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野中郁次郎のリーダーシップ論 ― 史上最大の決断
【第1回】 2014年5月30日
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野中郁次郎 [一橋大学名誉教授]

なぜ、今、ノルマンディー上陸作戦を取り上げるのか

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今からちょうど70年前の1944年6月6日、人類史上最大規模の軍事作戦であるフランス・ノルマンディー海岸への上陸作戦が敢行された。この巨大なプロジェクトを遂行したリーダーたちは、いかにして極限の修羅場でリーダーシップを発揮したのか――1992年、私はその地を訪れた。

史上最大の作戦の「現場」
ノルマンディーを訪れて

一橋大学名誉教授 野中郁次郎

 1992年春、私はパリにいた。同地で行われる国際経営学会に出席するためだ。神戸大学の加護野忠男、慶應義塾大学の奥村昭博が一緒だった。飛行機が早朝に着いたため、ホテルのチェックインはまだできなかった。学会は翌日だから、時間はたっぷりある。どうやって時間を潰そうかと考えた時、閃いた。そうだ。ノルマンディーに行こうと。

ノルマンディー地方。上の○部分がオマハ・ビーチ、下がカーン

 私の突飛な申し出に2人が乗ってくれ、鉄道を使って3人でカーンまで移動した。カーンはノルマンディー地方の中心地であり、最も深甚な被害を被った町でもある。当時も爪痕が残っていたカーン市内を歩き、戦争博物館を訪問した。オマハ海岸にも行き、ドイツ軍のトーチカ跡に入った。連合軍の慰霊碑を見上げた。そして、砂浜に立ちつくし、「あの日」に思いを馳せた。その日のうちにパリに戻ったはずだが、翌日の学会のことはほとんど記憶がない。

1944年6月6日の作戦初日(Dデイ)、死傷者2000名と犠牲者の数が桁違いに多かったオマハ海岸(2012年12月撮影)。「ブラッディー・オマハ」と言われた海岸も、波打ち際だけを見ると、今はその面影はない

 時代はさらに下り、2012年夏のことである。この10年間ほど、私は同僚の竹内弘高(ハーバードビジネススクール教授)と一條和生(一橋大学国際企業戦略研究科教授)とで08年からナレッジ・フォーラムという場を主宰し、日本を代表する30社の経営幹部候補生の研修を行っている。その研修の一環で毎年恒例の夏合宿があるのだが、12年(5期生)、13年(6期生)と2年連続で、日本語訳が出たばかりのアントニー・ビーヴァーによる上下巻の大著『ノルマンディー上陸作戦1944』を事例研究に使ったのだ。テーマはリーダーシップである。

 誰のリーダーシップが優れていたか、どれがお粗末だったか、連合軍の勝利を決定づけたのは何か……白熱した議論が夜を徹して行われた。ここでの議論は、経営学の視点からこの一大プロジェクトを見つめ直す機会を与えてくれた。

世界各地で収集した、ノルマンディー上陸作戦の関連資料
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野中郁次郎 [一橋大学名誉教授]

1935年東京生まれ。早稲田大学特命教授。58年早稲田大学政治経済学部卒業後、富士電機勤務を経て、カルフォルニア大学バークレー校経営大学院博士課程修了(Ph.D)。南山大学、防衛大学校、一橋大学、北陸先端科学技術大学院大学、一橋大学大学院国際企業戦略研究科で教鞭を執る。紫綬褒章、瑞宝中綬章受章。知識創造理論の提唱者であり、ナレッジ・マネジメントの世界的権威として、米経済紙による「最も影響力のあるビジネス思想家トップ20」でアジアから唯一選出された。さらに2013年11月には最も影響力のある経営思想家50人を選ぶThinkers50のLifetime Achievement Award(生涯業績賞、功労賞)を受賞。近年は企業経営にとどまらず、地域コミュニティから国家までさまざまな組織レベルでのリーダーシップや経営のあり方にも研究の場を広げている。主な著作に、『失敗の本質』(ダイヤモンド社)、『アメリカ海兵隊』(中央公論新社)、『知識創造企業』(東洋経済新報社)など。

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野中郁次郎のリーダーシップ論 ― 史上最大の決断

『失敗の本質』から30年。経営学の世界的権威・野中郁次郎が、リーダーシップ研究の集大成の対象に選んだのは、「凡人たる非凡人」にして第2次大戦の活路を拓いた連合軍最高指揮官アイゼンハワー。「史上最大の作戦」で発揮された意思決定(Judgement)の本質を説く。

「野中郁次郎のリーダーシップ論 ― 史上最大の決断」

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