集団的自衛権:批判派の憲法学者ら「安保法制懇談会」発足

毎日新聞 2014年05月28日 22時17分(最終更新 05月29日 01時21分)

結成記者会見をする国民安保法制懇のメンバー=参院議員会館で2014年5月28日午後3時12分、山本晋撮影
結成記者会見をする国民安保法制懇のメンバー=参院議員会館で2014年5月28日午後3時12分、山本晋撮影

 集団的自衛権を巡る国会集中審議が始まった28日、憲法解釈変更による行使容認に批判的な内閣法制局長官経験者や憲法学者らが、安保法制を考える懇談会を発足させた。行使容認に前のめりの安倍晋三首相に対し、メンバーで改憲派の憲法学者、小林節・慶応大名誉教授は「憲法をハイジャックするもの」、孫崎享・元外務省国際情報局長は「米軍の傭兵(ようへい)のような状態になる」と批判した。【野島康祐、本多健】

 メンバーは両氏のほか、内閣法制局長官を務めた阪田雅裕、大森政輔両氏、第1次安倍政権で官房副長官補を務めた柳沢協二氏ら12人で、一部が参院議員会館で記者会見した。安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)に対抗し、会を「国民安保法制懇」と命名。今年夏にも報告書をまとめる。

 安倍首相は午前中の集中審議で、戦争に巻き込まれるとの懸念に対し「実際に武力行使するかは高度な政治的決断だ」と釈明した。この発言に対し、小林氏は「法的規制がないに等しい。『おれに任せろ』ということか」と批判した。元長官の大森氏は「首相の判断の誤りを防ぐ人たちが内閣に集まっているとは思えない」と突き放し、首相の諮問機関「安保法制懇」の報告書について、「結論ありきで、まさに牽強(けんきょう)付会。理由づけも実にひどい」と酷評した。

 元長官で大森氏の後輩の阪田氏は、「集団的自衛権を巡り、全員の意見が一致しているわけではない。だが、日本のかたちを変える大きな問題であり、行使するには十分な国民的議論が必要で、憲法改正を経て国民に覚悟を求めなければならない、という点で全員が一致した」と、設立経緯を説明した。

 会には、緊迫した海外の安全保障の現場で実務経験を積んだ専門家も参加している。

 過去にイラク大使館に勤務した孫崎氏は、政府が集団的自衛権の行使容認や法整備が必要とする15の具体例について、「他の対応で可能なものばかり。自分の経験から見ても、あえて集団的自衛権の検討を急ぐ緊急性がない」と一蹴した。

最新写真特集