アマゾン・ドット・コムに非効率という性質は普通連想しない。ところがジェフ・ベゾス氏率いる同社はあたかも、在庫管理がきちんとできない、無秩序な小規模書店のように振る舞っている。「その本をご所望ですか? 大変申し訳ありませんが、在庫切れです。1冊注文することはできますが、今は届くまでにかなり時間がかかります。代わりに別の本を買われたらいかがですか?」
■先行予約を受け付けない
もちろん、これは策略である。米国の顧客に対し、ロバート・ガルブレイス(ハリー・ポッターシリーズ著者、J・K・ローリングさんのペンネーム)の新著『The Silkworm』を「現在扱っていません」と表示するアマゾンは、真実を伝えていない。本当のところは、アマゾンが値引きを迫っているアシェットが同著の出版元であるため、先行予約を受け付けないようにしているというわけだ。
これはまさに、出版社が昨年、米国と欧州での反トラスト訴訟で敗訴して以来恐れてきた瞬間だ。米国地方裁判所のデニース・コート判事は「出版社は、アマゾンが顧客への電子書籍販売を支配し続けたら、卸値の値引きを求め始めると心配していた」と書き、出版社各社がアップルと共謀し、アップルのストアで価格をつり上げたとの判決を下した。
「ビッグ・シックス」と呼ばれる欧米6大出版社とアップルは露骨なカルテルを形成することで、「キンドル」で電子書籍を支配するアマゾンに対抗する自らの取り組みを台無しにしてしまった。この一件は近年では最も奇妙な反トラスト訴訟となった。米国政府と欧州委員会が、台頭する独占事業者の支援に駆けつけたのだ。
ベゾス氏はかつて、アマゾンは小さな出版社を「チーターが弱ったガゼルを追いつめるように」扱うと述べたことがある――。ブラッド・ストーン氏はアマゾンに関する伝記『The Everything Store』(邦題「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」)でこう書いた。アシェットは「ビッグ・ファイブ」――ランダムハウスとペンギン・ブックスの合併により、6社から5社になった――の中で比較的小さな出版社で、脆弱だ。
筆者はアマゾンについては複雑な感情を抱いている。ベゾス氏は、顧客を満足させ、値段を下げることへの献身ぶりで競合他社を恥じ入らせる素晴らしい会社を築き上げた。販売をオンライン上で行うだけでなく、以前より容易にすることで、小売業のあるべき姿を描き直した。
国際通貨基金(IMF)は、数十億ドルの国債を発行するアフリカ諸国が過剰な債務で各国経済に負担が掛かりすぎ、同地域にとって経済の最盛期を頓挫させる恐れがあると警告した。…続き (5/30)
米国の顧客に対し、ロバート・ガルブレイスの新著『The Silkworm』を「現在扱っていません」と表示するアマゾンは、真実を伝えていない。…続き (5/30)
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