2014年04月14日 公開
第三に、経済的な負担です。バイリンガルを育てることが大変だということは、いままでの話でおわかりになると思います。物理的な困難さは、経済面にも反映されます。インターナショナルスクール、海外の難関校に送るには、重い経済負担がのしかかってきます。ところが、日本は、この経済負担を軽減する制度が非常に脆弱なのです。
たとえば、アメリカ・カナダはThe College BoardというところがSAT、APなどの共通テストを提供し、その成績、個人情報を把握しています。成績が優秀であれば、その生徒を獲得するために大学が奨学金の提供を申し出てきます(具体的には、学校のカタログとともに、手紙が送られてきます)。とくに中堅校は、優秀な生徒の獲得が大学のレベルアップになるわけですから、4年間のフルスカラーシップを出しても損ではないのです。
日本の奨学金制度は先進国のなかで立ち遅れています。企業が大学に寄付をするという例もきわめて限定的です。冒頭にも書いたように、ニューヨーク前市長やビル・ゲイツらは、狙いを定めた機関に多額の寄付をします。彼らは善意のみで寄付をしているのではなく、意味があるから行なうのです。日本でも、このような企業の寄付がもっと活発化してほしいと願います。それと同時に、「平等に」という名のもとに行なわれる「ばらまき」をやめ、能力と希望のある者に十分な奨学金が渡る制度を、早急に構築するべきだと思います。
いままでバイリンガル教育の問題点について論じてきましたが、最後に、異なる言語を話すためには、母国語の確立が絶対条件だということを強調したいと思います。前述したとおり、言語はその人のバックグラウンドを映し出すからで、それは日本語でも他国語でも変わりはありません。世界には、母国語ではない日本語を話す人たちがいます。彼らは発音に多少癖があっても、敬語を使いこなし、日本語での議論も日本人と遜色なくこなします。とくにトップレベルの会合などでは、彼らがいかに優れた日本語を駆使するかによって、その後の関係が大きく左右されます。これは、日本人についても同じことがいえます。「この人は優れている」と評価される英語には、正確な日本語能力がその背景にあることを忘れないでほしいのです。こうした人たちこそが、「世界に通用する日本人」なのですから。
<掲載誌紹介>
ロシアによるクリミア併合は、もう決着したのだろうか。NATOが東欧の同盟諸国に対して、防衛協力を強化したり、西側諸国の制裁もちらほら聞こえるが、どうも腰が引けている。今月号の総力特集は、「ウクライナ危機後」の世界を睨んで、「中露の暴走を止めよ」。中西輝政氏は「ついに世界秩序の本格的な大変動が始まった」とし、歴史の必然として「多極化」しつつあると説く。日高義樹氏は、オバマ大統領の事なかれ外交がプーチン大統領のクリミアへの侵略を招いたとし、ヒットラーの台頭を許したウィルソン大統領と比較してみせた。佐藤正久氏は「中国がロシアのクリミア併合を範として、尖閣諸島に漁民を送り込み、自国民保護を理由に占領を始める恐れがある」と警鐘を鳴らす。また、日本が問題にすべきは、サービス貿易協定がもとで台湾が中国に呑み込まれるのではないか、ということだ。矢板明夫氏は、「ロシアがクリミアを併合するよりも簡単に台湾が中国に吸収されてしまう」と、台湾の大学教授の談話を紹介した。渡部昇一氏と呉善花氏の対談では、いずれ中国は韓国を味方に置きつつ、北朝鮮を編入するのではないかと読む。拡張主義を貫く中露は、クリミア併合に対する国際社会の反応を見ながら虎視眈々と次の一手を考えている。
第二特集は「論争・安倍景気の行方」。「新・アベノミクス」を説く若田部昌澄氏は、「デフレ脱却」「構造改革」「所得再分配」などのキーワードを挙げ、「国としての誇り」を取り戻すために経済成長の必要性を強調する。また、内閣官房参与の藤井聡氏は、「財政政策の効果は小さい」というエコノミストに対して名指しで論争をしかける。一方で、企業経営の現場を知り尽くした野中郁次郎氏と旭岡叡峻氏は、対談で日本の産業界のイノベーションと未来について徹底討論した。
自民党の野田聖子総務会長と高市早苗政調会長に、篠原文也氏が斬り込んだ座談会も議論が白熱した。党三役のうちの二役が、女性活用から集団的自衛権、靖国参拝までを意見交換した。
歴史マンガ『テルマエ・ロマエ』でブレイクしたヤマザキマリさんは、「超変人」が認められて生きたローマへの愛情を語る。「若い女がいいという男は、自分はバカだといっているようなもの」「人間は狂っていて当たり前」……、日本人への刺激的なメッセージに思わず笑ってしまう。ぜひ、ご一読を。
慶應義塾大学法学部卒業。大阪府特別参与、行政刷新会議公共サービス改革分科会構成員(内閣府)、横浜市外部コンプライアンス評価委員、研究費不正対策...
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