異常犯罪シリーズ 2014.05.28

(日比野功一)あっそうですか。
じゃあ妹は8時にそちらを出たんですね?あっ…わかりました。
夜分遅くすいませんでした。
どうも。
(日比野静子)変ねぇ…。
ゆかりちゃん遅くなるときは必ず電話くれるのに。
まあバイトの帰りに友達にでも会ってんだろ。
先月もあったじゃないか。
友達と話し込んでしまって夜遅く帰ってきた日が。
はあ…そのうち帰ってくるよ。
(電話)ゆかりちゃんだわ!もしもし?どうしたんだよ?ファクスだわ。
ファクス?あなた…あなた!あなた…。
(功一)バカな…!警察に知らせよう。
待って!警察に知らせてゆかりちゃんの命にもしものことがあったら!何をバカなこと言ってんだよ!3千万もの大金どうやって作れというんだよ!警察に電話するしかないだろうよ!あなた…。
そうだ…。
あなた!僕の大学時代の先輩で刑事になった人がいるんだよ。
その先輩ならきっと力になってくれるよ。
(パトカーのサイレン)
(須貝)あっ貴島さん。
死亡している男性は前島博和20歳。
このマンションの802号室の住人です。
通報者は隣の工場の警備員だそうです。
(貴島柊志)目撃したんだって?ええ。
見回りの途中午後10時30分ごろ。
(須貝)工場の駐車場をパトロールしてると突然…。
(前島博和)わあー!!悲鳴を上げながら…。
通報を受けたとき最初は自殺かと思ったんですが奇妙な点がいろいろありまして…。
この傷は落下したときの傷じゃないな。
索状痕…。
(倉田義男)現場到着から20分。
何やってんだよもたもた!早く切れ!
(林)はい!
(林)うっ…うん…!ちょっと待ってください。
現場捜査は現場の保存を第一にそのままの状態で行うのが原則です。
壊すやり方は乱暴です。
誰だあんたは?警視庁捜査一課の貴島です。
俺は中野南署の倉田だ。
ふ〜ん。
俺のやり方が乱暴だっていうのか。
それじゃあ訊くけどな壊さねぇでどうやって中に入るんだよ?隣の部屋からベランダ伝いに入れると思います。
私が行って中から鍵を外しますんで。
ここ何階だと思ってんだよ?そんな悠長なことがしてられるかい!でも捜査は慎重に…。
捜査は迅速にだ。
切れ。
(林)でも…。
いいから切れ!本庁のデカさんだからって余計な口を挟まないでもらいたいな。
このヤマは俺が仕切ってるんだよ。
この血痕はガイシャのもんだなぁ。
倉田さん。
うん?遺書のようなものがありませんね。
バカ野郎!死体の状態から見て殺しであることは間違いねぇんだよ!ガイシャはこの部屋で何者かに頭を鈍器で殴られ首を絞められた揚げ句ベランダから突き落とされた。
その鈍器もロープも室内には見当たりませんね。
決まってんだろうよ!ホシが持ち去ったんだよ!でもどうやって?えっ…?犯人はどうやってこの部屋から逃げることができたんです?玄関からベランダまでの距離どのくらいありましたかね?ややこしいヤマだからもたもたしねぇで気合い入れてやれ!気合い入れて!行け!ちょっとすいません。
倉田さん!うん?学生証か。
学生と言っても予備校生ですけど。
予備校生?二十歳ですから2浪ですね。
東京に1人で住んで予備校通いか。
まあ今どきそういうのは珍しくねんだろうがな。
ああ…ちょっとすいません。
倉田さん!ああ?実家のほうへ電話を入れときました。
田舎どこだい?新潟です。
ご両親は明日上京されるそうです。
そうか…。
おい林!・
(林)はい!う〜ん…。
ホシが逃げるとすりゃこのベランダからしか考えられねぇけどな〜。
一体どうやって…。
あの…。
何だよいちいちうるせぇな!あはっ…もう1つわからないことがあるんです。
被害者はどうして靴を履いていたんでしょう?何〜?そんなものは何とでも説明つくだろうよ。
例えばだなガイシャは室内で何者かと口論になった。
なっ?身の危険を感じたガイシャはホシから逃れようと玄関へ走った!ところが靴を履いたところでホシに引きずり戻されて…!暴行を受けてベランダから…。
そうだよ!だったら靴を履いてたって何の不思議もない!犯人から逃げようってときにスニーカーを履く余裕がありますかね?何より引きずり戻されたにしては室内に靴跡が見当たりません。
そりゃあ…。

(須貝)貴島さん!隣に住む女性が不審な男を見たと言っています。
不審な男!?見てはいませんよ。
声を聞いただけです。
声を?何時ごろ?う〜ん…10時半ごろだったかしら…。
私キッチンでお夜食作ってたんですけどその時…。
(ドアを叩く音)
(男の声)中にいるのはわかってるんだ!!ドアを開けろ!!
(ドアを叩く音)その男は部屋の中へ入っていったんだね?さあ…?さあって。
私が聞いたのはそれだけですから…。
それだけって…もっと他に何か!あの…声の感じはどんなでした?例えば年齢とか。
あの若くはないと思いますけどそれ以上は…。
もういいですか?はい。
どうもありがとうございました。
よし!聞き込みだ!その不審な人物を目撃した者がいないかどうか徹底的に聞き込むんだ!
(刑事たち)はい!・貴島さん!本庁から無線で先ほど日比野功一さんという方から電話があったそうです。
日比野から?何でも妹さんが誘拐されたとかで。
誘拐…?すいません。
ちょっと失礼します。
ああもしもし。
村井警部ですか?
(村井)ああ。
たった今日比野さんのお宅に着いたところだ。
ゆかりさん今夜家庭教師のアルバイトがあってなどうやらその帰り道事件に巻き込まれたようだ。
犯人から3千万の身代金を要求するファクスが届いたきりそれ以後接触がない。
そうですか…。
あのちょっと日比野と替わっていただけますか?ああ。
貴島からです。
どうぞ。
すいません。
もしもし?先輩?大丈夫か?すいません。
ご迷惑をおかけしまして…。
何言ってる。
ホントはすぐにでも飛んで行きたいんだが今別件を担当しててそっちへ行けないんだ。
すまん…。
(功一)「いいえ」日比野警察を信用してくれ。
大丈夫だ。
妹さん必ず無事に戻ってくるよ!「はい…」・じゃあ林たちは4号。
頼むぞ!
(刑事たち)はい!つらいだろうが気をしっかり持って。
「はい」また電話する。
じゃあな。
すいません。
ちょっと倉田さん!えっ?右です。
くっ!もう早く言えよ!もう!前島君先月までこっちに住んでたんだって?
(今川)そうだよ。
隣の102号室。
うん。
そのころ前島君誰かともめてたってことはないかな?それどういう意味?あっ?俺あいつとは関係ないよ!ただ麻雀のメンツが足りないとき付き合ってただけだよ。
いやあんたのことを聞いてんじゃねぇんだよ。
だってそういう目で見てるじゃん!何俺疑ってるの?いやいや…俺が訊いてんのはなその前島君ともめてた…。
だから!俺は関係ないって。
信じてよ!いいよ中見て!調べていいよ!おい!何してんだい!あの前島さんをよく訪ねてこられた人心当たりありませんか?何だ!そういうこと?だったら最初からそうやって訊いてよ。
(咳払い)それで?うん。
サラ金の取立て屋にはよく怒鳴られてたね。
取り立て屋!?あいつかなり借金したみたいでさ何度か取り立て屋が押しかけてきたことがあんだ。
俺は声1〜2度聞いただけなんだけど。
そりゃもう怖い口調でさ「中にいるのはわかってる!ドア開けろ!」って。
ホントか。
うん。
それで前島さんは?居留守使ったり逃げたりしてたみたいだけど。
前島さんどうして借金なんかしてたんでしょう?はあ…そんなことまで知るわけないでしょ。
あいつのこと知りたいんだったら俺じゃなくて親友たちに訊けばいいじゃん。
親友?すいません。
江藤君に田坂君だね?前島博和君知ってるね?彼が亡くなった件についてちょっと訊きたいことがあるんだ。
前島君サラ金から借金して取り立て屋に脅かされてたそうだね。
(江藤順弥)ええ。
金額はどのくらい?50万ほどって言ってました。
あいつ気晴らしに始めたパチンコに夢中になってしまって。
そのサラ金業者の名前知らないかな?さあ…。
聞いたことぐらいあんだろう?そこまでは知りませんよ!それにあいつ借金なら先月親に頼み込んで全額返したって言ってましたけど。
返した!?ホッホントか!?ええ。
もういいですか?君たち前島さんとは親友だったんだろ?そうですよ。
中学からずっと一緒ですから。
その割りには随分と落ち着いてるね。
そう見えますか?これでもかなりショック受けてるんですけど。
顔に出ないタチなんです。
ところで前島さん昨夜誰かと会うようなこと言ってませんでしたか?いいえ。
じゃあ最近前島さんに何か変わった様子は?例えば誰かとトラブルがあったとか。
誰かに恨まれていたとか。
知りませんよ。
田坂さんは?刑事さん。
前島を殺した犯人を捕まえるためだったら捜査に協力は惜しみません。
でも本当に僕たち何も知らないんですよ。
最後に…あっこれは形式的な質問ですが昨日20日夜10時半ごろあなた方はどちらに?
(田坂勝彦)自分のマンションにいました。
江藤さんは?僕も自分の部屋にいました。
もっともそれを証明する人間は誰もいませんけど。
(チャイム)授業が始まるんで…もういいですか?はい。
行くぞ。
何考えてんだよ。
もう一度あの謎を考えてるんです。
謎?犯人はあの部屋からどうやって逃げることができたのか?被害者はなぜ靴を履いていたのか?そんなことはどうだっていいんだよ!それより問題なのはあの訪問者だよ。
前島が借金を返したのが事実なら昨夜マンションに来たのは取り立て屋じゃない。
その男が誰なのか?そいつを捜すのが肝心なんだよ!いやしかし密室と靴の件も…。
イライラするなぁもう!いい加減にしろよ!はっ?あんたと一緒にいるとなイライラすると言ってんだよ!大体な聞き込みの仕方からしてなってねぇんだよ!ちんたらちんたら。
あんなガキたちのアリバイ聞いたってしょがねぇだろうよ!どうしてです?昨夜の隣の女の証言忘れたのかよ?えっ?訪問者の声は若くなかった。
そう言ってたろうよ!でも彼女はちょっと聞いただけです。
彼女の証言を鵜呑みにして年齢を特定するのは危険です。
あんたいちいち俺に逆らうね。
いやぁそういうわけじゃ…。
ったく…。
あんたとなんか組むんじゃなかったよ!でもさっきの江藤と田坂の様子何だか妙だと思いませんか?最近のガキなんてなあんなもんだよ!親友が亡くなったってのに涼しい顔でお勉強だよ。
心の痛みも感じねぇんだからな!ああいう奴らが一流の大学に入って将来の日本を背負って立つかと思うとぞっとするよ!まあもっとも警察でもいるけどな!大学出てるってだけでエリート風吹かせて出世していく奴らが。
あんたいい大学出てるんだってね?いえ…私は別に。
じゃああんたも昔は予備校に通ったクチか。
いえ。
いえって何?じゃあ現役で?学科は何?英文科です。
英文科!?あっ…あんた英文科出てデカになったの?変わり者だってよく言われます。
そいじゃ英語しゃべったりするわけ?べらべらって。
まあ一応。
俺の一番嫌いなタイプだよ!
(前島隆一)サラ金の借金は先月私どもが全額返済しました。
本人も随分反省して心機一転勉強に頑張るというんで引越しもさせたんです!ですから…。
つまりですね私どもがお伺いしたいのは息子さんともめてた人物。
あるいは息子さんを恨んで…。
何か?
(前島篤子)博和が中学のころ学校である事件があったんです。
事件?篤子よさないか。
そんな昔のこと!いえどんなことでも結構です。
おっしゃってください。
当時博和と同じクラスにいた吉本豊君という子が神社の境内で首を吊って自殺したことがあったんです。
それで?ところがその後妙な噂が広まって…つまり吉本君はいじめにあって自殺したと!そのいじめをしていたのが江藤君と田坂君博和の3人だと。
いじめ?もちろんそんなのはデマです。
博和がいじめをするわけがありません。
ところが吉本君のお父さんは事件の後その噂を信じてこう言ったそうです。
あの3人は絶対許さない。
いつか復讐してやると。
その父親の名前は?
(篤子)吉本孝三!林!ちょっと来い!・
(林)はい!新潟県警に連絡してその吉本孝三を洗うんだ。
はい!うん。
どうかしたのかい?いえ…。
(天気予報)「午前午後とも0パーセントから…」
(貴島典子)もう…どうして水が漏れるのよ〜。
この間直したばっかりなのに。
よ〜し!こうなったら…。
今日は3ミリのプラスと。
ふふっ。
私が直すしかないわよね。
いくわよ〜!・
(ドアの開く音)ただいま〜。
あっお帰り〜!何してるの?うん?ネジ外すの。
よせよおい!典子!中覗いてみたいじゃない!どうして水漏れするのか〜。
いやこの間もそうやってビデオ壊したばっかりだろう。
だって電気屋さんすぐ来てくんないんだもん!私が直すしかないでしょ?解体すれば直るってもんじゃないんだよ。
よせったら!よいしょ!電気屋さん明日には来てくれるよ。
こういうものは専門家に任せよう。
なっ!ちぇっ!着替えは?うん?そこに置いてあるでしょ?ねっ!お茶漬けぐらい食べていくでしょ?すぐ用意するから!うん。
毎日こう暑いと着替えがいくらあっても足りないわね。
まったくだ。
薫は?うん?パパが帰ってくるってさっきまで起きてたんだけど。
そう。
ただいま。
パパまたすぐ出かけなきゃならないんだ。
ごめんな。
どうかしたの?うん…。
日比野のこと話したことあったっけ?日比野さん…ああ!あなたの大学時代の後輩で新潟かなんかで先生やってるって人だったわよね?うん。
それが…去年だったかな?新宿で妹と歩いてる日比野とばったり会ってさ3人で酒を飲んだことがあった。
教師を辞めた?ええ…。
あんなに教育に燃えてたお前がどうして?いや…その話はもうなしにしてくださいよ。
(日比野ゆかり)今は出版社に勤めて百科事典の営業してるんです。
こう見えても兄は結構商才あるんですよ!ねっ!景気はもう一つですけどゆかりのために頑張らないとね!先輩!今日は久々に会ったんですから今夜はとことん飲みましょうよ!ねっ!そう。
でその日比野さんがどうかしたの?いや。
何でもない。
ごちそうさま。
あっそうだ!薫のことなんだけど。
幼稚園で何かあったのか?そうじゃなくって薫をね塾に通わせようと思うの。
何言ってるんだよ。
習い事だけでも目一杯なのにこのうえ…。
まさか…。
うん。
私小学校はやっぱり私立に行かせたいの。
おい典子…。
怜ちゃんも美代ちゃんも私立に行くっていうのよ!お母さんたちとも話したんだけどもねやっぱり私立は違うらしいのよね!ねっどっちみちさ受験で苦労するわけだし薫もさ少しでも早いうちに…。
公立でいいよ。
うん!勉強だけのこと言ってんじゃないのよ!校風は自由だっていうしそれにさ私立はいじめも少ないっていうじゃない?あっ…ごめんなさい。
いや。
悪いけどもう行かなくちゃ。
うん。
その話はまた今度にしよう。
なっ!・その家だったらもう誰も住んでねぇよ。
すいません。
今吉本孝三さんどちらにいるかわかりませんかね?道代さんだったら広島の実家に帰りなさったみてぇだけど。
離婚されたんですね。
豊君が自殺して2年くらいだったろうか。
2人別々にここから出ていかれたんです。
ご近所の方で吉本さんご存知の方いませんかね?さあ…?あの事件以来吉本さんは人付き合い避けてなさったからね。
家も売りに出されたのも買い手がねぇで。
やっぱ縁起悪いですからねぇ!いじめが事実だとしたら残酷なもんだなぁ…。
はあ…休憩時間に図書室でお勉強ねぇ。
はあたいしたもんだねぇ。
おいっ何してんだ?行くぞ。
ええ…。
(杉田)さあどうぞお掛けください。
それでご用件というのは?ええ。
おたくの卒業生の前島博和さんが東京のマンションで墜落死するという事件がありましてね。
そのことでちょっと気になることを聞いたもんですから。
何でしょう?ええ実はその…。
6年前こちらの中学でいじめがあったそうですね?いじめ?吉本豊君が自殺した事件です。
そのいじめに前島さんも関わっていたとか?いや自殺があったのは確かですがいじめはありません。
いじめはなかった!?そうです。
吉本君は当時あまり成績がよくなかったもんで担任共々私共も精一杯励ましたんですが本人はそのことでかなり悩んでいたようです。
では成績を苦に自殺したと?そうです。
ちゃんと調べられたんですか?それは…。
当時の担任の先生と会わせてもらえますか?その教師は辞めました。
辞めた…!?とにかく本校は県下でも1・2を争う進学校なんです。
創設以来当校ではいじめといったような陰湿な事件は1件たりとも起こっていません。
成績を苦に自殺したんならその吉本君を励まし続けた先生がどうして辞めなければならなかったんです?でですからそれは…。
あなた方はいつもそうやって事実を隠そうとする。
いじめがなかったって本当に言い切ることができるんですか?おいどうしたんだよ?校長に怒鳴ってもしょうがねぇだろよ?6年前の事実を知ってる人が他にもいるはずです。
聞き込みを続けましょう。
おいっ…おいっ!
(小池)いじめがあったのは確かだと思いますよ。
遺書がありましたから。
遺書!?ええ。
ただ肝心の相手の名前が書かれてなくてそれでうやむやになっちゃったんですね。
その相手が当時同級生の江藤田坂前島の3人だというのは?いじめの現場を見た人がいたようなんですよ。
ただ3人も否定しましたし…。
何より江藤の父親が地元の名士でPTAの会長なんですよ。
あっこの子が吉本豊君。
(小池)はい。
でこの人が父親の吉本孝三さん。
そうです。
どなたか吉本さんの行方を知ってる人いませんかね?ああ…日比野先生だったら知ってるかもしれませんねぇ。
事件の後しばらく吉本さんと日比野先生手紙のやりとりしていたらしいですからね。
日比野先生!?ええ日比野功一。
英語の先生で当時の豊君の担任でした。
今は東京にいるって話ですけど。
日比野功一って確か…!?いい先生でした。
熱血漢で私は日比野先生尊敬してました。
あんな事件がなけりゃ学校辞められることなかったんですよねぇ。
あっこれが吉本豊君の遺書なので噂が最初にあったんもいじめを立証することができませんでね。
結局事件性がないものとして処理されたのです。
それでその吉本孝三なんですがね。
住民票を移してないんですよ。
ですからどこ行ったのかは…。
後はその日比野って先生から聞くしかねぇけど…。
しかし驚いたなぁあんたの後輩が今度のヤマに関わっていたとは…。
しかしまあこれでようやく例の謎の訪問者も解けた。
事件当夜前島を訪ねた男は吉本孝三だ。
6年前の復讐を果たしに現れたっていうわけですか?決まってる。
何と言っても動機の点では十分だ。
あの3人は絶対に許さねぇ…そう言ってたんだからな。

(吉本豊)「お父さんお母さん。
どうか僕を許してください」「いつもやさしくしてくれてありがとう」「毎年旅行に連れてってくれて僕はとても幸せでした」「でも学校は地獄でした」「このままいじめが続くのなら死んだほうがましです」「お父さんお母さんごめんなさい」「弱い僕をどうか許してください。
豊」・そろそろ上がりにするか。
一雨来そうだ。
急いでくれ。
早く。

(ノック)・
(ノック)どなたですか?
(シャッター音)何てこったよ。
これは?おそらくガイシャが頼んだ物と思われます。
ピザを食べてる最中に襲われたのか…!?発見者は?それが母親なんですよ。
(田坂の母)勝彦…勝彦。
(嗚咽)どうしてお母さんが?
(須貝)身の回りの世話をするために月に何度か新潟から来てたそうです。

(田村の母)勝彦…。
(嗚咽)倉田さん。
ええっ!?机の中にこんな写真が入ってました。
恋人か!?それにしちゃ撮り方が妙だな。
こりゃあ…。
どうした?日比野の妹です。
本当か!?ええ。
それで日比野から事情を聞きたいと思いまして何とも妙なことになりました。
妙って言えばこっちも妙だよ。
…というと?うん。
事件が起こって2日も経つっていうのに犯人から一切連絡がない。
どうも犯人の狙いは身代金じゃないっていう気がするんだ。
それじゃあ…。
先輩!そうですか新潟行かれたんですか…。
まさかこんな形でここへ来るとは思わなかったよ。
前島の事件のことは新聞を見て知りました。
でも…。
前島に続いて今度は田坂が殺された。
そうなるとどうしても6年前のことが関係してくるんじゃないかと思ってな…。
吉本さんが犯人だと言うんですか?わからん。
吉本さんが今どこにおられるのかそれは僕にも…。
いや…手紙をやりとりしていたのは吉本さんがまだ新潟にいらしたころの話ですから。
本当です。
実はもう1つわからないことがあるんだ。
田坂の部屋からこんなものが出てきた。
ゆかり…。
田坂がどうしてゆかりの写真を?2人は知り合いなのか?まさか…。
ゆかりさんも中学までは新潟にいたんだろ?学校は違ったにしてもそのころ2人が顔を合わせたことは?日比野。
新潟であったこと詳しく話してくれないか?吉本が自殺して遺書がありました。
文面からいじめがあったのは明らかです。
でも相手は誰かわかりません。
そんなとき…ゆかりが見たと言ったんです。
いじめの現場を見たのはゆかりさんだったのか!?
(功一)あの日の午後ゆかりが神社の前を通りかかると…。
(博和)吉本わかってんのかよ。
待てよ。
(勝彦)吉本お前みたいなバカはいなくていいんだよ。
そうだよ。
お前一人のためにさぁクラスのみんなが迷惑してるんだよ。
(勝彦)わかってんのよ吉本。
(博和)何とか言えよ。
おいおい…。
言えよ!
(順弥)吉本これで首でも吊って死んじゃえよ。
何してるの!?やめなさいよ!警察呼ぶわよ!それが前島田坂そして江藤…!?僕は3人を呼び事情を訊いたんです。
妹が見たって言ってんだよ。
どうなんだ?江藤お前吉本にロープを渡したって本当か?
(順弥)そんなことしてませんよ。
妹さんの見間違えですよ。
嘘をつくなー!
(順弥)先生。
妹さんの言うことは信じて生徒の言うことは信じられないんですか?僕たちは何もしてません。
もういいでしょう。
吉本が死んだぐらいでそんなにむきになることないですよ。
何!?これまであいつがいたせいでクラスの平均点が下がっていたんです。
そのできない奴を排除できたんですよ。
行こうぜ。
江藤!!貴様ー!江藤の父親は新潟市内に大きな病院を持つ地元の有力者でしてね。
まあそのうちいじめのことより僕が江藤を殴ったことのほうが問題になったんですよ。
それで教師をクビになったのか…。
いやクビになる前に辞表を出しましたよ。
もちろん江藤を殴ったこともありますけど何より僕は教え子のいじめに気づかなかったんです。
吉本があんなにつらい思いをしていたことに…。
僕は教育者としては失格なんです。
先輩…。
ゆかりのことが心配なんです。
犯人からその後何の接触もないそうだが…。
両親を亡くして僕は親代わりにゆかりを育ててきたんです。
ゆかりは僕にとってかけがえのない…。
(嗚咽)すいません。
ゆかりにもしものことがあったら俺…。
日比野…。
(捜査本部長)殺しの手口は前島のときと同じものであり同一犯となれば犯人は吉本孝三以外に考えられない。
今配布している解剖報告書にあるとおり田坂の死亡推定時刻は昨夜の午後7時から9時の間と見られる。
この時刻南中野の現場近辺で吉本が目撃されなかったか吉本に関する情報を徹底的に洗い出してもらいたい。
以上だ。
(一同)はい。
何やってんだよ?いや…。
ちょっと行ってきます。
行くってどこへ?おい!行くってどこへ!?ピザを見てどうしようってんだ?昨日報告しただろ。
田坂のマンションにそのピザが配達されたのが午後6時。
そのとき不審な人物は目撃されなかった。
これはハーフアンドハーフと言ってトッピングの違うピザが一緒になってるものです。
ところが解剖報告によると田坂の胃の中からはベーコンとオニオンの未消化物して出てないんです。
現場にあったつまりこっち半分のピザ…。
トマトにサラミにピーマンは田坂の胃の中には残ってないんですよ。
つまり何か!?田坂は誰かと2人でこのピザを食べたとでも言うのか?そういうことです。
ひょっとしたらその人物が犯人という可能性もあります。
田坂が注文した飲み物は烏龍茶1つだったんだぜ。
もう1人は冷蔵庫にあったものを飲んだんですよ。
実際田坂の部屋のキッチンから田坂とは違う指紋の付いた空き缶が見つかっています。
だからってその指紋の男が田坂と一緒にピザを食ったってことにはならねぇだろうよ。
しかしこのピザ…。
ピザなんかどうでもいいんだよ!大事なのは動機だよ。
前島と田坂を恨んでいた人物は誰なのか。
俺たちが今やるべきことはだな吉本の行方を追うことなんだよ!・
(須貝)貴島さん!たった今本部に田坂のおふくろさんが見えまして。
田坂のお母さんが?ええ。
昨夜現場にあったピザがおかしいって言うんですよ。
ピザ!?江藤順弥さんはご在宅ですか?
(江藤佳江)今朝のニュースで田坂君の事件を知りました。
そのことでいらしたんですね?息子さんにお伺いしたいことがありまして。
私犯人に心当たりがあるんです。
吉本孝三さんですか?わかってらっしゃるなら早く捕まえてください!このままじゃ心配で順弥を東京に戻すことなんてできないじゃないですか!それはもう重々…。
捜査本部では今全力を挙げて…。
まだ吉本さんに決まったわけじゃありません。
あの人に決まってます!6年前それは恐ろしいことを言ったんです。
ありもしないことを根に持って…。
恨みたいのはこっちのほうです。
6年前の噂のせいで順弥の成績落ちたんですから!あの…息子さんに。
ああ…今自分の部屋で勉強してます。
お入りください。
こちらです。
地下…?・
(ノック)・
(佳江)順弥ちゃんあの刑事さんがね訪ねてらしたの。
お話があるんですって。
いい?今邪魔じゃない?
(順弥)また同じ質問をしに来られたんですか?最近田坂に変わった様子はなかったか。
田坂を恨んでいる人間に心当たりはないかとか。
違います。
管理人の話では昨日あなたは夕方5時ごろマンションを出たそうですね。
法事があるので今夜中に田舎へ帰ると。
ええ。
東京駅へ行く前にどこかへ寄られませんでしたか?例えば田坂さんの部屋とか…。
刑事さんどうしてそんなこと訊かれるんです?まさか順弥を疑ってるんじゃないでしょうね?いやぁ奥さんこれはあくまでも形式的な質問でしてね。
申し訳ありませんがお母さんはしばらく席をはずしていただけますか?ふざけないでください!そんな失礼な質問なさるんだったらお引き取りください!そうでなくても順弥は今受験で一番大事な時期なんです。
おじい様や主人の母校である東大医学部へ行くために順弥はそれはもう一生懸命…。
母さん上行っててよ。
えっ?僕は大丈夫だから。
そう?すいません。
質問を続けてください。
僕が田坂の部屋にいたと自信ありげにおっしゃってましたけど。
はい。
ピザです。
ピザ!?田坂さんのお母さんがおもしろいことを教えてくれましてね。
彼はピーマンが嫌いで口にすることは絶対にありえないと言うのです。
現場に残っていたピザにはピーマンが入っていました。
台所には田坂さんのものとは違う指紋の付いた空き缶がありました。
つまりですね…。
田坂は別の誰かと一緒にピザを食べた。
そういうことですか?そうです。
相手は親しい人物としか考えられません。
もしよろしければ今ここであなたの指紋を採らせていただけますか?行きましたよ。
それで?ピザを食べて6時半ごろ田坂の部屋を出ました。
それから東京駅へまっすぐ行って新幹線に。
何時の新幹線です?7時48分発あさひ3号です。
もっともそれを証明してくれる人間は誰もいませんけど。
刑事さんでもピザを食べたからって僕が犯人だということにはならないでしょ?何より僕には動機がない。
どうして僕が田坂を殺されなければならないんです?田坂さんの部屋からこんな写真が見つかりました。
まあ確かに今のところ動機がわかりません。
がしかしあなたは犯行時刻近くまで田坂さんの部屋にいたことは認めた。
しかもその後のアリバイはない。
そのことだけは確認できました。
ご協力感謝します。
ふざけるなよ…!クソ…。
倉田さん。
ああ?田坂はどうしてゆかりさんの写真を撮ったんでしょう?そらぁ例えば案外ゆかりさんに惚れてたとか。
あるいは憎んでいた。
ゆかりさんは6年前のいじめの証言者です。
彼女のせいで噂がたち江藤たちは周囲から白い目で見られ成績も落ちるハメになった。
けどそのことと今度のヤマとどんな関係があるんだよ。
ゆかりさんの誘拐と前島たちの殺し。
2つの事件はどうもつながってるように思えて仕方がないんです。
何!?誘拐が起きたのが20日の夜8時過ぎ。
その同じ日の10時半前島が殺されてます。
例えば…例えばですよ。
ゆかりさんを誘拐したのが江藤たち3人組だったとしたら…。
バカな!街角でゆかりさんを見かけた田坂は写真に撮って江藤たちに知らせた。
3人はゆかりさんに対し復讐を企てた。
それで誘拐を?けどその夜どうして前島が死ななきゃならないんだよ。
そうか!仲間割れが起きたんだ!あっ…。
誘拐はしたものの前島が急に怖気づいた。
手を引くと言って逃げたとしたらそれを前島のマンションまで追いかけて行って江藤が殺した。
「中にいるのはわかっている。
ドアを開けろ」…。
それじゃあ同じ理由で田坂も殺ったのか!?まああくまでこれは推測ですが…。
いやぁいくらなんでもそれはねぇだろう。
まあ推理としてはおもしろいがな。
しかしピザといい写真のことといいよくそこまで考えつくもんだな。
お前さんそうとう…。
変わり者だってよく言われます。
ははは…。
せっかくまた新潟まで来たんだ。
寄って行かねぇとな。
ええ。
はあ…刑事なんて因果なもんだな。
えっ?どこに行っても頭の中は事件のことでいっぱいで景色を楽しむゆとりもないよ。
そうですね。
ひと晩くらい事件のことを忘れてゆったりと温泉にでも浸かりたいな。
(貴島薫)倉田のおじさーん。
はい?これ草津の湯だって。
あっ本当?どうもありがとう。
あっすいません開けっぱなしで。
ああいえいえ。
(典子)すいません。
お湯加減いかがですか?はあとても結構です。
ゆったりと温泉気分味わってってくださいね。
ああ…。
ゆったりとったって…。

(典子・薫)「草津よいとこ一度はおいであーどっこいしょ」変な家族…。
ああおいしそうだな。
さあどうぞ警部さん。
あっ奥さん私まだ警部じゃないんです。
えっ?ああすいません。
いやいや。
毎年昇任試験は受けてるんですがね警部の試験ってのはこれがなかなか難しくて。
でも試験受けてらっしゃるだけでも偉いですよ。
主人なんて受けようともしないんですから。
それはどうしてまた?主人ね出世に興味がないんです。
忙しくて試験を受ける暇がないんだよ。
ああいやそういう意味じゃなくて。
でも試験とか勉強とかって一生ついて回るんですね。
ああ…まあ警察という世界は特にそうかもしれませんね。
ねえ薫ママの言ってるとおりでしょ?人生はね一生勉強なの。
だから早いうちにいい学校入らなきゃね。
うん!早いうちに勉強しないとね後々苦労することになるのよ。
そういう人いっぱいいるんだから…。
あっ…いえあのそういう意味じゃなくて。
倉田さんどうぞ。
けどどうして試験受けないんだよ。
いくらいい大学出てたって試験受けなきゃ上にいけないだろう。
刑事になった時点で出世とかそういったものは僕の頭の中から消えてしまったんです。
偉そうなこと言うようだけど刑事として自分の仕事に誇りを持ち続ければそれでいいと思うんです。
(典子)ほら薫。
好き嫌いダメだって言ったでしょ。
ちゃんとトマト食べなきゃ。
そうだぞ。
トマトはね頭がよくなるんだよ。
ねっ!食べなさい。
はーい。
ほら早く食べないとおじちゃんに食べられちゃうぞ。
トマト。
うん食べちゃうぞ。
どうした君!大丈夫か?おい!しっかりしろ!おい!先輩…!よかった…。
よかった!もう一度犯人の顔は見てないんですね?はい…。
声はどうだろう?3人のうち1人ぐらいは…?犯人は3人組だったんですか?うん。
声もほとんど聞いてません…。
いきなり襲われて白っぽい乗用車に乗せられた。
ナイフを突きつけられ目隠しをされて縛られた。
車に乗っていたのはどれくらいですか?1時間くらい…。
ちょっといいですか?その3人組の犯人だけど最後まで3人でしたか?最後まで?例えば今夜あなたは同じように車に乗せられ犯人から解放された。
そのときも犯人は3人いましたか?はい。
そうですか…。
それで監禁されていた場所なんですが…。
どんなことでもいいんです。
何か覚えていることはありませんか?あの刑事さん…。
今日はこれくらいにしていただけませんか?わかりました。
ああそれからゆかりさんの所持品着衣を預からせていただきたいんですが。
鑑識に回して指紋はもちろん何か犯人の手掛かりが残っていないか調べたいと思いますので。
はい。
吉田君。
(吉田)はい。
どこか着替える場所案内してあげて。
はい。
さあ行きましょう。
どうぞこちらです。
失礼します。
やっぱりホシは江藤たち3人じゃなかったのか。
目撃者が現れました。
前島が殺された20日の夜中野駅前の居酒屋で吉本孝三が目撃されています。
本当か!?時間は?夜9時から10時ごろまで店で飲んでいたそうです。
じゃあ吉本は10時に店を出ていったのか?はあ。
前島が殺されたのが10時半。
ドンピシャだな。
他には?はあ。
店の客との世間話の中で吉本は自分は土木関係の仕事をしていると言ったそうです。
よし!中野区内を中心に土木業者を片っ端から当たるんだ!
(一同)はい!
(電話)
(電話)もしもし。
わかった。

(足音)
(足音)これで首でも吊って死んじゃえよ。

(警備員)誰かいるのか?うん…。
後部硬直がないなぁ。
抗生剤を投与しておこう。
指示は後から出しとくから。
はい。
今おふくろさんこっちに向かってるそうだ。
そうですか…。
幸い命に別状はないんですがかなりひどい脳震盪を起こしてますね。
で意識が戻るのは?今のところはっきりしないんですが1日かかるか2日かかるか…。
まあともかくこれでホシがわかる。
ああそれは…。
何か?強度の脳震盪を起こした場合記憶が飛ぶケースが多いんですよ。
記憶が飛ぶ…!?ええ。
それはいったいどういう…どういうことですか?頭を打った直前の記憶が失われるんです。
逆行性健忘症と言いましてね。
逆行性健忘症…?ええ。
以前私が担当した患者さんの中にはバイクで事故を起こした直前の記憶はもちろんそれからさかのぼること数か月間もの記憶が失われた例があります。
数か月も…?まっそれは稀な例ですけども…。
今回も犯人のことを必ずしも覚えてるとは限らないんです。
昨日の夜8時ごろどこにいました?
(吉本孝三)自分のアパートに。
それを証明してくれる人はいますか?いえ。
それじゃあ20日の夜10時ごろはどうです?あんたは中野駅前の居酒屋にいた。
そうですね?そして店を出たあんたは前島のマンションを訪ねた。
違いますか?私は彼を殺したりはしま…。
犯行が行われた夜あんたは現場のすぐ近くにいた。
これを偶然だと言うんですか!?吉本さん。
あんたの気持ちはわかります。
息子さんを亡くした悲しみ。
その憎しみは6年経とうと消えるもんじゃない。
刑事さん!それはもう昔の話です。
豊の事件のことはもう忘れました。
ですから今さら前島君の部屋を訪ねて彼を殺そうなんて…思いもしません。
6年前の豊君の事件は忘れてしまったそうおっしゃるんですか?ええ。
忘れました。
私は昔父の仕事の関係でアメリカに住んだことがあります。
私が小学2年妹がまだ4つのときでした。
それから5年間私の家族はアメリカで暮らしました。
帰国子女バイリンガルというと今ではうらやましがられるでしょうけど当時は格好のいじめの対象でしてね。
日本へ帰ってからというものずいぶんと嫌な思いをしました。
東京の大学へ進学して私はようやく自由を感じました。
田舎へ帰ることはほとんどなかった。
まだ中学生だった妹のことを気にかけてはいたんですが…。
まさか…電車に飛び込むなんて夢にも思わなかったんです。
妹へのいじめはそれほど陰湿なものだったようです。
私は田舎へ帰り妹をいじめた生徒を呼び出しました。
私は許せなかった。
あのまま誰も止めに入る人がいなければ私はその生徒を殺していたかもしれません。
私を止めに入ったのは妹の事件を担当する刑事さんでした。
その刑事さん私にこう言ったんです。
「復讐からは何も生まれない」と…。
私の田舎には今も妹の机が残っています。
両親はどうしても捨てることができないって言うんです。
私も10年経った今も妹のことを忘れたことはありません。
吉本さん本当のことを話してくれませんか?前島のマンションへ行きませんでしたか?行きました…。
前島の住所はどうやって知ったんです?
(吉本)前島を見たとき6年間抑えていた怒りがぶり返しました。
私は彼の後を追わずにはいられませんでした。
無性に腹が立ったんです。
豊は死んだというのにこの男は今も笑いながら生きている。
君と話がしたいんだ。
困ります。
ちょっと待ってくれ。
困ると言ってるんです!帰れよ!前島君!私はただ真実が知りたいだけなんだよ。
6年前の…。
君ももう大人だ…。
今なら本当のことをしゃべってくれてもいいんじゃないかな。
謝ってくれてもいいんじゃないか…!?前島君…!
(吉本)私はもう一度改めて訪ねることにしました。
それが20日の夜です。
前島君!どうして会ってくれないんだ…?どうして話をしてくれないんだよ!?前島君…!中にいるのはわかってるんだ!!ドアを開けろ!!前島君が死んだことを知ったのは翌日の夕刊です。
何だか急に怖くなって…。
訪ねたことを言えば私が疑われるに違いない…そう思って。
ずっと黙ってました。
刑事さん。
私は殺してません。
本当です。
信じてください!はい。
あんたにあんな事情があるとは知らなかったよ。
あんたそれで刑事になったのか?私を引き止めてくれたのは刑事さんだった。
それもありますが…私は何より自分を恥じたんです。
当時の私は自分のことしか考えてなかった…。
自分の夢しか…。
妹の死はそんな私を打ちのめしました。
じゃあ妹さんのために…?社会には害を被り泣いてる人たちがたくさんいます。
そんな人たちを守る刑事という職業に就くことがせめてもの妹への罪滅ぼしになるんじゃないかそう思ったんです。
それで倉田さんはどう思いますか?私は吉本の供述に嘘はないと思いますが…。
俺もそう思いたいさ。
だがな事件当夜まさに前島がベランダから落ちたその時刻に吉本は前島の部屋を訪ねてるんだ。
それに江藤までもが襲われた。
なのに容疑者は吉本以外浮かんでこない。
まあとりあえず取調べは続けてみるよ。
1つだけわからないことがあります。
江藤はどうして犯人の呼び出しに応じたんでしょう?うん?前島と田坂が死んだ以上行けば自分も殺される…そう思うのが自然です。
なのにどうして…。
《前島はどうしてベランダから落とされたのか…?》
(博和)ああー!《どうして靴を履いていたのか…》《田坂はなぜゆかりさんの写真を持っていたんだろう…》《そして江藤はどうして犯人の呼び出しに応じざるを得なかったのか…》
(典子)ねえあなたどう思う?うん?やぁだ。
今私が話したこと何にも聞いてなかったの?いや聞いてたよ。
よかったじゃないかクーラーが直って。
違うわよ薫のこと!私立にもねいろいろあってねどこ受けさせようかね悩んじゃってんのよ。
あっねえねえここなんてどう?星蘭女子学院。
制服がめっちゃかわいいの!その話はまた今度。
ごちそうさま。
うんもう…!ああ…。
この傘買ったの?そう。
前のはね骨が折れてたのよ。
ほらこないだ久しぶりに雨が降ったじゃない。
天気予報じゃ週末からまた雨だっていうしだから買っちゃった。
雨…?ブランド物でちょっと高かったんだけどねうふふ!傘…!?典子。
うん?こないだ雨降ったのいつだ?う〜んとねだからねうんとね…。
そうだ22日だ。
田坂が殺されたあの夜。
もしかしたら…。

(典子)あなた。
雨がどうかしたの?ちょっと…あなた…?
(電話)日比野でございます。
今出かけておりますが…。
まさか…!?母さん…?やめてくれ…!やめろ。
やめてくれよ…。
誰か…!・よすんだ!さっき日比野の家へ電話したらあなたが出かけていると聞いてね。
それでもしや…と思った。
どうして…私だってわかったんですか?傘です。
傘…!?あなたの所持品の中に傘が入っていたことを思い出したんです。
あなたが誘拐にあった20日の日は雨は降ってません。
東京ではそれ以前ひと月近くも雨は降ってないんです。
なのにあなたはどうして傘を持っていたのか…。
雨が降ったのはあなたが誘拐された2日後田坂が殺された22日の夜です。
あの傘はそのとき買ったものではないか?だとしたらあなたは誘拐なんかされてない。
表を歩いていたことになる。
それで…私が田坂を殺したと思われたんですか…?今度の事件はわからないことだらけでした。
田坂の部屋にあったあなたの写真。
そして江藤はどうして犯人の呼び出しに応じたのか。
最近何かがあったはずだ。
そのことをばらされると困る。
だから江藤は応じるしかなかった。
それでピンときたんです。
日比野から聞きましたがあなたは先月も一度夜遅く帰宅したことがあったそうですね?そのとき何があったのか話していただけませんか?キャーッ!イヤ…!イヤー!
(ゆかり)そのときは相手が誰なのかなど考えもつきませんでした。
ただ3人のうちの1人が最後にこう言ったんです。
兄さんによろしくな。

(ゆかり)事件のことは兄にも警察にも言えませんでした。
私はあの男の言った言葉の意味を考え続けました。
兄と関係のある3人組…。
もしやと思いました。
そのとき私は自分の手で復讐することに決めました。
それで狂言誘拐をアリバイに3人を…?そうです。
(博和)はーい。
わっ悪かった…。
許してくれ。
違うんだ…あれは江藤がやろうって言ったんだ。
だから俺は仕方なかったんだ。
許してくれ!次に江藤の町を訪ねたものの江藤は田舎へ帰って留守だった。
それであなたは仕方なく誘拐から解放されたように見せて現れた。
日数をあまりかけると誘拐が公開捜査になる。
それを恐れたんですね?そうです。
そして改めて江藤を呼び出した。
6年前あの3人のせいで兄は学校を追われました。
それ以来兄は自信をなくして生きる目標を失いました。
あの3人は吉本豊君の命だけでなく私の兄の人生をも奪ったんです。
そして今度は私にまで…。
許せなかったんです…!
(ゆかりの嗚咽)熱い?飲み物あるからね。
大丈夫?順弥がまた襲われたって一体どういうことなんです!?警察は何してたんですか!?順弥はもう少しで殺されるとこだったんですよ!逮捕したんでしょうね?そんな女さっさと警察…。
君にも来てもらわなければならない。
先月あった暴行の件を聞かせてもらわないとな。
僕は何もしてません。
僕は何も知りません。
証拠がどこにあるんです?僕は何も…。
お前みたいな奴は…。
あっ!あっ…!母さん…助けて母さん!順弥ちゃん!刑事さん!順弥が何したっていうんです!?刑事さん!順弥ちゃん…。
今何かがおかしい…。
繭の中でしか子供を育てられない。
弱い子供を守ってやることもできない…。
そんな時代だからこそ…。
ゆかりさんは自信をなくしたお前を見てるのがつらかったと言ってたよ。
先輩…ゆかりのためにもう一度教師として一からやり直したいと思っています。
うん…!今日はわざわざお越しいただきありがとうございました。
いいえ。
刑事さん私あなたに1つだけ嘘をつきました。
私が前島のマンションを訪ねたのは真実を聞き一言謝ってほしかったそれだけだ。
そう言いました。
はい。
でもそれは違います。
もし前島が私に6年前にあったことを正直に話しいじめを認めていたとしたら…。
私たぶん…。
それにしても今度のヤマには驚いたな。
あんたの推理にも…。
いやぁ。
ただな1つだけまだどうしてもわからないことがあるんだよ。
前島の事件。
密室と靴の件ですか?ああ…。
日比野ゆかりはスパナで殴り首を絞めたとしか供述してねぇんだからな。
後は前島自身がやったんです。
何!?前島自身がって死んだ後にそんなことできるわけねぇだろ。
息を吹き返したんですよ。
はあ?その後自分でドアのチェーンをかけベランダから飛び下りた…。
でも…どうしてそんなことを?前島が以前住んでたアパートを訪ねたとき隣の人がこう言ってたでしょ。
サラ金の取立て屋が押しかけて来たとき前島は居留守を使ったり逃げたりしてたと…。
おう…。
前のアパートは1階でしたからね。
前島はベランダから逃げてたんでしょう。
頭を打った直前の記憶が失われるんです。
じゃああの医者の言ってた…。
逆行性健忘症にかかったんです。
日比野ゆかりに襲われたのが午後9時。
その1時間半後前島は息を吹き返した。
ところが強い脳震盪で彼は記憶を失ってしまった。
つまり数か月前の以前のアパートにいたころの自分に戻ってしまったんです。
そこへ吉本孝三が訪ねて来た。

(吉本)中にいるのはわかってるんだ!ドアを開けろ!前島はサラ金の取り立て屋が押しかけて来たと思った。
それで…。
ベランダから表へ逃げたんです。
推測ですがそうとしか考えられません。
たいしたもんだよあんたの推理は。
まあそれにしても今度のヤマはどっちが被害者かわからねぇヤマだったな。
あのゆかりさんにはおおいに同情するよ。
ええ…。
でもあんとき病院でどうして江藤を殴らなかったんだ?あんな奴は殴っていい!人間のクズだ!!倉田さん江藤の勉強部屋を見たでしょう?小さいころからまるで蚕が育つ繭のようなあの地下の部屋で両親の期待を一身に受けて江藤は勉強を強いられてきた。
そう思うと江藤も被害者のような気がしたんです。
今度うちに遊びに来い。
今度はうちで温泉気分を味わわせてやる。
行きます。
ぜひ…。
ああ。
なあ薫。
勉強も大事だけど他にももっと大事なものもあるんだぞ。
なあに?つまり人間として人にやさしくする心とかパパ薫がそういうふうに育ってくれればそれだけで…。
はーいあなたどいて。
おい人が話してるときに掃除機なんかかけるなよ。
薫は私立へ行かせるの。
いやだからそれはそれとしてもだ。
親が子供に伝えることもあるだろう?ねえ薫塾の宿題はやった?いやそういうことじゃなくてさ。
あれ〜?どうした?やだ…掃除機壊れたみたい!壊れた?変ね…どうして止まるのかしら。
よーし。
おいよせよまた。
おい典子!だって私がやるしかないじゃない!やるしかないって…。
俺が電気屋さんに電話するからさ…。
よし!2ミリの…。
なっ?もう…。
大丈夫大丈夫!おいよせったら。
典子…!ほら…。
大丈夫!絶対大丈夫だから。
そうか?2014/05/28(水) 13:05〜14:56
ABCテレビ1
異常犯罪シリーズ[再][字]

「繭の密室連続殺人事件 誘拐?レイプ?女子大生が狙われる!母と子が育む歪んだ殺意…」

詳細情報
◇出演者
村上弘明、石倉三郎、浅田美代子、小川範子 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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