韓国の金庫メーカー1位のソンイル金庫。先月初め、ある企業から「耐火金庫500台の見積もりを出してほしい」と言われて見積書を送付したが、その後全く連絡がない。ウォンの対ドル相場が急騰し、従来より7-8%も価格が上がったため「高すぎる」として先方が注文を渋っているからだ。同社は昨年の売り上げが200億ウォン(約20億円)だったが、今年に入ってから月平均売上高が前年比20%も落ち込んでいる。ウォン急騰の直撃を受けた格好だ。昨年の売り上げの約80%は米国、サウジアラビア、オランダなど海外向けの輸出だったが、今年は60%台に減少した。同社のキム・テウン常務は「ウォン相場が昨年に比べ8-10%上昇しているが、以前からの取引先に対しては価格を上げることもできず、損を覚悟で売っている状態だ」と語った。
ウォン高がますます加速し、韓国経済をけん引する輸出への悪影響を懸念する声が高まっている。製造業の景況感は4カ月ぶりに悪化する一方、海外旅行支出は過去最高を記録するなど、ウォン高の影響が本格的に表れ始めた格好だ。
■製造業の景況感、4カ月ぶり悪化
ウォン急騰は、回復傾向にあった韓国の製造業の景況感に冷や水を浴びせる形になっている。韓国銀行(中央銀行)が30日に発表した5月の企業景況感指数(BSI)は79で、前月に比べ下がった。BSIは1月の76から先月は82と3カ月連続で上昇していたが、今年初めて下落した。BSIは100を上回ると、景気を良いと見る企業が悪いと見る企業より多いことを意味し、100未満ならばその逆となる。
ウォン高に加え、旅客船「セウォル号」沈没事故に伴う消費の冷え込みも重なり、4月の産業生産も前月に比べ0.5ポイント落ち込んだ。