計算してみたら怖すぎる!! ホットパーティクル
2014-05-27
昨日のホットパーティクルのリンク先を読んでみると、福島事故で放出されたホットパーティクルの正体、いろいろ説明してあります。で、これで被曝するとどうなるか、計算してみました。(計算そのものは無理があるものですが、結果は気に懸けるのに十分なものだと思います)。(nature.comからスクリーンショット)
↑ホットパーティクルの一粒(写真のよりも小ぶりな直径2μmのもの)の発している放射線量は1.4Bqだったと書いてあります。内訳はCs134が0.78Bq、Cs137が0.66Bqとのことです(1.4Bqというのは、四捨五入して切り捨てたものでした)。
で、今回のケースでは、セシウムが人間の代謝経路に入るわけじゃなくて、体表面(鼻の粘膜とか肺胞の表面とか)に付着するわけですので、よくある内部被曝の換算係数なんては使えません。体表面・外部からの直接被爆です。
外部からの直接被爆を計算するには↓こんな式になります。
(『放射線緊急事態時の評価および対応のための一般的手順』 より85頁)
なんか複雑ですが、まずは直接体表面に付着ですから「遮蔽を無視するためには遮蔽厚dをゼロに設定する」ということで、(0.5)のなんたらかんたら乗の部分はあっさり「1」とさせていただけば、話はまあ、簡単で、被曝期間をT時間として、
Cs134 実効被曝線量 = {(0.78×10^-3)×(1.6×10^-7)×T}/(1×10^-6)^2
Cs137 実効被曝線量 = {(0.66×10^-3)×(6.2×10^-8)×T}/(1×10^-6)^2
となります。え~、ここで、線源からの距離Xをどうしようかなと思ったのですが、ゼロじゃ計算できませんので、直径2μmの球の中心が仮想線源ということにして、距離Xは1μmにしてあります。なお、(1.6×10^-7)と(6.2×10^-8)は、上の式のリンク先の88頁にある表E1に書いてある換算係数です。
これを計算すると、次の式が得られます
総実効被曝線量(Cs134+Cs137) = 1288.9 × T (mSv)
つまり、ホットパーティクルが付着した場所の細胞の被曝線量は、1時間あたり1.3Svほどということになります。なんと、これはもう全然、低線量被曝なんてもんじゃないじゃないですか。ホットパーティクルによる被曝を考える場合、「被曝致死量」なんて概念、無意味ではありますが(全身被ばくした時の値ですから)、でも、ま、「被曝致死量」とされるのは、とりあえず6~7シーベルトです。ですから、数時間もすればこの細胞、たぶん死にます。
で、細胞が死んだってホットパーティクル、別に都合よく排出されるわけじゃないでしょうから、今度は次にくっついたお隣の細胞を被曝死させるでしょう・・・。で、どうなるんだ??
昨日、当ブログ記事に「えまのん」さんからコメント頂きました。
「『鼻の粘膜のマイクロ・ホットスポット』説が正しいと仮定するならば、同様にポワソン分布にもとづいて『肺まで達して肺癌発生』やら『眼球付着で眼の毛細血管負傷からの出血』の率も増加するはずではないでしょうか?/鼻血以外、とくに眼球出血という鼻血以上に目立つ特殊な状況が増えたという話も聞きませんので、『鼻の粘膜に着いた何か』が原因としても、それはマイクロ・ホットスポットになるような放射性物質ではなく、PM2.5のような非放射性物質の微粒子であると考えるのが妥当では?」
後半はまさに、いろいろと取りざたもされているし、昨日・本日と当ブログでも書いているホットパーティクル説のことだと思います。ポアソン分布の話、別にホットパーティクルの散布の話としても、別に同じことなので、微粒子かポアソン分布かという話が対立しているわけではないと思います。問題があるとすれば、鼻の粘膜への異物の粘着というメカニズムを考えると、他の部位と同列に分布を考えることができなくなりますので、そこに問題があることになります。もともと鼻は、肺に異物を入れないためのゴミ取り場ですから、眼球よりも多くホットパーティクルを集めそうです。呼吸量もバカになりません。(ただこの場合も、何人の人にどの程度の量が付着するのかという統計的分布と考えると、やっぱりポアソン分布は有効のはずです)。
で、まさに考えなきゃいけないのは、コメントの前半です。「『肺まで達して肺癌発生』・・・の率も増加するはずではないでしょうか?/・・・鼻血以上に目立つ特殊な状況が増えたという話も聞きませんので」の所、これでいいんでしょうか?? ホットパーティクルがくっついた細胞そのものは死にそうですが、そこからちょっと離れた細胞、死なない程度に被曝してガン化しないでしょうか?? で、1個や数個のガン細胞が増殖して、ガンとして認識されるサイズになるまでには、どのくらいの時間がかかるのでしょうか??
チェルノブイリでは、5年後からガンを含む、様々な病気が急増したという話はよく知られたところです。「鼻血以上に目立つ特殊な状況が増えたという話も聞きませんので」というのは、「まだ聞きません」というだけのことかもしれません。
ホットパーティクル“地獄玉”を多量吸い込んでしまった人々が、恐らくは大量にいます。国は「美味しんぼ」の鼻血を否定することに血道を上げるなどというバカなことをするよりも、他にすべきことがあるはずです。福島事故の被爆者、特にホットパーティクル被爆者について、全力を挙げて医療調査・対策を行うことを考えるべきです。
ちなみに、本記事で取り上げているnatureの論文にはホットパーティクルの放出状況地図も掲載されています。
(nature.comからスクリーンショット)
実は数行前、「福島の被爆者」と書かず「福島事故の被爆者」と書いています。この地図を見れば、そう書かざるをえない理由が明白と思います。ホットパーティクルの場合、環境で観測される放射線量値が低いというのは、単にホットパーティクルを拾う確率が低いということを意味するに過ぎません(“低線量被曝”になるわけではなく、あくまで“地雷を踏むか踏まないか”です)。上でやった計算が真実の1割でも捉えていれば、一旦吸入してしまったホットパーティクルは、高線量被曝線源として体内に存在し続けることになります。
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