タンカー爆発:不明船長を捜索 姫路港沖
毎日新聞 2014年05月29日 23時27分(最終更新 05月29日 23時50分)
兵庫県姫路市の姫路港沖で29日朝、石油タンカー「聖幸丸(しょうこうまる)」が爆発し、1人が行方不明、4人が負傷した事故で、姫路海上保安部は業務上過失傷害容疑で捜査を始めた。タンカーは沈没したが、同保安部は行方不明の安藤政一(まさいち)船長(64)=宮城県石巻市流留=の捜索を続けた。
爆発事故で甲板長の尾形良道さん(61)=同県気仙沼市岩月台ノ沢=が重体となったほか、▽高知市朝倉、1等航海士、山内隆彦さん(45)▽鹿児島県いちき串木野市羽島、甲板手、池野悦樹さん(66)▽青森県八戸市大久保、甲板員、成田泰紀さん(23)−−の3人がやけどなどで重傷を負った。
第5管区海上保安本部(神戸市)などによると、船員が船体に付着したさびを電動研磨機を使ってはがしていた際、タンク内に何らかの形で火花が入り、爆発につながった可能性があるという。行方不明の安藤船長と、けがをした乗組員4人は甲板にいたらしい。
タンカーを所有する聖朋海運(しょうほうかいうん)(広島県大崎上島町)の小村朋孝社長(61)はこの日午後、姫路海上保安部を訪れ、報道陣に「原油タンク内からガスを抜く作業が十分ではなかったのかもしれない。(積んでいた)重油は約40度で固まる。今日は暑かったから(空の)タンクに残っていた原油が気化した可能性もある」と話した。【岸川弘明、姜弘修、宮嶋梓帆】
◇船長の無事祈る
タンカー爆発事故で行方不明となっている船長の安藤政一さん(64)の自宅は、東日本大震災の津波で200人を超える犠牲者が出た宮城県石巻市の渡波(わたのは)地区に近い、潮の香りが漂う新興住宅地。自宅周辺は津波の難を逃れ、落ち着きを取り戻しつつあっただけに、住民らは安藤さんの無事を祈った。
住民らによると、安藤さんは航海のため留守がちだったが、帰宅した際は庭木の手入れなどに汗を流していたという。近所の主婦(37)は「家のことをきちんとして、優しい雰囲気の旦那さんだった。無事でいてほしい」。別の近所の女性は「せっかく震災も乗り切ったのに、大変なことになってしまった」と言葉少なだった。【伊藤直孝】