(英エコノミスト誌 2014年5月24日号)
韓国の男性は、必要に迫られてというよりは選択肢として外国人と結婚している。
韓国・ソウル北郊の議政府市にある結婚仲介業者のオフィスで、壁に飾られた国際結婚カップルの写真〔AFPBB News〕
1990年代半ばに韓国の首都ソウルの地下鉄に張られていたポスターは、地元女性に農家に嫁ぐことを熱心に勧めていた。
若い女性は、活況を呈する都会での豊かな暮らしを求め、1960年以降、大挙して村を出ていった。しかし、息子たちは、家業の農業や漁業を継ぐため、田舎に残った。
そのキャンペーンは無駄だった。韓国では、昨年結婚した農業・漁業従事者の2割が外国人と結婚している。韓国の中で国際結婚が一番集中している全羅南道では、10年前のピーク時に婚姻の半分が国際結婚だった。当時は、中国や東南アジアの女性との結婚を仲介するビジネスが大繁盛し、ものの数日間で縁談がまとまった。
割と最近まで、地方で見られたポスターは「絶対に逃げ出さない」ベトナム人妻を褒め称えていた。そして今、ソウルの地下鉄には、多文化の家族を受け入れるよう促す垂れ幕が掲げられている。
全人口5000万人の韓国で、多文化家庭の人口が2020年までに150万人を超えると予想されている。長年、民族の統一性を誇りとしてきた国としては、驚くべきことだ。しかし、息子を望む傾向が男女数の深刻な不均衡をもたらした。2010年には韓国の中年男性の半数が独身で、その数は1995年以降、5倍に増えている。
1960年には出産年齢の女性1人につき6人だった子供の数は1.3人まで落ち込んだ。同国の出生率は世界でも最も低い部類に入る。移民を受け入れなければ、韓国の労働力は劇的に縮小するだろう。
多民族国家を目指す政府
最も熱心に多民族国家を目指しているのが政府だ。多文化家庭に対する政府予算は、2007年以降24倍に跳ね上がり、1070億ウォン(1億500万ドル)に達している。約200カ所の支援センターが通訳サービス、語学教室、保育、カウンセリングを提供している。最近の学校教科書は、人種の入り混じった家族に関する項を設けている。
また2012年には、混血の韓国人が初めて軍への入隊を許されるようになった。2007年には、韓国で不法就労していた4人のモンゴル人が火事から10人余りの同僚の韓国人を助け出した時に、地元住民が政府に対し、彼らに居住権を与えるよう迫った(政府は居住権を与えた)。