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6月15日、日曜日。この日付をめぐって、小さくとも小さくないスケジュール問題が起きています。日本にとってのブラジルW杯開幕戦。コートジボワール戦が同日10時にキックオフされるからです。
(取材・文/川端暁彦 写真/サカイク編集部)
■日曜10時キックオフは、少年サッカーの日常でもある
日本の10時は、地球の反対側に位置するブラジルでは夜の10時に当たります。このくらいのキックオフ時間で試合が組まれる例はないわけではないですが、稀少なのは確かです。今回のW杯で言えば、10時キックオフとなったのはこの日本とコートジボワールの一戦のみです。
なぜこうなったのかと言えば、それはもちろん日本側の要請によるもの。日曜朝10時と言えば、ある種のゴールデンタイムです。当然ながらそれぞれの家庭事情にもよりますが、日本の多くの家で家族そろってテレビの前に座ることが可能な時間帯と言えるでしょう。「みんなで楽しく観戦できる時間帯にW杯を」。そんな配慮があっての時間設定で、相当な高さの視聴率が期待されています。
ところが、サッカー関係者に限定して「視聴率」を測定することができたとすると、その数字はガクッと落ちてしまうかもしれません。サッカー関係者はサッカーが嫌いなのかと言えば、そうではありません。なぜかと言えば、その日が「日曜日」だからです。少年サッカーチーム、スエルテ・ジュニオルス横浜の久保田大介代表は「10時キックオフは少年サッカーでは一番“普通”の時間帯なんです」と苦笑を浮かべます。
少年に限らず日本の育成年代のサッカーは、基本的に月から金曜日が練習や休養に充てられて、土・日曜日に試合が組まれています。そうなのです。日曜日朝10時と言えば、まさに全国各地でボールが蹴られている時間帯。社会人リーグなどでも、日曜日に試合が組まれるのは当然のことで、それが午前中であることは珍しくありません。それはW杯開催期間中であっても、例外ではないのです。
「こうなることは半ば予想していました」。久保田代表はそう語りつつも、組み合わせの決定から半年の猶予があったことを思えば、それに配慮する動きも出てくるのではと期待していました。しかし、現実は非情で、多くの地域でこの日に公式戦が組み込まれてしまっています。全日本少年サッカー大会の予選であったり、地域のリーグ戦であったり、あるいはクラブチームが主催するミニ大会であったりが、「朝10時キックオフ」なんて日程で普通に組まれているのを目の当たりにすることになりました。
■W杯を雷雨と捉えれば、日程調整もやってやれないことではない!?
「僕のチームは地域の少年サッカー連盟に登録していません。他の人は心で思っていても、しがらみもあって、言えないことがある。だから僕みたいな立場の者が言わなければいけないと思ったんです」
スエルテ・ジュニオルス横浜の久保田大介代表
久保田代表は一念発起して自身のブログにて呼び掛けることにしました。「6月15日に大会とか試合とか練習とか入れようとしちゃってる人達へ」という、ちょっと刺激的なタイトルで発表された文章は、ネット上で少なからぬムーブメントを生み出しました。当然ながら、異論・反論もあります。何しろ、すでに決まっている日程を動かすということは、日本の社会構造において困難なものです。
「それは分かるんです。僕も協会の仕事で試合の日程をパッチワークのように当てはめる作業をしていたこともありますから。あれは本当に大変ですよ。都心部について言えば、グラウンドの確保も本当にしんどい作業なんです」
COACH UNITEDでもおなじみ、サッカーコンサルタントの幸野健一氏
そうした反発に対して一定の理解を示したのは、サッカーコンサルタントの幸野健一さんです。ただ幸野さんは同時に「でも、やってやれない作業ではないんです。たとえば雷雨が来て6月15日の朝10時にキックオフできなければ、どうしますか? その日程はどこかで消化することになるでしょう。実際のところ、『本当にできない』なんて例はまずないんです」。実際、この話が表面化してから日程を動かす例が次々と出てきました。たとえば京都府では、全日本少年サッカー大会県予選の準決勝というビッグイベントが予定されていたものの、キックオフ時間を「14時」に動かして対応することにしています。
■「サッカーをやる人は、サッカーを観ない」日本の現実
ここからは個人の意見になりますが、この問題の本質は「日程を動かせるかどうか」というスケジュール問題ではないように思うのです。その日が来るまで1カ月を切った段階でも動かせる日程はあったわけですが、これが半年前から意識されていたら、どうだったでしょうか。そもそもの問題は、「日本代表の日程に配慮して、自分たちの日程を考える」という発想自体がなかったことにあるように思います。同じことを、Jリーグについても言えると思っているのですが、これは「サッカーをやる人は、サッカーを観ない」という現実の表れではないかとも思うのです。
子どもたちがサッカーを「観る」ことの意味はどこにあるのでしょうか。なぜリアルタイムでサッカーを観ることに価値があるのでしょう。サッカーを「観る習慣」を得ることによって、指導者やプレーヤーはどう変わることができるのでしょうか。
後編では、久保田さんや幸野さんのお話をうかがいながら、この問題について掘り下げてみたいと思います。
●幸野健一(こうの・けんいち)
1961年9月25日生まれ。中大杉並高校、中央大学卒。10歳よりサッカーを始め、17歳のときにイングランドにサッカー留学。以後、東京都リーグなどで40年以上にわたり年間50試合、通算2,000試合以上プレーし続けている。息子の志有人はFC東京所属。育成を中心にサッカーに関わる課題解決をはかるサッカー・コンサルタントとしての活動をしながら、2014年4月より千葉県市川市にてアーセナルサッカースクール市川を設立、代表に就任。
●川端暁彦(かわばたあきひこ)
1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。2002年から本格的にフリーライターとして育成年代を中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月をもって野に下り、フリーランスとしての活動を再開。各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に「Jの新人」(東邦出版)がある。
取材・文/川端暁彦 写真/サカイク編集部
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