2014年5月30日10時23分
◆ 鶴岡市、条件緩和にも申し込み無し
入札不調となった鶴岡市の新文化会館建設事業の再入札が29日、中止と決まった。入札参加願い締め切りの同日までに、1件も申し込みがなかった。参加条件を緩和し、事業費を上積みしたが引き受け手がなく、市は新たな対応を迫られている。予定した2016年秋の開館も遅れざるを得ない情勢となり、当惑が広がっている。
◆ 業者「複雑で採算合わぬ」
新文化会館の最初の入札は今年3月に実施され、指名業者がすべて辞退して不調に終わった。市は「特殊工法が必要で資機材調達の面でも地元業者のみでは難しい。工賃上昇など不確定要素も多かった」と分析。市内の業者と共同企業体(JV)を組むことを条件に大手ゼネコンが入札参加できるよう門戸を開いて再入札を目指していた。
全国的な工事の需要増大に円安が重なって資材や工賃が急騰したことを受け、市は2012年の基本計画で45億円だった総事業費を段階的に65億8500万円にまで引き上げている。今回は初回の入札よりさらに6億円増やしたが、14日から29日までの期間中、申し込みは1件もなかった。
大手ゼネコンの東北支店担当者は「情報を集めて検討したが、デザインや構造が複雑で採算が合わない。大型事業は半年以上前から準備が必要で、人出も資材も不足している中、すぐに対応などできない」と話している。
新館の建設を巡っては、2012年1月に行った市民の意見公募で「今の館を改修すべき。2年半も休館しては文化活動が停滞する」「経済が最悪なのになぜ改築するのか」などの意見もあったが、市は「検討委員会での議論を踏まえた」「改修は現実的でない」と建設を推し進めた。
仏のルーブル美術館別館も手がけた世界的建築家妹島和世氏の設計による新館は、2016年8月末に完成、同年秋に開館予定だった。市社会教育課は「改めて入札するかも含め検討するが、開館時期は遅れざるを得ない」という。
鶴岡市馬場町にあった旧館は既に取り壊された。鶴岡市芸術文化協会の東山昭子会長は「利用者の大半は一般市民。どんな形でも約束の期限までにできることを願ってやまない」。市内の音楽関係者は「代替施設も常に満杯の状態で、このままでは鶴岡で大きな大会が開けなくなるのではないか」と懸念している。(溝口太郎)