モノづくりベンチャーのはじめかた(1)「技術トレンドを読んで起業リスクを減らそう」

モノづくりベンチャーのはじめかた(1)「技術トレンドを読んで起業リスクを減らそう」

itog
itog (ID271) 公認maker 2014/05/29

「Makers」や「ハードウェアスタートアップ」がちょっとしたブームになっています。2012年10月にクリス・アンダーソンの「Makers」が出てからその動きは顕著になりましたが、私はその1年前、2011年9月に弊社ピグマルを設立しました。 弊社以外にも電力管理システムのsassorや、卓上ライトのBsizeなど、小資本のハードウェアスタートアップがこの時期から創業しています。これはただの偶然ではありません。 このころから、小資本でもハードウェアを開発出来る環境が急速に整ってきたことが大きな理由です。私自身は始めから起業をしようと思っていたわけではなく、環境の変化に合わせてできる事をやってきた結果、起業に至りました。 ここでは、私自身がMake:のイベントに出展するようになった経緯や、ピグマルを創業するに至った過程を、環境の変化を交えながら紹介していきたいと思います。 私は大学を卒業後、大手メーカーで組み込みソフトウェアのエンジニアとして働き、2008年8月に退職しました。実は当初は数ヶ月国内外を旅して飽きたら就職しようと思っていたのですが、退職から1ヶ月後、あのリーマン・ショックが起き、気が付くと就職出来るようなところがなくなっていましたw

AndroidとGDD Phone

そんな折の2009年春、私はGoogle Developer Dayというイベントに参加しました。そこでAndroid搭載スマートフォン「GDD Phone」が参加者に無償で配布されました。

▲イベント参加者に配布されたGDD Phone Android以前、組み込みシステムのソフトウェアは有償で提供されるものが常識でした。開発環境が数十万、製品に搭載するとライセンス料がかかり、さらファイルシステムだったりTCP/IPのプロトコルスタックなどのミドルウェアは別料金、という世界です。 フルスタックの組み込みソフトウェアが無料でオープンソースというのは組み込み業界にいる人にとってはかなり衝撃的でした。それに加えて端末の無料配布で、国内のAndroid開発コミュニティが盛り上がりました。そして、そのコミュニティに入ることで、Androidと関連するさまざまな情報がネット上やオフイベントでの口コミで伝わる様になりました。

ハードウェアの価格低下

私がメーカーに勤めていたころ、業務で関わる組み込みソフトウェアは日進月歩で巨大化していきました。一方で、趣味で使えるマイコンは10年以上ほとんど進化はなく、雑誌の記事などでも、趣味の電子工作ではLチカやライントレーサなど手垢のついたモノばかりでした。 当時の私は、個人レベルでは組み込みの仕事などない、と思っていたのでハードウェアに関してはアンテナを全く張っていなかったのですが、前述のAndroidコミュニティの中で、BeagleBoardの存在を知りました。

▲$149のボードコンピュータ「BeagleBoard」 BeagleBoardは一枚の基板上にコンピュータとして必要な基本機能が載ったボードコンピュータで、$149で発売されました。最新機種、とはいかないまでも当時普通に使われているスマートフォンと同等のスペックを持った開発ボードがこの値段で誰にでも手に入り、しかも回路図などの設計情報はオープンになっていました。 そのほんの数年まで、CPUの評価ボードは数十万円単位で、一般店で販売されるようなものではありませんでしたので、組み込みLinuxが快適に動作する環境を個人で使えるなんてことは考えてもみませんでした。今となってはRaspberry Piが$25、intelのGallileoが$69と、$149という価格さえも高く感じてしまいますね。 さて、こうしてソフトウェアとハードウェア、そしてそれらを使いこなすための情報にアクセスできるようになった私は、AndroidとBeagleBoardを使えばリッチな機能を持ったロボットが作れる!と思い立って制作に乗り出しました。これが私のMakerとしての始まりです。

▲image:AndroidとBeagleBoardを使ったロボット

なぜAndroidだったのか

以上の様に、Androidは私の進むべき道を大きく変えました。しかし、きっかけとなったから、というだけでAndroidを選んだわけではありません。 私がAndroidを主要な開発プラットフォームに選んだ決め手は、スマホ以外のさまざまな組み込み機器への広がりを期待したからです。 当時は(いまでも?)スマホといえばiPhoneでしたので、スマホでコントロール出来るロボットを作るならiPhoneを使ったほうがユーザ層は増えます。しかしiOSは独自に別のシステムに組み込むことは出来ません。iPhoneでコントロール出来るロボットは作れても、iOSを搭載したオリジナルロボットを自作することは出来ません。 さまざまな用途があるということは、それだけ仕事もあるということです。Androidをやっていればアプリから組み込みまでさまざまなレイヤーでの仕事を対象とすることが出来ます。 人件費以外はほぼ無料で出来るアプリやウェブサービスとは違い、ハードウェア開発を行うにはどうしても費用がかかります。資金がなくなった時に、稼ぎ口がなくないとなにもすることが出来ません。学習コストをかけずに資金を得る方法を確保できるのがAndroidだったのです。 このように、弊社のモノづくりはアイディア勝負で一発当たるか当たらないかではなく、技術や環境の進化、変化を予測し、チャレンジとリスクヘッジを行っています。 Androidは私が期待していた以上に広まり、今ではスマートフォン以外のさまざまな組み込み機器にAndroidが搭載され、Google自身もGoogle GlassやAndroid Wearといった製品をリリースしています。Androidのおかげで、新たな学習コストもなく、GlassやWear端末のアプリを開発することが出来るのです。

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