聖母・聖美物語 #43【恋の静岡篇〜姑の家出】 2014.05.29

(星川)私のところへ帰ってきなさい。
(聖美)先生のところへ?言ったろう?私は君の保護者としてここへ来たんだ。
会ったよ。
陽君とひかりちゃんに。
私が訪ねたとき峻君が陽君の写真を撮っていた。
また君に送るつもりだったのかもしれないね。
それからひかりちゃんは…。
ひかりちゃんのことは愛美さんがわが子として育てていると言っていた。
柳沢さんと一緒に。
彼女と柳沢さんの間に何かわりない出来事が起こった。
だから君は家を出ざるを得なかった。
私が想像するに愛美さんの君への嫉妬が招いた略奪劇ってところだろう。
だがそんなもの法律の世界では通用しない。
闘えば必ず君が勝つ。
いや私が勝たせる。
闘うって。
いや。
別に法廷に出ろって話じゃない。
もし君が柳沢さんのところへ戻りたいのなら私が間に入ってきちんと話し合いをして復縁させる。
それが保護者としての私の務めだ。
そんなこと…。
そんなこと先生にどうこうしていただく問題じゃありません。
だいたい私もうあの家には…。
君のお母さんに頼まれたと言ったら?母に?お母さんは私と君の結婚を望んでいた。
でも君はそれを振り切って柳沢さんの胸に飛び込んだ。
そしてお母さんは君を恨みながら…。
やめてください。
母は自分に負けただけ。
それを私のせいにしようと。
そら見たことかと喜んでいるだろうか。
最後まで反対した結婚が破綻を迎えて。
それとも自分に逆らってまで得た柳沢家の嫁の座をあっさり捨ててしまったことを苦々しく思っているんだろうか。
君自身の心としっかり向き合ってそれから返事をくれればいい。

(物音)公ちゃん。
(諏訪)ハァ…。
どうしたっていうの?何があったの?
(諏訪)警察に弁護士が来た。
弁護士って星川先生が?
(諏訪)聖美が頼んだんだろ?違うわ。
先生はたまたまここへ来て。
(諏訪)たまたま?困ったことがあるとすぐに男の力に頼るんだな。
おかげさまで俺におとがめはないらしい。
さすがに弁が立つよな。
弁護士先生は。
あー。
ああ…。
ねえ。
しっかりして。
立てる?聖美を迎えに来たんだろ?言ってたよ。
俺のような男に任しておけないって。
あのおっさん聖美のことが好きだったんじゃないのか?昔から。
呼び戻そうとしてるのは先生じゃない。
私の母よ。
母の魂が乗り移って先生をここへ連れてきたの。
それだけ根深い執念を残して母は死んだ。
今でも私に取りついてる。
何の話だ?言ったってどうせ分かってもらえないわ。
そうやってすぐに自分の中で片付けちまう。
俺がここにいるのに。
聖美のためだけに生きようと思ってるのに。
本当の心を明け渡してくれない。
聖美。
捨てる気なんだろう?俺みたいな男もうどうだっていいんだろう?嫌。
嫌。
嫌!体はここにあっても心は向こうに残してる。
こんなものが…。
こんなものがあるから。
陽。
ひかり。
起きて。
公ちゃん。
いいお天気よ。
シャワー浴びてきて。
朝ご飯にしよう。
見て。
ルッコラがこんなに取れたのよ。
うん。
駄目ね。
コーヒーはやっぱりあなたが入れないと。
何が違うのかしら?あっ。
サラダ食べるでしょ?野菜もしっかり食べてね。
ごめん。
ゆうべのこと。
子供たちの写真のことも。
私こそあなたの気持ちも考えないで。
甘えてたのよ。
あなたの優しさに。
断ち切る気持ちがないんなら柳沢の家を出てきちゃいけなかった。
自分で決めたことだったのに。
やめようもう。
惨めになるだけだ。
公ちゃん。
駄目な男だ。
僕は人間のくずだ。
だまされるべくしてだまされた。
自業自得だ。
あなたは何も悪いことしてないじゃない。
やり直せばいいのよ。
またここで。
大丈夫。
公ちゃんだったらきっとできるわ。
私も一生懸命お手伝いする。
ちゃんと看護婦さんも雇ってもう一度…。
最初は本気だったよ。
僕だって。
ここで自分が目指す理想の医療を実現する。
真剣にそう思ってた。
もし聖美が一緒についてきてくれなくても一人でだって。
いいや。
違う。
本当は最初から僕にはなかったんだそんな資格。
どうして?あなたらしいって思った。
あなたじゃなきゃできないことだって。
僕は捨ててきたんだよ。
柳沢病院の患者たちを。
陽君の他にもたくさんの子供たちを担当してた。
入院してる子もしてない子もしょっちゅう風邪をひいたりおなかを壊したり。
まるで外来の常連みたいになってる子もいた。
先生先生って慕ってくれるあの子たちにお別れも告げず次の担当者に引き継ぎさえせずに置き去りにした。
あの時点で僕はもう医者としての資格を失ってたんだ。
それから僕は現実に背を向けた。
この診療所のことだっておかしいと思っても見て見ぬふりをした。
何も気付かないふりをして聖美を抱いて忘れようとした。
医者の資格をなくしたって聖美を手に入れたんだ。
今だけもう少しだけこの目くるめく快楽に酔いしれていたい。
なのに抱き締めても抱き締めても砂みたいにこぼれ落ちてしまう。
聖美の心が。
どんなに重なり合っても交わり合っても隅から隅までこの体の全てを征服してもそれでも聖美は僕のものにならない。
そんなことない。
私あなたに抱かれて今まで知らなかった自分を知った。
体が満たされることがこんなにも心安らぐことなんだって初めて教えてもらった。
聞きたくない。
体のことだけじゃない。
自分の愚かさも弱さも公ちゃんのおかげで…。
公ちゃんなんて呼ぶな!そうだよ。
僕が言ったんだよ。
そう呼んでくれって。
いつまでもベッドで先生って呼ぶのがもどかしかった。
少しでも早く距離を縮めたかった。
聖美は僕の腕の中にいる。
甘い声で僕の名を呼び熱い吐息であえいでる。
一人で有頂天になって抜け殻の聖美を抱いていた。
どこ行くの?軽蔑してくれ。

(星川)無事に帰ったようだね。
諏訪君は。
私あの人と生きていくことにしました。
いいのか?ホントに。
後悔するぞ。
きっと不幸になる。
私の心は一度死んで母の元へ旅立ちました。
この世の私はもうあの母の娘の聖美ではない。
これからはそう思って生きていきます。

(波津子)「愛鷹山や富士の高嶺かすかになりて」
(波津子)「天つ御空のかすみに紛れてうせにけり」お母さま。
お能の『羽衣』の天女はねこの松に羽衣を掛けて海で泳いでたの。
そしたら地元の漁師に羽衣を取られちゃって。
いや。
そんなことよりどうして?見に来たんです。
羽衣の松を。
これも一つの芸の修業。
(波津子)この景色を眺めれば分かる気がしたのよ。
天女の気持ちが。
お勤めの合間に月から舞い降りてそびえる富士に見守られながら水浴びを楽しんだ。
ちょっと開放的な気分になってここで衣を脱ぎ捨てたのね。
天女にもお勤めがあるんですか?あるわよ。
月の宮殿で毎晩とっても大切なお仕事をしてる。
白衣黒衣の天人っていって白い衣装と黒い衣装の天女たちが交代交代で新月から満月まで月の満ち欠けを順番にぐるっとつかさどってる。
満月だったら全員白い衣装ってことですか?
(波津子)そういうこと。
すてき。
ロマンチックですね。
あっ。
あなたはこの近くに住んでんのよね?えっ。
(波津子)ちょっと休ませてもらえないかしら。
歩きにくくてくたびれちゃった。
あっ。
(繁郎)熱っぽくてだるい感じなんだね?うーん。
発疹もあるね。
うん。
(峻)僕が帰ってきたらベッドでぐったりしてて。
陽君は何でもないって言うんだけど。
(繁郎)ありがとう峻君。
知らせてくれて。
(峻)うん。
(繁郎)陽。
いい子にしてるんだよ。
(陽)諏訪先生どうしていなくなっちゃったの?
(陽)僕諏訪先生がいい。
(繁郎)新しい先生だってさ優しくしてくれるだろう?うん?みんな僕を置いていなくなっちゃう。
愛美さん。
(愛美)どうかした?陽のことなんだけど。
もうちょっとちゃんと見ててやってくれないかな?
(愛美)具合悪いんだってね。
うん。
峻が何か騒いでた。
何かって。
私なんかより峻の方がよっぽど気が利くもん。
あの子がそばにいれば大丈夫でしょ。
いや。
峻君は一日中陽のそばにいられるわけじゃない。
君が頼りなんだから。
しょうがないじゃん。
だってあっちがちっとも懐かないんだから。
心配だったらばあちゃんに見てもらって。
陽のことは。
血圧血圧って大騒ぎしちゃって。
大したことなかったくせに。
そういや母さんは?知らない。
今日は診察の日だって言ったのにな。
まさかこっちも倒れてるんじゃないだろうな?母さん。
いるの?何でこんなところに謡本を?
(波津子)「これ以上血圧を上げたくないのでしばらく家を離れます」えっ?
(波津子)あなたのこと追い出すようなことになっといて何だけど。
長年一緒に暮らしたよしみで置いてもらえないかしら?2〜3日。
あしたもあさっても毎日三保の松原へ通ってあの景色を眺めるの。
そしたらきっと本物の天女になった気分で…。
ああ。
お仕舞が舞えるようになるわ。
本当にそれだけのためにここへ?うん…。
色々あんのようちも。
もしかして愛美が何か?愛美。
ちゃんとやってるんですよね?家のこと。
ひかりのことだけじゃなく陽のこともしっかり面倒見てくれてるんですよね?ねえ?ずいぶん帰りが遅いじゃない諏訪先生。
往診ってどこまで行ったの?お母さま。
どうなってるんですか?柳沢の家は。
陽やひかりは元気にしてるんですか?それを聞いてどうすんの?聞いたっていまさらあんたにはどうすることもできないのに。
でも知りたいんです。
ひかりはもうすっかり首が据わったかしら。
今はどんなふうに笑うのかしら。
陽の具合はどうかしら。
毎日ちゃんと元気に学校へ通ってるかしら。
知りたい気持ちが。
見たい会いたい気持ちがあふれだして抑えたくても抑えられない。
ねえ?この診療所ちゃんと機能してるようには見えないんだけど。
さっきのあなたもただ浜辺の散歩に来たようには見えなかった。
必死な顔して走り回って。
捜してたのね?諏訪さんを。
ケンカの原因は何?あなたの柳沢への未練?血を吐く思いでわが子を置いてきたんだもの。
そう簡単に新しい幸せの花なんか咲きっこない。
あなたが出てってから私も考えたのよ。
その昔私にも繁郎を置いて家を出る選択はあったのかしらって。
お母さまが?今の時代だったら主人が弘明の母親と浮気したときさっさとあの家を出てった。
そう思ったら何だか胸のつかえがすーっと下りたような気がしてね。
そしたら急にバカバカしくなったのよ。
愛美さんに乗っ取られそうになってるあの家で我慢して小さくなってることが。
家を乗っ取るって。
愛美はいったい何を?悪いのは繁郎よ。
まあああいう軟弱な男に育てたのはこの私。
ついつい甘やかしちゃったのよね。
浮気亭主の手前何だか悔しくて。
それがあだになっていつまでも愛人の子の存在に苦しめられて。
何かあったんですか?弘明さんと。
取り返しのつかないことばっかりやってんのよ。
人間は昔っから繰り返し繰り返し。
よかったと思いなさい。
いくらでもやり直しの利く時代に生まれて。
ああ。
ああ。
これ。
懐かしいわね。
(波津子)わぁ。
いい眺め。
お母さま。
お弁当作ったんでお持ちになってください。
ああ。
ありがとう。
いやぁ。
これなら思う存分砂浜を歩けそう。
お母さまったら携帯。
繁郎さん?
(陽)もしもし。
おばあちゃん?もしもし。
おばあちゃんでしょ?陽。
2014/05/29(木) 13:30〜14:00
関西テレビ1
聖母・聖美物語 #43[字][デ]【恋の静岡篇〜姑の家出】

聖美(東風万智子)は諏訪(古山憲太郎)と漁港の小さな診療所で暮らし始める。聖美が去った柳沢家は悲惨な状況に。そんな中、波津子(丘みつ子)が突然、聖美の前に現れ…

詳細情報
番組内容
 聖美(東風万智子)は、突然現れた星川(風間トオル)に動揺。星川は聖美に、まやかしのような今の生活を捨て、一刻も早く柳沢家に帰るよう、諭す。
 警察から取り調べを受けた諏訪(古山憲太郎)が、泥酔状態で家に帰ってくる。諏訪が警察から出てこられたのは星川の尽力があってのことだった。
番組内容2
それでかえってプライドを傷つけられた諏訪は、酔いに任せ「一緒にいても心は柳沢家にある」と胸に秘めていた聖美への不満をぶつけてしまう。
 何があろうと諏訪を支えていきたいと願う聖美に諏訪が別れ話を切り出し、そのまま家を飛び出してしまう。必死になって諏訪を探す聖美の前に現れたのは…。
出演者
柳沢聖美:東風万智子
森尾愛美:三輪ひとみ
柳沢繁郎:原田龍二
柳沢弘明:金子昇
柳沢波津子:丘みつ子
星川真輔:風間トオル ほか
スタッフ
企画:横田誠(東海テレビ)
原作・脚本:いずみ玲演
演出:岡崎成克
プロデュース:西本淳一(東海テレビ)
中頭千廣(TSP)
神戸將光(TSP)
齋藤頼照(TSP)
音楽:辻陽
主題歌:「炎の花」ハルカ ハミングバード(ユニバーサル ミュージック)
制作著作:TSP
制作:東海テレビ
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ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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