(2014年5月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
南シナ海でベトナムの船艇に放水する中国海警局船〔AFPBB News〕
中国は馬鹿なことをしているのだろうか? それとも本当に賢明に立ち回っているのだろうか? 一言で言えばこれが、近隣諸国を挑発する一見組織的に見える中国の取り組みを巡る外交政策の議論だ。
中国が馬鹿な振る舞いに出ていると主張するのは簡単だ。中国政府はここ数週間、ベトナム、フィリピン、日本に同時に喧嘩をふっかけている。
要らぬ反発を招くオウンゴールに見えるが・・・
中国は、ベトナムが領有権を主張する、中国の支配下にある島の近くに石油掘削装置を移動させ、これがベトナムで反中暴動を引き起こし、4人の死者を出すことになった。今週は、石油掘削装置を取り囲む大船団の一部である中国の漁船がベトナムの漁船を沈没させたとして非難された。
人工の島を建設することによってであれ、漁場を支配しようとすることによってであれ、中国がフィリピン政府の海洋での領有権主張を刺激することで、フィリピンも中国に反発している。1992年にスービック湾の海軍基地から米国人を追い出した後、フィリピン政府は今、米軍に戻ってくるよう頼んでいる。バラク・オバマ米大統領が最近アジアを歴訪した時に、フィリピン政府は米国の船と航空機に同基地の使用を認める協定に調印した。
中国は日本も敵に回している。中国は東シナ海の係争地域を航空機と船であふれ返らせることによって、尖閣諸島(中国名:釣魚島)の日本の施政権に挑戦している。
それが右派の安倍晋三首相に、日本の平和憲法の解釈見直しを求めるのに必要なあらゆる口実を与えている。安倍氏は日本が同盟国を守るために戦えるようになることを望んでいる。日本のより積極的な姿勢は、近隣諸国を悩ますどころか、多くの国に歓迎されている。
日本政府はフィリピンに巡視艇を供与しようとしており、ベトナムにも同じことをすると約束している。要するに、中国は近隣諸国を互いの腕の中に追いやることでオウンゴールを放ったように見える。中国の微笑外交の形跡はすっかり消え去った。
米戦略国際問題研究所(CSIS)のブラッド・グロッサーマン氏は、中国政府がこのような厄介な事態を引き起こすのは「不可解」だと思っている。同氏はナショナル・インタレスト誌への寄稿で、国内で爆発しかねない非常に多くの経済問題や社会問題に直面している時に、中国はどうしてそんなことをするのかと問いかけている。