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英語、LinkedIn、将来設計…“セカ就”の経験者に聞く、エンジニアが「海外で働く前」にやっておくべきこと

2014/05/30公開

 

アプリやWebサービスの市場が日本国内にとどまらず広まっている昨今、海外で働きたいと考えるエンジニアが増えてくるのは自明の理。しかし、実際に“セカ就”=世界での就職活動を経験した人というのはさほど多くなく、彼らの話を聞ける機会は限られている。

そこで本企画では、エンジニアにとってのメッカ・シリコンバレーと、急成長する東南アジアのハブ・シンガポールで就活を経験した2人のエンジニアに経験談をヒアリング。前回(以下リンク参照)はシリコンバレーでの就活話を聞いたが、今回はシンガポールでの就活、そして海外就活を行う上でエンジニアがまず行動に移すべきことについて聞いた――。

シリコンバレーで就活したエンジニアに聞く!「渡米就活」成功のカギは?

プロフィール
近澤良氏

近澤 良氏

成蹊大学在学中に起業。その後、Web制作会社を経て、DeNAに入社。海外のGoogle PlayでナンバーワンとなるゲームやHTML5のフレームワーク『Arctic.js』の開発などに携わり、その後起業。シリコンバレーでの就職活動の結果、現在は楽天が買収した動画配信サービス『Viki』のシンガポール本社でフロントエンドエンジニアとして活躍

プロフィール
平川彰氏

平川彰氏

明治大学在学中に起業。その後、サイバーエージェントに入社。入社時から26~27歳で海外長期旅行を計画し、予定通り25歳で一年間の世界半周の旅行へ。日本に一時帰国後、シンガポール人と現地で起業。その後、現地のフード系ソーシャルアプリ『Burpple』を開発するスタートアップの共同創業者にヘッドハンティングされ、現在は開発を統括するバイスプレジデントエンジニアとして活躍

シンガポールで有名スタートアップにヘッドハンティング

―― 平川さん、シンガポールでの就活のプロセスを教えて下さい。

平川 わたしの場合は少し特殊だったということを先に断っておきます。最初は就職するためにシンガポールに来たものの、誘われていた会社をお断りして、縁あって知り合ったシンガポール人と一緒にシンガポールで起業するになりました。

その後、当時NTU(南洋理工大学)のインキュベーションセンターで仕事をしていた時に、今働いているBurppleの共同創業者が来て、あるアメリカ人のアントレプレナーを介して私に声をかけてきたのがきっかけです。

フード系ソーシャルアプリ『Burpple

―― 自ら仕事を探していたのではなく、むしろ声をかけられたのですね。その国のエンジニアコミュニティーに入り込んだ形の就職ですね。

平川 当時はその会社から身を引こうかと考えていた時期で、悶々としていたこともあり、一度はお断りしたんです。その後自分は会社から身を引き、リフレッシュも兼ねてしばらくインドに旅行に行き、自分の中で区切りがついたタイミングでシンガポールに戻りました。その時、今度は自分からBurppleの共同創業者に声をかけ、まだエンジニアを探しているとのことだったのでジョインすることにしました。

―― Burppleはシンガポールの中でも優れたサービスを作っているスタートアップの一つだと思います。海外ではマイノリティーである日本人エンジニアが、そうした企業にジョインできるような機会に恵まれるコツは何でしょうか。

近澤 運が転がり込んでくるような場所にアクセスする術を持たない外国人も多いはずですよね。

平川 海外には日本人コミュニティーというものが存在すると思うのですが、そこではなくひたすら現地の方が集まるローカルのコミュニティーに入り込むことです。

例えば、「Ruby(http://www.meetup.com/Singapore-Ruby-Group/)」や「iOS(https://www.facebook.com/groups/iosdevscout/)」など、技術ベースで区分けされるエンジニアのミートアップに参加します。

Burpple が入居するビルディング「Blk71」で開催されることもありますし、「Hackerspace」のようなところで勉強会が行われることも。そういう場所には、日本人のエンジニアは少ないですね。

後は、スタートアップにファウンダーや創業初期メンバーとして参加したければ、アントレプレナー系のミートアップに行くのも良いかと思います。シンガポールでもエンジニア探しに苦労している非エンジニアの人たちはけっこういるので、良い出会いはあると思います。

近澤 意外とあるものなんですね。そういう場所に行けば出会いもあると。

平川 あとは、LinkedInでも企業の方から「一度会って話しませんか」と声がかかることはあります。

近澤 私もシリコンバレーで就活していた時、LinkedInで声をかけられたことがありました。アカウントを使って、そのまま応募できるところもあります。

Hackerspaceで開催されるミートアップの告知ページ

―― また、JobStreet.comのような求人紹介サイトに登録するのも手ですね。他には?

平川 日本人であることのメリットを活かして、日系企業がシンガポールに進出してきたタイミングでその企業に応募するのも一つの手かと思います。

―― 現地で就職した人が気を付けるべきことはありますか?

平川 これはエンジニアに限った話ではありませんが、シンガポールならではの注意点は、家賃が高いことです。

近澤 私も日本にいる時と比べて、家賃による家計の圧迫感がありますね。例えば知人は、都心部にある会社から近い1ベッドルームの部屋を1カ月25万円で借りていたりします。

ビザ問題はどうする? 通用する英語レベルは?

―― 海外で就職するということは、海外で生活するということでもあります。家賃のほかに、生活面でアドバイスできることは?

平川 これはシリコンバレーとシンガポール、どちらにも共通する話だと思いますが、「選択肢はできるだけ持っておくこと」と「中長期プランを考えること」だと思います。

例えば、「海外で2~3年生活した後はどうするのか」、「海外に行ってチャレンジをしたけど、それがうまく行かなかった時次はどうするのか、次はあるのか」ということは考えた方がいいかもしれません。

個人的には、始めるより終わらせることの方が難しいと思っていて、「何かを始めたら、いつどのようにそれを終わらせて(または終わらせないのか)、どのように次に進むのか」ということ、また外部要因で強制的に終了せざるを得ない場合もあるので、そのリスクは認識しておくべきだと思います。

―― 起こりうるシチュエーションはどのようなものでしょう?

平川 例えば、国の情勢、経済状況、または会社の方針などが変わって新たな労働許可証(ビザ)の発行、更新が難しくなる場合があります。そうしてその国を出ざるを得なくなった時にどうするのか。日本に帰るのか、また別の国に行くのか、それとも他の会社に移るのか。

これは私の考えですが、シンガポールを「エンジニアがスキルアップをする場所」としてだけ見たら、シリコンバレーや日本には劣ります。例えば自分が1~2年後に日本に帰った時、「あなたは2年間でエンジニアとして何をなされたのですか?」と問われ、その2年間が日本で評価されない可能性もある。

そうなると、次のキャリアステップも厳しくなります。行った先の国で骨を埋める覚悟ならいいですが、そうではない場合、極端な話日本に帰った時に居場所を失う可能性はあると思います。ですから、海外で働いた、その後に続く枝分かれした道をいくつ作れるかが大事だと思います。

海外で働くことにはリスクもあるという平川氏

―― 海外で英語を使えるようになったとして、それは日本に帰国した際アドバンテージにはならないでしょうか?

平川 なると思います。例えば、英語圏に進出を考えている日系企業や、逆に日本に進出を考えている外資系企業ではそのスキルは活きると思います。

―― 近澤さんはVikiで働いた後のことをどのように考えていますか?

近澤 私は、シンガポールでの仕事をシリコンバレーで起業するためのステップだと考えていますので、その目標に対しては前に進めていると思います。しかし、そんなにスムーズにシリコンバレーに行けるとも思わないので、現実的にどうするのか、ということはまた考えなくてはいけません。

―― シンガポールからシリコンバレーに渡るにあたって、ネックとなることは何だと思いますか?

近澤 ビザですね。

平川 仕事に限らず、ライフイベントの問題もあります。海外で生活するとして、例えばもし独身の方なら結婚に関してどう考えているのか、既婚者の方なら家族はどうするのかなどリアルな話も出てきます。

―― クリアしないといけない課題はさまざまですが、中でも日本人にとって「英語」はネックとなりやすい。シンガポールで働いていて、求められる英語のレベルはどれほどだとお考えですか?

平川 ビジネスサイドに比べると、エンジニアでしたらそこまで話せなくても大丈夫です。こちらに来たばかりのころも、エンジニア間の会話はバックグラウンドが同じなのでなんとかなっていました。

しかし、時間が経ってビジネス・企画サイドにもかかわるようになり、非エンジニアとのディスカッションの場が増えるにつれて、自分の言いたい言葉が出てこなくて焦ることが多くなりました。

近澤 英語はどのように勉強していますか?

平川 私の場合は、リスニングとスピーキングに課題を感じています。それを克服するための方法の一つとして「シャドーイング」を行っています。聞いた英語を自分で復唱するやり方です。スタンフォード大学のアントレプレナー系の授業が英語の字幕付きでWebで公開されているので、それを使って練習しています。

英語の勉強にもなりますし、有名スタートアップの立ち上げ時期の話なども聞けるので、モチベーションコントロールにもなります。

他には、Web全般や技術に関するニュース記事や文献は英語のものを読むようにしています。日本語のソースを読む場合と比較すると、どうしても2倍ぐらい時間はかかってしまいますが。

近澤 わたしは現在リスニングに課題を感じているので、海外ドラマを見たりアプリを使って勉強しています。シンガポールにはいろんな国籍の人が集まってくるので、いろんな国の訛りが効いた英語を聞き取らなくてはいけないのが大変です。

ミーティング中は一度聞き取れないとそのまま置いていかれてしまうこともあるので、そんな時は終わった後に分からなかったことを聞くようにしています。

平川 精神的なタフさは大切ですね。

近澤 はい。英語ってどこまで使えるようになれば完璧という基準はないですから、少しできないぐらいで恥じらう必要はないと思っています。シリコンバレー就活の電話面接の時も何度も相手に質問を聞き返したりもしました。それにエンジニアは、英語は難ありでもいいものを作れれば受け入れられるという風潮もあります。

英語に対するそれぞれの課題感と工夫について語る2人

―― 最後に、これから海外で働きたいと考えているエンジニアにとって、まず1つめにやるべきことは何でしょうか?

平川 英語よりも「自分の武器は何か」ということを認識し、それをどう活かせるかを考えることでしょうか。

近澤 それは、滅茶苦茶大事ですね。自分は何が強くて何がダメなのかを自覚して、自分の特技で勝負することを考えた方がいい。

平川 日本で働くなら日本人であるということだけで採用において優遇されることもありますが、自国以外のところに行くならそれなりの武器がないと必要とされません。

近澤 シリコンバレーに行って感じたのは、日本人エンジニアの技術レベルはシリコンバレーに劣っているわけではないということです。つまり、日本で武器になるものを持っていれば、シリコンバレーから声がかかることもあり得るのです。

―― 本日はお時間ありがとうございました。

取材・文・撮影/岡 徳之(Noriyuki Oka Tokyo


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