あと5箱鑑識に残ってるから土門刑事それ引き継いでくれ。
えぇ〜!
(振り子時計の音)
(振り子時計の音)
(吠える声)
(立原真澄)一ノ瀬。
(一ノ瀬の声)はい。
お前一課に来る気はまだあるのか?一ノ瀬君。
一ノ瀬君!はい!どうしたのぼんやりして。
何かあった?いえ何も…。
(無線)「警視庁から鑑識検視官室」はい検視官室。
どうぞ。
「本件は独居老人の変死。
臨場要請が入りました」検視官。
検視官!臨場要請です!あぁ行くぞ〜。
どうも葛飾南署の佐藤です。
わざわざ申し訳ありません。
発見した地域課の制服が犬がやたらと吠えまくってるもので慌てて大げさに連絡したせいで…。
犬?
(佐藤)ええ。
それで騒ぎが大きくなっちまって。
というと…?
(長野)見てもらえばわかりますが孤独死です単なる。
(一ノ瀬)孤独死…。
お疲れさまです。
お疲れさまです。
この明かりは?最初からついてました。
始めるか。
(一同)はい。
イチお前が仕切れ。
(一ノ瀬)外表所見では被服等の乱れは認められず自然体で死亡状態。
外表所見異常なし。
移動して脱がせよう。
(一同)はい。
尾形足。
(尾形)はい持った。
(一ノ瀬)身長174センチ。
(一ノ瀬)硬直は…股関節以下下肢のみ中程度に発現。
硬直下肢中程度。
皮膚表面は乾燥。
手背面に栄養不良による軽度の浮腫。
皮膚乾燥。
手の甲にむくみ。
(一ノ瀬)写真。
(尾形)はい。
(尾形)はい。
(カメラのシャッター音)
(一ノ瀬)頭部…顔面…。
歯列後方口腔粘膜は著しく乾燥。
脱水の所見。
外見および死体現象的な犯罪性は特に異常なし。
直腸温度は?22.5度です。
死亡推定時刻は…昨日4日午後4時から6時。
(太田佐知子)寺西の親族ですけど。
どうぞ。
お〜なんだなんだ…。
よしよしよしよし。
検視終わりました。
へーい。
これ飲んでたんだ…。
よかった。
娘さんたちが到着してます。
この場所が寺西さんの指定席だった?父は右足が不自由でしたのでいつもそこに座ったり横になって仮眠をよく取ってたんです。
(江原春恵)母を亡くしてからは一人暮らしで…10日に一度必ずどちらかが電話してたんですけど…。
(泣き声)
(犬の吠える声)
(吠える声)よーしよしよしよしよし…。
怖くねえぞ〜大丈夫大丈夫だ。
(佐藤)亡くなったのは寺西竹夫さん72歳。
8年前に奥さんを病気で亡くされてからこの家に一人暮らし。
寺西さんは高血圧と糖尿の持病があった上に右足が不自由でして週に一度訪問介護のヘルパーが来て掃除と洗濯買い物をしていたそうです。
ですよね?私たちが来れたらいいんだけどいろいろと忙しくて。
この犬の名前は?タロですけど…。
タロはあんたたちに慣れてねえみてえだなぁ。
検視官…。
タロは私たちが結婚してこの家を出てから母が拾ってきた捨て犬なんです。
(春恵)こんな時まで吠えて。
かわいくないんだから。
だがこの犬があんたたちの父親の死を知らせてくれたんだ。
なあタロ。
(佐藤)で病死もしくは自然死という事でいいですよね?はい。
衰弱による多臓器不全の疑いがあります。
事件性はありません。
わかりました。
じゃあ我々はこれで撤収します。
イチ…。
なんでじいさんは死んだんだ?
(一ノ瀬)えっ?ああ亡くなった方には高血圧や糖尿の持病があったそうですからその事が原因で心臓に異変をきたした。
右足が不自由だったので動けないまま衰弱死にいたったものと考えられます。
そうじゃねえよ。
なぜ死ななきゃならなかった?って聞いてんだよ。
一人暮らしだったからです。
だから誰にもみとられずに亡くなった。
タロがいたじゃねえか。
タロ?犬ですか!?犬は飼い主の状態を理解出来ません。
亡くなったのを知らせるぐらいが関の山で…。
じゃあ聞くが…。
なんでタロは元気なのよ?あの…犬が関係してるんでしょうか?俺はイチに聞いてんだよ。
(ため息)台所にあったドッグフードがかぎ裂き状に破けてます。
多分爪で引っかいて破り食べたんです。
庭と家を移動出来るようになってますから水は外の水道のバケツの中にたまっていたのを飲んだ。
以上!おかしなところはないかと…。
お前の目は節穴か?来い!倉石さん!倉石さん!ドッグフードを爪で引っかいて破った?よく見ろほら!こいつは爪じゃねえものでかぎ裂きにされたものだ。
確かにタロはバケツにたまった水を飲んでた。
だが栓がゆるんでチョロチョロ水が漏れてたのは偶然か?ああ?どうなんだ?犬の件は関係ありません!問題は死因です!衰弱による臓器不全自然死で間違いありません!!死因に不審あり!一課の立原呼べ。
(佐藤)は?立原を呼べと言ってんだ!!
(佐藤)どうも。
お疲れさまですこちらです。
(坂東治久)管理官どうされました?いや…。
話は聞いた。
一ノ瀬の見立ては自然死だそうじゃないか。
状況が出来すぎだ。
遺体を司法解剖に回しゃあわかる。
なんだこの犬は。
主がいなくなったからな俺が預かる事にした。
おい行くぞ。
どいてくれ。
おいションベンかけんな。
(タロの鳴き声)見立てに自信はあるか?当然です。
自然死で間違いありません。
一ノ瀬君…。
どう考えても言いがかりですよあれは。
検視というのは犯行にいたる動機までわかる事もある。
だから手を抜かずに拾えるものは根こそぎ拾え。
倉石さんいつも言ってるでしょ?けど今日の検視は誰が見ても最初から自然死だってわかる案件です。
なのに俺に見立てを任せて揚げ句にあんな言い方を…。
まさか…。
何?ああ…なんでもないんです。
何よ言いなさいよ。
実は俺…一課への異動の話があるんです。
えっ?もしかしたら倉石さんそれを知ってて…。
だからそれが気に食わなくて腹を立ててあんな言いがかりを…。
一課への異動の話は…おめでとう。
だけど本気でそんなふうに思ってるの?あなたこの2年間倉石さんの何見てたの!?バカじゃない。
(坂東)管理官。
遺言状です。
(佐知子)何よこれ…。
どうかしたんですか?
(佐知子)不動産や生命保険は私たちで分けろって。
ただし貯金の300万円はヘルパーの金森里美さんに渡せって書いてあるんです。
これは寺西さんの字で間違いありませんか?
(佐知子)そうですけどおかしいですこんなの。
無効だわ。
見ず知らずの人に遺産を渡すなんて。
(坂東)この金森里美という人が寺西さんの介護を担当していたんですね?そうです。
1週間に一度洗濯やら買い物をしてもらっていて…。
ここにマルのついてる日に来ていて…。
(坂東)6日前。
(佐藤)新聞がたまっていたのが5日前からですからちょうどその前日って事ですな。
至急金森里美の周りを調べろ。
フフッフフフフ…。
なぁタロじいさんが何考えてたかお前わかるか?フフフフ…。
お前は?ん?どうだ?わかるわけねえか。
(タロの鳴き声)
(物音)
(坂東)金森里美さんですね?本宮二丁目の寺西さんが亡くなりましてね。
あなたが担当してらした方ですよね?
(金森里美)はい。
そうですか寺西さんが…。
驚かないんですか?いや驚いてます!ただヘルパーなんて仕事してると人が亡くなる事は他の仕事より多いもんですから…。
寺西さんの遺言状が出てきたんですよ。
それにあなたに300万渡すと書いてありましてね。
なんでそんな…。
心当たりはありませんか?ありません全然。
おはようございます。
おいーっす。
タロ!?
(鳴き声)タロ。
よーしよしよし…よーし。
おいキュウリキュウリ食うか?その犬…。
なんだよ?なんでもないです。
キュウリ好きか?うん?
(江川康平)金森里美は10年前から登録ヘルパーをしていまして3年前母親の介護をするしないで夫ともめて離婚。
母親の持ち家で介護をしながら一緒に暮らしていたんですが翌年母親が病死。
それからは一人暮らしです。
これがその金森里美です。
この女…。
(坂東)それじゃあ金森里美は寺西が死んだ事を知ってたって事ですか?そうは言ってなかったのか?どうだい?先生。
おかしなとこあるかい?ああ…この人末期のすい臓がんだね。
ほんとですか!?
(西田)ああ。
もってあと半年ってとこだったのかな。
娘さんたちひと言も言ってませんでしたよ。
話してなかったんじゃない?死因は脱水症状による腎不全。
胃にも腸にも内容物は見当たらない。
5日間飲まず食わず。
これでもただの自然死か?イチ。
胃に内容物がないという事は…。
寺西さんはなんらかの理由で自ら自然死を迎えた。
恐らくそういう事だと思います。
つまり自殺だというのか?すい臓がんで余命いくばくもない体でしたから前途を悲観したとも考えられますが…。
寺西さんのヘルパーの事をお聞きしたいと思って。
この女だ。
金森里美。
思い残す事がないようしっかりやれ。
そして一課に堂々と乗り込んで来い。
はい。
あら?あれ?ここに置いてあったパソコン用のウエットティッシュ知りません?さあな。
(タロの鳴き声)小坂〜!はい!これか?それです。
ええっ?うわっ!なんですかこれ!?タロの仕業だ。
え…もうしょうがないなぁ。
なんでこんなのばっかり集めるのよもう…。
あの…どうするんですか?あの犬。
大事なものなんだろうよタロには。
《もし金森里美という女が寺西竹夫の死に絡んでいるとしたら…》《死の6日前訪問介護の日に現れた彼女はまず新聞がたまって怪しまれないように郵便受けを壊す》《犬に水を与えるために庭の水道の栓を開き同じようにドッグフードの袋を開いておく》《すべて犬を騒がせないためだ》《夜室内が暗いと怪しまれるのでカーテンを半開きにしておき明かりを漏らしておく》《つまりこれらの行動は誰にも発見されずに孤独死を演出するための手段という事になる》
(一ノ瀬)寺西さんは末期のすい臓がんでした。
その事を知って生きる理由を失った寺西さんは孤独死を望んだ。
そしてその事を知ったヘルパーの金森里美はそれを手伝ったという事です。
だけどどうしてそんな事を?報酬の300万円目当てですよ。
ヘルパーって労力のわりに収入は恵まれてない。
だから寺西さんは遺言状にその事を書いたんです。
金森里美がすべてのお膳立てを整え寺西さんは一切飲み食いせずに死んでいった。
つまり自殺幇助という事です。
俺のとは違うなぁ。
なぁタロ。
何が違うんですか?すい臓がんの末期だから生きる理由を失った?人間ってのはな生きる理由がなくたってそう簡単に死ぬもんじゃねえ。
だけど死にたいとは思うじゃないですか。
金森里美はそれを利用して…。
死にたいと思う事と本当に死ぬのは別もんだ。
人が死ぬのは生きる事に絶望した時だけだ。
またですか…。
一ノ瀬君…。
またじゃないですか!なんだかんだ文句つけて俺の見立てにケチつけてばかりじゃないですか倉石さんは!根こそぎ拾えてねえからだよ。
俺立原管理官に捜査一課に誘われてます。
そうなの?ふーん。
よしそろそろ帰るか。
タロ行くぞ。
よし来い。
よーし今日は何食うか?倉石さんまるで興味ないみたいね。
あの人が興味あるのは根こそぎ拾う事だけよ。
(机をたたく音)ええそうね今日はねぇ…。
(里美)味が合うといいんだけど…。
ねえ。
はーい。
(里美)また来ますからね〜!
(タロの鳴き声)タロ?娘さんたちには吠えるのにあんたには吠えねえんだな。
(里美)誰…?寺西のじいさんの介護はどれぐらいやってた?警察の人…。
1年とちょっとですけど。
仲良くやれてたのかい?え?まあんたの事だから親身になってたんだろうな。
知りませんそんな事。
先生よぉ…。
(西田)うん?人ってのはなんだって死に際なんかを考えんのかね。
めんどくさい生きものだからね人間てのは。
だから謎を残したがるか…。
わかりやすい人生ってのは死んだあとすぐ忘れられちまうんだよ。
謎があれば人の心に残るじゃないか。
なぁ真里ちゃん。
(早坂真里子)さすが先生哲学的。
(西田)そう?嬉しいボク。
な〜にがボクだよお前!じじいのくせに。
なんだと?おい君は失敬だぞ。
そうだそうだ失敬だぞ。
なんだ真里ちゃんまで。
少しは謎めいてみたらどうだよ。
色気づきやがってお前。
(坂東)間違いありません。
金森里美は3日前寺西の遺体が発見される前日に宅配便業者に寺西の家から出てくるのを目撃されていました。
見間違いですよ。
第一寺西さん殺されたわけじゃないんでしょ?どうして私が…。
寺西さんは末期のすい臓がんでした。
前途を悲観して死のうとした寺西さんを死に至らしめるために現場に作為的な作業をした共犯者がいる可能性があるんです。
どうしました?その共犯者が私だって言いたいんですか?どうして私がそんな事しなきゃ…。
(坂東)遺言状にあった300万の金だよ。
冗談じゃありません!なんでそんな事言われなきゃいけないんですか!?世の中でお金に困ってるのは私だけじゃありません。
(里美)ほら寺西さんの娘さんたちだってお金に困ってて家を売れって言ったそうじゃないですか。
疑うんだったらまず身内疑ったらどうなんですか!?それはどなたから聞いたんですか?えっ…?寺西さんからです。
家族の内情まで話してたとなると寺西さんとはかなり親密だったようですね。
(ノック)
(江川)管理官。
金森里美が寺西宅で目撃された夜に事業所に立ち寄った際介護メモを落としたと言っていたらしいんです。
何?その日介護した人のメモです。
もし彼女がそのメモ帳を寺西宅で落としたとしたら…。
おいタロ。
この犬に何をさせたいんですか?タロだけが知ってる事があるはずなんだよ。
ほれ。
まずはこの部屋だ。
はい。
どうしたんですか?金森里美がここへ訪れたと思われる日に介護のメモ帳を落としたらしいんです。
隅々まで探せ!
(警官たち)はい!タロ。
うーん…。
あっ。
んっ。
何何何?おっあった〜。
メモ帳ありました!
(足音)ああこっちこっち。
(江川)あっ。
(タロの鳴き声)おいタロタロ…。
(吠える声)なんだってこんなところに…。
タロのお気に入りの場所なんだよここは。
なあ?うん?あれっ?小坂。
はい。
こいつ科捜研で調べてもらってくれ。
これはあなたが落とした介護メモです。
寺西さんが亡くなった当日でメモは終わってる。
このメモ帳は…寺西家の庭で発見されました。
つまり…あの日あなたは寺西家を訪ねたという事になる。
知りません。
私なんにも知りません。
30年以上前の写真だな。
倉石さん!寝てろ。
じいさんの声が聞けるかもしれねえ。
聞けるもんなら…本気で聞いてみたいと思います。
背の高さを競った傷跡ですよねそれ。
そこシール張ってあるでしょ。
俺も壁に張ってよく怒られました。
はがせないんだから張らないでちょうだいって母親に。
そうか。
どこの家も同じですがここにも何十年と家族一緒に暮らした跡があるんですね。
そうだな。
たまりませんよね。
この場所でたった一人で死を迎えるなんて並大抵の覚悟じゃ出来ない。
その家を娘たちは売ろうと持ちかけてた。
そうか。
この場所は寺西さんの指定席だった。
その指定席がなくなるとわかった時…寺西さんは生きる事に絶望した。
じいさんの声が聞こえたようだな。
検視官!脱脂綿についていたのはまつ毛でした。
血液型はA。
寺西さんと一致します。
それとこの脱脂綿から副腎皮質ホルモンが検出されました。
副腎皮質ホルモン…。
すべてが揃ったというわけだ。
なんだ?今日の通夜の前にイチが根こそぎ拾う。
何?奴の卒業試験だ。
(佐知子)一体どういう事ですか?警察の人が寄ってたかって。
第一なんでこの人が来るんですか?父を死なせたのはこの人だっていう話じゃありませんか。
(春恵)遺言状に300万の事書かせたのもあなたよ。
そんな人に手合わせてもらったってうれしくもなんともない。
違います。
今回の事はすべて寺西さんが1人でやった事です。
(一ノ瀬の声)金森さんの訪問介護が終わった日に寺西さんは自らの手で孤独死を演出する準備を始めたんです。
なぜならその後1週間は誰も訪ねてこない。
その間なら確実に衰弱死出来ると思ったんです。
(佐知子)嘘よそんな事!自分から孤独死を選ぶなんてそんな事父さんがするわけないじゃない!そうです!どうしてそんな事しなきゃならないの!?
(吠える声)よしよしいい子だ。
よーしいい子だ。
よーしいい子だいい子だ。
よーしタロタロ。
よしよし…。
(一ノ瀬)なぜ寺西さんが孤独死を選んだのか…。
多分娘さんたちに自分の孤独を感じ取ってほしかったんです。
家族とともに暮らしたこの家でひとり暮らす孤独をわかってほしかった。
それじゃまるで私たちが放っておいたみたいじゃない。
寂しがってた寺西さん。
えっ?こんな古い家に1人で寺西さんを残しておけないってそう言ったんですってね。
でも本当はお金がほしいからこの家を売ってほしいんだって寺西さん知ってましたよ。
(佐知子)なんなの?あなた。
うちの事に口を挟まないで!あなたに何がわかるんですか?あなたたちは寺西さんの何を知ってるんですか?
(寺西竹夫)親として出来るだけの事はしてきた。
そりゃね今だって大変な事はわかる。
わかるけどね…この家は私たち家族の家だったはずだ。
(寺西泰江)うまいうまい。
(寺西)うまいね。
(寺西の声)この庭で娘たちは走り回り結婚してからもね妻と一緒にこの縁側に座って足をブラブラさせていた。
(寺西の声)まあ大概私に聞かれたら困るような話をしていたが家族一緒になって泣いたり笑ったりしていたんだ。
妻が亡くなってからはもう誰も縁側に座って足をブラブラさせる者はいなくなった。
今じゃね…足が悪いし私も出来やしない。
だけど…だけどねこの庭でこの縁側で家族みんなが泣いたり笑ったりしていたんだ。
なのにね…家を売れと言う。
私はもう年寄りであとは死ぬだけだ。
なぜ…なぜもうちょっと待ってくれないんだ。
なぜ…!
(里美の声)泣いてた寺西さん。
(一ノ瀬)この指定席に横になるとよくわかります。
奥さんの遺影や家族写真柱で背の高さを競った傷跡シールを張った跡。
そこにあるのは家族の歴史です。
その歴史を薄れていく意識の中で見つめて孤独な死に耐えた。
本音を言えばあなたたちと暮らしたかったはずです。
この家で。
(一ノ瀬)余命は半年。
家を売れとあなたたちは言う。
居場所を失ってしまう絶望感。
だからこそ自ら命を絶つ事を決意した。
孤独死としてその死を感じ取ってほしいから。
じっと耐えて死のカウントダウンを聞いていたんですここで。
昨日も今日も明日もこの家にたった一人でいる。
じいさんが抱える孤独の深さがあんたにはわかった。
だからあんたは訪問介護の日でもねえのにここにじいさんの様子を見に来た。
金森さん。
メモ帳と一緒に出てきた脱脂綿です。
この脱脂綿にはまつ毛がついていて寺西さんの血液型と一致しました。
同時に涙の成分が検出されています。
涙?副腎皮質ホルモンを多く含んだ涙です。
これは感情が高ぶった時の涙といわれています。
あなたが寺西さんの最後の涙を拭いたんですね。
その時寺西さんはまだ生きていた。
私…私…。
全部吐き出して楽になったらどうだ?
(嗚咽)おかしいと思ったんです。
訪問介護の日何か様子がおかしくて気になったんです。
寺西さん。
寺西さん?ねえ寺西さん!寺西さん!?寺西さん!えっ?放っておいてくれ…。
放っておいてくれ…お願いだ…。
寺西さん…。
(里美の声)このまま死なせてくれ。
それが本当の介護だって言われたような気がしました。
(里美)私1人で暮らす母を放っておけなくて介護のため家に戻ったんです。
半年も一緒にいてあげられなかったけどけど臨終間際この家で死ねてよかったってそう言ってくれたんです。
だから…だから寺西さんも寺西さんの言うとおりこの家で死なせてあげたかった。
ごめんなさい!ほんとにごめんなさい!私ほんとにとんでもない事してしまったんです!ごめんなさい!ごめんなさい…!じいさんも今頃後悔してるだろうよ。
本当ならあんたら実の娘さんたちにみとってほしかったはずだからな。
ごめんなさい!ごめん父さん!父さん…!
(里美・佐知子・春恵の泣き声)
(鳴き声)わかるんだなぁ。
じいさんの事を思って泣くあんたらの事をよ。
立原。
なんだ?一ノ瀬の事よろしく頼む。
ああ。
いよいよ卒業ね。
最後まで倉石さんの力を借りてしまいましたけど。
ううん。
よく頑張ったと思う。
根こそぎ拾えてた。
ありがとうございます。
一課に行っても頑張ってね。
小坂さんも。
入ります!
(タロの鳴き声)2014/05/29(木) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
臨場2[再][字]
「カウントダウン〜タロが報せた死」
詳細情報
◇番組内容
臨場とは、事件現場に臨み、初動捜査に当たること。遺体や現場に残された物証から、事件の見立てを読む検視官・倉石義男は、優秀だが死者の声を全て拾えれば周囲との軋轢など気にしない組織の厄介者。「拾えるものは、根こそぎ拾ってやれ」彼の死者に対する悼み方、優しさが死因を追究し事件解決へ導く…
◇出演者
内野聖陽、松下由樹、高嶋政伸 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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