聖母・聖美物語 #44【恋の静岡篇〜女同士】 2014.05.30

(波津子)いい眺め。
(聖美)お母さま。
お弁当作ったんでお持ちになってください。
(波津子)ああ。
ありがとう。
いやぁ。
これなら思う存分砂浜を歩けそう。
(聖美)お母さまったら携帯。
(聖美)繁郎さん?
(陽)もしもし。
おばあちゃん?もしもし。
おばあちゃんでしょ?陽。
(陽)パパ。
おばあちゃん出ないよ。
(繁郎)つながんなかった?
(陽)分かんない。
(繁郎)ちょっと貸して。
(繁郎)もしもし。
母さん?どうしちゃったんだよいったい。
今どこにいるの?あのう…。
あっ。
あのう。
私。
聖…。
ちょっと待ってて。
聖美なのか?はい。
何で君が母さんの携帯に?まさか母さん君のところへ?羽衣の松を見に来たって。
羽衣?今も三保の松原の散策に。
三保の松原って。
そういう謎解きだったのか。
陽は?学校へ行ってないの?もしかして陽具合が悪いんじゃ?そんなことないよ。
今日はそのう定期的な検診なんだ。
本当に?元気なのね?ああ。
それより母さん大丈夫なのかな?血圧は。
血圧?倒れたんだこないだ。
今は落ち着いてるけど薬だけは飲んでおかないと。
あっ。
ちょっと待って。
ああ。
大丈夫。
お薬ちゃんと持ってらっしゃる。
ハァー。
そうか。
まあ君のとこにいるならいざとなったら処方してもらえるしね。
諏訪先生に。
元気そうだね。
きっと母さんなりに心配だったんだ君のことが。
気が済んだら早く帰るように伝えて。
それじゃあ。

(陽)パパ。
おばあちゃんどうしたの?うん。
間違って違うとこにかかっちゃった。
また後でね。
(陽)《もしもし。
おばあちゃん?》《もしもし。
おばあちゃんでしょ?》陽。
(波津子)話したの?繁郎と。
心配してました。
お母さまの血圧のこと。
(波津子)どうってことないのよ。
いらいらさせる人がそばにいなけりゃ落ち着いたもん。
私のこと気にしてくださったんですか?私がどうしてるのかって。
(波津子)繁郎が言ったのね?
(波津子)気にしてなかったわ。
あなたと諏訪さんがどんなふうに暮らしていようと。
考えていたのは自分のことだけ。
傷ついた自分をどうやって癒やしてやればいいんだろうって。
じゃあ何でまっしぐらにここに来たのかって。
ハァ。
私自身不思議だった。
だから今日一日ぼーっと考えてた。
富士山を眺めながら。
(波津子)そしたら急にひらめいた。
あなたと私きっと戦友になったんだって。
戦友?十何年嫁しゅうとやって一緒に家族を守ってきた戦友。
それで真っ先にあなたの顔が浮かんだのよ。
他の誰でもない戦友のあなたに会いたくなったんだわ。
勝手なこと言ってるって思ってる?でもそれが私たちの12年の歴史。
生きる道は変わってもそれまで一緒に歩いてきた道のりは消えてしまったわけじゃない。
はい。
だからね聖美さん。
おせっかいを承知で戦友として聞いとくわ。
諏訪さん。
いったいどうしちゃったの?・
(ひかりの声)《この子は陽の小さな守り神よ》《この子の中にママがいるから》《ひかりの顔を見るときはいつでもにっこり笑ってあげて》
(陽)ひかりちゃん。

(峻)どうしたの?陽君。
(峻)あれ?ひかりちゃんおしめかな?
(峻)あっ。
大丈夫そうだね。
おばあちゃん。
どこに行っちゃったのかな?もう帰ってこないのかな?
(峻)そんなことない。
すぐ帰ってくるよ。
伯父さんがそう言ってた。
ちょっとした気まぐれだろうって。
でもさっき変だった。
(峻)うん?変って?パパと一緒におばあちゃんに電話したの。
早く帰ってきてって言いたくて。
でも僕が話してもおばあちゃん何にも言ってくれなかった。
話したくなかったんだよ僕と。
(峻)そんなことない。
退院したらいつもママと。
ママとみんなと一緒にいられると思ったのに。
何でみんな僕のそばからいなくなっちゃうんだろう?・「ねむれねむれ母のむねに」・・「ねむれねむれ母…」
(愛美)本当のところどうなってるの?ばあちゃんよ。
連絡取れたんでしょう?うん。
(愛美)どこにいるの?高血圧の年寄りがいなくなったら私だって心配する。
実はそのう。
聖美のところにいるらしいんだ。
何で?何しに行ったの?分からないよ。
僕だって直接話したわけじゃないし。
まさか呼び戻しに行ったわけじゃないよね?あなたが頼んだのね?私の目をごまかしてお母さんを送り込んだのね?違うよ。
ホントについさっき知ったんだ。
姉さんに未練はないのね?じゃあ何で私を抱かないの?同じ部屋で枕を並べて寝てるのに何で私の体に触れようともしないの?それは…。
姉さんより私が大事だって言ってくれたじゃない。
あんなに優しく抱き締めてくれたじゃない。
なのに何で?姉さんのことなんかさっさと忘れて私を抱いて。
分かってるわよね?姉さんの体はもうあなたのものじゃないってこと。
遠いところで二人きり心行くまで愛されてる。
繁郎さんとは全然違うやり方であの諏訪先生に。
やめてくれ。
想像しちゃった?いっそ目をつむって私のこと抱いてみたら?いいわよ。
今日だけ代わりになってあげる。
僕はもう君とそういうことはしない。
君とのことはたった一度の過ちだ。
あれは過ちなんかじゃなかった。
僕がこうして一つ部屋で愛美さんと寝られるのは君を女として見てないからだよ。
あの女の写真はどこ?あの女?何やってんの?愛美さん。
あなたが愛した最初の女。
夢の中でしか抱けない幻の女。
姉さんと結婚してからも忘れられなかった永遠の女!ちょっと。
またワインセラーに隠したのね?破いて。
破り捨てて。
今すぐに。
亡くなった人に何の恨みがあるの?恋しいんでしょう?姉さんが。
失った今になっていとしくてたまらないんでしょ?だったらいらないじゃない。
カビの生えた古くさい思い出なんか。
あっ。
(愛美)生身の女がここにいるのに何で死んだ女やいなくなった女ばっかり追い掛けるのよ?私のどこがいけないのよ!本気で考えたんだよ。
僕だって君とのことは。
いまさら何を。
本当だ。
君をいとおしいと思ったのは事実だし子供たちのためにもそうするのが一番いいって真剣にそう思った。
じゃあなぜ?何でそのときに言ってくれなかったの?言い訳じゃない。
都合よく言い訳してるだけじゃない。
君が陽を愛してくれたら。
峻君やひかりと同じように陽を優しく包んでくれたら。
(愛美)愛そうとしてる。
ちゃんとあの子のことだって。
(愛美)姉さんの代わりに聖母になって3人の子供を育てようって。
できるって思ってた。
子供に必要なのは清らかな聖母なんかじゃない。
あったかいお母さんだよ。
あなたが私を愛してくれないから。
あなたが本気で私のことを愛してくれたら私だって愛せた。
陽のことを。
自分の子供だと思ってかわいがってあげられたのに。
私やり直すわ。
今からやり直す。
だから言って。
愛してるって。
お願い繁郎さん。
もう一度ちゃんと私を愛して。
ハァー。
ハァ。
純粋過ぎたのかもしれないわよ諏訪さんは。
まあ悪く言えば世間知らずの理想主義者。
理想が高けりゃ高いほどしくじったときのダメージは大きくなる。
この診療所がそうだし。
あなたのことももしかしたら天女だと思っていたのかもしれないわよ。
まさか。
聖美さんは柳沢病院の院長の妻。
本来なら手に入るはずのない存在だもん。
おかしくないわ。
あの人の目には天女のように見えていたとしても。
うん。
天女の羽衣を奪った漁師はね最初のうち天女がどんなに頼んでも衣は返さないって言い張るの。
でも泣いて泣いてあまりにも嘆き悲しむもんだから漁師もだんだんかわいそうになってきてね。
とうとう衣を返すことにしたんだけどその代わり条件を出した。
今ここで天人の舞楽を見せてくれって。
天女は喜んで二つ返事で承知した。
でも舞を舞うには衣がいるでしょう?だから先に衣返してって頼んだの。
そしたら漁師は嫌だって駄々こねだして。
どうして?天女を疑ったのよ。
先に衣を受け取ったら舞わないでそのまま天に帰るつもりだろうって。
ああ。
そこで天女はこう言った。
「いや疑いは人間にあり天に偽りなきものを」疑いは人間に?もともと天には疑いの心なんてもの自体が存在しない。
人間だけが持つ愚かで醜い感情だって諭したの。
漁師は大いに恥じ入って衣を返し天女はその羽衣をまとってそれはそれは美しい舞を舞いながら月へ帰っていきましたとさ。
人間なんて小さい。
恥ずかしくって消え入ってしまいたいって。
今の諏訪さんも同じような気持ちなんじゃないかしら。
いったん自分は駄目だって思い込むととことん落ち込んでいじけてしまう。
理想ばっかり追い求める男のもろいところよね。
私には諏訪先生がそんなに弱い人には…。
ただ優し過ぎるだけだと思うんです。
男は優しいだけじゃ駄目。
苦境を切り開く力がなきゃ。
まあ自分で育てた息子のこと思うとあんまり大きなこと言えないけどね。
でもうちの息子は諏訪さんと違って現実主義者だから。
繁郎さんが?あなたもそう思わない?無駄な抵抗はしないで現実を受け入れる。
何があっても意外とずぶとく生き残るんじゃないかしら。
あっ。
ありがとうございます。
私今になってようやく繁郎さんの大きさを知った気がします。
心が広くて柔らかいから私みたいな傲慢な女を受け入れてくれたんだって。
傲慢?ひかりのことです。
間違ったことをしたとは思っていません。
あの子は授かるべくして授かった。
今でもそう信じています。
でもそれでもやっぱり傲慢だった。
私のやり方は。
繁郎さんを傷つけ愛美を傷つけひかりのこと無理やり自分の娘にしようとして。
鬼子母神。
弘明さんが私のことそう言ってました。
あのころの私ホントに鬼みたいな顔をしてたんでしょうね。
なのに繁郎さんは私を許し支えてくれた。
ここで暮らすようになってようやく気付いた。
初めて申し訳ないって思ったんです。
繁郎さんに。
私は身勝手な妻でした。
あなたその気持ち繁郎に伝えたら?やり直したらいいじゃない。
こういうことになったんだから。
ねっ。
帰ってらっしゃいよ。
それがいいわ。
どうして?会いたくないの?陽に。
この私がいいって言ってるの。
あなたに出てけって言ったことは間違いだったって認めてるの。
気付かせてくれたのは諏訪先生なんです。
あの人がいなければ私自分がどんなにひどい女だったか気付きもしなかった。
今度は私の番。
苦しんでるあの人を私が支えなきゃ。
でも諏訪さんは…。
帰ってきますきっと。
信じて待ちます。
聖美さん。
もう決めたんです。

(カーテンの開く音)おはよう陽。
気分はどうだい?うん?
(陽)うん。
うん。
よし。
じゃあ起きようか。
パパ。
今日はお休みだからね一日中一緒にいられるよ。
本当?フフッ。
(峻)いいかげんにしてよ。
僕らはここに住まわせてもらってるんだ。
やるべきことはちゃんとやって。
どうかした?
(愛美)文句ばっかり言ってないで早く食べちゃって。
(峻)あっ。
陽君座って。
食べて朝ご飯。
あんたのために作ったんじゃない!
(陽)ママ。
ママ。
ママ。
陽。
何で黙ってるの?このまま黙って母さんのやりたい放題にさせておくの?そんな伯父さん僕は嫌いだ!2014/05/30(金) 13:30〜14:00
関西テレビ1
聖母・聖美物語 #44[字][デ]【恋の静岡篇〜女同士】

聖美(東風万智子)は諏訪(古山憲太郎)と漁港の小さな診療所で暮らし始める。聖美が去った柳沢家は悲惨な状況に。そんな中、波津子(丘みつ子)が突然、聖美の前に現れ…

詳細情報
番組内容
 聖美(東風万智子)は、波津子(丘みつ子)の携帯にかかってきた電話で繁郎(原田龍二)と話をする。最初に聞こえてきた陽(平林智志)の声に、聖美は胸が締め付けられ、思わず涙する。聖美は波津子になぜ自分を訪ねてきたのか問う。すると波津子は「“戦友”のあなたに会いに来た」と語り出し…。
 柳沢家では愛美(三輪ひとみ)が繁郎に、もう一度抱いてほしい、と強くせがむ。繁郎はそれを拒否。
番組内容2
さらにもう二度と愛美を抱くことはないと宣言する。理由を聞かれた繁郎は、愛美を絶望させるような事を告げる。
 すっかり打ち解け、女同士として話をする聖美と波津子。波津子は、諏訪(古山憲太郎)が一向に姿を見せないことを不思議がり、聖美に何があったのか聞くが…。
出演者
柳沢聖美:東風万智子
森尾愛美:三輪ひとみ
柳沢繁郎:原田龍二
柳沢弘明:金子昇
柳沢波津子:丘みつ子
星川真輔:風間トオル ほか
スタッフ
企画:横田誠(東海テレビ)
原作・脚本:いずみ玲演
演出:岡崎成克
プロデュース:西本淳一(東海テレビ)
中頭千廣(TSP)
神戸將光(TSP)
齋藤頼照(TSP)
音楽:辻陽
主題歌:「炎の花」ハルカ ハミングバード(ユニバーサル ミュージック)
制作著作:TSP
制作:東海テレビ
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ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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