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特殊公務災害31人認定 南三陸町防災庁舎、死亡・不明の町職員

町職員33人を含む43人が犠牲になった防災対策庁舎。震災後3年2カ月が過ぎた今も、慰霊の花束があふれる

 東日本大震災の津波で、宮城県南三陸町の防災対策庁舎で死亡・行方不明となった町職員33人の遺族が申請した特殊公務災害が不認定とされたことを不服として、遺族が審査請求したところ、29日までに31人の請求が認められたことが分かった。弁護士や医師らでつくる第三者審査会が再審査し、震災当時の状況を踏まえ「危険な公務中の災害だった」と不認定の判断を覆した。残る2人の申し立ても審査中となっている。

 遺族33人は2012年にそれぞれ、補償を扱う地方公務員災害補償基金(東京)の宮城県支部に特殊公務災害の認定を申請したが、全員が不認定とされた。遺族は昨年、これを不服として審査請求を申し立て、支部の第三者審査会が審査していた。
 審査会は、マグニチュード(M)9.0の巨大地震で10メートル以上の大津波警報が発令されていたことから「高度な危険が一般に予想される状況下での職務」と認定。「町防災対策庁舎は災害対策本部が置かれており、大きな被害は想定されていなかったはず」とする基金の判断を退けた。
 町防災対策庁舎では震災当時、町職員が情報収集に当たり、防災無線を通じて町民に避難を呼び掛けた。津波が押し寄せたため屋上に避難したが、町職員33人を含む43人が犠牲になった。
 審査請求を支援した東忠宏弁護士(仙台弁護士会)は「津波災害の実情に即した判断で、評価できる。現在審査中の申請も同様の判断が下される可能性が高い」とみる。
 同基金によると、震災で犠牲になり、公務災害が認められた岩手、宮城、福島3県の自治体職員は282人。このうち145人が特殊公務災害を申請し、今回の判断で92人が認定されたことになる。第三者審査会が不認定の判断を見直したケースが8割を占めた。
 特殊公務災害が認められた遺族の一人は「ほっとしたが、家族は帰ってこない。公務員が使命感から命懸けの職務に当たるのではなく、避難を優先できる環境が望ましい」と訴える。
 同町の佐藤仁町長は「遺族は苦しい思いでずっと過ごしてきた。認定され、大変うれしい。審査中の人も認定されるよう願っている」と話した。
 同基金は5月から特殊公務災害の認定要件を緩和し、不認定とした申請も再度申請を受け付けている。


[特殊公務災害]地方公務員の災害補償法に基づく公的補償の一つ。高度な危険が予測される状況下で、警察官や消防署員らが人命救助などの公務中に死亡したケースが対象となる。認定されれば、遺族の請求により一時金、年金ともに公務災害の補償額の最大1.5倍が支払われる。


2014年05月30日金曜日

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