思います。
明治29年以来の改革が成功したといわれるまでにまだ道半ばと。
これからが本番のところではないかというふうに思います。
きょうはどうもありがとうございました。
2014/05/28(水) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「検証 公益法人改革」[字][再]

いま大詰めを迎えている公益法人改革。従来の法人のずさんな運営やチェック体制の甘さ、新たな課題が浮かび上がってきた。民間の公益活動はどうあるべきか、考える。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】北海道大学大学院教授…宮脇淳,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】北海道大学大学院教授…宮脇淳,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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