■石屋主人日乗

ここは石屋の主人がプラモに関係あるコトやないコトを好き勝手に書き散らすページです。
以前の「ニュース」を改題。ニュースというと城プラモ界のイベントを残らず網羅するような印象になってしまいますが、そんなマメな事をやる気はサラサラないので。

●帆船プラモ二本立て  2014.2.28

●その1 今井科学のクリスチャン・ラディック
旧イマイの1/350帆船の中には、戦争中にドイツ海軍で使われたものがあります。
初代ゴルヒフォック(現タヴァリシチ)やホルスト・ヴェッセル級(現イーグル、サグレスII)は有名で、昔からそこそこの資料に恵まれていました。
それに比べるとクリスチャン・ラディックはわりとマイナーな部類に入るでしょう。
このノルウェー生まれの船は、戦争中はドイツ海軍の潜水艦補給船として使われました。

photo_imai kagaku christian radich

ドイツ海軍時代の画像が欲しくて10年前にググったときはカスリもしませんでしたが、最近はネット上の情報量も増えていますから、今なら何か拾えるかもしれません。
そこで、試しに"Christian Radich WWII"や"Christian Radich german navy"など英語のキーワードで検索しましたが、見つかりません。
やはりドイツのことはドイツ語で尋ねた方が良さそうなので、"Christian Radich kriegsmarine"で画像検索すると、一件だけヒットしました。

http://s-boot.net/sboats-km-northnorway.html

さらに、このページで得られたキーワード"Christian Radich Skjomen"で画像検索。
すると出てきたのが下のページ。

http://www.ubaatkrig.no/web/skjomen.html

まずは一番目のサイトから見てゆきます。
上から6枚目の写真で、奥の方にSボートと並ぶクリスチャン・ラディックがチラッと写っています。
他の写真ではM1級掃海艇の姿も見えて、こんな仕事もしていたのかと興味深い。

写真を詳しく見ると、船尾に模様のようなものが見えますが、迷彩なのか光の反射なのか判然としません。
色はSボートのグレーよりもかなり濃いようです。グレーだとしたら日本の軍艦色くらいでしょうか。
帆桁は撤去されているようです。

次のサイトでは、3枚めの写真に大きく写っています。
船体のマダラは本来の白にグレーを塗った迷彩のように見えます。
ロープが明瞭に確認でき、シュラウドもかすかに写っているなど、資料性の高い写真です。

photo_bronco_1/350_s100_class
プラモの方は、まだ誰もアップしてないみたい。これは早い物勝ちですね。
同スケールでブロンコからS-100級の二隻セットが出ているので、役者は揃っています。
作ったらこんな感じ。大きさのバランスもちょうどよく、なかなか面白い情景になりそうです。

photo_christian_radich_and_s100_class
そういえばクリスチャン・ラディックは青梅の孝文堂で買ったような記憶が。Sボートは成田のヨシダ模型店と思われ。
なお、イマイの帆船はその一部がアオシマから再販されていますが、今のところクリスチャン・ラディックは出ていないようです。

photo_heller 400 m1 class  photo heller 400 s100 class
掃海艇とSボートの方はエレール400で作れますね。

●その2 小さな帆船プラモ
エアフィックスのヒストリカルシップとか、
photo_airfix_cutty_sark

エレールのカデットシリーズとか、
photo_heller_cadet
帆船の小さなプラモには独特の魅力があると思います。

http://www.oldmodelkits.com/blog/plastic-model-kit-history/the-kits-of-pyro-plastic-company-an-illustrated-guide/
PYROはこのような分野でもパイオニアの一人でした。
これについて、こちらの外人さんがとても詳しく整理して下さっています。
未見の方は存分に堪能して下さい。

ページの下の方には大型や中型の帆船キットも載っています。
チャールズ・W・モーガンなどの有名どころは、かつてブルマァクから大航海史シリーズとして販売されたことがありました。
よく見ると、他にもボムケッチなど興味深いアイテムがあったようです。これ欲しいなあ。どこかに売ってないかな。


●大分よいとこ一度はおいでシリーズその2  2014.2.21

寅さん30巻を鑑賞したので、ロケ地の湯平温泉を訪ねてみたくなりました。
地元の事はかえって詳しく知らないもので、ここへ行くのは初めてです。
久大線の湯平駅から小一時間ばかり歩きます。

photo_湯平温泉
小さな谷川にそって温泉宿が点在しています。
これは期待以上、絵に描いたような山の温泉街ですね。
あまり大きなホテルなどがないところも景観的には好みです。

photo_湯平温泉
石畳の坂道も風情があります。
寅さん30巻には、他にも臼杵石仏、上臼杵、杵築、別府などの風景が登場します。
別府国際観光港を出発するホバーフェリーの動画などは、大分県人的にもかなりレアではないかと。

●大分銘菓を食べるシリーズ
photo_志きし餅
志きし餅。10個入り750円。
元々は西大分ゆかりの品ですが、昨今は大分駅の豊後にわさき市場でも売っています。
こういうレトロな包装を見ると、つい手が出てしまいますね。

オイやめろ太らせる気か。
photo_志きし餅
モグモグ、うめえ。
白はこしあん、緑はヨモギ餅でつぶあん入り。

●おまけ1 こんな電子図書サービス見つけた
http://www.shinanobook.com/
モデルアートの創刊号から20号までが電子化されており、一冊315円で購入できます。
サイト内のフリーワード検索を使って「モデルアート」で探してみて下さい。
ただし閲覧はオンラインのみで、データを自分のPCに保管することはできません。

●おまけ2 RAFの砲術ドーム 
http://www.ww2-pathfinders.co.uk/Wyton%20gunnery%20dome.html
すげー、こんなの作って飛行機を撃ち落とす練習をしていたのか。


●トライスターのドイツ砲隊鏡セット  2014.2.14

photo_トライスターのドイツ砲隊鏡セット

●砲隊鏡と方向盤
2007年に発売されたマニアックなアイテム。精密に再現されたSF14zとRk31がたくさん入っています。
SF14zは砲隊鏡、Rk31は機能からみて旧軍や陸自でいうところの方向盤のようです。
防衛省の定義によると、方向盤とは「火砲などの射向付与及び射向点検, 射弾観測,器材の標定,測量などに用いる測定具」だそうです。
この2種類の器材は例の88ミリ砲のマニュアル「TM E9-369A」に載っているので、機能やディテールなどの詳細な情報を入手できます。

photo_トライスターのドイツ砲隊鏡セット
砲隊鏡SF14zは10倍率の双眼鏡です。
弾着観測(遠弾/近弾の判定)などに必要な遠近感を強調するため、筒を水平まで広げることができます。
目盛りは縦横10ミル刻みの格子状で、右側の接眼レンズ内に配置され、望遠鏡アームの角度に係わらず直立して見えます。
電池と電球で目盛りを照明できるので、夜間の使用も可能です。
マウントは高低角と方位角のスケールおよびマイクロメータ、水準器を有します。
目標までの距離を測ることはできません。それはレンジファインダーの仕事です。
専用のキャリングケースが用意されています。
photo_トライスターのドイツ砲隊鏡セット
方向盤Rk31は4〜5倍率の望遠鏡です。レティクルは十字線と偏差目盛りです。
垂直の筒は潜望鏡で、この部分は倍率を持ちません。潜望鏡のかわりにサンバイザーを取りつける事もできます。
上部の高低角マウントは0〜1,400ミルの高低角スケール、0〜100ミルの高低角マイクロメータ、水準器を有します。 その下は方位角マウントで、0〜6,400ミルの方位角スケール(100ミル単位)、0〜100ミルの方位角マイクロメータ(1ミル単位)を有します。 これらを用いて高低角や方位角をミル単位で正確に計測することができます。
また、磁針を内蔵しており、磁方位を得ることもできます。
砲隊鏡と同様にレティクルを照明する機能を有しています。
三脚は砲隊鏡と共通です。
専用のキャリングケースが用意されています。付属品は電球ブラケット、電球4個、電池ホルダー、ダストブラシ、清掃布、毒ガス除染用の含浸布です。
なお米陸軍省のマニュアルTM-E 30-451は、この器材について「材質、工作、および設計は素晴らしく、費用を惜しまずに製造されている」と評価しています。さすがドイツの光学機器、ぱないの。

キットの中身を整理すると、ランナー1枚あたりの内容は以下の通り。
  三脚(砲隊鏡/方向盤共通)×3  脚は縮めたもの、半分伸ばしたもの、全部伸ばしたものを選択できる。
  トレンチマウント(砲隊鏡/方向盤共通、三脚のかわりに地面や木材にねじ込んで使う)×1
  砲隊鏡本体×3  うち、サンバイザーつき1、アイパッドつき1
  方向盤本体×1
  砲隊鏡キャリングケース×1
  三脚キャリングケース×1
そしてランナーは二枚入り。エッチングも必要な数が付属。つまり箱の写真に写っているより中身は多いです。
なお、方向盤のキャリングケースは付属しません。

●で、結局できるの? できないの?
それにしてもマニュアルに載っているという事は、88ミリ砲の部隊は砲隊鏡や方向盤などを持ち歩いていた、という事なのでしょうか。
このマニュアルはドイツ軍のオリジナルではなくアメリカ人が作ったという点が多少引っかかりますが。
何の話かというと、88ミリ砲は地上目標に対する間接照準射撃を正規の任務に含めていたのか、いなかったのか、という点で先週から悩んでいる訳です。

対空射撃と対地直接照準だけなら、砲隊鏡はともかく方向盤は要らないと思います。
また前回にも書いたように、同マニュアルの4章1節には「この砲は対戦車戦闘のような直接射撃、間接射撃、または対空射撃に使用できる」と明記してあります。
しかし、直接照準の手順は細かく書いてあるくせに、間接照準については、これ以外には何も書かれていません(強いて言えば4章2節にヒントが)。

5章の射表は、榴弾(時限信管または着発信管つき)用と、徹甲弾用と、二種類が掲載されています。
徹甲弾の方は射程の最大値が4,000mで、これは直接照準用らしいです。
榴弾用の射表は最大射程14,800mまで細かく書かれており、間接照準にも使えそうです。
いや待て待て、それにしては備品の中に標桿が見当たらないじゃないか・・・

うーん、状況証拠的には、やればできるだけの材料が揃っていない事もない、といった感じでしょうか。
なにぶん浅学ゆえ、この件について詳しく書いてある一次資料には出会ったことがありません。
でも、ドイツ軍ならそのくらいやってのけそうな気もしますね。

●おまけ 間接照準における射向付与
photo_間接照準における射向付与の図
※標桿とは、大砲に付属している、赤白に塗り分けた棒のことです。なお現代は照準コリメータを主に使います。
※砲のパノラマ眼鏡から遠方標桿までの距離は約100mです。
※ドイツ軍の模型を使って説明していますが、この図はアメリカ製器材の説明書を参考に作ったので、ドイツ軍の作法とは異なるかもしれません。
※この説明では北向きしか撃てない理屈になりますが、もちろん実際はもっとややこしい操作をして、あらゆる方向を狙う事ができます。


●88ミリ砲でけた  2014.2.7

かっきょええので、調子にのってブロンコのコマンドゲレート40まで作ってしまいました。

photo_ドラゴン 8.8cm flak36
ところで、このパノラマ眼鏡、今までマジメに使い方を調べたことがなかったのですが、

photo_ドラゴン 8.8cm flak36
コマンドゲレートの方にも付いてるのを見て、もしかして反覘(はんてん)法に使うのかな、と思った次第。

88ミリ砲は自前の対空照準器を持たず、コマンドゲレートと称する高射装置から射撃の諸元を受け取ります。
ということは、砲とコマンドゲレートの三軸を事前に合わせておく必要がある筈です。
x軸、y軸は水準器を見てレベルを調整するとして、問題はz軸(方位角)の合わせ方です。

そこで米陸軍省が作った88ミリ砲のマニュアルを見ると、やはりパノラマ眼鏡はコマンドゲレートとの方向合わせに使うと書いてあります。
また、コマンドゲレートのセットアップ手順の中で、88ミリ砲とコマンドゲレートの方位角を揃える方法が簡単に紹介されています(※1)。
図にすると、こんな感じ。なお、この図はアメリカ製の器材に関連する説明書も参考に補足したもので、一部に推測も混じっています。

photo_砲基準反覘法  photo_砲基準反覘法
 覘視とは、砲の射向を動かすことなく、パノラマ眼鏡の鏡頭を回して照準線を照準点に指向することをいう。
 照準とは、与えられた方向分画をパノラマ眼鏡に装定し、方向ハンドルを用いて照準線を照準点に指向して砲に射向を与えることをいう。


どうしてパノラマ眼鏡をこんな不便な位置に取り付けたのか疑問でしたが、このように考えると意味が理解できます。
つまり、砲とパノラマ眼鏡の中心軸が一致しているので、相手からみた鏡筒の位置は、砲を旋回させても変わりません。
この構造は反覘法を実施するうえで極めて合理的です(※2)。

なお、記録写真を見た限りでは、コマンドゲレートの床は固定で、図のように機械だけ旋回するようです。

ところで、ブンカーバスターは置いといて、ドイツ軍は88ミリの自走高射砲なんか作ってますけど・・・
あれってコマンドゲレートも自走しないと意味ないですよね。
などと思っていたら、こんなのが出てきました。

http://www.kfzderwehrmacht.de/Hauptseite_deutsch/Kraftfahrzeuge/Deutschland/VOMAG/VOMAG_8_8cm_Sfl_/vomag_8_8cm_sfl_.html
ええっ、自走コマンドゲレートだって!? マジか。

http://militarymodels.co.nz/2012/04/09/photo-collection-8-8-cm-flaksfl-auf-vomag-lkw/
ここにも。ふええ知らなかったよう。

http://www.panzer-bau.de/fahrzeugmodelle-1-35/fahrzeuge-edw/niederflur-flak/
てか、作ってる人もいますね。かないませんわ。

あと、もうひとつ疑問ですが、結局88ミリ砲で間接照準はできたのか。パノラマ眼鏡の存在だけでは証拠としては不十分でしょう。
マニュアルの4章1節の冒頭には「この砲は対戦車戦闘のような直接射撃、間接射撃、または対空射撃に使用できる」と書いてありますが・・・。
長くなりましたので、これについてはまた来週にでも考えてみたいと思います。

※1
TM E9-369A German 88-mm Antiaircraft Gun Materiel Technical Manual
CHAPTER 4. Sighting and Fire Control Equipment
Section III. Fire Control Equipment 
パノラマ眼鏡については、76. PANORAMIC TELESCOPE 32 (RBL. F. 32).
コマンドゲレートについては、77. STEREOSCOPIC DIRECTOR 36 (KDO. GR. 36).
なお本書はweb上で公開されていますので検索してみて下さい。

※2
通常の野砲で反覘法を実施する場合、砲とパノラマ眼鏡の中心軸が離れているので、砲を廻すとパノラマ眼鏡の位置も微妙に変わります。
このため、誤差がなくなるまで図の手順を何回か繰り返す必要があります。
88ミリ砲の場合、相手が砲であれコマンドゲレートであれ、はたまた方向盤であっても、通報は一度きりで完了すると思われます。



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