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 震災やその後の暮らしの話を聴かせてください――。阪神大震災の被災者を一人一人訪ね、体験に耳を傾けてきた神戸市の傾聴ボランティアグループの活動が600回を迎えた。震災から20年目に入り、高齢化、孤立化が進む被災者。活動の大切さは増しているが、次世代への継承が課題になっている。

 市民グループは、神戸市須磨区の東條健司さん(74)が代表を務める「週末ボランティア」。24日に600回目の活動を迎えた。

 災害復興住宅約1700戸が集まる神戸市中央区の「HAT神戸脇の浜」を訪ねた5月10日。参加した50~80代の4人が「震災のお話、お聴きしたいのですが」と16軒を回った。留守が多く、7軒には断られたが、女性(77)が「体験を聞いてほしい」と部屋に招き入れてくれた。他人に話すのは初めてだという。

 東灘区の自宅が全壊。大阪市で4年暮らし、8回目の抽選で復興住宅に入った。3年前に夫に先立たれた。最近、脚立の上から転倒して背骨を折った――。

 東條さんらはメモをとりながら、ただ相づちを打つ。「最近色々あって弱気になっていたから、誰かと話したかった。みんな優しくて気持ちが軽くなった」と女性は笑顔になった。