ご存じの方も多いと思いますが、中国政府がスノーデン事件以来、徐々に米国のIT企業の製品を警戒し始めました。そして近日、とうとう政府部門と国営企業においてサーバーを米国におくソフトウェアの使用を禁止しました。
2、3年前、私が日本版Googleを開くと携帯電話番号を聞かれました。入力しないと「使えなくなる可能性がある」と脅かされました。すぐ他の検索エンジンに変えたい気分でしたが、日本にはもう実質グーグルしかありません。
また、以前このメルマガでも触れましたが、アップルストアでは無料なのにクレジットカード番号の入力を求めることにも怒りを覚えます。案の定、うちの子供が予想外のお金を使ってしまいました。誘惑に負けたのか、ただのミスなのかはわかりませんが、同様な被害を受けたのは我が家だけではないと思います。
私は中国政府による一部米国IT企業への規制には賛成です。一部の米国IT企業は言論の自由を守る闘士のような姿勢をみせて中国政府の要望を跳ね返して撤退しましたが、その後、米国政府による顧客データへのアクセスを許したと認めました。この「特別サービス」は決して他の国の政府に与えないでしょう。
しかし、私が一部米国IT企業への規制を支持する理由は言論や政治と関係はありません。元プログラマーとして、そしてIT企業の元経営者として反対です。
企業は顧客の所在国の政治枠組みから完全に離脱して運営することはできません。本社が東京にあるのに、日本政府の法律や日本政府の指導に反することはできません。米国の国益は中国やロシアのようなライバル国だけではなく、日本や英国のような同盟国とも矛盾する場合がよくあります。立法も規制も異なる国民と消費者の好みと利益を代表しているのに、米国の国益に合せて一つにしてサービス提供することはコストは安いが、顧客中心ではありません。
中国人が米国のクラウドソフトウェアに不満を覚えても自国政府を通じて変えることができません。異なるシステムを選択したくても、数年先に進んだ米国IT企業によって市場が寡占されたので我慢するしかありません。米国のIT企業に一定の規制をかけないと自国の産業育成ができないだけではなく、その国の消費者に合った、まったく新しいサービスも生まれなくなります。
中国ではそんな米国のIT企業を規制したおかげで面白いサービスがたくさん誕生しています。最近NYで上場した京東(JingDong)はその典型です。サイトを開いて好きな商品を注文すればだいたいその日のうちに玄関まで持ってきてくれます。カード番号など聞きません。中国の消費者はそもそも大事な情報をネットに入れないのです。どの企業が信用に値するかを考えるのも面倒です。「商品を確認してから支払う」という買い物の基本に従えばよいだけです。
京東の配送員達が商品を渡すと同時に現金でもクレジットカードでも支払できます。ITを分からない老人も、私の妻のような中国に慣れていない日本人でも安心して買い物できます。先日も京東のホームページからシャープの空気清浄機をクリックしましたが、その日のうちに我が家の空気が変わりました。
京東は創業して10年目ですが、売上が18兆円になりました。これは中国市場に「グローバル・スタンダード」を教える米国企業には決してできない業績です。ちなみに中国政府はアマゾンなどの外国電子取引商にいっさい規制をかけていません。
P.S.
サーバーを中国に置かない米国IT企業への規制は日本のソフトウェアにとってチャンスだと思うのは私だけでしょうか。
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小生も同じ経験がありました。
然し、中国、ロシア等はいざ知らず、米国に「同盟」された日本は米国離れ、米国を脅かす様なIT技術、IT企業を米国に許してくれません。日本は自主政策をしたいものなら先ず米国から独立することです。
安全性を問われるWebの世界にあって個人情報の大事な部分を公開するのは問題ありと考えます。
*ネット通販の購入はクレジット、と習慣化していますが、
中国の購入方法、なるほど納得です。
玄関で代金と商品を交換(日本の代引き・要手数料)
を考えたいと思います。
中国側だけの意見を書いても意味がないので、
以前起こったアメリカの華為締め出し、最近起こった中国サーバー攻撃による中国軍将校の訴追など根深いところがあります。
とにかくお互い難癖つけてお互いの自国企業の利益を守ろうとしてるとしか思えません。
またアメリカ、ヨーロッパ諸国は中国の人権、著作権対策に未だに不満がありますし、簡単な話ではないと思います。
しかし商売の観点からすれば、こんな状況も商機ではありますが。