2014年5月29日07時55分
北九州市小倉北区で歯科医師の男性(29)が刺され重傷を負った事件で、福岡県警は暴力団が関与したとの見方を強めている。男性の父親は市漁協幹部で、6月に控えた組合長選の有力候補と目されている。沿岸の埋め立てなどに絡み、漁業補償を長年得てきた漁協。その利権に介入したいとの暴力団の思惑が背景にあると県警はみている。
事件は26日に発生した。この日は市漁協の組合長ポストにつながる漁協理事選の立候補締め切り日。捜査関係者は「組合長選を見据えた警告だろう」との見方を示す。
市漁協の組合長ポストは昨年12月に前組合長(当時70)が同市若松区の自宅近くで何者かに射殺されてから空席のままだ。亡くなった前組合長は、歯科医師の男性やその父親の親族。男性の周辺では1998年にも漁協の元組合長だった祖父も射殺されている。
前組合長の射殺事件を受けて県警は、父親を「保護対象者」として身辺警護し、3月には歯科医師の男性にも注意を促していた。
多くの捜査関係者は一連の事件には関係があるとの見方を示し、「若松区の港湾事業をめぐる漁業補償など、漁協の利権に介入したい暴力団の思惑が背景にあるのでは」と話す。漁業関係者も「利権はある」と認める。
若松区に面した響灘は、60年代から今に至るまで、市や国、企業による大規模な埋め立て工事が続いてきた。港や工業用地、廃棄物や残土の処分場造成――。市や県によると、若松区に本所を置く市漁協側には、100億円を超す漁業補償が支払われたという。
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朝日新聞社会部
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