◆テープに録音された執行役員の発言
MOX燃料のデータ改竄事件のほとぼりもさめた04年3月、関電のプル
サーマル計画がようやく再開されたが、わずか半年で暗礁に乗り上げる。同
年8月、美浜原発で死者5名を出す大事故が起こったのだ。今井町長は再び
プルサーマル計画への態度を硬化させ、関電のプルサーマル計画は白紙撤回
された。
この頃、K氏はすでに福井県美浜町にある若狭支社(現『原子力事業本
部』、三つの原発を統轄する)の副支社長に昇格していたにもかかわらず、
加藤氏に対しても露骨に町長の暗殺″を命じるようになったという。前号
で報じたとおり、「標的」であった当の今井町長もまた、その暗殺計画=@
を認識している。
「実行者」も「標的」もその存在を認める暗殺指令″について、関電は、
「(暗殺≠)指示したのか確認したところ、K本人は否定しました。
当時の上司と部下にも確認しましたが、誰も認識していません」(広報室報
道グループ・島田佳明報道課長)
と回答した。しかし、これは、事実に反する。
関電の執行役員が、K氏による町長暗殺計画″を認めていたというのだ。
矢竹氏が事の経緯を解鋭する。
「ワシは06年7月中旬に、福井県美浜町にある関電の原子力事業本部を
訪ねて、執行役員と面会し、直談判に及びました」
その場に立ち会った関電側の人間は、原子力事業本部に所属する執行役員
のA氏と部長2名(写真左下はその名刺)だった。
「A執行役員に、Kの暗殺指令≠ノついて、洗いざらいぶちまけたんで
す。そのうえで、「ワシらの本業である警備犬事業が結局、Kによってまっ
たく違った方向に行ってしまい、尻すぼみになったことを会社として認めて、
謝罪して下さい』とお願いしました」
矢竹氏に対する回答があったのは約2週間後。矢竹氏は7月31日に再び
原子力事業本部を訪れ、A執行役員ら前出の3名と面会した。ここでのやり
取りを矢竹氏はテープに録音している。その一部を再現しよう。
A 事実関係を調査した結果、そのようなこと(K氏による高浜町長暗
殺計画=jはあったようです。しかし、それはあくまでK個人がやったこと。
矢竹 Aさん、それは、あなたの考えですか?それとも関電としての答え
ですか?
A 関電としての答えです。矢竹さん、一つ言っておきますが、この件に
ついて、今後K個人とどのような話をしてもらってもええです。しかし、関
電には受付の窓口はありません。
矢竹氏がこう憤る。
「まったく無茶苦茶な論理じゃないですか。Kによる暗殺計画≠事実
として認めながらも、会社としてはまるで関係ない、だから会社として謝ら
んと言いよったわけです」
この面談の結果を矢竹氏から聞いた加藤氏も憤りのあまり、直談判に及ん
だ。
「ワシがA執行役員ら3人に会ったのは、8月7日のことです。しかし、
私が聞いても彼らの答えは同じでした。平たくいえば『K個人がやったこ
と』、そう言うだけです。関電として事実関係は認めても、Kの言動につい
て『会社の意向でした』とは口が裂けても言えんのやろうね」
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