■「安全事故発生時には経営陣を厳しく問責」
グローバル先進企業の中でも安全管理面で評価が高い米国のデュポンは、2000年代に入り、韓国で「安全コンサルティングビジネス」を始めたが、数年前にこの事業から撤退した。韓国では事業を依頼する企業がほとんどなかったからだ。デュポンの関係者は「韓国企業の99%は、カネになる安全管理には関心があるものの、根本的な安全重視文化といった分野には全く関心がなかった」と語った。韓国産業界のリーダーたちが抱える「開発途上国的な安全意識」を、この事例は示している。
ある外国系企業の役員は「韓国では事故が起きた場合、労働者の『不注意』のせいにするケースが多いが、私の国では、経営陣の戦略的失敗と見て厳しく問責する」と語った。一般的に、企業で起こる事故のうち、労働者個人が管理できる部分は15%程度であって、残る85%は経営陣の責任だというわけだ。
安全保健公団のペク・ホンギ理事長は「2012年中の労働災害に伴う韓国の直接的・間接的経済損失は推定で19兆2000億ウォン(約1兆9000億円)に達する。生産性向上の努力と同じくらいに安全教育・訓練に関心を寄せなければ『少額のカネを惜しんだせいで命や大金を失う』といった事態は防げない」と語った。