拉致問題:北朝鮮が再調査約束 日本、制裁一部解除へ

毎日新聞 2014年05月29日 21時00分(最終更新 05月30日 00時07分)

日朝交渉で拉致被害者らの再調査などについて合意したと表明する安倍晋三首相=首相官邸で2014年5月29日午後6時27分、藤井太郎撮影
日朝交渉で拉致被害者らの再調査などについて合意したと表明する安倍晋三首相=首相官邸で2014年5月29日午後6時27分、藤井太郎撮影

 政府は29日、ストックホルムで行われた日朝外務省局長級協議で、北朝鮮が日本人拉致被害者の「包括的かつ全面的」な再調査の実施を約束し、調査開始時点で日本が独自に行っている制裁の一部を解除することで合意したと発表した。安倍内閣が最重要課題と位置づける拉致問題が進展に向け動き出したことになるが、調査が進むか不透明な点があり、政府は北朝鮮側の出方を慎重に見極める考えだ。

 安倍晋三首相は同日夕、首相官邸で記者団に、「北朝鮮側は拉致被害者および拉致の疑いが排除されない行方不明者を含めすべての日本人の包括的、全面調査を行うことを約束した。特別調査委員会が設置され、日本人拉致被害者の調査がスタートする」と述べ、再調査の開始を発表した。

 そのうえで「すべての拉致被害者の家族がご自身の手でお子さんたちを抱きしめる日が来るまで私たちの使命は終わらない。全面解決へ向けて第一歩となることを期待している」と強調した。

 26日から3日間の日程で行われた日朝協議は終了時点では具体的な協議内容については、明らかにされていなかった。協議では調査再開と一部制裁解除など双方の「行動措置」に関する合意文書が作成されたが、署名はされず、双方が持ち帰った。

 帰国した外務省の伊原純一アジア大洋州局長は29日に合意内容を首相に報告。その後、菅義偉官房長官、岸田文雄外相、古屋圭司拉致問題担当相を交え、首相官邸で関係閣僚会議を開き、合意文書を了承。首相が発表した。

 首相の発表後、菅氏が緊急に記者会見し、合意文書を公表した。この中で、北朝鮮は、調査の過程で日本人の生存者が発見された場合は「帰国させる方向で去就の問題に関して協議し、必要な措置を講じる」ことに同意。「拉致問題は解決済み」としてきた従来の主張を修正した。日本は、北朝鮮による調査開始時点で日本が独自に北朝鮮に科してきた制裁のうち(1)人的往来の規制措置(2)送金報告、現金持ち出しの届け出義務(3)人道目的の北朝鮮籍船舶の入港禁止−−について解除するとしている。

 政府は近く、北朝鮮に対して調査を求める日本人のリストを提示する。政府認定の拉致被害者17人のうち行方不明の12人と、警察庁が認めた拉致の疑いがある特定失踪者860人が中心となる。

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