■安倍首相は靖国神社に行くことで合祀されているA級戦犯を崇拝しその栄誉を称(たた)える。
12月26日の首相の発言にも、神社内の鎮霊社も訪れた当日の行動にも、日本国天皇や幾多の首相、他の幹部指導者たちが謝罪を重ねてきたA級戦犯や他のあらゆる兵士たちの行為を、いささかでも称えるようなものは表れていない。米国のアーリントン国立墓地には米指導者たちが後に謝罪した奴隷制やその他の行動に関わった兵士たちの遺骸(靖国にそれはない)も収められているのだ。
■韓国や中国の指導者には、安倍政権の行動は1930年代の軍国主義への危険な回帰を映しているとまで言う者もいる。
≪「積極的平和主義」評価を≫
これらの指導者のうち、安倍首相がどんなに長く在職しようと、自国領土の1センチでも日本に攻撃される可能性があると現実に恐れている者は一人でもいるだろうか。北朝鮮指導者は心配していると言うかもしれないが、私は、ソウルや北京の責任ある指導者がそうした懸念を抱くことなど本気で疑うし、ワシントンでは誰もそう感じていないと確信している。
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米国政府は安倍首相に失望の念を表すべきだろうか。米国は独立国としてそうする権利がある。しかし、慎重に考察すれば、1952年から2014年までの平和愛好国としての日本の実績を認めたがらない姿勢を示す韓国に、そして、とりわけ中国の声明や行動に対して、最低でも同等の(言わせてもらえれば、もっと大きな)失望感が向けられる必要がある、ということが見えてくる。
そして、米国が東京に失望感を表明するのであれば、米国の指導者たちには少なくとも安倍首相の試みを高く評価してもらいたい。首相は、腰が引けて時に非現実的である日本の反戦平和主義を、もっと積極的な形に変えようとしている。それは、米国が60年以上にわたって日本に採用するよう奨励してきたことでもある。
(ヴァンダービルト大学 日米研究協力センター所長 ジェームス・E・アワー)