内海、今季初勝利(2)明治神宮で神頼み「勝つのって本当に大変」
◆交流戦 巨人6―0楽天(29日・東京ドーム)
巨人・内海が10度目の先発で、ついに今季初勝利をつかんだ。2回以降は毎回走者を背負ったが、要所で粘って7回無失点。打線は2回に村田が先制ソロ、6回には井端が適時二塁打、7回にはセペダが右打席では初安打となる満塁本塁打で加点した。チームは2位に浮上。
できることは、何でもやった。今月中旬の休日。早朝、日の出の開門に合わせて、明治神宮に向かった。「ここまで勝てないと、さすがに厄払いくらい行こうかな、と」。冗談交じりに笑顔で明かしたが、神様にでもすがりたいのが本音だった。
無事参拝を済ませた後、明治神宮内にあるパワースポットとして有名な「清正井(きよまさのいど)」へ。開くのは午前9時で、まだ約3時間あったが、車で時間をつぶした。しっかり運気を体中に吸い込み、心から勝利を願った。
それでも、勝てなかった。前回23日のロッテ戦(QVC)では7回途中まで2失点ながら5敗目を喫した。帰りの車に乗り込む際、今までにないくらいに「勝てないわぁ!」と声を張り上げた。
翌24日、原監督から「いつもいつも、打てなくて悪いな。頑張ってくれ」と声を掛けられた。「感謝しています。気持ち的にはすごい楽になった。でも、自分が打たれて勝てなかった時もある。しっかりしないといけないと」。改めて奮い立った。
今週、方位磁石を購入した。方角によって運気を高める「風水」を実践するためだ。東京ガス時代からの同僚で同級生の片岡に冷やかされたが、「今やれることは何でもする」の信念は揺るがなかった。寝る時に頭を向ける方角を変えるなど、運気を上げるため、私生活からこだわり抜いた。調整法の根本は、あえて変えなかった。負けが続いた4、5年前は「変えてどんどんドツボにはまったので」と、プロ11年目らしく自分を信じた。
チームメートの「内海を勝たせたい」という強い思いも感じていた。「言葉ではないですけど、行動でひしひしと伝わってきました。応えたいなと」。松本哲が「落ち込んだところを見せず、練習も一番でグラウンドに出て、そういう所がすごい」といえば、長野は「勝てなくても普段通り変わらなかった。見習わないといけないと思います」。投手の柱として、下を向くことだけはしなかった。
責任感は人一倍強く、チームの勝利だけを願うが、知らぬ間に、勝てない焦りが投球に影響していた。最近、チーム関係者に「(白星を)欲しがり過ぎていたのかも。チームのためと思って投げないとダメ」と漏らした。
巨人に関するあらゆる人が待っていた白星。内海は、感慨深げに振り返った。「勝つのって、こんなにうれしいんですね。正直本当にしんどかった。一番、苦しんだ1勝だし、勝つのって本当に大変なんだなと感じた。これからチームに恩返ししていきたいです」。阪神が敗れたため、チームは2位に浮上した。逆襲へ。舞台は、整った。(岸 慎也)