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中国の国有企業が南シナ海の西沙(パラセル)諸島近くで、石油の掘削を始め…
中国の国有企業が南シナ海の西沙(パラセル)諸島近くで、石油の掘削を始めてから間もなく1カ月になる。
中国側は作業をやめる気配を見せず、公船を多数投じてベトナムを威嚇している。
力ずくのやり方に国際的に非難が高まるのは当然だろう。中国は責任ある大国にふさわしい振る舞いを考えるべきだ。
中国側が掘削開始をベトナムに通告したのは5月3日だった。その後、両国の船舶の衝突やにらみ合いが続いている。
掘削は場所を移して第2段階の作業に入り、8月中旬まで続けるという。西沙を実効支配する中国としては「近海」だから問題はないと主張するが、「自国の排他的経済水域内」とするベトナムは納得できまい。
現場からは緊迫した様子が報じられている。強硬なのはどちらか、主張は食い違うが、巡視船は中国のほうがはるかに大きく、装備が整い、数も多い。中国軍の艦船の動きも伝えられる。事態を悪化させている責任の所在は、中国側のほうが重いのは明らかだ。
安倍首相や菅官房長官は相次いで憂慮を示した。これに対し中国外務省の報道官は「事実を顧みず、火事場泥棒を狙い、下心のあるもの」と反論した。
日中間に多くの外交問題があるにしても、中国政府を対外的に代表する発言としては乱暴にすぎる。アジアの緊張を高めないよう、隣国の日本政府が意思表示するのはもっともだ。
さらに気になるのは、劉振民外務次官による発言だ。報道によれば、「南シナ海は中国の海上生命線で、中国にとっての重要性は他国をはるかに上回る」と述べている。
南シナ海の安全と航行の自由は、どの国にも等しく大切だ。自国だけに優先権があるかのような主張は説得力をもたない。
中国はこれまで、南シナ海問題では強く出たり、周囲との融和を探ってみたり、態度が揺れてきた。いまの習近平(シーチンピン)政権内にも対外強硬派と協調派があり、前者の発言力が徐々に増しているようにみえる。
中国政府は昨秋、周辺国との外交を話し合う会議で「善隣友好、互恵協力」を打ち出した。それ以前には、東南アジア諸国連合(ASEAN)との間で南シナ海の行動規範づくりにも合意している。
そうした平和共存をめざす基本姿勢に立ち返るべきだ。それがひいては、中国の国益にもかなう。威圧で主張を押し通そうとする姿は、どの国からも尊敬されない。
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