真球。
それは寸分のゆがみもない完璧な球体。
この世には存在しない。
もし現実のものとなれば社会を大きく変える。
球体は我々の暮らしを支えている。
自転車はベアリング球が回る事で滑らかに走れる。
車や飛行機のエンジンなどにも使われる球体。
真球が出来ればエネルギーロスが減り燃費は飛躍的によくなる。
今宵はその究極の真球作りを目指す対決!勝負の舞台は全長20m幅7.5cmの限りなく水平な台。
真球ならばこの上を落ちる事なく転がりきる。
ビリヤード球はどうだろうか?
(千原ジュニア)一体どれぐらい行くんでしょうか?僅か3m余りで落下。
見た目以上にゆがんでいる。
去年秋世界屈指のベアリングメーカーが真球作りに挑んだ。
鋼鉄の球を作り続けて100年の歴史と誇りを懸け勝負に挑んだ。
(池田)今レールに載りました。
あ〜すげえ。
記録は…今宵新たな挑戦者が登場。
20mを制覇する夢の真球は出来るのか?改めて見応えありますね。
今でもゾクゾクしますね。
一応前回の記録は16m25cm。
そうでした。
まずそもそもあれがあってかなりご好評頂いて…ありがとうございます。
皆様のおかげでございます。
それでは2組の技術者の皆さんに登場頂きます。
1組目はこちらです。
高齢社会を見据え製品開発を行う精密部品メーカーハマダ広島テクニシャンズのお二人。
金属部品の精密加工を手がけるこの会社。
人工股関節を製造。
全国の医療機関から高い評価を受けている。
人工股関節は病気やケガで損傷した股関節の代わりとなる。
だが長く使うと部品が擦れて摩耗し炎症を引き起こす事もある。
真球に近づけば長期間使っても滑らかに動き続け患者の負担が大幅に減る。
その開発を一任されている若き2人が真球に挑む。
膨大な過去のデータに基づく緻密なプログラミング。
右に出る者はない。
2人目中国出身の李毅。
どんなものも瞬く間に削り出す。
日本のものづくりに憧れ24歳で来日。
寝る間も惜しんで腕を磨いてきた。
20m転がる真球を作るぞ!
(一同)オ〜!続いては2組目こちらです。
油圧機械部品や金型部品作りを続けてきた平井精工所。
ナニワの電動師のお二人です。
手には電動ドリルです!従業員20人ほどの町工場。
日本の産業を支えてきた自負がある。
油圧ポンプに用いる精密部品。
こいつを作っている。
ショベルカーや掘削機械。
その複雑な動きを可能にする油圧ポンプ。
その要とも言える部品だ。
優れた球面加工技術があって初めて重機の自在な動きが可能となる。
日本の高度な土木技術を支える陰の立て役者だ。
真球を目指す事で球面の精度が上がれば重機をよりスムーズに動かす事ができる。
今回挑むのは社内トップクラスの技術を持つ2人。
2人目数百種類の工具を使いこなす平井壽剛。
伝家の宝刀電動ドリル。
1000分の1mmの精度で磨き上げ真球を目指す。
町工場の誇りを胸にナニワの電動師チーム出陣。
なるほどね〜。
楽しみですねこの戦いも。
両者共にまさに凄ワザの持ち主ですからね。
改めて両者に戦って頂くこの対決の舞台アルティメット・パラレル・バー。
球の僅かなゆがみも見逃さないように水平度を限りなく高めてきました。
ちょっとした温度の変化でバーの鉄自体も膨張したりずれたりしますので扉の開閉も先ほどからほとんどしておりません。
幅7.5cm長さ20mのレールが運び込まれた。
作ったのは日本有数の測定機器メーカー。
1000分の1mm単位の調整を繰り返し完全な水平に近づける。
完成したアルティメット・パラレル・バー。
真球対決舞台は整った!こちらで戦って頂く訳ですが…。
20mって聞いてたんでまあそんなにないのかなって思ってたんですけど実際見ると長いですよね。
圧巻なんですよこれねえ。
さあ対します平井さんいかがですか?入って見た瞬間圧倒されまして…真っ平らの20mの物体って見た事ないですよね。
そうですよね。
李さんは来日されて何年ぐらいですか?いや知らないです。
「そうですよね」言われてもほんまに知らないですけど。
知らないから聞いてるんですよ李さん。
何年ぐらいなんですか?15年目です。
15年!へえ〜。
日本のこの高い技術に憧れて?そうです。
お二方実は真ん丸のいわゆる球体を作っている訳ではないんです。
球面という加工技術に関しては非常に精度が高いんですが…。
球面と球体って全然違うでしょ?やっぱり。
はい違いますね。
いや本当ですよね。
今回の勝負にあたっては条件を設けさせて頂きました。
それでは広島テクニシャンズの皆さんの球作りご覧下さい。
4月広島テクニシャンズの真球作りが始まった。
全てが一からの挑戦。
素材はステンレス鋼。
硬く加工が難しいが重量がありバーの上で安定して転がるはずとにらんだ。
李の出番だ。
旋盤で球体を削り出す。
まずは軸のついた半球の状態に仕上げる。
ここまでは人工股関節と同じ。
完全な球体にするには軸も球面にする必要がある。
そこで反対向きに球をセット。
削る刃物を当てる位置を整える。
ハンマーひとたたき100分の1mm。
素早くしかし正確に。
5分で準備完了。
広島テクニシャンズが目指す真球の原型が出来上がった。
「よさそうじゃないか」だって?表面を拡大するとこのとおり。
刃物で削られた跡がくっきり。
これを消すには磨くしかない。
ここに大きな問題があった。
人工股関節を作る時は片側についている軸を固定して磨く。
…が今回は軸がない。
球をどう支えればいいのか?銅を素材に球の受け皿を作ろうという李の提案。
ステンレス鋼より軟らかい銅ならしっかりと球を支えつつ球自体を傷つける事もない。
早速旋盤で銅を削り出す。
李はとにかく仕事が早い。
待つこと10分余り。
おお〜。
銅の受け皿完成。
この中で球を回転させ削っていく。
傷を消すための砥石に球を当て回転させる。
球は受け皿と同じ動きで一方向にしか回転しない。
これでは球全体を磨けない。
小石は研究室に向かった。
人工股関節の開発で蓄積された記録を一から見返そうというのだ。
過去の試行錯誤の積み重ねの中に手がかりがありはしないか。
小石が目を留めた。
「受け皿に角度を持たせる」という記述。
受け皿を斜めに動かせば球に遊びが生まれランダムに回るのではないか。
小石は膨大なデータから最適な角度を23度から25度と計算。
この間を動かす事にした。
これなら傷もつかない。
データの鬼の読み的中なるか?球が生き物のように動いている。
小石と李2人が目指す真球にまた一歩近づいた。
ここからが追い込みだ。
顕微鏡でしか見えない細かな傷。
これも消し去る必要がある。
砥石でついた微細な傷を磨いて消す魔法の素材がある。
人工股関節の仕上げに使う研磨用のフェルトだ。
フェルトはとても細い繊維が密集して出来ている。
磨きで出た金属片を内部に取り込み球を傷つけない。
ここまで磨きに使った砥石。
これをフェルトに替え受け皿として球を支えながら磨く。
そのため球をフェルトに押しつける新たな素材が必要だ。
球が滑らないよう適度な力で押さえる素材。
そんなものあったっけ?工場を探し回ること20分。
(スタッフ)これ何ですか?これをスポンジと組み合わせ新たな工具を作り出す。
人間の手に近い弾力で球にかける圧力を微妙に調整できると考えた。
早速テスト用の球で試す。
駄目だ。
なぜだ!?原因が分かっても実際に調整するのは至難の業だ。
小石が球をそっと回す。
球の上部にかかる圧力を自ら感じ確かめ微調整する。
押しつけるスポンジの調整幅は1目盛り0.1mm。
小石が機械と一つになる。
どうか!?球が滑らかに磨かれていく。
研ぎ澄まされた感覚によってなしえる凄ワザだ!おお〜きれいですよね!ええね。
いいですよね。
球が放つ輝きに…ニヤリ。
対決の日まで磨き続けろ!広島テクニシャンズ!なるほど。
まず球体を研磨するそもそもその機械がないって事ですもんね。
そうですね。
そこから作らなあかんて事で。
李さん仕事早いですねあれ。
「銅でやりましょう」って作って「どうですか?」っていう。
いいの決まってましたやん。
ダジャレが。
そんな広島テクニシャンズの皆さんをご覧になってどうですか?すごい私たちと似てるところで悩んではったなというのが。
まさかの皆さんにしか分からないですね。
さあそれでは完成した球体を見てみましょう。
それでは小石さんお願いします。
わ〜何か…オーラがあるなこれ。
全てのものを映し込んでますねこの球体が。
どうですか?改めて自分の作られた球を見られて。
すばらしいです。
さあそして今日は応援に社長も駆けつけて下さって…。
社長来てはるんですか?はい。
聞いてみましょうか声を。
社長!はい!どうですか?この小石さん李さんが作られたこの球。
今日まで一生懸命頑張ってまいりました。
勝敗は関係ないけども完走して帰ってくるようにと思っています。
でもやっぱり言うても勝ちたいですよね。
ちょっとだけそういう気持ちがあります。
ただ完走したらそれで十分ですから。
是非頑張ってほしいですね。
(拍手)ありがとうございます。
ありがとうございます。
それでは広島テクニシャンズ小石さんセットをお願いします。
自信を持って今回臨んでいらっしゃいますのでどこまで転がるのかが楽しみです。
そういえばビリヤード球は3m余りで落下した。
鋼鉄球作りのプロベアリングメーカーの記録も16.25m。
20m渡りきる真球への道は過酷を極める。
さあ今慎重にアルティメット・パラレル・バーのスタート位置にお二人の作った球を設置しました。
それではお願いします。
広島テクニシャンズの球今スタートしました。
レールのほぼ真ん中。
あっ行った!うわ〜すげえ!スルスルと進んでいます。
もう全てのものを映し出すような輝きを放っています。
5m通過しました。
まさにレールのど真ん中です。
すげえ!行きますね。
小石さんと李さんが手がけた球体少し右に寄ってきました。
10m通過しました。
球体少しだけ右に寄っています。
右のへりの方です。
間もなく15m。
少し軌道が変わりました。
15m通過ですがどんどん右に寄っています。
李さんからガッツポーズが出ました。
ただ少し球体が体が少しへりから出ています。
20m行くか李さんの手に…。
(歓声)20m達成!小石さん李さんガッツポーズ!やりました〜!すげえ!やりましたね!やった〜!
(小石)やりました!すご〜い!ありがとうございます!すげえ!ありがとうございます。
よし!いや〜李さんすごい!あ〜うれしい!ガッツポーズ出ましたね。
すごいわこれは。
何も言えないです。
李さん。
小石さんが放った球は受け取りましたよ。
どうですか?今の心境は。
気持ちがよかったですよね!早くから待ってましたものね李さん。
泣きそうですね。
すごい。
まずは20m転がりきりました。
これでも来週…大変ですね。
ねえ!やりますよ。
おっ!ねえ?こんな事言ったらあれですよ。
こんな事言ったらあれですけど勝ちはない訳ですからねもう。
ドローか負けしかございません。
皆さん乞うご期待です。
楽しみ!2014/05/29(木) 22:55〜23:20
NHK総合1・神戸
超絶 凄(すご)ワザ!「究極の“真球”を目指せ」(進撃編)[字]
この世に存在しない完璧な球体「真球」を目指す。2組の腕利き技術者チームが球を製作。真球なら、長さ20m、幅7.5cmの水平な台を転がりきるはず。奇跡は起きるか!
詳細情報
番組内容
現実には存在しない「真球」を目指す。真球とは1ナノメートルの誤差もない完璧な球体。挑むのは、人工股関節の球体部分を造る広島のメーカーと、重機の精密部品を造る大阪の町工場。判定を下すのは、全長20m、幅7.5cmの限りなく水平な台「アルティメット・パラレル・バー」。落ちずに球がどこまで転がるかで判定する。先攻は広島側。人工股関節の開発で培った技術を駆使して勝負に挑む。衝撃の結末!見逃す事なかれ。
出演者
【司会】千原ジュニア,池田伸子,【語り】福島泰樹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:13370(0x343A)